願わくば
大御門明臣という人間はなんとなく生きていた。
人生に目標はなく、理想もなく、夢もなく。
大御門という家の後継者となるべく育てられてきた。
両親は俺を見てくれなかった。
俺に近づく人間は俺の背後にある家のことしか見ていなかった。
だから俺は俺自身のことを見てくれる人間が欲しかったんだ。
俺にとってのそれは前原友季という少女だった。
彼女が俺の傍に来るのは彼女自身の小さなプライドを満足させるためだということはわかっていた。でも、その一方で彼女は大御門ではなく明臣としての俺を見てくれた。
そして彼女は俺が失敗することを許容してくれた。
だから俺は彼女の隣に居ることを選んだ。
俺はこれまで自分が不幸な人間だと思っていた。
金銭的に満たされても孤独を埋めることはできないと思っていた。
でも、今は違う
……俺勝ち組だわ
アイドル顔負けの美少女と親密な仲になって、しかも毎日手料理をご馳走になるなんて最高だな!
彼女を奪われないよう徹底的にマークをし、俺たちが付き合っているという噂を流し、他の男を牽制し続けた。肝心の友季は気づいていなかったけど。
高校はわざわざ実家から通えない所を選び、友季にも受験させた。友季は反骨精神の塊なので少し煽れば誘導は簡単だった。そして家賃の節約を理由にルームシェアを勝ち取った。
……いろいろと理性と戦う場面があったものの、同棲生活はとても楽しかった。毎日一緒に登校したし、夕食の相談をしながらスーパ−に寄って下校した。小さい机を囲んで先生の悪口を言いながら定期試験の対策をした。休日の前には、明日は何処へ行こうかなんて話をしながら並べた布団で眠った。
俺の気持ちとは裏腹に、彼女の中で俺は唯一の親友兼ライバルとなっているらしく、どうしたら彼女と恋仲になれるか毎日妄想していた。
だから、
「住む世界が違う。お前と離れる日がくるんだ。絶対に。……そうなる前に友達作る方法を学ばなきゃね」
そう言って笑う彼女を見たとき、頭の中が真っ白になった。どんな手を使ってでも彼女を手に入れなければならないと思った。だから俺は彼女の生き方を歪めてしまったんだ。
ーーーーーーーーーー
目が覚めた。
とても懐かしい夢を見た。
友季は俺の腕の中で寝息を立てている。
友季の髪をなでていると彼女が目を覚ます。
「……なんだよ明臣」
口調はキツイものの目は優し気な彼女を真っすぐ見ることができなかったのは夢の所為だ。
「……なぁ友季」
「何?クソ眠いんだけど」
「友季は今幸せ?」
「私は衣食住が揃っていればそれは最高の人生だと思っている。そのことは明臣もよく知っているはずだよ」
「そうなんだけどさ……」
「……その上で明臣は私に幸せか聞いてきた。つまり衣食住を除く『何か』が私を不愉快にする可能性があるということだ」
「……」
「んで、お前の不安そうな顔を見る限り、ここから『何か』とは明臣だということが予想できる。あってる?」
「おう」
「夫としての役割は完璧にこなしているのに何故不安を覚えるのか。多分お前は『私が幸せか否か』ではなく『私が明臣をどう思っているか』が聞きたいと考えている」
「…ああ」
「お、ここで自信のない態度をとるってことは、何か後ろめたい要素があるってことだ」
「……」
「『前原友季は彼女の人生を勝手に決めた大御門明臣を恨んでいるのではないか』って質問をしたいならNOって答えてやるよ。私は浮気以外だったらなんでも許してやることに決めているのさ」
「完全に見透かされているな」
「何年一緒にいると思ってんだ。さ、安心したらもう目を閉じろ。懺悔だったらいくらでも聞いてやるからさ」
「ああ……」
「……」
「勝手に結婚を決めてごめん」
「別にいいさ」
「ゾンビのときに手を出してごめん」
「責任取ってくれたし、許す」
「中二の頃、友季の部屋に盗聴器しかけた」
「おいマジかよ……まぁ許す。中学生はみんな頭がおかしいんだ」
「あと当時友季と付き合ってるって嘘バラまいてた。ごめん」
「どうりで女子のあたりが強いわけだよ……許す。というか、さっきのがインパクト強すぎてどうでもいいとすら思えるわ」
「同棲時代、友季の下着をおかずにしてた。ごめん」
「最悪かよ……ちゃんと洗濯していたなら許す。……おいまさか同棲の理由って家賃の節約じゃなくて――」
「盗聴と盗撮まだ続けてる。トイレと風呂にもカメラ仕掛けてる」
「……」
「ゾンビ時代ハメ撮り画像流出させた。ごめん」
「……」
「ときどき睡眠姦してる。ごめん」
「……」
「あと友季の寝顔を毎日――」
「余罪多すぎだろ!!ぶっ殺すぞ!!!」
「でも今許してくれるって!」
「限度があるだろ!!」
ーーーーーーーーーー
大御門明臣という人間はなんとなく生きていた。
人生に目標はなく、理想もなく、夢もなく。
大御門という家の後継者となるべく育てられてきた。
最近、ついに親になった。
多分、娘に近づく人間の多くは彼女の背後にある家のことしか見ないだろう。
だから娘には娘自身のことを見てくれる人間を見つけてもらいたい。
俺にとっての前原友季という少女のように。
彼女自身を一個人として認めてくれるような。
彼女の失敗を許容してくれるような。
彼女が心の底から一緒に居たいと思えるような。そんな人間を見つけてもらいたい。
俺はこれまで自分が不幸な人間だと思っていた。
金銭的に満たされても孤独を埋めることはできないと思っていた。
でも、今は違う
「あの、明臣?なんだよその目と手つきは!?」
「あ、ちょっ!服めくるな!」
「おい、そこは最近敏感なんだからっあ!?」
「先端いじるな!!舐めるな!!乳を吸うなぁぁぁぁああああ!!!!」
人生に目標はなく、理想もなく、夢もなく。
大御門という家の後継者となるべく育てられてきた。
両親は俺を見てくれなかった。
俺に近づく人間は俺の背後にある家のことしか見ていなかった。
だから俺は俺自身のことを見てくれる人間が欲しかったんだ。
俺にとってのそれは前原友季という少女だった。
彼女が俺の傍に来るのは彼女自身の小さなプライドを満足させるためだということはわかっていた。でも、その一方で彼女は大御門ではなく明臣としての俺を見てくれた。
そして彼女は俺が失敗することを許容してくれた。
だから俺は彼女の隣に居ることを選んだ。
俺はこれまで自分が不幸な人間だと思っていた。
金銭的に満たされても孤独を埋めることはできないと思っていた。
でも、今は違う
……俺勝ち組だわ
アイドル顔負けの美少女と親密な仲になって、しかも毎日手料理をご馳走になるなんて最高だな!
彼女を奪われないよう徹底的にマークをし、俺たちが付き合っているという噂を流し、他の男を牽制し続けた。肝心の友季は気づいていなかったけど。
高校はわざわざ実家から通えない所を選び、友季にも受験させた。友季は反骨精神の塊なので少し煽れば誘導は簡単だった。そして家賃の節約を理由にルームシェアを勝ち取った。
……いろいろと理性と戦う場面があったものの、同棲生活はとても楽しかった。毎日一緒に登校したし、夕食の相談をしながらスーパ−に寄って下校した。小さい机を囲んで先生の悪口を言いながら定期試験の対策をした。休日の前には、明日は何処へ行こうかなんて話をしながら並べた布団で眠った。
俺の気持ちとは裏腹に、彼女の中で俺は唯一の親友兼ライバルとなっているらしく、どうしたら彼女と恋仲になれるか毎日妄想していた。
だから、
「住む世界が違う。お前と離れる日がくるんだ。絶対に。……そうなる前に友達作る方法を学ばなきゃね」
そう言って笑う彼女を見たとき、頭の中が真っ白になった。どんな手を使ってでも彼女を手に入れなければならないと思った。だから俺は彼女の生き方を歪めてしまったんだ。
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目が覚めた。
とても懐かしい夢を見た。
友季は俺の腕の中で寝息を立てている。
友季の髪をなでていると彼女が目を覚ます。
「……なんだよ明臣」
口調はキツイものの目は優し気な彼女を真っすぐ見ることができなかったのは夢の所為だ。
「……なぁ友季」
「何?クソ眠いんだけど」
「友季は今幸せ?」
「私は衣食住が揃っていればそれは最高の人生だと思っている。そのことは明臣もよく知っているはずだよ」
「そうなんだけどさ……」
「……その上で明臣は私に幸せか聞いてきた。つまり衣食住を除く『何か』が私を不愉快にする可能性があるということだ」
「……」
「んで、お前の不安そうな顔を見る限り、ここから『何か』とは明臣だということが予想できる。あってる?」
「おう」
「夫としての役割は完璧にこなしているのに何故不安を覚えるのか。多分お前は『私が幸せか否か』ではなく『私が明臣をどう思っているか』が聞きたいと考えている」
「…ああ」
「お、ここで自信のない態度をとるってことは、何か後ろめたい要素があるってことだ」
「……」
「『前原友季は彼女の人生を勝手に決めた大御門明臣を恨んでいるのではないか』って質問をしたいならNOって答えてやるよ。私は浮気以外だったらなんでも許してやることに決めているのさ」
「完全に見透かされているな」
「何年一緒にいると思ってんだ。さ、安心したらもう目を閉じろ。懺悔だったらいくらでも聞いてやるからさ」
「ああ……」
「……」
「勝手に結婚を決めてごめん」
「別にいいさ」
「ゾンビのときに手を出してごめん」
「責任取ってくれたし、許す」
「中二の頃、友季の部屋に盗聴器しかけた」
「おいマジかよ……まぁ許す。中学生はみんな頭がおかしいんだ」
「あと当時友季と付き合ってるって嘘バラまいてた。ごめん」
「どうりで女子のあたりが強いわけだよ……許す。というか、さっきのがインパクト強すぎてどうでもいいとすら思えるわ」
「同棲時代、友季の下着をおかずにしてた。ごめん」
「最悪かよ……ちゃんと洗濯していたなら許す。……おいまさか同棲の理由って家賃の節約じゃなくて――」
「盗聴と盗撮まだ続けてる。トイレと風呂にもカメラ仕掛けてる」
「……」
「ゾンビ時代ハメ撮り画像流出させた。ごめん」
「……」
「ときどき睡眠姦してる。ごめん」
「……」
「あと友季の寝顔を毎日――」
「余罪多すぎだろ!!ぶっ殺すぞ!!!」
「でも今許してくれるって!」
「限度があるだろ!!」
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大御門明臣という人間はなんとなく生きていた。
人生に目標はなく、理想もなく、夢もなく。
大御門という家の後継者となるべく育てられてきた。
最近、ついに親になった。
多分、娘に近づく人間の多くは彼女の背後にある家のことしか見ないだろう。
だから娘には娘自身のことを見てくれる人間を見つけてもらいたい。
俺にとっての前原友季という少女のように。
彼女自身を一個人として認めてくれるような。
彼女の失敗を許容してくれるような。
彼女が心の底から一緒に居たいと思えるような。そんな人間を見つけてもらいたい。
俺はこれまで自分が不幸な人間だと思っていた。
金銭的に満たされても孤独を埋めることはできないと思っていた。
でも、今は違う
「あの、明臣?なんだよその目と手つきは!?」
「あ、ちょっ!服めくるな!」
「おい、そこは最近敏感なんだからっあ!?」
「先端いじるな!!舐めるな!!乳を吸うなぁぁぁぁああああ!!!!」
18/08/06 00:47更新 / 幼馴染が負け属性とか言った奴出てこいよ!ブッ○してやる!
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