旧学生寮。コの字に建てられた三階建ての建物の中庭に、ミュリナさんの言っていた風呂というものがあった。
　外観は本で見たことのあるジパング風の家屋だが、お湯が冷めてしまわないように、窓は開かず、扉も二重になっている。また、その扉自体も、紙を使用した伝統的なジパングの引き戸ではなく、白い磨りガラスを用いて湿気に強い様にアレンジされた、障子風のガラス戸になっていた。

「じゃあ、入浴の手続きしてくるから、先に着替えて待っててね」
　ミュリナさんはそう言って、旧学生寮へと戻っていく。
　彼女が向かったのは、旧学生寮一階にある管理室か、風呂の研究をしている先生のところだろう。来る途中に彼女から聞いた話だが、通常夜おそくまで風呂が開いていることはなく、課業後すぐの夕方から日没までの間までしか生徒に開放していないのだという。
　しかし、今回はジパング医療の湯治の効果検証と調査資料作成へ協力することを条件に、ミュリナさん同伴の下、特別解放してもらうことになったのだった。

　故に、僕は今日から少なくとも一週間以上ミュリナさんと一緒にこの風呂という場所に通わなければいけないのだという。湯治は湯に継続的に触れ、長い期間を用いて療養するものであるらしく、一日限りの入浴は認められないだろう、とミュリナさんは言っていた。

　僕は赤い暖簾をくぐり、その先の脱衣所で籠の中へ脱いだ服を入れた。
　カギはなく、ただ服を入れるだけだが、この時間に風呂に来る人はいないから、盗難に遭うことはないだろう。

　脱衣所の床は少し湿っていて、部屋には女性特有の甘い匂いがいっぱいに広がっていた。きっと先に入っていた女子たちの匂いなのだろう。

「ごめんねー、おまたせっ！」

　着替え終わるのと同時に引き戸が開き、ミュリナさんが戻ってくる。彼女も同様に僕の隣で服を脱ぎ、その服を僕と同じ籠の中に入れた。

「隣の籠使わないんですか？」
「んーと、万が一のことがあるから、上に私の服をかぶせて、カモフラージュ、みたいな感じかな？」
　ミュリナさんは着ていた服の中に僕の服を押し込んで、籠の中に服を置いた。これで僕の服が他人の目に触れることはないだろう。

　そして、彼女は服を脱ぎ終わると、大きな胸を露出したまま、僕の前に立って先導していく。

「ジパングの沐浴はハダカになるのがいいよねぇ！　フェリエの沐浴着はおっぱい大きいときついからねぇ！」

　ミュリナさんはニコニコと笑いながら僕の手を取って、転ばないように湯けむりの中を案内してくれた。
「じゃあ、カラダ洗いっこしてからお風呂に入ろうね〜」

　二人で向かい合って椅子に座り、お互いの体に手を伸ばす。
　座っている椅子の股間の部分は座ったまま洗えるように手を入れる隙間がある。

　僕とミュリナさんはお互いの肩に手を伸ばし、触手植物の樹液を用いたローション剤を体中に塗っていく。

「んー、ぬるぬるだねぇ、おっぱいもヌルテカしてるし……えっちな気分になっちゃいそう……」
　うふふ、と小さく笑いながら僕の足を太ももに置き、丹念に塗りこんではぬるぬるした手でこすり、汚れを落としていく。
　香料の含まれた透明でぬるぬるしたローション剤からは、果実のような甘酸っぱい匂いがして、この匂いが脱衣所の匂いの元なんだろうか、なんて僕は考えていた。

「ほら〜っ、手止まってるよ？　私のこともちゃんと洗ってよ〜」
「あっ、すいません」

　ミュリナさんに指摘され、また手を動かす。お姉さんのドコ見てたのかな〜、なんて言って、ミュリナさんがふざけてまた笑う。そんなことを言いつつもミュリナさんは椅子を近づけ、僕の太ももに手を伸ばす。僕は洗ってくれているミュリナさんの腕の動きを邪魔しないように二の腕を掴み、柔らかくて白い肌にローションを塗り込んでいく。

「そういえば、二の腕っておっぱいとおんなじ柔らかさなんだってさ〜」
「えっ！？　あっ、そうなんですか……」
　また悪戯っぽく笑う。僕がむにむにともみ込むように洗っていたからだろうか。余計なことを考えないように、僕は肘から先へと洗う場所を変えた。
「あ〜っ！　いま私のおっぱいのこと考えたでしょ！　えっち〜！　オウジサマのえっち〜！」
「いやっ！　そんなっ！　違いますよ！！」
　洗う場所を変えたのがあからさま過ぎたのだろう。ミュリナさんが腕で胸を隠してキャーキャーと笑う。それでも、ミュリナさんの腕で大きな胸は隠しきれておらず、恥ずかしがって身をくねらすと、腕の中でぷるぷると震えていた。
「もう！　ミュリナさん！」
「えへ、ごめんごめん。テツヤくんが赤くなっててかわいかったから」
　ニコニコと笑い、今度は僕のおなかに手を伸ばす。
　ムッとしてミュリナさんの手を払いのけると、悲しそうに俯いて、言った。
「ねぇ、嫌な気分になった？　……ごめんね？」
　消え入りそうな、か細い声で謝罪する。
　卑怯だな、なんて思いながらも目に涙を浮かべ始めたミュリナさんを、僕は許すしかなかった。
「別に……大丈夫ですよ」
「……よかった」
　和解しよう、と意味を込めてミュリナさんの肌に触れる。すると、ミュリナさんはうっすらと笑みを浮かべ、優しくおなかをなでてくれる。その笑みが、王城にいるミーアの笑みと重なったのは、きっと偶然じゃないのだろう。
　ミュリナさんは、きっと僕を元気づけるために、冗談を言ってくれた。だから、僕が不機嫌になったのを見て、きっと僕よりも傷ついたのだ。
　役に立とうとして空回りして、迷惑をかけてしまった時の無力感。それは絶望に近いものだ。僕が演習の後に抱えたあの感情にも似ている。
　僕はミュリナさんの気遣いを無碍にしてしまったことに、罪悪感を覚えた。
「もう〜っ！　また表情暗くなってる！　ほら！　笑顔笑顔！」
　感情が顔に出てしまうのは、僕の悪いところだ。　
　ミュリナさんは僕の頬をむにむにと揉んで無理やり笑顔にする。
　きっとミーアも、一緒にお風呂に入ったら、こうして一緒に楽しんでくれたのだろう。
　ミュリナさんに気を使わせてしまったことを申し訳なく思うのと同時に、彼女の優しさに、心が強く震えた。
「……じゃあ、次は背中洗うからね？」
　ミュリナさんは僕の膝の上に対面に座りそのまま僕に抱き着いて、背中に手をまわしてなでる。
「よしよし……いい子いい子」
　ただ、ミュリナさんの手にはローションが付いていなかった。
　きっと、また感情が顔に出ていたのだろう。

　僕は、涙を止める術を知らない。
　けれども、僕のすべてを肯定してくれる言葉で、僕の心は、泥水が澄み渡るかのように綺麗になっていった。
　きっと彼女がそうしたのは、僕の心を、言語化できない思いのすべてを、受け止めようとしてくれたからだ。

　僕は嬉しかった。ただただ何も言わず抱きしめてくれるだけで、僕は十分に満たされていた。
　僕はミュリナさんの背中に手をまわし、思いっきり力を込めて抱きしめた。
　痛い、とも、やめて、とも言わないミュリナさんは、ただただ僕の背中をなで続けてくれた。
　ぬるぬるの腕を互いに絡め、大きな胸は僕の胸板に押しつぶされてにゅるんと滑る。押しつぶされたおっぱいから母乳がぴゅーっと噴き出して僕とミュリナさんを真っ白に汚した。

　そして、まだ洗っていないはずのミュリナさんの秘部から、ローションのような液体がねっとりと染み出し、糸を引く。

　その光景に、愚息が反応しないわけもなく。
　彼女の秘部と勃ち上がったモノがぐちゅぐちゅと擦れ、僕はまた、ミュリナさんを精で汚した。

　ビクビクとミュリナさんの下腹部のお肉に挟まれながら、母乳とは違う白さでミュリナさんが汚れていく。

「えっ！？　……テツヤ君！？」

　気付いたミュリナさんに勃起したものを握られ、さらに指先の刺激が加わって射精の速度が加速していく。

「ミュリ、ナ……さんっ！　ご、ごめ……んな……さ」

　噴水のように勢いよく噴出し、快感に痺れて下半身の感覚がなくなりつつあった。快感に抗いながら絞り出した言葉も、最後まで口にすることができなかった。
　そして、射精が終わるのと同時に腕を緩めると、ミュリナさんはザーメンだらけになった顔や胸をさすりながら、また微笑んだ。
「男の子だもんね、しょうがないよね。私は全然大丈夫だし、むしろ嬉しいの。だから、溜まったときは、また犯してね？」

　うっとりとした表情を浮かべて、ミュリナさんはザーメンを指ですくって舐めた。


「でもまずは、また体洗ってお風呂入らなきゃね！」
　ミュリナさんは、今日一番の笑顔を見せて笑う。
「ほら〜っ！テツヤ君がよごしたんだからおっぱいもみもみしてちゃんと落としてよ〜」
　胸を突きだして、揉むように強要してくるミュリナさん。その表情は、冗談を言っていた時のものと全く変わりない笑顔。
「あ、あとおまんこにもすこしかかったからちゃんとくちゅくちゅしておとしてよね〜っ！」
　悪戯っぽく笑うミュリナさんの笑顔には、ここまで計算済みだったんじゃないか、という疑念を持たざるを得ない。
　けれど僕はミュリナさんに元気づけられたことを忘れはしないだろう、と思う。
　

■作者メッセージ
なんかいい雰囲気になったけど！！！
まだまだお風呂回続くよ！！！

湯治は一週間以上の連泊が基本だからね！！！