連載小説
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そのよん
魔界と化した今のレスカティエには、基本的に日の光がまともに射さない。
常に薄暗く、陽光の代わりに魔力の紅い光が都市を怪しく照らしている。
よくこんな状況で植物がすくすく育つものだ。
…とはいえ、育っているのは通常の植物などではなく
奇怪なオブジェじみた異形の木々や花々なのだが。
魔物達に言わせると「いや、これが普通だし」ということなのだが
俺はまだそこまではっきり言い切れない。
(言い切れないだけで、それほど見た目は悪くないと思ってるが
それはひとえに博愛主義からくるものなのだろう。うん)

何が言いたいかというと、嫁達に満場一致で却下された
ボンサイの代案としてなんとか許可されたガーデニングが
人間視点から見て完全にグロの範疇入りするレベルに到達しているのだ。
チューリップに水や肥料をやってたらイソギンチャクになったといえば
わかりやすいか。我ながら嫌な例えだ。


「キレイに咲いてるね〜〜」
黒い霧状のもやを吐き出している極彩色の花弁をつつきながら
ミミルが嫌がらせのようなコメントを呟いた。
その言葉に悪意や皮肉が全く感じられないのが、よけいに腹が立つ。
「なんというか、自分が魔物だということを
しみじみと実感してしまいますわね。以前のわたくしたちなら
これらの花々に激しく嫌悪していたでしょうから」
「魔物になると、姿だけやなくて美的感覚まで変わるとは思わへんかったわぁ」
フランツィスカ様と今宵が、お互いの話に耳を傾けて頷いていた。
「俺はまだ人間だから姿も変わりなしだけどな」

『いやいやいやいや』
ハーレムメンバー九人全員がハモった。

「アンタが一番えげつない変貌するじゃないの」
えげつないって言うな。
「プリメーラの言う通りよ。最近じゃ私達のことを、そ、その……
……………し、縛ったり、するくせに……」
マリナが赤面して、口ごもりながら目を伏せた。
「ああ、あれは…効くよな、うん。
身動き取れないからもがくこともできなくて、快感がそのまま体の中で
荒れ狂っておかしくなっちまうのがまた………っ」
自分の発言で興奮したのか教官が身をよじった。
「旦那様は加減ちゅうもんを知らなすぎや」
「そうか?」

俺は性的に『食べ』たり、魔力を帯びた攻撃を受けたりすることで
その者の特性を得ることができるのだが、過去にデルエラの魔力を吸収したために
リリムの『全ての魔物の魔力を有する』という特性によって
今ではあらゆる魔の特性をだいたい使いこなすことができるようになっていた。
……使い道がない特性もそれなりにあるが。
『縛り』というのはそれを用いた愛し方で、ホーネットの淫毒と
クイーンローパーであるフランツィスカ様の強力な粘液のブレンドを
分泌する触手を彼女らの全身に絡めつかせ、なおかつ、絡めてある部分を
スキュラの吸盤で吸いついたりして責めるというものだ。
多数を同時に相手するのに便利なので重宝するし、腕を後ろ手に縛って
足を下品なガニ股にさせたり、足をVの字にさせて本人の腕と絡めるように
固定したりと、色々とエロいポーズをとらせながら犯すというのは
淡白な俺でもかなり興奮してしまうので、つい多用してしまったりする。
マリナ達もマゾっ気が刺激されてしまったらしく、今ではすっかり
お気に入りのプレイになりつつある。
……いいのだろうか。

「加減を知らないのはお前らのエロさと可愛らしさだと思うが」
痛恨ののろけをくらえ。
「はうう……お、おにいちゃん、ずるいよぉ」
「そ、そないなこと言うの、卑怯や」
弱点なだけあって効いている。
日頃からこうやって褒めておくと多少ひどいことをしても
案外すんなり許してくれたりする。地道な努力が何事も肝心だ。
「卑怯呼ばわりは許せないな」
「わひゃ!?」
俺は今宵の乳房を鷲掴みにしてそのまま揉みほぐした。
「ひぁ、あはぁ、んぅあああぁ……!」
「ほれほれ」
もにゅっもにゅっもにゅっもにゅっ
「ひ、卑怯じゃなひぃ。んひぁ、正直やあぁ。
旦那様はっ、はひっ、ひっ………………ひょ、正直ぃ、も、者おぉ……」
一定のリズムで揉み続けると今宵はすぐに根を上げた。
内股になり、肉付きのいい腿をとろみのある液体で濡らしはじめた。
どうも嫁達は俺から与えられる刺激や快感に
弱くなってきているようだ。オモチャにしすぎたか?
「卑怯者どころか無法者すぎるぞお前」


今度は教官が犠牲者になった。

…やりすぎでいいや。こいつら口が減らないし。


「よく見たら虜の果実まで実っていますね」
サーシャ姉が、最も有名な魔界産の果物を指でつついた。
「いや、そもそもそんなの植えた覚えないんだけど」
新たな七不思議の誕生であった。

「……勝手にすくすく育って、もう俺が世話する必要が
なくなってきたんだが、どうしたらいいんだこれ」
なんにも面白くねえぞ。
「ほっといたらいーよ。手間もかからないし」「ねー」
おいロリロリ。それじゃガーデニングじゃなくてただの植物観察なんだよ。
「やめたらいいんじゃないの?
どうしても続けないといけない理由もないんだし」
「そうだな、やはりボンサイを初め」『ダメ』
またしてもハモるか貴様ら。
「だからそれは年寄り臭いんだって。アンタにはいつも
若々しくいてほしいんだから。エルフみたいに外見だけ若くて
中身は枯れてるとか、そんなの断固として嫌よ」
エルフが聞いたら激怒しそうな意見を
元ハーフエルフが吐くって、なかなかシュールだな。
「枯れてる奴が毎日毎日お前らを満足させられる訳ないと思うがな。
いつも俺の精液で、子袋がドロドロになってるくせに」
「そ、それは不満なんて欠片もないけど」
体格に不似合いなサイズの、大きな手の指と指を
胸の前ですりあわせ、プリメーラが照れた。
他の嫁達も、己の体を抱きしめてくねらせたり、赤くなった頬に手を当てて
左右に揺れたりしながら、俺の言葉責めにまいっている。
こいつらのデレに限界はないのか。

バァアンッ!!

『!!?』
いきなり玉座の間の扉が豪快に開かれ、俺たちは一斉に
ビクッと体を震わせた。
旦那そっちのけで人間を堕としまくっている変人ならぬ変魔物こと
魔界第四王女デルエラが、腰に手を当て、豊満なおっぱいを突き出すように
胸を張り、なぜか自慢げな顔で、姿を現したのだ。
「話は聞かせてもらったわ」
ずっと扉の前にいたのか。さすがリリム、無駄な時間の使い方をする。
「つまり、魔界の植物では世話する甲斐がなくて
つまらないと貴方はいいたいわけね」
「話が早くて助かる。それじゃ早速このレスカティエを元に戻してくれ」
「バカ言うな」
「お前ほどバカなこと言わねーよ」
「ウフフ、アル中坊やは面白いことを言うわね。まるで道化みたい」
「レズ年増に喜んでもらえて俺も嬉しいぜ」


………………

ギリギリギリッ……

俺とデルエラはお互い最強武器で鍔迫り合いしていた。

「前回の借りを返させてもらおうかしら…!」
「笑わせるな、返り討ちにしてくれる…!」
「二人ともやめてーーーー!!」「おい全員で止めろおっ!!」

………………


「それで、何の用で来たんだ?
まさか俺と決着をつけるためでもないだろ」
「えーとね……貴方って今は何も役目とかないでしょう?
だからちょっと、お使いを頼もうかと思って」
「ほう」
周りの制止を受け入れ、俺は玉座に、デルエラは自前の魔力塊に
腰を下ろして、さっきの話の続きをすることにした。
「なんで真剣勝負の後にこんな和やかな会話ができるの…?」
今にも吐きそうな顔のマリナが疑問を口にした。
「それはそれ、これはこれ」
「そういうことよ」
簡潔に教えてやったら、魂が抜け出してるかのようなため息が
あちこちから返ってきた。なんだお前ら、その疲れたリアクションは。
「それで具体的には何をしたらいいんだ?」
疲れてるようだし、マリナ達はほっといて会話続行しよう。
「私の代わりに『医の楽園』へと行ってほしいのよ」
『医の楽園』というとレスカティエから少し離れた所にある、
医術や薬学の最先端として名高い、親魔物よりの小国のあだ名だったか。
「そこに、貴方みたいな偏屈なガーデニング好きの魔物のために作られた
抗魔力成分入りの肥料が売られているそうよ。行ってみたら?」
なんか裏がありそうだな。
「ああ、この子達も連れていっていいわよ。
新婚旅行と骨休みもかねて、ゆっくり旅を満喫してらっしゃい。
ここの守りは私と姉様がやるから」
「あの人、また来てるのか?」
俺はデルエラとはまた違った美しさと強さを内包した
あのリリムを思い出した。確かに、彼女とデルエラがいれば
よほどのことがない限り問題ないだろう。魔王の娘のコンビとか凄すぎる。
「……ですが、よろしいのですか?」
サーシャ姉がみんなの意見を代弁してくれた。
「人質交換の交渉で、こちらの要求を教団側に
ほぼ受け入れさせたことへの褒美よ。遠慮しないで受け取りなさい」
なるほど。
「そういうことですか。納得しました」
「うわぁ〜〜、デルエラさまったら太っ腹だね〜〜〜〜」
ミミルが手を叩いて喜ぶ。
「いや、まだそんな脂肪はついてないぞ」
小粋なジョークを挟んでみた。
「……まだって、どういう事かしら…………?」


予期せぬ第二ラウンドだが未遂に終わった。


最後に「馬車や護衛は私が用意しておいてあげるから」といって、デルエラは
苦い顔をしながら玉座の間から去っていった。
「洒落のわからん女だ」
俺も同様に苦い顔をしていた。
「お前とデルエラ様の絡みは心臓に悪すぎる。少しは言葉を慎め」
「わたくし達の悩みの種を蒔くのは、もうおよしになってくれませんか?」
教官とフランツィスカ様という両極端な二人に怒られた。


各自が旅支度を始めるため意気揚々と自室に戻ったのを見計らってから
俺は腹いせに二人を襲って、分離した触手を直腸に山ほど潜り込ませては
排泄させてを繰り返してイキ狂わせてやった。

「おおっ、んおおおぉおぉぉ……!」
「あんたは喘ぎ声を慎んだほうがいいんじゃないかな?」
「んひいいいいいいいいいいぃぃぃ!し、尻がぁ、ああああぁああぁぁ!
アタシの、お、おひっ、お尻からぁ、ニュルニュルが出てええぇ!!」

「も、もう入らなひいいぃ!はいりまひぇんのおおぉ!」
「悩みの種じゃなくて触手を突っ込んでやんよ」
「腰が、腰が勝手にくねってぇ、あああぁ…!
いやぁあああぁ、触手うんち気持ちよすぎるのおおおおおーーーー!!」

二人をおかしな性癖に目覚めさせたかもしれないが
なかなか面白かったのでよしとする。後悔しても後の祭りだし。


――そんなこんなで、唐突に俺達の新婚旅行が
スタートしたのであった。

どうせトラブルが続出するんだろうが、いつもの事だから気にしない。
12/02/20 01:14更新 / だれか
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■作者メッセージ
トラブルはそこまで頻繁には起きませんけどね。

むしろ彼らが起こす立場です。

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