読切小説
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ぼくのなつやすみ きつねのおやど
8月1日 
きつねおばちゃんちに来た。お母さんのおなかの赤ちゃんがもうすぐ生まれるから、夏休みが終わるまでこっちでおるすばんだって。
きつねおばちゃんのおやどはあいかわらずガラガラだったけど、そのかわりきつねお姉ちゃんが「いっぱい遊べるね」って言ってた。


8月2日 
きつねお姉ちゃんと近所の雪お姉ちゃんと遊んだ。
ままごと遊びしてたら雪お姉ちゃんが「いいおむこさんになるね」って言ってきてきつねお姉ちゃんが真っ赤になってた。
おむこさんってなんだろう?およめさんとまちがえたのかな?


8月3日
みずがみさまへあいさつしに行った。へびみたいな足でつのが生えてたけど、おにじゃなくて川の神さまなんだって。
このへんは男の人がすくないけど、きっともうすぐいいおむこさんがやってくるって言ってた。
それにしてもおむこさんってなんだろう?


8月4日
急に雨がふってきたから近くのだがしやさんの「たぬきや」で雨やどりした。そうじのおてつだいをしたらお礼にってたぬきのおねえさんがおかしをくれた。


8月8日
きつねおばちゃんのおやどにおきゃくさんが来てた。
大学から来た学者さんで、このへんの古いものを探しにきてるんだって。明日くらの中を探検するって約束した。
おたから、みつかるかなぁ。


8月9日
学者さんとくらの中を探検した。クモのすとホコリでいっぱいだったけど、本当のたからさがしみたいで楽しかった。
学者さんは古い本と写真をたくさんもってかえってた。きつねおばちゃんがうつってたけどわかくてきつねお姉ちゃんみたいだった。
本はにっきみたい。くわしくしらべるんだって。


8月10日
今日もくらへ行きたかったけど学者さんがこなかった。かわりにきつねおばちゃんが来て「学者さんはみずがみさまのところへ行った」って言ってた。


8月11日
学者さんとみずがみさまのけっこんしきがあった。
これからふたりで子どもが生まれるまでがんばるんだって
なにをがんばるんだろう。


8月13日
だがしやのたぬきお姉さんがとくべつなおかしをくれた。食べると早くと大人になれるんだって。早くきつねお姉ちゃんと雪お姉ちゃんみたいに大きくなりたかったから帰ってからたくさん食べた。
明日には背がのびているかな。


8月14日
今日はねつがでて一日中ねてた。きつねお姉ちゃんがハートの形をしたくだものを食べさせてくれておいしかった
明日は元気になれるかなぁ。


8月15日
ねつが下がって元気になった。たにきおねえさんがあやまりに来てた。大人用と子供用をまちがえちゃったんだって。
きつねお姉ちゃんをみると少しドキドキしておなかの下がむずむずした。きつねおばちゃんがうれしそうに「おいわいのじゅんびしなくちゃ」って言ってた。
なんのおいわいだろう?


8月16日
今日は晴れていたのに雨がふってきた。「きつねのよめいり」っていうんだって。おひなさまみたいにならんでお酒も少し飲ませてもらった。とくべつな日ならいいんだって。


8月19日
ふしぎなおねえさんがやってきた。お別れしたくないからってきつねおばちゃんが呼んだんだって。
おねえさんはおまじないっていってけむりをふきかけてきた。けむたくてゲホゲホした。



8月32日
今日はきつねお姉ちゃんとお宿のお手伝いをした。
今日もおきゃくさんがたくさんいていそがしかったけど、きつねお姉ちゃんと一緒でたのしかった。


8月33日




「うちの主人の日記を勝手に読むなんて、いい趣味してはりますなぁ。」





……

………


さて、ほんならいきましょうか。


え?どこへやって?冗談が上手いどすなぁ。


水神様のところに決まってますがな。さ、かわいいお嫁さんがお待ちかねですよ?


ねぇ、学者さん?
16/11/26 16:20更新 / からくりにんじゃ

■作者メッセージ
ここまで読んでくれてありがとうございます。ちゃんとホラーできているか心配ですが形にはなりました。


感想とか、お待ちしております。

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