読切小説
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夏だし怖い話でもしようぜ
最愛の妻が死んだ。
病気だった。

妻とは大学で知り合った。
なんとなくとった講義で、たまたま隣の席に座ったのが最初の出会いだった。
お互いに趣味が合い、一緒に飲むようになり、そのうち交際が始まった。

就職先が決まり、社会人になってしばらくしてからプロポーズをした。
その日の夕食は鍋で、酒を注ごうとコップを取り出しながら「そろそろ結婚しようぜ」と言ったのだ。
もっとロマンチックなのが良かったと後々何度も愚痴を言われることになるのだが、やっちまったもんは仕方ない。

やがて娘が産まれた。
結婚した時とは別の幸福感があった。
その一方で、不安でもあった。俺自身、社会人にはなっても大人になった自覚はなかったからだ。何というか、子供の頃に見た大人はもっと大人らしかったような気がしてならなかったのだ。

娘はすくすくと成長していった。
てきとうな性格の妻が真っ当に母親をしている所に驚きを隠せなかった。本人に言ったら殴られた。
喧嘩は滅多にしなかった。たまに喧嘩に発展しても、罵倒は英語縛りという謎ルールのせいで長く続かなかった。絶対にどちらかが途中で吹きだして当日中には解決した。

そんな中、妻が死んだ。
どうすることもできなかった。
まだ一緒にしたいことがたくさんあった。
いくらでもあった。

妻は未来に想いを馳せていた。
娘がランドセルを背負って学校へ行くところが見たいと言っていた。
そのうち彼氏を連れてきたりするのかなと言っていた。俺は許さんぞ。
成人式には泣いちゃうかもと言っていた。
娘の結婚相手も素敵な人だと良いなと言っていた。
いつか孫を抱いてみたいと言っていた。
一緒に歳を重ねていこうと言っていた。

それはもう叶わない。




最大の不安は幼い我が子だった。
死というものが理解できていないのだろう。
母が死んだというのに娘は落ち込む様子を見せない。
ブロックで組み立てた作品を俺に見せては

「ママはどう思うかな?」

と聞いてくる。
だから俺はしっかりと娘と話し合いをすることにしたんだ。

「夏樹、ママは死んでしまったんだよ」

「死ぬって何?」

「ママはもう遠くへ行ってしまったんだ。二度と会えないんだ」

「も〜、パパまた嘘ついてる。ママが私たちを置いていくわけないでしょ」

「本当なんだ。世の中にはどうしようもない事もあるんだ」

「そんなわけない!」

「難しいとは思うけど理解してくれないか?」

「信じられるわけないよ、それじゃあ――」


















「――パパの背中にぶら下がっているのは誰?」


















そのとき、俺の背後から声が聞こえた。






































「再婚は許さんぞ」
18/07/24 01:48更新 / 幼馴染が負け属性とか言った奴出てこいよ!ブッ○してやる!

■作者メッセージ
十数年後……

「さて、お母さんは未練があったからゴーストになったわけですよ」

「お父さんと共に過ごしたいって望みだよね?」

「それだけじゃないよ。母として娘の成長を見届けたいって想いもあったわ」

「お母さん……!」

「娘の結婚式とか、孫を抱きたいとか」

「あ、ちょっと、図書館に用事が――」

「今日は休館日でしょ。だいたいアンタは昔から――」

「ひぇぇ……」

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