読切小説
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思石
はぁ〜…と重たい溜息を吐き出し
退屈で窮屈な学校から
陰鬱な様子を隠すことも無く
足早に立ち去る
「…アイツ…今何してんのかな…」
俺が陰鬱な毎日を送り始めた、
原因とも言える幼馴染。
「やめだやめだ…アホらしい…」
頭を降って自分の思いから目をそらす
幼馴染は、高校に上がって直ぐに
親の都合で転校して行った。
俺は泣き喚き、不様な姿を晒したが
幼馴染は何も言わず、
それどころか無表情で消えた。
俺はあの顔が忘れられず、
毎日のように【あの瞬間】が
あの張り付いたような表情が
悪夢として蘇るのだ。
「…クソっ…クソっ…!!」
今日に限って、あの顔がチラつく
俺を縛り続ける、あの顔だ。
あの顔が忘れられない。
まるであの時に、俺の時間だけ、
固められてしまったかのように。
そうして思考に飲まれ、
帰り道半ばで立ち尽くしていると。
「ちょっと」
声が聞こえた
「聞こえてる?ねぇ?」
体が震えた、聞き覚えがある、
その声に。
「ちょっと!返事ぐらいしなさいよ!」
顔を上げて、叫ぶ
「今更…今更どうして帰ってきた!?」
そして、異変に気づいた。
「…まて…まてまて…お前…それ…?」
震える声を、絞り出す。
すると、アイツは。
「ああ…コレよね?…私
魔物娘になったから」
意味が分からなかった。
聞いた事はある、人間以外の生物
【魔物娘】
だが、それに関する話はほぼ無く
都市伝説だと思っていた。
「それと…なんで今更…だったかしら?
それはね…アンタを迎えに来たからよ」
幼馴染はそう答える。
さらに混乱した。
髪は蛇になり。
脚も蛇。
突然過ぎてついていけない。
姿が変わりすぎている。
筈なのだが…
ソイツは、どうしようもなく。
あの時の幼馴染だった。
「…変わってないのね、あの時のまま
…なっさけない顔してるわ…」
無表情のまま、俺を縛った、
あの顔のまま、辛辣な言葉をぶつける。
それがどうしようもなく、
幼馴染だと実感させた。
「…お前こそ…相変わらず、
何考えてるかわかんねぇな…」
そう一言伝えると。
髪の蛇が一斉に俺の腕に絡みつき。
幼馴染に引き寄せられる。
「うおっ!?なんなんだよ?!」
突然のことに、身体が強ばる。
「…覚えててくれたんだ…
そう…ちゃんと…貴方を…
縛れていたのね…ふふふ」
無表情のまま、淡々と言葉を並べ
「さぁ…帰りましょう?…私達の
これからの為にね…?…ふふふ」
勝手に消えて、勝手に帰ってきて。
勝手に縛って、勝手に満足して。
そんな身勝手な幼馴染を見ていると。
何だか世界に色が戻ったように思えた。
今日から、時間が進み出すような。
そんな気がした。
18/10/30 20:51更新 / 魔畜

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