連載小説
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ワケあり勇者の冒険
「あ、おにぃ〜ちゃん。こんなところでどぉ〜したのぉ?
ふぅ〜ん。お仕ごとなんだぁ。たいへんだね。え?今は休けい中?
あは、じゃぁ〜あたしとあそんでよ。ね?いいでしょ?
え〜。ヤだ、あそんでよぉ〜。むぅ〜…いじわる…。
ふん。いいもん!ひとりであそぶもん!
へぇ〜ん!おにいちゃんなんか大っきらい!
ひゃん!! あうぅ〜…いたたた。
な、なによ。あたしとあそんでくれないんじゃなかったの?
え?けが? あ、だいじょうぶだよ、こんなのすりむいただけだもん。
あ、ありがと……。
……おにいちゃん、やさしいんだね。
そんなことないよ。おにいちゃん、まるでおとうさんみたいで…かっこいいよ。
うん。あたしのおとうさんもね、おにいちゃんみたいに大きくて、そしてとっても強かったんだよ。それでね…とってもやさしかった。
…でも、“せんそう”っていう所に行ったまま、帰ってこなくなっちゃった…。
……大すきだったのに…うぅ…。
な、泣いてないよ? …だって、もう泣かないって決めたから……。
あ……。 ありがと…。おにいちゃんのむね、大きいね、あったかいね…。
うん。もうだいじょうぶ。
あは。かっこわるいとこ見られちゃったね。
でも今はだいじょうぶだよ。だって、今は“こじいん”っていう大きなおうちでかぞくがいっぱいいるの。だからもう、さみしくないよ。
でもね、たまに大きなおにいちゃんたちがいじわるするの…。
おとうさんがしんだって…。
うそだよね?あたしのおとうさん。“せんそう”っていうところでまだ生きてるもんね?
きっと、あたしのこと忘れちゃうくらい楽しいところなんだよね。
だから、帰ってこないんだよね…。
…………。
………………。
ごめんなさい。あたし、うそついた。
ほんとは、あたし知ってるの。
“せんそう”ってにんげんとにんげんがころしあう所なんでしょ?
“こじいん”の先生に字をおしえてもらって、本でよんだの…。
……おとうさん、もう帰ってこないんだよね…。
ありがと。でも、おにいちゃんにはお仕ごとがあるもん。
えへ、だいじょうぶだよ。
あたしはもう泣かないもん!
あたしは強い子だもん!
うん。だから平気だよ。
………でもね、分からないことがあるんだ…。
どうしてにんげんって、せんそうなんかするのかな?
どうしてころしあいなんてするのかな?
わかんないよ…。
……ありがと。もうちょっと、ギュっとしてて…。
うふ。もうだいじょうぶだよ。ごめんね、ありがと。
…こうやって、あたしとおにいちゃんみたいにみんながギュってできれば誰も死ななくてすむのにね。
皆がこうやって仲良くなれば殺し合いなんて…。
馬鹿だよね、人間って。
えへ。でも、お兄ちゃんはそんなことしないもんね。
だから、大好きだよ。
え?兵隊さん?
お兄ちゃんのお仕事?
どんなお仕事なの?
え………うそ…。
だってお兄ちゃん、こんなに優しいじゃない!
え?お兄ちゃんも戦争に?……。
そっか、お兄ちゃんも人殺しなんだね。
そうやってお父さんを殺したんだね。
なんで!?なんでよっ!
なんでお父さんを殺したのよ!
謝らないで!!!
謝っても…お父さんは帰ってこないよ…。
そんなことより…お父さんを返してよ!!
あたしの優しかったお父さんを返してよ!!
………ごめんなさい。本当にもう謝らないで…。
分かってる。お兄ちゃんは悪くない。
お父さんを殺したのも別の人だってわかってる…。
でも…許せないの…。
お父さんを奪って、あたしを一人にした軍人が…。人間が…。
だから謝らないでって言ってるでしょ!
お兄ちゃんがどう謝ってもあたしは絶対に許せない!
だってあんたらは皆人殺しだもん!
最低の屑だもん!
…………。
でもね、一つだけ許される方法があるよ。
人をね、殺す代わりに愛せばいいんだよ。
あたしみたいな子供を、愛せばいいんだよ。
そうすればきっと私たちの神様がお兄ちゃんを許してくれるよ。
大丈夫。お兄ちゃんならできるよ。
だって、こんなに優しいんだもん…。
大好きよ。お兄ちゃん。
だからね、お兄ちゃん。
私の事、愛してくれるなら、私の使い魔になって。
そうすれば、皆許してくれるわ。
人殺しで残忍なお兄ちゃんの事、皆が愛してくれる。
そこでお兄ちゃんは私たちみんなから愛されることが出来るんだよ。
皆から許されることが出来るんだよ。
うん。そうだよ。だからね、もう泣かないで。
ほら、私の手を握って。離さないでね。
大丈夫。怖くないよ。
今からお兄ちゃんを楽園に連れて行ってあげるから。
バフォメット様や私たち魔女がたくさんいる楽園。
そこでお兄ちゃんは私たちを愛すればいいの。
そうよ。いい子ね。
じゃ、また向こうで逢いましょうね。
いってらっしゃい。   “お兄ちゃん”…。
くすくす…くすくす…」


「ふん。ちょろいな…」
「『ふん。ちょろいな…』じゃねぇよ!」

――ガツン!

「いってぇなぁ!何しやがる!この悪人面!!」
「おい、てめぇ、キャラ作んの忘れてんぞ」
「あ、いっけなぁ〜い。あたしったら、おにぃちゃんにむかって…。てへっ☆、ごめんね」
「『てへっ☆』じゃねぇよ!てめぇ、妖しい事はすんなっつってんだろ!今月入って何人目だよ!」
「う〜ん。12人目かな?どぉ?あたしすごいでしょ?」
「すごくぁねぇよ!いいかげんにしろよ!てめぇ、何人洗脳して拉致ってんだよ!おかげで俺まで教会から指名手配されちまったじゃねぇか!」
「えぇ〜別にいいじゃなぁ~い。あたしもお仕事なんだよぉ~?それにぃ〜、“てめぇ”が言うから洗脳薬はもう使ってないじゃなぁ~い」
「結局洗脳してたら同じじゃねぇ、かっ!」

――ゴツン!

「いってぇ!!てめぇ、いい加減にしろよ!オレ様の頭はてめぇのタンバリンじゃねぇんだよ!世界の屑でアホで使い道のねぇロリコン共をたぶらかしてオレ様の奴隷にするためにあんだよ!ったく、オレ様の周りの奴はどいつもこいつも馬鹿ばかりか?バフォのババアのやろうまで『きさま、愛のない洗脳はやめるのじゃ』なんてぬかしやがる…。どの道オレ様の奴隷になるんだから愛なんていらねぇっつうの。ぺっ」
「おい、キャラ作り忘れてんぞ?」
「あ、いっけなぁ〜い☆」

俺は盛大にため息をついた。
こいつは俺のパーティーの魔女でルル(本名ルーシア・ルイス・デ・アルパティノ・ロア・サンフランシスカ・デル・イ・クランケ・ヴォルディノフ)だ。
大層な名前の通り実は大昔の貴族階級の娘で、「世界中の男を奴隷にする」目的のためバフォメットと契りを結び魔女になったイカれた女だ。
バフォメットの事をババアと呼んでいるようだが、俺ら人間からしてみればこいつも十二分にババアだ。
しかも性質の悪い事にこいつは魔術関連についてはそこらの魔女じゃ足元にも及ばないほどのエキスパートで、果ては魔薬の調合にまで手を出し洗脳薬や強制薬、中には飲ましても毒として検出されない暗殺用の毒薬や、永久発情化しちまう危ない薬と手に負えないものまで作りだしちまう始末…。
だが、数百年の間ダンジョンの奥で「忘れ去られた裏ボス」をしながら引きこもっていたせいか体力は壊滅的に低く、100メートル走も完走が困難なほどで、俺も偶然道に迷ってこいつの部屋にたどり着いた時は高レベル魔法の嵐に殺されるかと思ったが、4時間半の耐久口喧嘩の結果、こいつが酸欠を起こし、辛くも勝利を収めたのだ。
ダンジョンマスター(魔界の貴族が権利書を持っているらしい)の定めた規定で裏ボスは負けた場合それ相応の強力な武器を手渡さなければいけないのだが、こいつはその強力な武器を自分の研究用に分解して妖しげな装置等に改造してしまっていたために渡せる物がなくなってしまい、ダンジョンマスター(高位のサキュバス)に相談したところ、

「お前……童の財宝になんて事を……。腹、切れ」

となり、

「びえぇぇぇぇぇぇ。やだよぉ〜。しにたくないよぉ〜」
「じゃ、クビな。クビ。もう二度と童の前に現れるな」

とその場で裏ボスをクビになり、泣き憑かれ(誤字ではない)たので仕方なくパーティーに入る事になったのだ。
まぁ、性格に難はあるが流石は元裏ボスだけあって実力は化け物じみており、パーティの仲間としては俺もその実力を納得せざるを得ないわけで…。

「ねぇ〜ねぇ〜、指名手配犯。アレはいいの?」
「んあ?誰の所為で指名手配されたと…ん?」

ルーシアが俺の服の裾をつかみ、向こうの方を指差した。

「ぅ゛ぅ゛…あんの馬鹿乳エロフぅぅ…!!」

俺はその光景を見た瞬間奥歯を噛み砕く勢いの怒りを覚えた。


「…というわけで、あなたたちはどうしようもない屑なのです。
しかし安心してください。
私たちならあなた方を救う事が出来ます。
私たちの神、ビッグ・クロシオン様なら宇宙意思の御名の下、あなた方を救う事が出来るのです。
さぁ、私たちと共に…」
「…おい、貴様、何をしているぅ!?」
「おお、ちょうど良いところに!皆さま、このお方がビッグ・クロシオン教、通称クロス教の教祖様であられるゴーシュ様です。現人神であられるゴーシュ様はその御手で触れるだけで…」
「だぁ~れが教祖さまだぁぁ!!!」

――ガツン!

「ああ、教祖様、その御手で私を…。あぁ〜私は幸せですぅぅ!!」
「そのまま死にさらせぇ!!!」
「あははははは!いいぞ!もっとやれ!この世界に宗教は一つ!“オレ様の”サバトだけで十分だ!!ひゃははは!!」
「…おい。キャラ作り忘れてんぞ」
「お、しまった。てゅる〜ん☆ごめんねぇ〜おにぃちゃん♪」


そうして俺は人気のないところまで2人を引きずって行った。

「てめぇら…いい加減にしやがれ!!俺はてめぇ等の保護者じゃねぇンだよ!!何で俺が目を離すたびに次から次へと」
「………(期待の眼差し)」
「てめぇはへらへら笑ってんじゃねぇよ!脳まで乳で出来てんのか!?」

――ズゴン!

「ああ!!期待通りの容赦のない蹴り、ありがとうございます教祖様ぁぁぁ!!!」
「ふはははは!!手を貸すぞゴーシュ!死ね死ねぇぇ!!滅びろ!このいかがわしい巨乳め!死ね!死ね!」
「ああぁぁぁぁぁん!おねぇ様ぁぁぁん!もっと、もっとぉぉぉ!!!」
「ひはははは!いいのか!?そんなにその駄乳を踏みつけられるのがいいのか?ならばもっと踏んでやる!ひゃはははははは!!」
「あぁぁぁ〜んイクイクぅぅん!!イキまくりよぉぉぉ!!」
「うわぁ…引くわ…」

俺は怒る気力を無くし、頭を抱えて傍観することにした。
この変態の名はシア(本名シルキィ・アーモ・リアーネ)。
元は気高いエルフのアーチャーで、とあるクエストの依頼を受けて一時パーティを組んで旅をしていた時、旅の途中で妖しい宗教にハマり、宗教集団に攫われた(自分から総本山に飛び込んで行った)ところを俺とルーシアで助けに行ったら何故か俺は奴等に教祖として崇められ、すっかり宗教に染まっていた彼女にかつての気高さなど微塵もなく、ただの変態になり下がっていた。
そして俺は彼女から崇拝され、ルーシアも「お姉様」と慕われ、正式にパーティの一員になってしまったのだ。
元から腕のいいアーチャーだったが、変態になり下がり、何故かその実力はソロでレオ狩りいけんじゃねぇの?レベルにレベルアップし、パーティでもルーシアを肩を並べるほどの戦闘力を有する。
しかし、普段はテンで使えない変態になってしまった。
その頃から急激な成長を遂げた胸はエルフというより最早エロフの域で、半ば襲われる形で彼女に奪われた俺の貞操を食らったせいで今ではエルフサキュバスになってしまい、胸だけでなく尻や腰回りも無駄に色っぽく進化してしまった。
どうやらルーシアはその体型にえらく嫉妬しているらしく何かと彼女にDVを加える。
そして彼女自身もそれを甘んじて受け入れている(というより喜んでいる)。


「うぅ…なんで、何で俺のパーティはこんな事に…」

俺の目から自然と涙が零れ落ちた…。

「お兄様。これで涙を拭いてくださいませ…」
「あ、ミューシャ…。お前だけだよ…まともな奴は…」

俺はミューシャに抱きついた。

「いいえ。私はお兄様のただ一人の家族ですもの…」

そう言ってミューシャは微笑む。
このパーティで俺の心を癒してくれる唯一の存在だ。
彼女の名前はミューシャ。
俺の妹で、薬師をしており、薬やアイテムなどを調合できる他、回復や補助の魔法を使えるパーティの支援役だ。
我が妹ながら出来たやつで薬師としての腕は超一流。
人間なので戦闘力では他の二人の足元にも及ばないが、回復や補助の魔法ではルーシアをも超える(というか、ルーシアが回復など初めからする気がない)。
俺が旅に出て、ルーシアを(しかたなく)パーティに加え、帰郷した時に俺の話を聞いて、
「お兄様一人をそんな危険な旅に出すわけにはいかないわ」
と俺が止めるのも聞かずパーティに加わった。
まぁ、後方援護なので俺も安心しているが…。


そんなこんなで、俺はワケありなパーティで旅をする事になった。
しかしながら、ルーシアやシルキィの所為で俺は指名手配され、その際教会から任じられていた勇者の権利すら剥奪され、しかし俺は自分の志のため冒険者として旅を続けているのだ。
ああ、この先どうなる事やら…。



ミューシャの冒険10/03/13 23:01
ルーシアの冒険10/03/14 02:45
???さんの冒険10/03/14 14:21
シルキィの冒険10/03/14 17:39
ワケあり勇者の冒険110/03/16 01:50
ステータス表示について10/03/20 03:37
ワケあり勇者の冒険210/03/19 00:41
ワケあり勇者の冒険310/03/19 21:27
設定集10/11/17 19:06
ワケあり勇者の冒険4−110/03/21 20:23
ワケあり勇者の冒険4−210/03/22 00:54
ミューシャの冒険210/03/22 16:10
フューリーの冒険10/03/24 01:52
ルーシアの冒険2-110/03/27 13:35
ルーシアの冒険2−210/03/26 00:55
ワケあり勇者の冒険の終わり(エイプリルフール)13/02/10 01:06
没案10/10/24 04:39
ルーシアの冒険2−終10/04/11 20:21
ワケあり勇者の冒険510/11/17 18:44

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