連載小説
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トイレの誓い
 いつでもどこでも人は何かを追い求めはしない、しかし時々何かを思う事はあるだろう、俺の場合はそう、扉の向こうにいるアルプの忍の事を思う。

「んん〜〜? どーこーにーいーるーのーかーなー?」

 男子トイレの扉が順番にゆっくりとノックされる、ゴンゴンという音がいったり来たり、自分がこもっているトイレの扉が叩かれる度に、俺は尻から魂が抜けそうな気がした。

「でーておーいでー?」

 そう言って素直に出てくるなら、俺はもう捕まっているだろう。

「怒ってないからサー?」

 ほう怒ってないのか、じゃあノックの音が大きくなるのはなぜなのか、俺の耳のせいか、いや違うだろう、俺が『光指す道となれ!』との掛け声と共に繰り出したカンチョーがヤツの肛門と怒りに触れたからだ、いや、手応え的には直腸に僅かに触れた。

 しかしなぜ、俺はカンチョーなんぞしてしまったのだ、なぜ『光指す道となれ!』と言ってしまったのだ、誰にも分かるまい、俺さえなぜやったのか分からないのだから。

 せめて掛け声は、『アクセルシンクロォォォ!!!』の方が良かったと反省している。


「…………」

 おかしいな、目の前からゴンゴンと音がするよ、お迎えがきたのかな、きっとそうだろう、しかし私は逆らう、たとえフルボッコされるとわかっていても、私は運命に抗う、道とは作り出すものだ、人は皆、生まれて泣き声をあげた瞬間に土木作業員に就職しているのだ、時に親方に怒鳴られながらえっちらおっちらと作業するのだ。

「言いたい事は?」

 そう言われて、俺はできるだけ欲望に忠実に、今日やりたかった事を、胸を張って言った。

「お前をオカズに、オナニーs」

 突如開かれた、目の前の扉は地獄の門だったようだ、開きゆく扉の真ん中に張られてある『トイレは大切に使いましょう』の標語が 『この門をくぐる者は一切の理性を捨てよ』と見えるのは俺の気のせいか。
 
 ああ、すべてが遅く見える、忍よ、その振り上げた拳をおろすのだ、顔面を拳でチューニングしようとするな、 力と暴力をドッキングしても召喚されるのは物言わぬ俺だけだ、やめろ。

 俺の必死な祈りが届いたのか、忍の拳が止まった、固まった拳は開かれて、俺の腰を掴んだ。

 そして無理矢理パンツごとズボンが下ろされる、我が愚息がこんにちは、しかし忍は愚息に用はないみたいだ、俺は便器に覆い被さるようにひっくり返された。

 俺の腰を押さえつけて、カサカサと音を立てて忍は何かをしている、ゆっくりと後ろを向いて見えたのは。

 自前のちんぽをしごいている忍でした。

 もう一度確認しよう。

 自前のちんぽをしごいている忍でした。

 松茸なんてちゃちなもんじゃねぇ、リボルバー、いやグフタフだ、列車砲だ。

 俺の愚息より倍あるであろうソレをにっこりと笑顔で忍はしごく、幹には青筋が走り、先っぽからはよだれのように先走り汁が垂れている、そして、小刻みにビクンビクンと忍の手の内で跳ねていた。

「それを、どうするのかな?」

 分かりきっている、この後の事なんて分かっている、でもいいじゃないか、希望にすがらせてくれ、蜘蛛の糸のような希望でも、すがりたい気分なんだ。

 いつでも発車可能な列車砲を手の内でなだめるようにしごいて、忍は言った。

「きまってるじゃない」

 そう言いながら、両手を俺の腰にかける。

「お尻にいれるんだよ? あんたのお尻に、ね?」





 この日から『トイレは大切に使いましょう』の標語を絶対に守ろうと俺は心に決めた。
15/10/11 04:07更新 / ミノスキー
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