読切小説
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寒いときは寄り添いたい
 寒がり。
 それが私だった。
 寒いのは嫌だ。寒いとこの世の全ての光景が急速に色彩を失っていく幻覚から抜け出せなくなってしまう。冗談ではなく、本気でそう思う。だからこうして、大好きな夫と一緒に毛皮に入ってぬくもりを感じるのが私の日課で、心が落ち着く時間だった。
 鈍色の癖毛が揺れて、眠たそうな半眼をこする私の夫――ベレアという――は目を覚まし、もぞもぞと再び二度寝に入ろうとしていた。
 確かにこの季節、ぬくもりが誘う二度寝の誘惑には抗い難いだろうし、心地いいけど、妻への挨拶もなしに二度寝に入ろうとするなんて、ちょっとむっとしてしまう。
 その私の夫を奪い去ろうとする二度寝の魔力への嫉妬に従順に、私はベレアのほっぺを抓った。
 指に吸い付くような柔らかな肌が驚きの伸縮性を見せ、生物の頬はこれほどまでに形を自在に変えられるものなのかと関心してしまう。
 次第にその関心は、どこまでこの頬は伸びるだろうという興味へと変わり、自然と頬を抓る力が強くなる。
 最初の方は無視を決め込んでいたベレアだったけれど、最後は悲鳴を上げていた。

「あだだだだだだッッ!!!!待て、ストップだストップ!!!!取れる、俺の頬がちぎれる!!!」
「あ、ごめんなさい」

 ちょっぴり不機嫌そうな目で私を睨むベレア。でもその顔はすぐにしょうがないな、なんて呟きそうないつもの顔に戻り、私も綻ぶ。

「ったく、どうしたんだよ」
「だって……..私を無視して寝ちゃおうとするんだもん」
「……嫉妬深い嫁だな、まったく」

 口では悪態を吐きながらも、ちゃんとベレアは私の頭を撫でてくれる。そんな何気ない優しさを感じる度に、擽られるような温かい気持ちが私を満たす。でも、私はまだまだ甘え足りない。もっともっとベレアの優しさが、愛情が欲しくて甘えてしまう。
 むぎゅ、という音がしそうになるくらいに密着し、お互いの鼓動が重なり合うのを感じる。命が循環していくような、そんな感覚を抱かせる。木漏れ日のような、優しいベレアの体温。解けて、溶けて、融けて一つになっていくような多幸感。
 許されるなら、ずっとこうしていたい。
 そう思ってしまうのも、今なら許される気がして。いや、許されるに違いない。このぬくもりだけが、私の拠り所で、いるべき場所なんだと実感させてくれる。
 ベレアの胸に頬擦りして、もっともっと彼の体温を感じたい。

「あれ………」

 だけど、そんな幸せな時間を噛み締めていると、ふと下の方からまったく別の、堅い熱さが私の身体をつついた。

「あ、……悪い」

 男の人の生理現象なのか、逞しくなったそれは私の身体をつんつんとつついては苦しそうにしていた。
 謝る必要なんてないのにね。私にとってはそれは嬉しいことで、やましいことも負い目を感じることも何一つないのに。それでも、やはりばつが悪そうに俯くベレアは、男の人に使うにはおかしいかもしれないけれど、可愛いかった。
 まるで悪戯がばれた子供を相手にしているような、そんな母性を溢れさせる。
 そして、その母性は、そのまま情欲へと火を灯す。

「いいよ、抜いてあげる」

 私はすぐにベレアが穿いていたズボンからそれを取り出すと、手で割れ物を扱うかのようにそっと掴んだ。その瞬間に、びくりと反応して暴れるきかん坊を、しかし逃がさないように手の内に捕らえる。
 まずは裏すじに指を這わせ、ゆっくり上下に扱いてあげる。もう片方の手では、優しく覆い被せるようにして手のひらで亀頭を包み込み、撫でるようにして愛撫する。
 その奉仕からもたらされる快感がもどかしいのか、ベレアは時々むず痒そうに身をよじらせていた。
 きっともどかしいのじゃなくて、追い詰めるような激しい快楽の方がいいのだろう。
 でもまだ激しいのはおあずけ。
 ゆっくりゆっくりおちんちんを可愛がって、徐々に気持ちよくなってもらうんだから。それに、二度寝のこともあるし。
 私は刺激が単調にならないように、亀頭を包み込んでいた手をいったん離すと、今度は大きくくびれたカリを、人差し指と親指の輪っかで掴む。そして、少しだけ力を強くしてその輪っかをくるくると動かした。
 おちんちんがその刺激にたらたらと先走りの涎を垂らしているところを見ると、どうやら気持ちいいみたい。私の両手を使った奉仕を気に入ってくれているようだった。
 嬉しいな。
 私は少しずつおちんちんを扱くスピードを上げながら、また片方の手を亀頭に被せ、今度は亀頭を擦るような激しいものへと愛撫を変えた。
 先走りの液が手のひらに塗りたくられ、にちゃにちゃといやらしい音をたてて、それがこの行為をさらに聴覚でも昂ぶらせる。
 おちんちんの根元を短い間隔でごしごしとしごきながら、先走りをしっかりと亀頭にも広げ、潤滑をしやすいようにする。
 こうしてあげるとベレアは凄く気持ち良さそうにする。もう何度交わしたかもわからない、夫婦の営みでの成果と言える。
 ついでに、私も欲しくなっちゃったので、ベレアの口を貪ることにした。
 ベレアもそれを察してくれたのか、深い深いディープキスが交わされる。
 唾液がお互いの内頬に舌で塗りこまれ、お互いがお互いの所有物であることを示すような、激しいキス。綺麗に揃っている歯茎を舐め、舐められる感覚が、すぐそこにあるベレアの呼吸が、私の頭を溶かしていく。
 くちゅくちゅ。にちにち。上でも下でも官能を際立たせる音が耳朶を犯し、お互い興奮が増していくのがわかった。
 自然と、ベレアのおちんちんを扱く手にも、力が入る。

「ッツ………そろそろ」
「うん、いいよ♪」

 ベレアの限界が近いことを察した私は、できる限りのペースでおちんちんをしごき、裏すじと亀頭に愛撫を集中させた。上下に扱く手に、捻るような動きを加えて、ベレアがしっかり気持ちよく射精できるようにする。
 やがて、びくびくと痙攣するような動きを見せたのも一瞬、尿道から噴水のように精液が飛び出した。

「う…….」
「まだまだ元気だね」

 インキュバスになっているベレアのおちんちんは一度の射精程度では満足しないのか、まだ雄雄しく反り返り、逞しいその身を晒していた。
 たった一度の奉仕で満足するつもりは、どうやらさらさらないらしい。本人の意思は兎も角。
 まぁ、私も満足できないからいいけど♪

「次は、お口でしてあげるね」

 射精して間もないベレアのおちんちんまで顔を寄せると、私はそっと亀頭に舌を這わせた。

「くっ」

 敏感な時にこうやってされるのはたまらないものがあるのだろう。ベレアは我慢するような呻き声を上げる。
 そんな我慢をするベレアも可愛らしくって、私は亀頭全体をぱくりと咥え込んだ。まだ濃厚な精が感じられ、私の子宮が子種を欲しがって、どくん、と疼く。でもまだ我慢。せめて、もう一回抜いてあげてからでないと。
 まずは唇を使って、おちんちん全体をなぞるように頭を動かす。ベレアの大きいおちんちんを奥まで咥えるのは少し大変だけど、これもベレアのためと思えば頑張れる。
 出会って初めてセックスする時には、至って平均サイズだったのに、インキュバスになった影響か、その大きさは以前の倍と言ってもいいほどになっていた。
 そんなものを、喉奥まで咥えこんでは往復を繰り返す。
 唇だけではなく、舌もつかって満遍なくねっとりとした刺激をあたえる。舌を動かす度に、ぴくぴくと口の中でおちんちんが震えるのがわかって、愛らしい気持ちになってしまう。
 正直、私もそろそろ我慢ができなくなってきている。
 口で奉仕しながら、そっと私は自分の秘所へと手を伸ばす。ちょっと触れるだけですぐわかってしまうほどにぐっしょりと愛液を滴らせた私の大事な所。
 指先で豆粒くらいの大きさになったそれを弄ると、電流が身体を突き抜けたような快感に襲われた。危うく舌の動きまで止まりかけて、慌てて手を離す。
 同時に、腹の底からどうしようもない雌の感情が溢れてきて、それに溺れてしまいたくなる。
 でも、まだここにこの逞しいおちんちんを入れてもらうのはまだ先だ。今は、ベレアの精の味を、しっかりと味わいたい。
 その思いだけで、私はベレアのおちんちんを舐めしゃぶった。カリも、棒全体も、亀頭も尿道も、余すところなく舌でなぞり、口を窄ませて吸引して、精を強請る。

「おまえッ…….いつもより激しくないか」
「んっ、ちゅ、じゅぶっ、じゅっ、じゅっ」

 ベレアの声も無視して、さらに口を窄めた時に、それはやってきた。
 奔流と思えるような、勢いよく放たれた精液が私の口に収まりきらず、口の端から零れていく。それでもいくらかは私の喉を伝っていき、身体に精を沁み込ませた。
 ああ、染められていく。ベレアの温かさで、精で、私の身体が染められていく。内側からも、外側からも。
 泣きそうになるくらいに幸せな感覚。でも、まだ、足りない。
 本番が、まだだ。

「ベレあぁ、おちんちん、ちょうだい」
「ったく、完全に火がついたな……..」
「ねぇ、べれぁぁ」
「……….事の発端は俺だし最後まで付き合うよ」

 優しいベレア。きっとそう言ってくれると思ってた。

「ほら、股開いて」
「うん………」

 言われるがままに、私はベレアを迎え入れる準備をする。どくんどくんと力強い脈動を繰り返す、獰猛なそれを迎える。
 ベレアは何度か入り口を往復させると、すぐにおちんちんを一気に突き入れてきた。

「ひゃあああぁあぁぁああぁぁああああぁ♪」

 子宮口まで一気に突き入れられ、視界が一瞬白く染まる。そしてそれもつかの間、また膣襞ごと引き摺るようにして戻っていき、そして再び力強く子宮口を小突かれる。
 完全に発情してしまった私の身体はあっという間に快楽の渦に飲み込まれ、息も絶え絶えになってしまっていた。
 それでもベレアは容赦なく腰を突きいれ、私はただ快楽に翻弄されて仰け反るしかない。暴力的な快感に溺れ、掻きまわされて困惑する暇もなくただ快楽を享受する。
 ひたすらに退廃的で、享楽的。
 それでも、こんなにも激しく、情熱的に、野獣のように私を求めてくれることが何より嬉しかった。
 その嬉しさも、身体を貫かれるたびに雌の獣欲に掻き消され、そして再びばらばらになった嬉しさが戻る。
 掻き消され、戻って、掻き消され、戻って、その繰り返し。
 私が懇願するように腰をすりよせれば、より激しいピストンでベレアは膣を抉ってくれる。その度に脳髄を痺れさせる快楽で、身体はもう理性の欠片も残してはいなかった。
 膨らんだ亀頭が私の中を押し広げ、やがて膨張が最大限になると、子宮目掛けて精液が吐き出される。
 当然それだけで終わるはずもない。終わりたくない。
 私はねだるように膣を締めつけると、その締め付けを楽しむかのようにベレアは腰を動かし、私を喘がせる。
 瞳が蕩けたように、次第に何もかも輪郭をぼやけさせていく。それでも、確かに感じるベレアの動きと殺されてしまいそうな快感に私は身体を条件反射のように弓なりに逸らした。
 許容量を越えた、絶頂。
 精液を掻き出してはまた新しい精液を私に注ぎ込もうとするおちんちんは、遠慮を知らずに私を犯し、何も考えられなくさせていく。たまらないほどの幸せが、今度は子宮口にぴったりと亀頭を押し付けて直接注がれていく。
 注がれている。
 その事実だけが、私の被虐心をさらに猛らせ、蕩けた声を上げさせ、いやらしいおねだりを自分の口から出させる。止まらない腰の動きについていくことで精一杯になりながら、私はなんとかベレアの肩にしがみつき、ベレアの体温を外からも感じる。
 どこかに飛んでいきそうなほどの快楽に悶えながら、ベレアの愛撫に、抽挿に身を任せる。
 ああ、こんなに艶かしい声を出しているのは誰だろう?はしたない。はしたないのに、その声は幸せに満ちていて、そして目を覚まさせるような強い一突きで、それが私の声だと知った。
 あったかいのと、気持ちいいのと、幸せなのとで、おかしくなりそうだ。いっそのこと、おかしくなってもいいのかもしれない。毛皮の中でひたすらに行われる、獣みたいな交尾。だけど、それが、それが。
 もう何度目かわからない精を子宮に受け、私の視界は徐々に白く染まっていく。快感で弾ける火花とは違う、白々しくも優しい白。
 確かに感じる快感も次第に遠いもののように感じてきて、実感がわかなくなってくる。
 ああ、また、おちんちんが脈動している。
 子宮から溢れてしまうほどに、精を注がれて、そして――



「ん…………….ぁ」

 目が覚めると、ベレアは私の毛皮を洗濯して干しているところだった。私が目覚めたことに気づいたのか、慌てて私の元へと近寄ってくる。

「すまん、やりすぎた。……大丈夫か?」
「ん、大丈夫」

 少し意識すると、注がれた精液が私の秘所からとろりと溢れていくのを感じて落ち着かないけれど。けれど、それよりももっと大変なことがあった。
 それを誤魔化すために、私はベレアに抱きつく。

「っと、どうした?」
「………..寒い」
「ああ、そうか。毛皮、乾くまでもうちょっと時間がかかるぞ」
「………………寒いの」

 ベレアは黙って私を抱きしめてくれた。
 温かい。どくとくと鼓動を繰り返す心臓が、いやでも生きていることを実感させてくれて、嬉しい。
 幼子がぬくもりを求めるように、私は暫くベレアに抱きついたままだった。でも、きっとそれでいい。あたたかくて、私の傍にだけあるこのぬくもりが、寒さを紛らわせてくれる。
 私はそのぬくもりに身を委ねながら、おはようのキスをねだった。
 唇に柔らかな、いたわるような優しい感触。
 それから――
15/11/11 22:07更新 /

■作者メッセージ
そんなお話でした。楽しんでいただければ幸いです。
砂糖をこれでもかと入れました。エロメインですがどちらかと言えば心理描写で迫るエロにしたつもりです。

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