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慈愛の天使の物語
わたしは神様の使いで地上に降りたエンジェル。

使命は…人間を堕落させる魔物、悪しき存在に対し神の名のもとに罰を与える事。

そのために教団の勇者とともに魔物達と戦っている。憎き魔物達を滅ぼすために…

わたしのレシェルお姉ちゃんを殺した魔物達を…


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「起きて下さいアフェル様。まだ夕方ですよ」
「……ッハ!」
…どうやら温かい午後の日差しを浴びていたら寝てしまっていたらしい。
ずいぶんとまぁ懐かしい夢を見ていた。そういえば地上に来たときは使命というより復讐心に燃えていたなぁ…これは天使としてどうだったんだろうか?
と、懐かしがる前に…今わたしを起こした男に言っておきたい事が…

「レイル、起こしてくれたのは感謝しますけど、口調が昔に戻ってます…」
「ん?ああすまん。寝顔の可愛らしさについ、な。それに昔っていってもまだ5カ月ぐらいだろ?」
「まあわからなくは無いですけど…様呼ばわりされると距離を感じます。寂しいです」
「そう言うアフェルだって俺に敬語じゃねえか」
「わたしは生まれつきこの口調です。今更直せと言われても無理です」
「…そーかい。まあいいわ」

この男―レイル―とわたしは今一緒に住んでいる恋人、いいえ、もう夫婦同然です。式をまだ挙げていないだけです。
もう私の中にはレイルとの子もいますし。

「ところで、可愛らしい顔をしつつもすごく苦しそうな顔もしてたが、何か嫌な夢でも見てたか?」
「そうですね…わたしが地上に降りてからこの親魔物領の街で生活を始めるまでの夢ですからね…」


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わたしはこの『ケトニフ』という村の教会にやってきました。どうやらここに勇者がいるようです。
わたしはその勇者とともに魔物を討伐するのが使命だという事。
と、剣をもったそれらしき男がいましたね。きちんと神に御祈りをしています。

「あなたがこの教団の勇者ですか?」
「あっ天使さま!そうです。私がこのケトニフの教団に所属している勇者です。名をレイルと申します」
「そうですか。レイルさん、わたしはアフェルといいます。これからよろしくお願いします」
「はい!こちらこそお願いします」
「早速ですが、どこかで休ませてもらえませんか?地上に降りたとき思ったより疲れてしまったので少し休みたいのですが…」
「それでしたらこちらへどうぞ。天使アフェル様のお部屋へ案内します」
これがレイルとの出会いだった。第一印象はさわやかな好青年だった。



「体力も戻ってきましたし、早速ですが魔物を討伐するための作戦会議を始めましょうか」
休息を取り元気になったわたしは、教会の司祭やレイルとともに憎き魔物を討伐するための作戦会議を行う事にしました。

「この近くにある親魔物領『モアニリド』を魔物達の手から解放する為にはどうしたらいいと思いますか?」
「あそこの村には大した魔物もおりませぬ。ですので一般兵でも大勢出動させれば問題なく解放できるのではと思います」
「そうですか。ではわたしとレイルの二人が先頭で強そうな魔物達を討伐、その後一般兵の皆さんで一気に攻めていく。そんな感じでよろしいですね?」
「はい、問題は無いかと」
「では早速明日の夜にでも攻めていきましょう。この単純な作戦ならばそう準備も時間がかからないでしょうし」
「少し早い気もしますが…まあ大丈夫でしょう。早速兵達にこの作戦を連絡しなければ…!」
そういってレイルと司祭は部屋を出ていった。



(これで…これでやっと魔物を滅ぼす事が出来る……お姉ちゃんの敵が討てる…!!)





わたしのお姉ちゃんは、3年前に地上に降りました。
各地の魔物を勇者と供に討伐して、その活躍は天界にいるわたしの耳にも届きました。
いつかはわたしもお姉ちゃんのようなエンジェルになって、そして一緒に戦うんだと、その時は夢見ていました。
しかし、お姉ちゃんが地上に降りて大体1年半が過ぎたころ、わたしの耳に信じられない噂が聞こえてきました。
それは…とある魔物の集落の討伐に失敗し、お姉ちゃんが魔物に殺されたというものでした。
こんな噂は嘘だと思いました。何かの間違いだと思いたかった。
けれども……それは本当の事でした。
その事件からお姉ちゃんは行方不明、魔力も感じなくなってしまったらしいのです。
魔力を感じないということは……もうこの世にお姉ちゃんはいないという事です。
それだけではありません。一緒に戦っていた勇者も帰ってきていないという事らしいのです。
もうここまでいけば誰でも殺された事がわかります。

わたしは絶望に襲われました。
もうあの優しかったお姉ちゃんに会えなくなったと思うと、涙が止まりませんでした。
それと同時に、魔物に対しての憎い、どす黒い感情が湧きあがりました。

(お姉ちゃんを殺した魔物、全ての魔物をわたしの手で殲滅する。)
(汝隣人を愛せ?魔物など隣人じゃないですよ?あれは消されて当然の存在です!)
(わたしのこの手で、お姉ちゃんの敵をとってみせます!!)

その思いを胸に、わたしは今日まで頑張ってきました。慣れない攻撃魔法もたくさん覚えました。
そして、明日はお姉ちゃんの敵討ちの第一歩を踏み出すのです。



「んふふふふふ…」
わたしは自然と笑みを浮かべていました。たぶん相当黒い笑顔をしていると思います。

「……アフェル様………」
その様子をレイルが見ていたとも知らずに…


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「いやあ、あの時は恐かったなあ…まさか天使様ともあろう者があんな黒い笑顔を浮かべるとは思っていなかったからなぁ…」
「ちょっと!それ以上言わないで下さい!恥ずかしくなります//」
夢の話…昔話をしていたら、急にレイルがそう言ってきました。
……だってあのときはわたししか居ないと思ってたんですもの。つい心の闇が表に出てしまったんですもの。

「でも、あそこまで怖ろしい事を考えてたとはこのときは微塵も思わなかったなぁ。敵討ちとはねぇ…」
「まぁ、あの時はわたしも変な感情に支配されて正しい判断が出来なかっただけですよ」
「だから……あのあとの討伐であそこまでやったと」
「ええ…本当にバカな事をしてしまいました……」

あの後わたしは、モアニリドで討伐という名の虐殺を行いました。
わたし達が襲撃してきた事によって、戦う者、逃げる者、隠れる者、命乞いをする者…
そのすべてを、人魔問わずわたしは攻撃し、その命を奪いました。
その時のわたしは、お姉ちゃんを殺した魔物達は皆殺してもかまわないと思っていたのです…
魔物は皆討伐されて当たり前の存在、一緒にいる人間も同罪…こんなバカげた考えに何も疑問を持たずに………

「本当に…わたしは……バカな…ひっ…事を……ひっく…」
「泣くなよアフェル。泣いたって俺達がやったことが無くなるわけではないんだ…」
「そう、ですけど…ひくっ……うぅ………」
「あ〜よしよし。落ち着けって」
「………ぐすっ…………」

レイルがそっと抱き寄せてくれました。そのおかげで、わたしは少し落ち着きを取り戻した。



「実はさ、あの時のアフェルを見ていたらさ、どっちが悪かわからなくなったんだよ」
「ああ…だからあの時あんな事を……まあ、あの言葉でわたしにも疑問が生じましたよ。確信まではいたらず、そのまま侵攻を始めてしまいましたが…」
「でもさ…次の侵攻のときに、あの人のおかげで間違いに完全に気づけたんだ。早く気付けて良かったじゃないか」
「えぇ……そうでなければ、未だにわたしはバカな事をし続けていた事でしょう…」
「ホントだな…あの人には感謝してもしきれないな…」


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「次はこの街にしましょう。大きい所は士気が上がっている今のうちに叩くべきです」
モアニリドでの討伐が思った以上に上手くいって調子づいたわたしは、その次の日にまた他の親魔物領の魔物を討伐するための会議を行っていました。

「成る程…今度は『ルヘキサ』ですか…」
「あそこかぁ…」
「?、どうしました?何か問題でも?」
一般兵達の士気が高い今のうちにこの近くの一番大きな街を攻めようとわたしが言ったところ、司祭もレイルもあまり良い反応をしませんでした。
それにわたしが疑問を持っていると…

「ああ、そのルヘキサって街はちょっと厄介でしでね…自警団を結成しているんですよ」
「…それだけですか?」
結束しているのは確かに厄介ですが…そこまで渋るほどの事では無いと考えました。結束しているのはこちらもですし。
しかし…その先の言葉を聞いて、渋っていた理由が分かりました。

「いえ、その自警団の団長が少し厄介なのでして…」
「何ですかレイルさん?はっきりと申して下さい」
「その…ルヘキサの自警団の団長は…ドラゴンなんですよ」
「なっ!!」
驚きました…まさかドラゴンがこんな街中に…しかも人間や他の魔物のリーダーをやっているとは微塵も思ってませんでしたから。

「確かにそれは厄介です…ですが、ここさえ討伐できればあとは簡単になるはずです」
「まぁ…たしかにそうですな…」
「では決まりです。今回は念入りに準備をするため4日後に実行しましょう」
「はい、では兵達に伝えておきます」
「あと…近くにある他の教団にも協力を要請しておいて下さい。相手はドラゴンですから戦力はなるべく多いほうが良いです」
「了解しました…では『アルデフィア』のほうに協力を要請しておきます」
そういって司祭は出ていきましたが…

「あの〜アフェル様?」
「何でしょうか?もう会議は終わったので帰ってもよろしいですよ?」
レイルが何か言いたそうに残っていました。

「いや、何かアフェル様が焦ってる感じがしまして…」
「焦ってる?わたしがですか?」
そんなつもりは無かったのですが…レイルにはそう映っていたらしい。

「ええ、この1週間のうちに2か所も攻めるわけですし…」
「それは、魔物達を一刻も早く討伐するためです」
「そうですか……それなのですが……」
「何ですか?早く言ってください」

そして覚悟したのか、レイルは重々しく口を開き…

「本当に…魔物は討伐するべきものなのでしょうか……」
と言いだしました。



何をバカな事を言っているのですか!あたりまえです!
魔物は悪しき存在なのですよ!現にわたしの大切なお姉ちゃんも殺された!
なぜそんな疑問が生じるのですか!?もしかして魔物に何かされましたか!?
場合によってはレイル、あなたも神の名のもとに裁きますよ!!




とは言えなかったのです。

「えっ!?…うっ…」
実際は呻くことしかできませんでした。

「だって…だってですよ…!昨日我々がした事は本当に正しい事なのですか?」
「え、ええ…」
「大切なものを守るために闘う者、必死に命乞いする者、それらを全て無視し、奪いあげる事が正しいのですか?」
「そ、それは…」
「こんな一方的な侵略まがいな事…仮にも神の名のもとに動く我々がしても良いのですか!?」
「……」

正しい…正しいはずなのに…わたしは何も言えなかった。
いつもならこんな事を言う人間には堕落した者として罰を与えるのですが…レイルには出来なかった。
いや、したくなかったのです。
わたしは出会って間もないのですが、レイルには並みならぬ好感を持ってました。
後でわかったのですが、わたしはレイルに一目惚れをしていたようです。
そのレイルがはっきりとした疑問を私に投げかけて来たのです。真剣な表情をしながらわたしに答えを求めているのです。
その真剣さに、わたしは初めて間違っているとはっきり言えない気持ちが生じました。魔物を全て滅ぼす事に疑問が出てきました。
そのため、レイルのこの言葉を、否定することはできませんでした…







そして、ルヘキサ討伐の日。
わたしとレイルは答えが出せないままでした。
そんな気持ちのまま討伐に行っても上手く行くわけがありません。
相手はドラゴンです。しかもこちらの想像以上の力を持っていました。
それに、ルヘキサの自警団の結束は完璧であり人数では勝っていたにもかかわらずこちらは壊滅状態でした。
わたし達も、ある自警団の一人のダークエンジェルに追い込まれていました…
それが…そのダークエンジェルこそが…わたし達の恩人になる人でした。



「くそっ!しくじった…!」
「レイル!!くっ!レイルを開放しなさい!!」
「やなこった!拘束を解いたら襲ってくるでしょ?さすがに2対1じゃあ部が悪いもん!」
ダークエンジェルが放った拘束魔法をレイルがまともに受けてしまいました。
やはり攻撃する事をためらっていたのでしょう…あっという間に拘束されてしまいました。
さすがにレイルを人質にされてはうかつに攻撃も出来ず、わたしはただダークエンジェルをにらみつけるだけでした。

「この子を開放してほしかったら今すぐ撤退命令をだしてね。何も知らないエンジェルちゃん♪」
「な…!何も知らないってどういう事ですか!?」
そう言われて…わたしはついこのダークエンジェルの言葉を聞いてしまった。

「だって、魔物は人を滅ぼすものとか言われて、馬鹿正直に信じてるんでしょ?」
「………違うとでも言いたいのですか?」
「ええ…魔物はむやみに人を殺さないわ。私達魔物が生きていくのに人間の性は欠かせない存在なのに、その人間を殺すなんて考えると?」
「では……なぜ今こうして戦っているのですか?」
わたしがこう聞くと、そのダークエンジェルは目をキッと鋭くして答えてくれた。

「何でって…大切なものを守るためよ!あなたたちの一方的な暴力から、愛する者を守るために戦うのよ!」

それを聞いたわたしは…

「大切なものを守るため…?よく言いますね」
「…は?」
「あなた達魔物は…わたしの大切な人を奪っておいて…よくそんな事が言えますね!」
「えっ!?大切な人って……この子の事じゃないの?」
「違います…確かにレイルも大切で大好きな愛する存在ですが…そうではありません」
「………えっ?ちょっとアフェル様?いまなんと…」
「あなた達…魔物が…!わたしの、大切なお姉ちゃんを殺しました!」
「っ……!」
「人の大切な存在を奪っておいて!何が大切なものを守るために戦うですか!!ふざけないでください!!!」

怒りにまかせて叫んでいた。


「……あのさぁ、お姉さん、本当に殺されたの?」
「はあっ?」
しばらく静寂が続いたと思ったら、急にダークエンジェルが訳の分からない事を言ってきました。

「いや、お姉さんが殺されたところ、あんたは自分の目で見たの?」
「いえ…ですが、殺された事には変わりありません」
本当に…何を急に…

「見てもないのに、何で殺されたってわかるの?」
「お姉ちゃんの魔力が…討伐に失敗した時期から感じられなくなりました。一緒にいたはずの勇者も行方不明。そのまま今も帰

ってきません。これを殺されたと言わず何と言うのですか?」
しつこいです。そんなに自分達を正当化でもしたいのでしょうか?

「いや……でもさ……」
「うるさいです。お姉ちゃんを殺した魔物が何を言ったって許す気はありません」
やはり…魔物は滅ぼすべき存在ですね…と思い始めたときでした…


「…じゃあさ、あんたが私達を攻撃するのはお姉さんを殺された復讐心からであって、神の言葉では無いの?」
「………全否定は出来ません」
確かに…今のわたしの行動は神の言葉よりも、わたしが敵をとりたいから行動しているところが大きいです。

「ふーん……あんた、かわいそうだね」
「………何がですか?」
わたしが……かわいそう?なにをいきなり…

「あんたは……復讐って言ってるけど、お姉さんを殺したのは魔物全員なの?」
「それは……」
「違うでしょ?それにさ…」
それに…?

「あんたが殺した者の中に、あんたと同じ境遇の子が居ないと思う?」
「えっ?」
それはどういう…!?

「あんた達がやったんでしょ?モアニリドの壊滅。この街にね、あそこに住んでた魔物の妹がいるのよ」
「っ!?」
「お姉さんが殺されたと聞いてとても悲しんでたわ。魔物だって人と変わらないのよ。家族が殺されたら悲しいし苦しいわ」
「ぁっ…ぅ…」
「あんたは、自分が受けた悲しみや苦しみを他の人にも与えているだけ。これは復讐なんかじゃない、一方的な暴力。」
「ぅ…ぁぁぁ…」
「ただ見当違いな暴力をところかまわずふるっているだけ…その事に気付かない…だからかわいそう…」
「ぁぁぁぁ…」
そんな…わたしは…ただ……お姉ちゃんの敵を………!

「それと…そんなことをしているあんたを見て、お姉さんが喜ぶとでも!?」
「ぁぁぁああ」
「お姉さんが敵をとってほしいって言ったの?そもそもあんたがやっている事は敵討ちでもなんでもないのよ!」
「ぁぁぁぁああ!」
「お姉さんの気持ちも一切考えずにバカな事をするあんたは、ただかわいそうなやつだよ!」
「ぁぁぁあああああ!!」

わたしがやっていたことはなに?
わたしはなにがしたかったの?
わたしはなぜこれが正しいとおもったの?
わたしは取り返しのつかない事をしたの?
わたしはお姉ちゃんがかなしむようなことをしたの?
わたしは間違っていたの?
わたしは…………わたしは…………!!

「ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」





ブチッ!!

「あら?」

がしっ!
「落ち着け!落ち着くんだアフェル!!」
「ああああああ……あ……ぁぁ……」
「落ち着け!パニックになるな!」
「ぁ…レイ…ル?」
拘束されていたはずのレイルが、わたしを力強く抱きしめてました。

「ありゃ、まさかこの拘束を自力で解いちゃうとは…驚きね」
驚いているダークエンジェルをよそに、レイルは私に語りかけてきた。

「いいかアフェル、確かにお前は間違った事をした。
 これはどうあがいても変わることのない事実だ。
 だけど、やっている事が間違っている事に気づけたんだ!
 お姉さんの復讐心で動いてたのはびっくりしたけど、それを間違いだと気づけたんだ!
 気づけたんなら、アフェルはやり直せるんだ!!
 アフェルだけじゃない、俺だって同じような事をしていたんだ。
 だから、お前一人で抱え込むな!
 俺ら二人で一緒に償っていけばいいんだよ!!」
「レイル……レイル…!!」
こうしてわたしは、自分の愚かさを知ったのです…どす黒い感情は、わたしから消えていったのです。
そして、そんなわたしにも心のよりどころがあることも知りました…

「ふふっ…」
わたしから黒い感情を無くすきっかけを作ってくれたダークエンジェルさんは、優しく微笑んでいました。





「これから…どうしましょう…」
「そうだな…」
いつの間にか教団は壊滅していました。教団側に被害はないそうです。みなさんそこいらにいる独身の魔物達にお持ち帰り(?)されたそうです。
わたし達は教会に帰る気はありませんでした。もうわたし達は魔物を討伐する事なんかできません。

「だったらルヘキサに来ない?」
「えっ!?」
すっかり居る事を忘れてましたが、さっきのダークエンジェルさんがわたし達に提案してきました。

「そんな…いいのか?」
「いーのいーの。もうあんたたちに危険性は無いと思うし。不満なら私達自警団の監視下で生活してる捕虜って事でも良いよ」
本当に…いいんでしょうか?

「だって、彼氏君は私の魔法を破るほどの力があるから自警団に入ってもらいたいし、アフェルだってすごい治癒魔法が使える

から街の治療院に勤めてもらいたいしね♪」
「か、彼氏君って…!?」
「えっ?違うの?さっきお互いに告白みたいなことしてたじゃん!『レイルは大切で大好きな愛する存在』とか『俺ら二人で一緒に償っていけばいい』とかさ!」
「あっ!」
「あっ!」
…そう言えば流れでそんなことを………


「ははっ♪二人とも顔真っ赤よ♪自覚なかったのかしら♪」
ああ//……わたしはレイルの事を好きだったのですね…では…

「レ、レイル…」
「はい!何でしょうか!!」
「改めて言いますが…初めて会ったときから大好きです!これからもわたしと供にいて下さい!!」
「…では俺からも。アフェル様…いや、アフェル!初めて見たときから好きでした!俺と結婚して下さい!」
「はい!」
「よろこんで!」
わたし達は…こうして結ばれました…










…そういえば。

「おめでと〜お二人さん!末永く愛し合ってね〜!」
「…こんな事を言うのもなんだが…ダークエンジェルに祝福されるのは…複雑というか…」
「あら、私は元エンジェルよ。それに名前だって祝福から採られているしね!」
「名前?祝福?」
「ええそうよ。私はレシェル。『blessing』と『angel』から名づけられたのよ」
「レシェル?あれ?」
どっかで聞いたことがあるような…それよりも…

「というか何で私の名前を…はレイルが言ってましたね。だけどどうしてわたしが治癒魔法が得意だと知っているのですか?」
「そういえば…得意なのか?俺は見た事無いんだが…」
地上に降りてからはまだ一度たりとも治癒魔法は使ってないのに…

「えっ?そもそもあんたの名前が『affection』と『angel』、つまり慈愛から採られているからって、皆に優しくできるようにって一生懸命治癒魔法や愛情について学ぶんだって言ってたじゃん」
「なんでそのことをしっているのですか!?」
「何でって…自分でそう私に言ってたでしょ。私としてはあんたが高度な攻撃魔法を使えるようになっている事に驚きよ!」
「えっ?えっ!?」
「……ああ、もしかして、まだ気づいてない?」
気づく?何が?私の過去を知っていて………名前の由来も知っていて………
そういえばこの顔どこかで見た事あるような…とても懐かしい顔……
それに……レシェル…………!?

「ま、まさか!?えっ!?うそ!?そんな!?」
「やっと気づいた?……まったく、最初に気付きなさいよ」
「えっ!?でも、死んだはずじゃあ…魔力の感じも違うし……」
「自分の間違いに気づかされて、そのまま旦那と堕ちただけよ。だから魔力の質も変わったのよ」
ってことは…やっぱり……!!

「お、お姉ちゃん?」
「ええっ!!」
「そうよ…ひさしぶりね!わたしのかわいい妹、アフェル!」
そんな…お姉ちゃんは…生きて…!!

「お姉ちゃん…おねーちゃーん〜わあぁぁん!!」
「よしよし、泣かないの。ごめんね、会いに行けなくて。変に復讐とか考えさせるようにしちゃって…」
「わあああぁぁぁぁん!」
お姉ちゃんが生きていた!わたしのところに、姿は変わったけど帰ってきてくれた!

そして、わたしの間違いをただしてくれた…!


====================


「はぁ〜い♪感謝してもしきれないあの人参上!」
「お姉ちゃん!?」
「レシェルさん!?いつからいたんですか!?」
いつの間にかお姉ちゃんが窓の外からわたし達を覗き見ていました。

「いつからって…『アフェルの奴可愛い顔しながら寝てるな…そうだ!出会ったころのように畏まった感じで起こしたらどんな

反応するか実験してみよう!』ってレイルくんが帰宅した後に寝てるアフェルを見て言った辺りからかな」
「えっ!?そんなところからですか!?それじゃあ本部からずっと後をつけてましたね!?」
「…ああ、だからあんな起こし方をしたのですか……」
パニックになったわたしを落ち着かせたあたりから一切畏まった言い方をしてないレイルが「つい敬語で…」なんて起こるはずが無いはずですからね。

「あ、そうそう…アフェル、旦那から伝言。『明日は街の健康診断をやるからいつもより1時間早く来てねって言ったけど、アフェルちゃんは妊婦さんだからいつも通りで良いよ』ってさ」
「わかりました。院長にありがとうございますと伝えておいて下さい」
わたしは今街で一番の治療院で働いています。ちなみに院長はお姉ちゃんの旦那さんです。
勘が良い人はわかると思いますが、かつてお姉ちゃんと一緒に教団で戦い、そして一緒に教団を裏切った元勇者さんです。
どうやら治癒魔法だけでなく医学の知識も豊富だったようで、この街一番の治療院を開いたとか。

そうそう、レイルも今は自警団をやっています。お姉ちゃん曰く
「やっぱ元勇者なだけあって頼りにはなるけど、結構ドジなんだよな〜。この前も些細なミスして危ない目に会ってたし」
とのことです。もう少しきちんとしてほしいです。

「それにしても…妊娠までしてるのにまだあんた堕ちないのね〜」
「…お姉ちゃん達と違ってわたし達はまだ獣のように互いを求めません!」
「『まだ』ねぇ…」
「っ!別にいいじゃないですか!」
「まあいいわ。あなた達このままでも幸せそうだし、無理やり妹を堕とすのもなんか嫌だしね」

ええ、わたしはまだ白いエンジェルですよ。堕ちてると思いましたか?
どちらかと言うとどす黒い感情が無くなって純白になったほうですよ。
……まぁいつかは堕ちるのでしょうけどね。最近レイルと物理的に繋がって無いとどうも不安になってきますし。
まあ堕ちても別にいいですけどね。お姉ちゃんを見てたら、多少思考がエロティックになるだけで他は変わらないようですし。

「じゃ、わたしは愛しの旦那のところに戻ってしっぽりヤるから、後は二人仲良くね♪」
「お姉ちゃん、明日は健康診断で忙しくなるのでほどほどにしてあげてくださいね」
「レシェルさん、また明日!」






わたしは、いまやっと自分の名前に恥じない事が出来るようになってきました。
過去の恥じた行為は決して消えないけれど、その罪から逃げずに生きていくと誓おう。
今のわたしには、愛する人、愛してくれる人がいるから大丈夫。
もう二度と間違いを起こさぬように、見てくれている人がいるから大丈夫。


そして、これから紡いでいこう。
慈愛の天使の名に恥じない、わたしの物語を…
11/12/30 10:39更新 / マイクロミー

■作者メッセージ
今回は少し重めのSSに挑戦してみましたが…そんなに重くなかったかな?
暴力的なところを書こうとするとキーボードが押せなくなってしまったのでそういうところを削ったら、展開がまた早くなってしまった様な気がします。
それと、半端に存在だけだして、結果空気になってしまったドラゴンさんごめんなさい。

誤字、脱字、ここ変だぞ?というところなどがありましたら教えてください。

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