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旅の剣士 その2 後篇
 〜翌朝〜

俺達は朝食(昨夜の残りのシチューを温めなおしたもの)を食べながら、会話をしていた。
 「……ということは、目的地は砦になるのか?」
 「ああそうだ。そこで私は3番隊の隊長をしている」
 「隊長がなんで一人で戦ってたんだ?」
 「部下を逃がすために囮に…… 」
 普通逆じゃね?
 「そんなことしてたら指揮系統が乱れないか?」
 「私は隊長になりたてだし、私より優秀な副官がいるからな」
 「ふ〜ん…… そんなもんか?」
 「それより、そろそろ出発しないか?」
 「そうだな。そうしよう」

俺たちは野営の後始末を終えて、砦に向かった。



 〜数時間後〜

 「見えてきた! あれが砦だ」
 「ほ〜 かなり立派だな」
 「さあ、いこう」
 「慌てるなよ?リリー」


 〜砦の門前〜
 「間近で見ると、意外と大きいな?」
 「ああ、この辺は国境近くだからな。ある程度は規模が大きくなる」
 「リリー隊長!! 御無事でしたか!! 皆、リリー隊長が戻られたぞ!!」
 見張りの兵士が声を張り上げると、門が開き十数人の兵士(人間含む)が駆け寄って来た。
その中の一人、いかにも堅物に見える魔物娘(後から聞いたらアヌビスという種族らしい)が
 「御無事で何よりでしたリリー隊長。 しかしあんなことはこれっきりにしてください」
 「心配をかけたな副長、こちらにいるユークリッド殿が助けてくれなければ危うかった」
 副長さんがこちらに向いて
 「隊長を助けていただきありがとうございます。副長のマリー・インセントです。ユークリッド殿」
 「リリーにも言ったが俺が勝手にやったことだ。礼はいい」
 『そういう訳にもいかんのじゃな』
 「「「司令官」」」
司令官? 砦の責任者か?
 「我の部下を助けてくれたそうじゃな?礼を言うぞユークリッドとやら」
 「だから礼なんて っっっ!」
 俺は咄嗟に剣を抜く!!
『キンッ』
 かろうじて受けられたが……
 「……どういうつもりですか?司令官殿?」
 「ほう!よくぞ受けたな。 剣の腕は確かなようじゃな」
 俺の首元には大鎌の刃
 「我の名はミレイ、ミレイ・アルザードじゃ!」
大鎌を何も無い空間に仕舞いながら目の前のちびっ子は言う。
 「もしかしてバフォメットなのか?」
 「ああ、そうじゃが…… なにか失礼な事を考えてないか?お主」
 (なんでわかるんだ?)
 「ミ、ミレイ様!いきなりなんてことするんですか!!」
 「なに、お主を助けた者の力量を確かめただけじゃ」
 「ずいぶん物騒な確かめ方だな?」
 「気に障ったかの?ユークリッド」
 「いや…… 手加減してたみたいだからな。死ぬことは無かっただろうし……」
 「ほう…… 気づいたか…… これは本気でやり合うのも良いかもしれんな?」
 「ミレイ様!!」
 「はっはっはっ! 冗談だ。怒るなリリー」
 「さて、ユークリッド。ささやかながら酒宴の準備が出来ておる。礼代わりに参加してくれぬか?」
 「しかし……」
 「なに、これはリリーの帰還祝いでもある。参加してくれないか?」
 「……わかった。なら馳走になるとしよう」
 「うむ!決まりじゃな」
そうして俺は砦に招き入れられた。






 「あ〜飲みすぎた……」
俺は砦の一室で休んでいた。
かなり広い部屋だ(おそらく客間なんだろう)しかし広すぎて逆に落ち着かんな……
そんなことを考えながら俺は眠りに落ちていた……




 〜翌朝〜
部屋をノックする音で起こされた
 「ユウ、起きているか? 少し話があるんだが」
 「リリーか? 少し待ってくれ、着替えるから」 
 「わかった」
しかし何用なんだ?リリーのやつ……
 「よし、もういいぞ」
 「失礼する」
 「どうした?何か用なのか?」
 「ああ…… 今日の夕刻、私と手合わせしてくれないか?」
 「えっ? (あれ?以前似たようなこと無かったか?)」
 「頼む、この通りだ!」
いきなり頭を下げるリリー。 どうでもいいが頭外れないのかな?
 「……わかった。わかったから頭をあげてくれ」
 「ありがとう。場所は砦の中の訓練場で」
 「わかった…… って訓練場ってどこにあるんだ?」
 「砦の中心部にある…… では夕刻に」
 「ああ、分かった」
 失礼すると言ってリリーは出て行った。






 〜夕刻・訓練場〜

(なんでこんなに人がいるんだ?)
そこは野次馬が多数来ていた。
その中心部で少し困った顔で立っているリリー。
俺の姿を確認すると、ほっとしたような表情を浮かべた。
 「良かった来てくれたか」
 「約束したからな…… しかしこれは……」
 「いつの間にか集まっていたんだが……」
 『我が情報を流したからじゃ!!」
 「ミレイ(様)!!」
俺とリリーの声がハモる
 「訓練場の使用許可を見たときにピーンときてな? 面白そうじゃからと……」
やれやれ
 「さて気を取り直して、それじゃ始めるか?リリー」
 「ああ」
 そう言って剣を抜くリリー。
俺は剣を抜くと
 「よしっ!! 来いリリー!!」
 「参る!!」
そう言って踏み込んでくるリリー
俺はその踏み込みに合わせるように上体を倒しながら踏み込む。
 「なっ!!」
驚愕の声を上げるリリー。
俺の姿を見失ったのだろう。
俺はリリーの背後に回り込んでいた。
そのまま剣を突き付ければ終わる……
 「リリー、後ろじゃ」
 「「なっ!!」」
 「ミレイっ!!! おまえ!!!」
 「いつの間に後ろに……」
 「ミレイ、立ち会いの邪魔をするな!!」
 「なに、あまりにあっさり終わったんじゃ、つまらんじゃろが?」
 「心配せずともこれ一回だけじゃ」
 まったく……
 「さて仕切りなおしだ、行くぞリリー」
今度は俺から仕掛ける。
 「はぁぁぁぁ!!」
最初に三連撃、そして四連撃と段々と手数を増やしていく。
リリーも懸命に攻撃をさばいていくが……
 「くっ!?」
徐々にさばき切れなくなってくる。
 「どうした? 動きが遅くなっているぞ」
 「くっまだまだぁぁぁ」
連撃の合間に強引に攻撃を繰り出してくるリリー。
 「てあぁぁぁぁ!」
その攻撃に合わせるように俺も
 「おぉぉぉぉぉ」
裂帛の気合とともに剣を一閃させる。
キィィィィィン
 「なっ!!」
俺の一撃はリリーの剣を切り飛ばしていた……
 「勝負ありだな」
俺はリリーに剣を突き付けながらそう言った。
その瞬間割れんばかりの歓声が響いた……



 〜野次馬が帰った訓練場〜

 「まさか剣を切られるとは……」
 「すまん、怪我させずに勝とうと思ったらこれしか思い浮かばなかった」
 「……ユウ、改めて話がある」
 「なんだ?リリー」
 「その……だな……///」
 「ん?」
 「あ〜なんだ……その……」
何か様子がおかしいな……顔色も変だし……
 「どうした? まさか体調でも悪いのか?」
 「いやそうではない……」
 「???」
 「あ〜…… ユークリッド!!」
 「ああ、だからなんだ?」
 「私とつきあっ『見〜つ〜け〜た〜ぞ〜』い……」
 「「なっ!!」」
あれ?この声は……まさか……
 「ユウ…… ようやく見つけたぞ!さあ!!私と夫婦になってくれ!!」
 「リターナ!! なんでここに? というかどうやって俺の居場所を……」
リザードマンの執念を甘く見ていた。
 「さあっ!今すぐ結婚しろ」
 「待てっ!いきなり現れて何を言っている」
 「なにっ貴様こそ……」
リリーとリターナが喧嘩を始めた……

 「モテモテじゃな?ユークリッド」
 「ミレイか……リターナを砦に入れたのはお前だな?」
 「ばれたか……」
厄介なことになったな……
 さて逃げる算段でも……
 「逃げる気か?ユークリッド」
 「なんで……」
なんでわかるんだ?
 「じゃが逃がさんよ『パラライズ』」
!!!体が
 「少し強めにかけたからの。声も出んはず「ミ、レ、イ、お、まえ……」なんじゃと?」
くっ体の動きが鈍い…… これじゃ……
 「まさか我の魔術を受けて動けるとは……先の事と言い…… 気に入った!気に入ったぞ!!」
なに?
 「お主こそ我の兄様(あにさま)に相応しい! 我の兄様になるのじゃ!」
 「「「なっ!!」」」
俺とリリーとリターナの声がハモる。
あれ?いつの間に喧嘩やめたんだ?この二人
 「ミレイ様ずるい」
 「ユウは私のだ」
 「我の兄様だ」
今度は三人で喧嘩を始めた



なんでこうなるんだ〜〜〜



















 〜数年後〜

 ユークリッドは旅を続けていた。
だが
 「次はどこに行くんだ?ユウ」
 「兄様、我は疲れたぞ?抱っこじゃ」
 「ミレイ様、何を言ってるんですか?」

賑やかな道連れが増えていた……





  〜fin〜
11/06/23 20:07更新 / 瑠璃石

■作者メッセージ
いかがでしたでしょうか?
後半かなりぐだぐだになりましたがなんとか終わらせられました。

その後、彼らは有名な冒険者になるのですが、その話はまた後日書ければいいなぁと思っています。


感想が二件も
こちらで感想返信させていただきます
>>おいちゃん様
連載方式にしなかったのは単純に私のミスです。
後から直せると思っていたら、直せなかったと……
はいただの言い訳です。
まだまだ未熟以外何物でもないですが頑張ろうと思います。
感想ありがとうございました。

>>銀様
上でも書かせていただきましたが、単純に私のミスです。
次は失敗しないように気をつけようと思います。
感想ありがとうございました。

読んでくださった皆様ありがとうございます。
瑠璃石でした。

追加感想返信
>>   様
私のミスです。
次ユウ達の話を書くときは連載形式にしたいと思います。
ありがとうございました

さらに追加感想返信です。
>>白澤様
感想ありがとうございます。
続きの話はとりあえず構想中ですがいかんせんリアルが忙しくてなかなか更新できていません。
教団騎士が気になるとのことですが、彼らは続きの話にしっかり出てきます。
ありがとうございました

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