連載小説
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6.レッツらセックス
 暑い日はエアコンをガンガン利かせた部屋で一日中好きなことをして過ごしたい、なんて誰もが夢見ることだろう。
 大抵はそこまで熱中は出来なくて、空腹だったり眠気だったり集中の限界だったり、様々な障害に阻まれてしまうもの。遊び続けるのだって楽じゃないのだ。適度な休憩を挟まなければ感性は摩耗するし、それで感動を薄めては勿体ない。ゲームは1日1時間なんて格言もあながち間違っては……流石に1時間は短いな?
 ともあれ、健康な食事が栄養のバランスで成り立っているように、健全な娯楽には時間のバランスが不可欠。どうせ楽しむなら心身万全の状態で味わいたいよね。
 なんて知ったかぶったところで。
 俺はその定石を越えた世界に踏み込んでいた。
 全く腹が減らないし全く眠くならないし全く飽きない。
 強制参加で走らされたマラソン大会の終盤、くたくたな筈なのに妙な全能感に包まれて全速ダッシュかましたアレと似ている。自分では歯止めが効かなくてアクセルベタ踏みでどこまでも……なんて思いつつ、ゴールで力尽きることを悟っているアレ。
 違うのはその"終わり"がまるで分からないことだった。だってこれは客観的に計れる距離の話なんかじゃなくて体感の話なのだ。とめどなく溢れる感情に終わりはなくて、もっともっと深いところに沈んでいく。
 正直に言って怖い。
 怖いが止まらない。
 止めるつもりもまるでない。
 なぜって、彼女が一緒だから。


 ○


「――――――っぁ♥♥♥」
 龍馬は桜羅の腰を鷲掴んで固定した。美しく浮かび上がった腸骨のラインに親指を這わせて痛めない程度にぐっと押し込み、残る四本指で側面を掴む。緊張の手汗と桜羅の発汗で滑りやすいが絶妙な力加減でこれを抑えた。
 そうして獲物を固定した龍馬は肉棒の照準を定める。
 普通であれば、刺激ひとつでビクンと跳ね動く陰茎には片手で抑えておくべきだしなんならもう片手で陰唇を割り開けば確実だ。だがインキュバスになりかけている龍馬に理性的な判断は存在せず、また不要であった。
 ひとたび狙いを定めた亀頭は土手を抉じ開け、磁力で引き合うような正確さで膣口と合わさる。あらゆる感覚がセックスに向けて研ぎ澄まされた状態なら造作もないことだ。
「あ、あ、あッ♥」
 凶悪な兵器を股座に据えられて、桜羅の中の魔物は喜び乙女は恐怖した。僅かに腰を動かそうにも固定されてどうしようもない。
 龍馬は止まる素振りも見せず、腰をゆっくりと突き出してにゅぷにゅぷと埋没させていく。膣口の輪がまるで歓迎するようにカリ首手前までくわえ込んだのも束の間、強烈な締め付けと阻まれるような感覚が届いた。
 ああ、と息をこぼす龍馬。それが刺激からなのか覚悟からなのかは本人にも分からない。ただこれだけは言っておこうと口を開く。
「目に焼き付けたかったです」
「うるさ、」
 卑しいことを言っている自覚はあったのだろう。気まずさを誤魔化すように腰を突き込んで秘所を抉じ開けた龍馬は、その光景を目の当たりにする。
 恥じらいと興奮に全身を紅潮させた乙女が男の無遠慮な発言に憤り、睨みつけた顔が瓦解したその瞬間。一切の感情が性衝動に押し流され、歓喜とも恍惚ともつかないイキ顔を惜しげもなく晒したその瞬間。
「イっ♥」
 即堕ちとはまさにこのことだった。
 境界を越えた先の肉ひだはギュウと引き締まり、カリ首の溝にまで隙間なく絡み付いてくる。心地よい火照りは人肌の魅力を存分に伝え、もっともっと深く味わえと龍馬の身体を突き動かした。最奥までねじり込むのも早々に腰を引いてごりゅっ♥と擦りあげる。
 野太く育った肉傘をくわえ込んでしまった後はもうなし崩しだ。膣に甘えるような乱暴な腰遣いに女はあまりにも無力で、蹂躙による被虐心と身勝手をあやす母性とが混ざり合ってぐちゃぐちゃ。それでもこみ上げる愛おしさはやまず、幸せそうに息を零してパートナーの背中に手を回す。じっとりと汗ばんだ男の汗を拭ってやるように桜羅は肉球を滑らせた。
 言葉は交わしていない。だがその手つきに意図を感じ取った龍馬は女体に覆いかぶさり、布団の上に優しく寝そべらせる。両手をついてピストン運動に注力する姿勢に、桜羅はキュ♥と膣肉を締めて応じる。
 桜羅のとって試合前に交わす握手のような感覚だったそれは、龍馬にとってみれば不意打ちのストレートに等しかった。一日と欠かさず鍛錬に打ち込んだ桜羅の女体はインナーマッスルも完璧に仕上がっており、膣壁は一切の隙間なく肉棒を締めつけ貪欲に男を味わう。
「うっ、お゛ッ……!」
 その刺激に、体位を変えて仕切り直しだと油断していた童貞は呆気なく敗北した。無意識的に腰を密着させ鈴口と子宮口をみっちり重ねながら、陰嚢に溜まり切っていた欲望を情けなく解き放つ。
 龍馬にとって降参の白旗代わりだったその吐精は、桜羅にとってみれば不意打ちのアッパーに等しかった。処女膜を破り膣内の熱烈な歓迎にも屈しなかった雄竿は臨界点を越えた密度で肉欲を溜め込んでおり、束縛から解放された精子は初々しい膣粘膜を揉みしだくように征服していく。
「オ゛ひッッ♥」
 その刺激に、体位を変えて仕切り直しだと油断していた処女は呆気なく敗北した。無意識的に両脚を閉じて股筋をぴっちり重ねながら喉笛を晒し、無防備な姿を見せつける。
 無防備な姿を見せつける、という表現は誤りではない。常日頃から夫を支配し自分の欲望の受け皿とする魔物はベッドの上でもマウントを取りたがるが、オセロメーという魔物は自分の優位性を手放ように出来ていた。人前では一方的なまぐわいを徹底するものの、二人きりの時は対等な立場になることを承知している為である。
 言うなれば、外面を剥ぎ取った本来の桜羅の顔が出てきていた。それを自覚する桜羅が白んだ頭で思い浮かべたのは、昨晩聞いたあの言葉。
(呪い……アイツはこれを予期していたのか?)
 こうなることは必然だったのだろうか。男と関わった以上、魔物の本能からは逃げられないと。
 いや。いや違う。
 この男だったから。突き放した言葉を掛けようが冷めた態度で接しようが、私との対話を諦めなかったこの男だから私は堕とされたのだ。この幸せな地獄に。
 絶頂に腰を震わせる龍馬に組み敷かれた下で、桜羅は喜びに打ち震える。
 夫と定めた男を肯定したがるのはある意味で魔物の呪いのようなものではあるが、生涯を捧げ合う彼女達にとっては当然のことであるし、男のすべてに賛同する訳では勿論ない。過干渉と言われるまで相手を導きたがる例もあるがこれは別の話だろう。
 ともかくとして、男の身も心も遺伝子すら受け入れた魔物の長い長い交わりが始まった。


 ●

「あー、すげえ締め付け……! 吸い付きもうねりも半端ない……トロトロなのにキツキツで……」
 恥骨をぶつけ合い、最奥まで精を注ぎ終えた龍馬は感慨深げに、思わずと言った様子で呟いた。射精から全く萎えない陰茎を満遍なく包む膣中の圧力はまた格別で、瑞々しい肉ひだがピッタリとしがみついてくる様には愛おしさすら覚える。だが、
「あ、あ、中!?」
 徐々に意識を取り戻したその時、蜜壺に突っ込んでいる肉棒の余りの無防備さに愕然とした。先ほどまではまるで正気を失っていたかのようだが、実際正気ではなかった。一種のトランス状態で目の前の処女をぶち抜く以外のことを考えていなかったのである。
「やべえ! やっちまったすんません!」
 子宮口にまで熱烈なキスをしておいて時すでに遅しだが、それでもこのままにするのはマズいと慌てて腰を引く龍馬。
 すると、桜羅の逞しい太股が両サイドから抑え込んできた。
「抜くな!」
「うわぁ」
 ギュウっと締め付けられる甘美な感触にいや増して硬くなる。女体の誘惑は未だ龍馬を苛んだ。肉体精神ともに身動きできなくなった龍馬に対し桜羅は告げる。
「私はそう簡単に孕まないように出来ている。一度や二度出したところで問題ない」
「何それエロい。いや、全然萎えないし二度三度じゃすまないと思うんですけど……いいんですかね?」
 今だってこんなに気持ち良いのに、これ以上気持ち良くなってもいいのかと引き気味の龍馬である。だが桜羅の受け取り方は違った。
「何の疑問だ。よもや、ここまでのことをしておいて孕まれては困ると?」
「まさか! 願ったりかなったりですよ。そらちょっとビビってますけど、何とかなる感じがするっていうか」
「それだけ精を溜めていてはな。あまり調子に乗りすぎるなよ」
「うす」
 頷き、龍馬は覚悟を固める。
 これからこの超絶エロい金髪ポニテ褐色女子と孕まセックスするのだと、ますます正気を失いそうなことを考えてふと思い出す。
 こうも深い関係になったのに彼女のことをろくに知らない。
「そういや順番前後しますけど、桜羅さんって学生ですか?」
「お前のひとつ上だ。ここから西の方にある女子校に通っているが進路は確定済み。タメ口だろうが気にしないが舐めた態度は許さん。連絡先は後で教えるし合鍵も渡すし質問は後で訊くからとっとと動け」
「あっはい。ごめんなさい」
 我慢していたのは自分だけではないらしい。
 食い気味の桜羅の早口に急かされるように、龍馬は腰を突き込んだ。

 ●

「それまてぇっ♥ いグッ♥ イぐイぐイぐッッ……♥―――イっぐうぅぅぅぅ゛ッッ♥♥」
「反応すげえ……こんな感じるのか」
 先ほどと変わらない体位。
 仰向けに寝かせた桜羅に覆いかぶさるような姿勢でピストン運動に興じていた龍馬はばるんばるんと跳ねる乳の動きを楽しみつつ、ふと、嬌声をあげる桜羅のゴワゴワとした首元に目を止めた。
 キスを交わしながら膣を味わうのも良さそうだが、不慣れな自分では相手に合わせるのが難しそうだ。であれば、一方的にできるキスならどうだろう。
 祖父母の家で猫と戯れた時の記憶がよみがえり、その豊かな獣毛に心惹かれた龍馬はその首元を口で掻き分け、口づけた。その瞬間。
「あっ♥」
 桜羅の喘ぎ声の質が変わったのに耳ざとく気づいた龍馬は桜羅の肩を抑え込み、そのままちうちうと首筋に吸い付き、ふわふわとした毛の根本に舌を這わせた。
 結果は先のとおりである。
「やめッ♥ やべれッ♥ イぐッ♥ もぉイっでるがらぁッッ♥」
「首が性感帯とか獣っぽいなぁ。弱いから毛で隠してるんですかね? ちんこの味も一緒に覚えましょ」
 何が面白いかって、桜羅がイク毎に膣の締まり具合がどんどん良くなることだった。形を覚え込むように亀頭裏筋の隙間にカリ首の段差にと細かなところにまでまとわりついてくれる。叩けば叩くほど、舐めれば舐めるほど良くなるのだ。
 気持ちよくしてくれる女に感謝しか生まれない。であれば、感謝を返すのは責務であろう。あと単純に、首を舐めるだけで感じてくれるのが嬉しい龍馬だった。童貞ができる技巧なんてたかが知れてるのだ。
「ア゛♥ イっぢゃッ♥ イグッ♥ イグうぅッッ♥」
「あーめっちゃ搾られる……無限にシコれるわ……」
「おみゃえっ♥ おぼえっ♥ おぼえとけオ"っ♥」

 ●

「くそッ♥ こんな姿勢でっ♥ 屈辱だっ♥」
「だって顔見たくないって言うから。でもこっちもいいっすね」
 後背位に切り替えた主因である龍馬は、膝立ちでのピストンに苦戦しつつ暢気に言った。
「背中めっちゃ綺麗だし尻尾かわいいしケツがギュってしてるのエロすぎ」
 鍛え上げられた背筋は汗の流れる様子まで逞しく、しゅるりとムチのようにしなる尻尾は悪態を吐く態度とは裏腹で腕に絡みついてきていじらしく、膣が締まるごとにキュッキュとすぼまる尻穴はひどく卑猥だった。
「うわ柔らか」
 手を添えれば押し返す弾力と吸い付く柔さを両立した奇跡のバランスで、親指で広げれば素直に形を歪めてくれる。ぱくぱくとひくつく穴に指を這わせるが桜羅は尻を振って抗議した。
「こらッ♥ 広げるなっ♥ そっちはまだ早いぞ♥」
「はーい」
 今は膣で満足しておこうと手を離し、背中を撫でるように揺れているポニーテールに手櫛を入れる。サラサラとして指に一切引っ掛からない手触りは手入れが行き届いた証であり、粗雑な物言いでもしっかり女の子しているという証でもあり、ますます龍馬を昂らせた。
 であれば、視界に映る一番のものに食指が動くのも当然の話である。
「ちょっと身体を持ち上げてくれません? おっぱい揉みたい」
「お前……さっそく調子づいてるな」
 言いながら悪い気はしないのか、腕を伸ばして弓ぞりになってくれる桜羅である。布団に押しつぶされていた乳肉が解放され、たぷるん、と重力を感じさせる球体が持ち上がる。形を歪めて脇からはみ出ていたのならまだしも、持ち上がってなお零れ気味なのは奇跡だ。
「優しい……いやほんとこれに触れるとか一生分の幸せがおッも!? なにこれめっちゃ重!?」
 下乳からすくい上げるように両手を挙げた龍馬はずしっと圧し掛かった重力に思わず本音が零れた。脊髄反射もかくやと言ったところ。それが桜羅の逆鱗に触れた。
「言い方を選べ! 殴るぞ!」
「――ってえごめんなさい!」
 尻肉を収縮させたのが目に見える形で膣内を締める桜羅。万力のごとき締め付けに涙目で謝罪する龍馬である。
 それでも姿勢は変えないことに感謝を告げ、改めて乳房を堪能する。
 甘えるように吸い付く肌質もさることながら、文字通り手の平から零れ落ちる質量は圧巻のひと言。スポブラ越しでも感動的なデカさだと思っていたがあれでもなお束縛されていたのだと感じる。
(……ん?)
 回し込むように揉んだときはたと気づく。正常位の時は乳首を隠すように生えていた獣毛、首の毛と繋がるようにして生えていた毛が消えているではないか。もしや触らせるために毛を隠してくれたのでは、と理解した龍馬はこれは半端な揉み方ではいかんと姿勢を正す。
 無駄な知識だけは付けた触り方を思い出し、痛くない程度の圧力で一定のリズムを与え、安易に乳首はいじらずにひたすら周りを刺激、耳元に軽く息を吹きかけ意識を散らせた隙に次のパターンを、などと頭だけなら回るが実際は、本能に任せた愛撫であった。
 力加減も無茶苦茶な指でだぷんだぷんと乳房を弄び、乳首にはカリカリと指先を引っかけ、吐息をかけるだけだった耳には我慢が効かずにしゃぶりついて唾液をまぶした。
 だがそれもこれも、パートナーの愛撫であれば十二分に受け止めてしまうのが魔物の性である。欲望の発露たる龍馬の前戯に桜羅は乱れた。普段であれば龍馬程度の体重など意にも介さぬ膂力を誇るが、快感に負けて布団に押し付けられる。脱力した重さで歪んだ乳房を受け止めつつも執念で揉むのを止めない龍馬に桜羅は敗北した。
「ぅっふ♥ っく♥ あっ♥ あっ♥ はぐっ♥」
「めちゃくちゃエロい……たふたふ吸い付いてくる……」。
「……おい!♥ 触るのはいいが腰を止めるんじゃない!♥」
 せめて、胸だけで達するのは回避しようと抗議する桜羅。それが愚策だと気づいたのはすぐだった
「あごめん。じゃあちょっと失礼して、」
 ぐにゅい、と思い切り乳房を掴み――これくらいは感じてくれるらしいと気づいた――無理やりに桜羅の状態を持ち上げた龍馬は、恐るべき習熟度で身に着けた腰遣いで膣を抉った。身体を支えることも困難になって龍馬に依っていた桜羅は文字通り、掴みあげられた乳房と膣奥まで突き刺さったチンコとに支えられる状態になる。
「お゛♥、お゛ぅ゛っ♥ うぅぅぅお゛ッッ♥♥」
 抗議の声も快感に流され、しばらくの間桜羅は意味のある言葉を発することができなかった。

 ●

「あむっ♥ むちゅ♥ れろ♥ んぢゅ♥ ぢゅぶ♥ べろおっ♥」
 唇が触れ合うだけの啄むようだったキスは鳴りを潜め、相手の舌にしゃぶりつくようなキスに変わっていた。なんてことはない、舌と舌を合わせた方が気持ち良いと気付いてしまったからだ。舌から送られる脳髄が痺れるような刺激はお互い様だろうと、積極的に舌同士を絡めていく。
 ただそれは、時に一方的な行為でもあった。
「ちょッ、まっ、」
 頭を獣手に抑え込まれているため、必死になって上体を逸らし首を捻って逃げる龍馬だ。先ほどまた体位を入れ替え、いわゆる対面座位の形になった途端、桜羅は執拗に龍馬の口どころか顔中を舐めてきたのである。さながら獣のマーキング。涼しげな顔の美人がべろぉとだらしなく舌を伸ばして舐めてくる様はある種のご褒美ではあるが、下品な唾液の塊がどろっ♥と乗せられてくるのは生理的にくるものがある。それが人体構造を無視した甘い――信じられないことに本当に甘い、柑橘系果汁のような――唾であろうと、流石に鼻の中にまで届けるのはやり過ぎだろう。
「息、できないから!」
 物理的に息を塞がれるので、必死になって逃れる龍馬である。流石に窒息は本意ではないと口を離した桜羅と龍馬の間に、ぬちゃ♥と太い涎の橋が架かった。
「ふん。口が空いたらまた私の首を狙うのだろう、その手は食わんぞ」
「いやもうしないって。イキ過ぎて怖いとかカワイイこと言うから」
 快感に悶えて泣きじゃくる姿は反則的に可愛かったとチンコを固くする龍馬であるが、本気で嫌がるのなら辞めるのが筋である。本気かどうかは追々確かめるとして。
「うるさい! 胸を掴むどころか尻まで叩いてくるとか、好きにやりすぎだ!」
「だってこんな尻肉余ってたらさ。どんだけ揺れるか気になるでしょ」
 首を舐めた時ほどではないが、尻を叩くだけでも相当な反応を見せた桜羅である。潜在的にMっ気があるのではと龍馬は踏んでいるが明言はしない。その方が面白そうだからだ。
 果たして桜羅の両尻は赤く腫れていた。労わるように尻を撫であげてやる龍馬だが、それすらも桜羅には絶妙な愛撫に変わる。
「んんふッ♥ 触るな!♥」
「気持ち良くない?」
「気持ち良いに決まってるだろ!♥ バカ!♥」
 言いながらキスをする。愛おしさたまらず、今度は龍馬を口を開けて受け入れた。唇と唇とを密着させ、ぬちょぬちょとのたうつ舌同士を絡め合う。その間にも龍馬は尻肉への優しい愛撫を止めず、桜羅は腰をぐちゅぐちゅ♥と振るわせて肉棒を楽しませた。
 幾度かの絶頂を迎えた後、おもむろに桜羅は体重を龍馬に預け、そのまま布団に寝かせた。両手を床につきM字型に大胆に股を広げたそれは、いわゆるスパイダー騎乗位の構えだ。
「今度は私が上になる。私も好きにやるからな、覚悟しておけ♥」
「わー楽しみ。胸は支えようか?」
「いらん。魔物の身体はな、弾ませるほどクーパー靭帯が強くなるんだ」
「すごいや」
 言いながら、乳を揉む手は止められない龍馬であった。

 ●

「ふッ……ぅっ、ふーッ……♥ ふッ、ふーッ、ふーッ……♥」
 ――え? なんで止めるの? もうちょいでイケそうなんだけど。
「うる、さい……少し、休憩だ……」
 ――ちょちょ、何で抜くの! マジであと少しだから! もうちょっとだから!
「待て、トイレに、ばか、うごくなうごくなまてまてまで、あ゛ー! あ゛ー! あ゛ー!」
 ――うわあったか……へ?
「ぅ……あ、ぁう、う……いや、いやぁぁぁっ……」
 ――ごめん。ホントごめんなさい。
「……っ、ぐるるぅぅ……」

 ○


 やむを得ない事情で布団から風呂場に移った後も龍馬と桜羅は片時も離れようとはしなかった。悪態を吐こうが憎まれ口を叩こうが身体は何よりも雄弁で、本心をぶつけ合うようにひたすらにまぐわい、求め、貪り合う。
 一度の粗相で恥というタガが外れた桜羅の精力っぷりは筆舌に尽くしがたく、魔力による変化で精神的にハイになっていた龍馬を引かせるほどの乱れっぷりは彼に一生モノのトラウマを刻んだ。性癖を歪ませたという意味で。
 ともすればそれは暴力だ。興奮で火照った肌に刻まれたのは鋭い牙と爪による痕、キスマークによる内出血、躾代わりのスパンキング跡と、互いが互いを傷つけ、それこそ愛の形だと言わんばかり。オセロメーの伝承にもある獣のごときまぐわいが両者の関係を決定づけた。
 幾度となく精と魔力を循環させ続けた龍馬は数時間で完全なインキュバスに成り、食事による栄養補給、睡眠による体力回復が不要な身体になる。
 それを認識する間もなく2人はセックスを止めなかった訳だが、これは普通の住宅であったなら騒音苦情どころか溢れ出た魔力による淫気でマンション全体を巻き込んだセックスパンデミックに発展していたほどである。これが起こらなかったのはひとえに魔物への対策が為された特殊な建造物であったことと、マンション管理人による適切な隔離が行われていた為だ。
 届け物を差し出そうと部屋の前に立った管理人は中の異変を察知し、"外から"鍵を掛けた。何かの拍子に彼らがそのままの調子で出てこないようにする為だ。
 これは緊急的な対応で、通常であれば組織に即報告、数分で対策班が組まれ対応に当たる。しかしこの時の尾瀬桜羅は療養扱いであり、静養中の魔物職員に接触する行為は禁止されていた。パートナーとの関わり合いに水を差す行為は何人たりとも許されないのだ。
 ちなみにそういう目的で休暇をとった職員は通常、パートナーを連れて世界ごと移動するため"こちら"で延々とまぐわうのはイレギュラーと言える。
 ともかくとして、報告は受け取ったものの何もできない組織は「あいつら滅茶苦茶セックスしてるぜ」と囁き合うだけに留まった。
19/08/13 16:47更新 / カイワレ大根
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