連載小説
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後編
 ───チャプチャプ───

 ───コンコン───

「お着替えをここに置いておきますね」
「わかりました。ありがとうございます」

 あれから片付けを終えた女将さんに勧められて、風呂に入っている。
 やけに大きな湯船だな…

 何故男物の下着などがあるか疑問に思うが、先程の話もあるし
 変に思うこともないと納得する。寝間着は甚兵衛なのか。

「湯加減は如何でした?」
「大変よかったです。思ったより体が冷えてました」
「服の大きさは大丈夫でしょうか?」
「特に問題はないですね」
「それは良かったです。冷蔵庫にお茶がありますので、喉が乾いたらご遠慮なくどうぞ。
 コップはあちらにあります。飲んだら流しに置いておいてくださいね」

 お礼を言って、風呂上がりの一杯を頂いた。

「入浴と片付けを済ませますが、その前に何か希望などはございますか?」
「いえ…ところで寝床はどこになります?」
「あ、案内を忘れておりました、すみません。3階がひとつの寝室ですので、
 上がっていただけたら。お疲れでしたら、先にお休みになってもよろしいですよ」
「了解しました。寝るかもしれないので、よろしくお願いします」

 お互いにおやすみなさいと挨拶を交わして、階段を昇る。
 上がった部屋に置かれていたのは、二組の並べられた布団だった。

 …招かれざる客とも言えるので、もてなされたことにケチをつけるほどの度胸もなく。
 それを言えば、そういうことを期待しているようにとられそうで。
 そう自分に言い訳をして、取り敢えず布団に潜る。

 メールの確認やサイトのチェックをしていると、明るいながらも段々と眠気が強くなってくる。
 残りは明日にしようと諦め片付けをして、明かりを消した。

 …
 ………
 ………………

 ───ジュポッ、ジュポッ───

 粘着質な水音で意識が戻る。暗がりにゆっくりと目が慣れていく。
 布団がなくなったせいなのか肌寒さを感じて頭を上げると、股間に何かが被さっていた。
 ズボンと下着が脱げているらしく、肌と肌が直に触れあう感触がある。

 どうなっているのか目を凝らせば、女将さんが陰茎を舐め回して…チンコをしゃぶって…
 有体に言えば、フェラチオをしていて。いきなりの変化に呆然としてしまった…

「ちょ、女将さん、何やって…うおぉっっ」
「チュプッ…見ての通りですよ?お情けを頂戴しているのです。
 …フェラの方が興奮しますか?他には尺八とか。…ッジュプッ…」
「いや、どれも同じですって…あぅっ」

 初めて受ける口淫奉仕に腰がガクガクと震えて、喉が快楽に締め付けられ情けない声を絞り出す。

「あっ、ちょっ、ちょっと待ってください、お情けって、おぅっ、どういうことですっ」
「ッポン…そのままの意味です。ここに溜まっている種汁をたっぷりと、
 私にお恵みくださいね。…パクッ」

 亀頭を咥えて舐められる快感に耐えているのを見たのか、剛直の幹へと唇を進めていった
 彼女は、舌全体でゾリゾリと淫棒をこそげる。
 同時に陰嚢を優しく揉みあげ精巣を刺激して、精子を増やせとせっついた。

「待って、女将さんっ、出るっ、もう出るから、離してっ」

 そう言って頭を掴んで離そうとしたが力が入らず、逆に彼女は自分の腰に手を回し、
 吸い出すかのように口を窄めて鈴口を舌でこじった。

「いっちゃうから、離してっ、もう出るっ、あっ、ああーっ、あーーー」

 ───びゅるるっ、びゅるっ…───

 呆気ないほど早く登り詰め、射精させられた。
 裏筋を舌で嬲られ、自分でする以上の快楽が、自分でするよりも長く続く。
 ようやく口が離された時には、軽い疲労感さえ感じていた。

「はぁはぁ、何でこんなことを…」
「…言った通りですよ?あまり深く考える必要はございませんよ。
 …もし想い人が居られるのでしたら、さすがに失礼ですから身を引きます」
「いえ、居ませんが…」
「うふふ。それは良かったです。…肉欲を持て余して日々自分を慰めている年増の私に、
 出来たら若い精をたっぷりといただけると、とても嬉しいのですが」
「年増って、そんなことないでしょう」
「…ありがとうございます。お嫌でなければ、私の身体のどこでも、好きなように、
 好きなだけ、使ってよろしいですのよ…」

 女将さんが起き上がり、自分の太ももに跨がる。
 肌の濃淡が分かる程に透き通っている肌襦袢を、見せつけるようにゆっくりと
 結び目をほどき開けてゆく。

「特に嫌とかは…むしろ望外とも…。…こういう事は初めてなので、どうすれば良いか…」
「まあ!そうでしたら、手取り足取り、じっくりと教えて差し上げますね。うふふ…」

 肌襦袢をはだけた彼女の身体に、ごくりと唾を飲み込む。
 その一枚の下は下着も何も無く、発情で上気した白い裸体。
 汗で濡れた柔らかそうな乳に程よく括れた腰、肉がよく付いていてそれでも
 だらしなさが無い下半身。

 今すぐ襲いかかり、全身を余すことなく貪りたい…そんな獣欲を理性で押さえつけていると、
 がちがちに勃起している男根に、熱い液体がどろりと垂れ流された。

「うわっ、…ってこれ、愛液?」
「ええ。他人よりかなり多いみたいで、すぐに濡れてしまうのです…ですので、
 締まりの無いはしたないおまんこに、おちんぽで蓋をしてしっかりと厳しく躾てください。
 …ああ、もう我慢が出来ませんわ。いただきます」

 びくびくと愛液を跳ね散らす男根が、ゆっくりと熱を孕んだ蜜壺へ飲み込まれてゆく。
 根元まで埋まると、どぷりと溢れかえった愛液が吐き出され、股間をねちょりと濡らした。

「あっはぁぁ…。どうですか?私のおまんこは。お客様のおちんぽが美味しくて、
 すけべな涎が止まりませんのぉっ…あっ、あんっ」
「うぅ、って、女将さん、コンドームは、避妊具は?!」
「そんなもの着けると、気持ちよくないでしょう…あんっ。先程も言いましたよね?
 好きなところを、好きなように、好きなだけ使ってよろしいと。
 顔にかけられても、お口に出していただいても… 勿論、おまんこの中に出しても」

 彼女は耳元でそう囁くと身を起こし、バチュン、バチュンと跳ねながら剛直を貪った。
 見せつけるように豊満な乳房を持ち上げ、自慰に耽るかのように自分から揉みしだく。

「いっ、いいっ、きもちいいっ…」
「はぁっ、はぁっ」

 一度イったせいか、射精までは余裕がある。しかし快楽に浸り続けていると、
 考える余裕がどんどん減った。

「あんっ、ここ、ここがっ、いい、いくっ」

 どうやら膣にある性感帯を見つけたらしく、痒い所を掻きむしるかのように、
 雁首をそこに押し付けてごりごりと削るように動いた。
 膣の浅みにある小さな隆起がそれのようで、彼女から余裕が消えていく。

「いいっ、いく、いっちゃいますっ、もうダメ、イクッ、ッーーー」
「うぐっ」

 強烈な締め付けが陰茎の上半分を襲い、沸き上がる射精欲をなんとか耐えた。
 背筋をピンと張って絶頂を迎えた彼女は自分へと倒れかかり、全身をびくつかせて
 悦びに震えて。
 陰嚢から滴るほどに、とぱとぱと新たな愛液が分泌され、性器全体を媚熱で炙られる。

「はあぁっ…。どうです?初めてのおんなの味は」
「うっ…、気持ちいいです。もうそろそろ出そうなので、抜いてもらえると…」
「そうですか♥ではおまんこでヌいて差し上げますね♥」
「えっ、その、そういう意味でのぬくとは違いますっ、んむっ」
「んちゅっ、じゅるっ」

 ぐるりと頭に手を回した彼女が口封じをするかのように強引に接吻をしてきて、
 舌を捩じ込んだ。

 頭を掴まれて逃げられずにいると、生々しい粘液臭を出すやたらと甘い唾液を
 強引に注がれ、その甘さに意識が蕩けてゆく。

「じゅるっ、じゅぷ、っはぁっ、このままだとっ、中に、出てしまいますっ」
「そうですねっ♥おまんこの中にっ、溢れるぐらいたっぷりとっ、注いでください」

 口を離されて一息ついたと思ったら、背中に手を回されがっしりと拘束された。
 快感だけを求める浅めを動く動作から、根元まで喰らう深い動きになり、
 遠慮がちだった覆い被さりかたも、全身をかける容赦のない粘着質なものへと変わり。
 性の悦びに痺れた自分は動けても力が入らず、振り撒かれた甘い香りに頭を浸され、
 中出しに対する抵抗が消えていった。

「ああっ、ふかいところにっ、あたってるのぉっ、いいっ、いひぃっ」
「おっ、おうぅっ」

 彼女はまだまだ足らないとばかりに腰を密着させ、剛直を使い膣奥を入念にほじくる。
 すると際限なく求める膣肉が陰茎を咀嚼し、表面を快楽で磨いて射精を促した。

「おくっ、おくがっ、きもちいいっ、もういきそうっ」
「もうちょっとで、出ちゃいますっ」
「一緒にっ、いけるなんてっ、うれしいですっ。
 …あぁっ、ダメっ、いくっ、いくいくっ、あっ、あーーーーー」
「っあ」

 ───どくんっ、びゅーっ、びゅるるっ…───

 逃がさないと反応した膣口が陰茎の根元を喰い締め、膣奥が精液を貯蓄するために膨張し。
 その空隙を満たすために、吸い出されるような射精が始まった。
 絶頂に震える媚肉は心地よく波打ち、刺激された男根が共鳴して脈動する。
 膣肉を精液が叩けば、プシャップシャッと熱い潮が腰を焼き焦がした。

「出てるぅっ、あ゛ーーっ、ア゛ァーー」
「あっ、あがっ」

 …

 長い法悦がおさまっていき、性の余熱で荒い息を吐き出した。
 ぼんやりとしていれば、下半身の感触がぬるりと変わり。なんだろうかと思い、頭を上げる。

 ─女将さんが変化していた。下半身が蛇のような、或いは鰻のようなものに。

 …人間、処理できない事項に遭遇すると思考が停止するのか。
 他人がそうとは限らないし、コンピューターなら弾くか無限ループになるだろうけど。
 そう現実から逃げていると、視線に気付いた彼女が、いたずらを見られた子供のように
 あたふたと慌てていて。
 さっきまでの肉食獣じみた言動との落差に、思わず苦笑が漏れた。

「何故笑うんですか…」
「いや、女将さんの慌てる所を見たのが初めてだったもので。
 あれほどがっついていたのに、今は乙女みたいに…見た目とまったく逆なのが」
「もう勘弁してください。恥ずかしいです。うぅ」

 羞恥に悶える姿が可愛らしく、自然と背中に手を伸ばし、優しく抱きしめてしまう。
 手が触れた瞬間にびくりとしたものの、少し力を込めて抱擁すると、安心したのか
 彼女もこちらを抱きしめ返す。

 …

 女将さん ─お名前を柳生 初枝と教えてくれた─ は、異世界からやって来た魔物の一種で、
 鰻女郎という種族であるという。他にも有名な河童や雪女などがいるらしい。
 魔物は女性だけで、人間以外にも魔王や勇者、神などが存在し、彼女の故郷は
 ジパングと称される、などを聞いて、テンプレめいたファンタジーな世界だな…と
 思いながら耳を傾ける。

「ところで、今まで人間の姿しか見てませんけど、ああいうのは魔法か何かで?」
「ええ。私の故郷では陰陽道と呼んでいますが、こちらで使い続けるのは難しいんです。
 お客様の精がとても美味しかったから、つい気が緩んで術が解けてしまいました」
「精?精液ですか?」
「それにもありますし、唾液とかにも含まれていますね。男性のみが外に出す、命の力とでも
 思っていただければ。…命を取るとか寿命が減るとかはありませんよ?
 そんなことになると、男の人がどれだけいても足りないですもの」

 命、と聞いて力を無くした陰茎を感じ取ったのか、初枝さんがそう付け加えてくれた。
 騎乗位で抱きつかれたまま、という体勢は変わっていないので、いまだに
 膣の中に男根が入っている。
 チンコを感じ取ってそう言われるのは、それはそれで何だか複雑な気分である…

「まあ確かに」
「精液を出しても日を置けば回復して量が戻るでしょう?精も同じように普通に過ごすと
 戻ります。あと精は食物にも少しながら入っていて、精入りのこちらでいうポーションみたいな
 ものも向こうから取り寄せれますね。これは全く美味しくないですけど」
「なるほど」
「この精を私達魔物は体内で変換し、魔力として使います。向こうではそれほど使わないので
 気にする必要はあまりありませんが、こちらだとどうしても…」

 こちらには色々な魔物が相当数、侵入していると教えられた。彼女達が男を弱らせたり
 命を奪ったりしたら、問題が起きるのは想像に難くない。

 常時気を張るのは人間でも難しいだろうし、人に化けたままの状態を維持するのに
 苦労する事は理解できる。

 …ん?精?美味しい?

「さっき、私の…精液が美味しいって…言いましたよね?」
「魔物にとって、一番美味しいのは番の精なんです。中でも特に精液はその…素晴らしく」
「番?…。……夫婦?」
「そうです。といってもこちらは色々と複雑ですし、いきなり結婚とかは言いません。
 月に一回か二回ほど、今日のように精液を恵んでいただけるだけでも…大変嬉しいです」

 儚さと諦念を混ぜて、そうお願いされた。そんな仕草をされると、先程まで童貞だった自分にはきつい。
 正直言って、初枝さんは好みのど真ん中に当たっていたので、むしろ…

「えっとその、…自分からお願いしたいぐらいなのですが…いいんですか?」
「はい。本当に願ったり叶ったりです」

 美女にここまで求められるのは、男冥利に尽きると言っていい。
 あわよくば…といった下心もあって、了承してしまう。

「それなら…よろしくお願いします」
「こちらこそ。…早速と言ってはなんですが、もう一回、してもよろしいでしょうか?」
「二回出しているんですが…」
「あれは味見です」
「え」
「味見です」

 意外な可愛さがあると思ったら、やはり肉食獣であるようで。いや肉食魚だったな、鰻は。
 まだ勃ってはいるし、気力はあるが…

「下の方は大丈夫なんですが、疲労なのか腰がちょっと」
「それでしたら、こちらで御奉仕いたしますね。でもその前に…」

 その言葉と共に上を脱がされ、お互い一糸纏わぬ姿になった。
 服を脱がした彼女が再び覆い被さると、豊満な乳房がにゅるりと胸板で潰れ、心地よさに
 剛直がびくんと反応する。

「あんっ、もう、利かん棒ですね。…では両手両足で、私に抱きついてもらえますか?」
「こうでしょうか…」

 覆い被さっている初枝さんに、抱き枕のようにその背中に手を回して抱き締め、
 足を上げて挟み込む。
 なんというかあれだ、外から見ると俗にいう「だいしゅきホールド」の形になった。
 男女が逆だが、喰われているのは自分なので、これはこれで正しいのかもしれない。

「ちょっとびっくりするかもですけど、しっかり掴まっててください」
「はい、ってうひぃっ!」

 彼女もこちらの背中に手を回すと、股間の下に魚体が潜り込み、体を掬うように
 持ち上げられる。陰嚢に滑る魚体が当たって強烈な快感に悲鳴が出た。

「次はこうして…」

 抱き合った二つの上半身に、魚体がぐるぐると巻き付いていく。
 仰向けになっている自分の周りには魚体、前には自分を抱擁する初枝さんがあり、
 文字通り彼女に包み込まれた。

「どうです?とっても気持ちいいでしょう?」
「あぁぁ…は…い…」

 全身から粘液を大量に分泌すると、奉仕が始まった。
 粘液まみれの上半身を擦り付けるように動かすと、ぬるぬるの乳房が縦横無尽に踊り、
 こちらの胸を刺激する。
 包み込む魚体が按摩をするかのようにやわやわと動き、体が解きほぐされて思考がふやけ。

「全身でっ、お客様を感じているのぉっ、そういえば、お名前をまだ聞いていませんっ、
 でしたねっ」
「あっ、本庄、明人ですっ、うあっ」
「明人さん、ですねっ、しっかりと、御奉仕いたしますのでっ、いっぱい、出してくださいねっ」

 お互いが快楽に蠢いていると、みっちりと埋まっている陰茎と膣がぐにゅぐにゅと揉み合い、
 精液と愛液が中で撹拌されて、とろとろに蕩ける。
 上下運動も前後運動もなく、抱き合った体を粘つく汁に濡らして動かし、擦り合って。
 激しくない、緩やかでねっとりとした交合は、ゆっくりとしかし確実に快感を
 溜め込んでいって射精欲を煮詰めた。

「あっ、乳首が勃って、擦れてっ、いく、いくぅ、…っ」
「あっあっあっ…」

 陥没乳首なのか、これまで無かった胸のしこりが突き出て、あっという間に硬くなった。
 かなり敏感らしく胸板の上で往復すると、軽くイったようで。
 絶頂に収縮する魚体にきゅっきゅっと揉まれ、体が力をなくして弛緩した。
 融けて無くなっていくような全身の感覚とは逆に、剛直はより硬く大きくなって、
 存在感を強く主張する。

「は…あぁ…」
「う…」
「すみません…奉仕するはずが、先にいっちゃいましたぁ…♥」
「いえ…」
「何時でもいいので、お好きな時にイってよろしいですよ…できれば、イく時に…」
「…?」
「私を力一杯ぎゅっと抱き締めて、おまんこの奥に、どっぷりと、種付けしてください♥」

 その言葉に、バキンと殻が割れるような音を幻聴した。男根が更に太く長くなり、
 柔らかく吸着する蜜壺をぎちりと押し広げ、深く侵入する。
 奥深くの感触を堪能していると、こりこりしたものが亀頭に当たっていて。
 それは剛直でこねくり回す度に嬌声が上がり、大きくなって膣奥から降りてきた。

「あ♥…仔袋が…子宮のお口が…下がってます…♥」
「あ…あ…」

 揉まれる陰茎とは違う、ちゅっちゅっと吸い付く快楽が鈴口を嬲った。
 膣底に当たると子宮が下がって口で咥えられるように体積を増し、遂には動かなくても
 亀頭に密着して生殖欲を煽る奉仕を捧げる。

「あぁ…あ♥むちゅっ♥」
「ん…」

 目にハートが浮かんでいると錯覚するほど眉尻を落とし、うっとりと悦びに浸る顔。
 吐息が撫でるほどの近くでお互い見つめ合っていると、惹かれるように接吻され。
 すぐに舌を出し、性器を交合させるが如く絡ませ、唾液を交換する。

 上の口と下の口、そして子宮口という中の口で繋がり唾液を我慢汁を吸いとられ、
 代わりとばかりに悦楽が流れ込み、射精を縛る枷が徐々に緩まる。
 粘液に塗れ合い口を封じ合う今、耳に聞こえるのは淫猥な水音だけ。
 性感が五感全てを支配して思考もそれに侵されるなか、催眠をかけるように先程の言葉が
 頭に鳴り響いた。

゛私を力一杯ぎゅっと抱き締めて”

 背中に回している手に力を込めてがっしりと抱き寄せると、豊満な乳房が潰れて乳首が
 こりゅっと当たり。

「♥」

“ おまんこの奥に ”

 挟み込んでいる足で、肉感溢れる桃尻をわしづかむように力を入れれば、子宮口にくぽりと
 嵌っている亀頭がより深く潜り、鈴口が子宮頸管に入って無防備な子宮に顔を覗かせる。

「♥♥」

“ どっぷりと ”

 睾丸が吊り上がって陰嚢が縮み、前立腺に煮沸された精液が注がれ、赤熱を持った鋼鉄の
 ように剛直が硬く熱く膨張する。

「♥♥♥♥」

“ 種付けしてください ”

 ───どっくん、びゅるる、びゅー…───

 心臓が胸から飛び出るような脈動と、これまでにない素晴らしい快楽が引きずり出され。
 快感に追い立てられお互いが相手を抱き締めると、絶頂が響きあいより高みに押し上げられた。

「♥ー♥ー♥ー♥ー」

 ───びゅーー、びゅーーー、びゅーーーー…───

「♥ーー♥♥ーーー♥♥♥ーーーー」

 射精は止まるどころかより量を増やして、みっちりと子宮に種を充填していく。
 魚体が震えながら二人を引き絞り、膣が奥に奥にと誘うように蠕動して、外で中で奉仕を受けた。
 直前まで存在感を持っていた剛直が快感の塊となって、二つの躰が媚熱に融けて境界線を
 無くしていく。

 …

 ───びくん、びっくん、びっくん…───

「♥…♥…♥…♥…」

 性熱を放出し射精が終わってもなお、快楽が残っているとばかりに脈動が止まらない。
 跳ね上がる剛直を受けている彼女も同じようで、その軽い絶頂と余韻が鈴口を陰茎を口を
 啜り上げ、もっと悦べと献身的に蠢いた。
 だが体はもう限界らしく、全身が徐々に脱力して。
 伸びてゆく鼓動と吸われ続ける口の感触を受けながら、意識が飛んだ。


 …
 ………
 ………………


「おはようございます」
「おはようございます。もう少しで朝餉が出来ますので、お待ちくださいね」

 普段通りの時間に目が覚め、手持ち無沙汰なので下に降りてみた。
 起きた時は昨晩の出来事など無かったかのような普通の寝起きで、初枝さん…女将さんも
 異形の姿でなく、その様子を見るとあれは夢だった気がしてくる。
 …今まで見たことが無いほど大きく硬くなっていた朝勃ちが、ちょっとした疑問だったが。
 とはいえお腹も空いていたので、思考を止め大人しく卓袱台に座って待つ。

「お待たせしました。では頂きましょうか。ご飯と味噌汁はお代わりがありますから、
 ご遠慮なく」
「ありがとうございます」

 お互いに頂きますと交わし、朝餉に箸を伸ばす。
 朝餉はご飯に豆腐となめこの味噌汁、オクラとトマトの和え物に鮎の塩焼き、柴漬けに
 温泉卵と、伝統を盛り込みながらも贅沢なもの。
 美味しさにしゃべるのも億劫になるほどで、ご飯をお代わりした。

 …

「ご馳走様でした」
「うふふ。どうでしたか?」
「大変美味しかったです。随分豪華でしたけど、いいんでしょうか?」
「いいのですよ。昨日が昨日でしたし、今日はお休みですからね」

 ああ、そういえば今日は休むと言っていたか…そう思いながら食後のお茶を飲む。

「昨夜はよく眠れましたか?」
「まあ、はい」

 何故ここでその質問を…まさかとは思うが。

「私は美味しかったですか?」
「っ、ごほっ」

 やっぱりあれは。

「夢じゃなかったんですか…」
「とても情熱的にまぐわって、ここにたっぷり種を頂きましたのに…」

 子宮の辺りに手を添え、性的な流し目と舌舐めずりをされて愚息が反応し、慌てて屈む。
 動けないのをいいことに初枝さんが寄り添ってきて、耳元で囁いた。

「今からもう一度、その夢を確かめましょうか…?」
「…遠慮しておきます」
「んもう、つれないお方」

 彼女から溢れるいい匂いと舐めるような甘い囁き声が性感をくすぐるも、何とか理性で躱した。
 もう少し何かされると思ったがそんなことはなく、ゆったりと体を寄せ合ってお互いの体温を
 感じるように触れ合う。
 一人暮らしが長かったのでこんなことも久しぶりだが、意外と不快でなくむしろ心地いいほどで。
 嵐が止み、霧で霞んでいるような雨を窓から眺めながら、静かに時間が過ぎていった。

 …
 ………
 ………………

「本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。またよろしくお願いします」

 服が乾いたので帰り支度をし、店先でお礼を述べる。
 またよろしくとは、色々と含みがある言葉だ…昨日の夜にお願いされたことを思い出し、
 念のため聞いてみる。

「えっと、よろしくとは…その、するということで?」
「はい、そうです。…こう言ってはなんですが、通い妻ならぬ通い夫、というか通い男?でしょうか。
 ご近所の方に若い燕を囲っているなんて噂されそうですね。うふふ」
「そういうのはちょっと…」
「悪い冗談でしたね。でも夫になって欲しいのは本心ですから…」

 散々中に出したので、責任をとるという意味でもそうする覚悟はあるが、心の方がまだ
 追いついていない。

「なる、というのを受け入れることは出来ますが、何分急過ぎて心の準備が…あと必要であれば
 物理的な準備もしたいです」
「本当ですかっ?!」

 すっと詰め寄られて抱きつかれた。彼女は自分と同じぐらいの身長だから、結構大きく感じる。
 って、胸が、胸が!

「初枝さん、当たって、当たってますって!」
「あら私としたことが…浮かれてしまいました」

 胸は離れはしたが、寄り添われながら嬉しそうな笑顔で、じっと見つめられた。
 こういうのは何ともむず痒い。

「これからよろしくお願いしますね、明人さん」
「あ、はい…こちらこそよろしくお願いします」
「最後に…」
「…?っ!」

 するりと顔が近付き、ちゅっとした軽い口付け。ふわりと漂ういい匂いに思考が止まり、
 なされるがままになる。

「ん…ではお気をつけて。いってらっしゃいませ」
「は、はい。いってきます」

 言葉に動かされて歩き出す。角を曲がるとき気になって見返すと、気付いた初枝さんが手を
 振っていて。
 気恥ずかしさを誤魔化すように、ぽりぽりと頬を掻き手を振って、駅へと向かった。
16/06/24 20:45更新 / 漢電池
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