読切小説
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里帰り、遡り。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…

1日に1本あるかどうかの電車が俺を故郷に連れて行く。
その電車のなかは俺以外誰も居ない。
「…もう二度と見ねぇ景色だと思ってたのにな…」
俺の弟、黒羽 轟のためにここに来るとは…。お前が逆にこっちに来いよ。

そんな愚痴を心の中でしていたら、あっという間に目的の駅についていた。
そこでは轟が待ってましたと言わんばかりに跳びかかってきた。

ーーーーー

何年ぶりだろうか、海斗兄ちゃんに会えたのは。
嬉しすぎていつもの僕では居られなくなってた。
「お帰り!海斗兄ちゃん!」
「おぉ、おぉ。ただいま。」
思わず跳びかかってしまったものの、海斗兄ちゃんはしっかり受け止めてくれた。
僕が最後に見た姿よりも、一回り二回りでかく、まるで熊みたいだ。
「相変わらずちっちぇなw」
「兄ちゃんがでかすぎるだけで、僕が平均だよ。」
「口だけは一人前風か。」
「風はいらない。ちゃんとした一人前。」
口喧嘩しながら帰る道は、いつも以上に楽しかった。

*

「ただいまー!」
「ただいま。」
何もかもが懐かしい。空気、町並み、自宅。
何一つ変わってねぇな。まぁ、変わってたら寂しく思えるが。

ーーーーー

「それで、話がしたいって言ってたけど。」
「お前もだろうが。」
「はは…兄ちゃんからどうぞ。」
「あぁ…。」
何を話すのだろうか…もしかしてもしかすると、僕が襲われた(?)って言う話をもう知ってるとか…。
「…話って言うのは、親の事でな。」
「お父さん、お母さんの話?」
「…そうだ。」
実は僕の家にはお父さん、お母さんはもう居ません。
お父さんは会社からリストラされ、お酒に飲まれた結果、飲酒運転の交通事故で死亡。
お母さんは僕達を頑張って育ててくれたけど、ストレスと過労により死亡。
僕達はお母さんの死亡保険金と、国からの補償金で生活できてきた。
「俺は一旗上げるために、ここを出たができなかった…。」
言い終えた瞬間、兄は土下座をした。
「え…。」
「俺は愛情は金では買えないと知っていた!知っていたのにお前に愛情を渡さず自身の事しか考えられなかった…そんな俺をどうか、どうか許してくれ!」
僕が初めて見た海斗兄ちゃんの姿。
土下座をし、涙を流す海斗兄ちゃん。
その姿を見て、一瞬どうすれば良いのかが分からなかった。
「顔を上げてよ、海斗兄ちゃん。」
「だが、お前は…」
「確かに僕は一人で辛かった。だけど僕に何か一つ加わると、幸せになれたよ。」
「…格好良い事言いやがって…。まぁ、今日は俺も格好良い事しねぇとな。」
そう呟いてポケットからサイフを取り出した。
「夕飯…まだだよな…。」
「そのお金って、カツアゲしたお金じゃないよね。」
「失敬だろうが!この金は俺が汗水鼻水垂らして稼いだ金だ!」
「鼻水は垂らさなくても良いだろ…。」
兄ちゃんの軽いボケにツッコミながら玄関に向かおうとしたその時、
バンッ!!
「「うわっ!」」
勢い良く開けられた玄関の先に居たのは、
「「話は聞かせてもらった!」」
「私たちも♪」
「お供させてもらうぜ!」
「ってリリーかよ。」
「サ、ササラギさんも…」
堂々と立っている二人に圧倒される僕達。
「まさかお前ら孤児だったとはな。」
「私も気が付かなかったよ。」
しかも、しっかり話は聞かれてた。

ーーーーー

「で、それがどうしたんだよ。」
全員が轟の家のテーブルに着く。
「ん〜と、私達で話し合ったんだけどね、家族にならないかな〜って。」
「なんで家族なんかに。血は一滴も繋がっていねぇはずだ。しかも俺等は二人も補える程の金もない。」
リリーの一言に反論したが、
「家族にならないといけない理由がいると思うんだけどな〜♪」(ジー
「お金なら大丈夫だ、逆に補える程ある。安心しろ、な?」(ジー
リリーの視線が当たってるが、案の定弟も同じ事をされてた。
「そうだ、自己紹介がまだだったな。私の名はササラギだ、宜しく。」
ササラギが右手を出してきたので握り返して、
「俺の名は黒羽 海斗だ。こちらこそよろしく。」
「私の名前はリリーだよ♪」
「あ、あの僕は黒羽 轟です。よろしくお願いします。」
「さて、腹も減ってきたし食べに行くか。海斗のおごりで。」
「よっ!海斗くん、太っ腹!」
「何でお前等もついてくんだよ。」
「晩ごはんは家族み〜んなで食べに行かないとね〜♪」
「それが狙いかよ。」
「それとも今すぐ君達を食「さぁ、行こうぜ!」
はぁ、これはサイフが一気に軽くなるな。
「あ。ひとつ言い忘れてたけど、明日に海斗くんの荷物ここに届くから♪」
「はぁあああああ!?」
無断引っ越しもついてきた…まぁ、みんな一緒に居られるから良いか。
しばらくは騒がしくなりそうだな。
こんな最高でうるさい程騒がしい毎日が続きます様に。
18/10/29 22:48更新 / 砂鉄

■作者メッセージ
どうも砂鉄です。
黒羽シリーズ、ついに終わってしまいました。
「続けて欲しい」等の感想が送られたら、ネタが思い付きしだいまた書かせてもらいます。
黒羽兄弟を書いてみました。
まぁなんて酷い絵w
リリーやササラギは…ダメでしたw

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