連載小説
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第一章†シュザント第四部隊†
ふぁ〜ぁ〜、やはり私は朝に弱いらしい。
軍人の一個部隊隊長としての自覚は当然あるのだが、
どうも早朝でのこの欠伸は必ずとして出てしまう。
………おっと、自己紹介が遅れてしまったな。
これから私と共にこれからの出来事を
体感してもらう君には私のことを知ってもらわねば困る。

私の名前はザーン・シトロテア、私という一人称から勘違いしないでほしいが
れっきとした人間の男だ。ついで歳は今年で26になる。(オッサン言うな)
先程も言ったがこれでも私は一個部隊の隊長を務めているのだ。

………そうだな、今日は特に出動要請もないし、
今日は我が連合組織シュザントと
私が率いる第四部隊の隊員たちを紹介するとしよう。色々と癖の強い連中かもしれないが我慢してくれ、私からしてみれば大切な隊員たちだ。


まずはそうだ、我がシュザントを紹介する前に
この時代の世界のことを軽く説明しよう。そのほうがわかりやすいだろう。

魔王の交代により魔物たちが女性の姿になってから50年の年月が過ぎた。
親魔物派は着実増えていったが時代が進むにつれ、
教団や反魔物派がどんどん追いやられていき一箇所の地方に集結していき
連中はそこに魔物を徹底的に敵視する絶対国家を作り上げたのだ。

初めこそ私を含む親魔物派や魔王軍は永くは持たないだろうと軽く見ていたが
地方による反魔物国家の完成により、意外にもその地方には世界中から
別地方を彷徨っていた反魔物派の人間たちが次々と集まっていき、
いつの間にはそこは「反魔物国家地方マスカー」という名前が生まれた。

世界中の反魔物派たちによる歪んだ心と殺意が生み出したマスカー地方は
巨大な武力を持って、親魔物派の街を次々と侵略していった。
魔王はそこで初めてマスカーを敵視し、魔王軍による総攻撃を開始したが
結果は生憎にも引き分け、今でもこの大陸は魔王領とマスカー領の二つに
大きく分かれているのだ。
その時に立ち上がったのが親魔物派の人間たちだ。
彼らは己が志願し魔王軍に加わり、ついにはマスカー打倒を目標とした
魔物と人間の連合軍が「魔人連合軍シュザント」である。
ついでに魔物と人間をひとつにしたという意味での「魔人」だ。
とは言ったものの結成されてまだ期間が短く、
全体的な所属人数はあまり多いとは言えないだろう。


次に私が率いる部隊、第四部隊の隊員たちについて説明しよう……。
……ん?おお、丁度いい。今廊下の向こうから私の部下であり、
第四部隊隊員のワーウルフの「リゼッタ」がやって来た。

「おはようございます隊長!」
「ああ、おはようリゼッタ」

挨拶として彼女が敬礼をし、私もそれに敬礼で返してやる、
軍に所属する者として当たり前のコミュニケーションだ。

「相変わらず朝には弱いんですね。目元が少し濡れてますよ?」

すると彼女が突然私の目元を指で軽く拭いてくれる。
腕の毛並みの感触がなかなか心地いい……いや、そうじゃない。

「こんな廊下でよしてくれ、さすがに気恥ずかしい」
「ふふっ、そうですね」

彼女はニコリと笑いすぐに手を退けてくれた。
ふむ、以前もこんな事があったような気がしたが気のせいだろうか?

「ふむ、ではいつものように第四部隊の
朝の召集かけたいのだが全員そろっているのか?」
「キリアナとサキサ、そしてノーザは既に中庭の訓練場に
集まってはいるんですが………、ヴィアナとシウカがまだ……」
「やれやれ、またあの二人か」
「申しわけありません隊長、私からも注意しているのですが……」
「お前が謝ることでもない。あの二人の『アレ』はいつものことだからな。
………仕方がない、私は二人の部屋に行ってくる。お前は先に
中庭に向かってみんなに待つように伝えといてくれ」
「了解しました、しかし隊長………大丈夫なんですか?」
「仮にも私は君らを束ねている人間だ。なんとでもするさ……」

私はソレだけを言うと、リゼッタの心配してくれている目に見送られながら
我が隊の問題のひとつ、アラクネの「ヴィアナ」とミノタウロスの「シウカ」
がいる部屋に向かった。
隊長格とは違い、隊員たちはひとつの部屋に二人〜八人までの共同部屋であるのだが、正直私はあの二人を同じ部屋にしたのが
間違いではないのかとつくづく思うのだった。
理由は…………部屋に行ってみてみればわかることだ……。

そんなことを言っているうちにその部屋に着いた。
隊長として隊員の部屋を管理する必要もあるので、当然合鍵は所有している。
私はかなりの抵抗を感じながらも部屋の鍵を開け、扉を開き中を見た……。
そしてお約束ともいえる溜め息を吐き捨てた。

「ん……ちゅ、……お!隊長じゃんかぁ、おっはよぉ!」
「ん…ちゅぱ…ぷはぁ…やだもう隊長さんったら、ノックぐらいしてよぉ…」
「………おはようシウカ、そして悪かったなヴィアナ…。
だが隊長としてひとつ聞こう…、………なにをしている?」
「「朝の発散♪」」
「黙れ」

そうこの二人、行き過ぎている程に仲が良いのだ。
隊長として隊員同士が仲が良いのは喜ばしいが、
なにも朝っぱらから互いに全裸になってその豊かな胸を押し付けあって
ベットで抱きつき合いながらディープにキスをする必要もないだろうに。

「だってぇ〜、毎日の訓練で溜まるに溜まっちゃんだも〜ん」
「そんな甘えた目で言っても無駄だぞヴィアナ」
「まぁまぁ隊長もそんな固い事言わずにさぁ〜、
せっかくなんだし隊長も一緒に気持ちよくなろうぜぇ〜?
アタイたちのレズプレイ見て、もうあそこもビンビンなんだろおぅ〜♪」
「悪いがなシウカ、今は生憎と職務活動中だ。お前たちだってそうだろう?
ほかの隊員は既に集まっている。お前たちも3分以内に来い。
さもないとお前たちの部屋を別々にする。以上だ」
「「え〜〜〜隊長のケチィ〜〜!!」」

仲良く声を重ねて愚痴る二人を後に、私は床に無造作に落ちていた服を
二人に向かって放り投げ、そのまま部屋を後にし、中庭に向かった。


おっと、今私たちがいるこの建物の説明を忘れていた。
この建物は魔王領にある無数の拠点のひとつだ、まだ魔界にはなっていないが
ここから馬で1時間程の所には既に魔界が侵攻している。
侵攻、と言っても親魔物派の私にとっては
この侵攻はいい意味での侵攻と言えるだろう。


そして私は中庭に着くと既にほかの隊が訓練を始めていた。
「「「「おはようございます隊長!」」」」
「ああ、おはよう」

そしてそんな中、私に敬礼をしてくれるリゼッタ含む4人の魔物たち。

「隊長、リゼッタから話は聞きましたが 
あの二人に何もされませんでしたか!?」
「心配ないキリアナ、気にかけてくれて感謝する」
「あ、いえ………///、隊員として隊長のことを気にかけるのは当然です」

何故か顔を赤くして私を見下ろすこの女性はケンタウロスの「キリアナ」。

「まったくあの二人は……、軍人としての自覚はないのかまったく!」
「そう言ってやるなサキサ。魔物としてあの欲求はどうしようもないものだ
だがそれでもお前はいつも隊員の気をかけてよくやってくれている、
これからもその調子で頼むぞ。お前には期待している」
「え……///!?は、はい!了解であります!!///」

この嬉しそうに尻尾をうねうねさせているのがリザードマンの「サキサ」。

「でも隊長もお人好しもいい所だと私は思います。いくらなんでもサキサの言うとおり、あの二人にも軍人としての責任を持たせるべきだと私は思います」
「軍人としての責任…、ふむなるほど。お前の言うことも一理ある
素晴らしいアドバイスを感謝するぞノーザ。お前の知能はやはり頼りになる」
「そ、そんなぁ…///。隊長にそんなこと言われるなんて恐縮ですと私は思います」

この 私は思います が特徴のブラックハーピーが「ノーザ」である。

ワーウルフ、アラクネ、ミノタウロス、
ケンタウロス、リザードマン、ブラックハーピー、

この6種類に分かれた彼女たちが私の率いる隊員たちである。
本部の魔界から隊長として選抜され、彼女たちと出会ってまだ一週間程しか
経っていないが彼女たちは隊員として従順な為、非常に頼もしい限りだ。
初めのときなど、私が人間という理由でいろいろと問題はあったが
その話はまたいずれということにして頂こう………。


「隊長、お待たせ〜♪」
「ちゃんと3分以内に来たぜぇ」

ディアナとシウカがちゃんと身だしなみを整えて現れ、
私はポケットから軍備支給されている懐中時計を取り出し、確認する。

「………ふむ、全員揃ったな。ではこれより訓練を始める!
私は人間と魔物や種族の違いだからという理由で差別などしない!!
皆平等に厳しく、同じ訓練を行っていく!!ついてこれるかッ!?」
『はいっ!!』
「……よろしい、ではこれより第四部隊、朝のトレーニングを行うッ!!」


軍人として、隊長として、一人の男として、
私は彼女たちの命を背負っているのだ。

こうして第四部隊の朝は始まる、
いつかやってくるであろうマスカーとの戦闘に備えて…………。



15/10/01 01:09更新 / 修羅咎人
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■作者メッセージ
主人公モデルの元ネタばらし!(デェェェェェェンッ)←コマンドー的効果音

家にあった「ハンドレッドソード」っていうドリームキャストの
マイナーな神ゲーをやっていたら、
そのなかのひとりに ザーン っていう虫みたいな馬に乗った敵キャラが
いるんですけど、ぶっちゃけた話それをモデルにしてこの話を思いつきました

マスカー地方というのも、そのゲームの登場戦力のひとつの名前なんですが
次話からはさっそくそのマスカーの反魔物軍戦に入っていきたいと思います!

ご感想、ご応援、よろしくおねがいします!!

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