連載小説
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微妙な贈り物

「なんだ、これ?」

玄関のインターホンが鳴らされ現れたのは羽の生えたお姉さん。
荷物が届いたと言うことで確認してみれば送り主は淫tube。
先払いで送られてきた荷物を訝しげに見つめていると目の前のお姉さんがそわそわとし始めていた。

「あのう、貰いたいものがあってですね……」

「あっ、ハンコかサインですよね?すぐサインしますね」

「いえ、あなたの……そのぅ…おちんち」

「結構です!」

殴り書きでサインして扉を勢い良く閉めた。
あれ以上喋らせると何を言い出すか分かったもんじゃない……。
でも、ちょっとありだな……。



いかんいかん、そうやってなし崩しゴールインした奴らが沢山いるのに俺は何を考えているんだ……ナニだけに……。
いよいよ毒されてきたな、と頭の中をリセットして届いた荷物を見てみる。
四十センチくらいの小さな段ボール箱に何やら入っている。降ってみるとカサカサ音がするので間違いないはずだ。これが爆弾だったりするのが映画の常だが送り主は幸いにも淫tube公式である。
公式から送られてくるものといえば登録者数が十万人を超えると届くというトロフィーだろうか?
あれは公式の気分次第で毎回形が変わるらしく普通の盾だったり黄金の逸物像だったりと何がくるか分からない。逸物像を貰った投稿者は毎回動画に映るように飾っていたらしいが日に日に小さくなっている、という話があるため闇が深いと思う。

「あれ、CDだこれ」

封を切って中身を見てみれば入っていたのは一枚のCDと説明書だった。



〜お知らせ〜

突然の荷物の郵送、失礼します。
この度は貴動画の活躍を鑑みて会議した結果、淫tube運営本部からこれからの動画投稿の発展をお祈りして、動画作成の一助となればと思い贈り物を致しました。
是非、動画作成やライブ配信に御利用ください。
益々のご活躍お祈り申し上げます。

追伸、ウイルスやバグプログラム等ではありませんのでご安心ください。

淫tube運営ライブ推進課より愛を込めて



なんかめちゃくちゃだな、と思いました。
公式からということもあってか文章を読みながらPCにインストールしてしまった。
十秒くらいで終わったインストールはウインドウが消え、何もアクションを起こしてこない。
あれ、失敗したか?
そう思った瞬間ソレ、は画面の中から姿を現していた。

『ンゥ……』

画面の下ギリギリからよじ登るように出てきたのはプチキャラのような小さな女の子だった。
鎧を着た金髪の。


『ワタシガキタカラニハ!』

「んん?」



思わずマウスポインタを彼女に合わせてしまうと、小さな悲鳴をあげて転んでしまった。








『クッ、ハズカシメハウケン!コロセッ!』

頬を赤く染めて息を荒げる女騎士だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「こんな風にさー、貰ったんだよね」

ライブ配信しながら自分の体を動かして小さな騎士を優しく突いてみる。

『ウウ……、ワタシハマケンッ……!』

息を荒げて物欲しそうに女騎士が見つめてきている。

「なんていうかキャラ強すぎない?一瞬でキャパオーバーしそうなんですけど」

呆れた様子で女騎士を突いたり撫でたりしてみる。
突くとぽてん、と倒れ込んで嬉しそうにこちらを見てくるのでどこか憎めない奴である。

『鬼畜葵たん!』『私も虐められたい……虐められたくない?』
『私のお尻叩いてください』

こちらはこちらでいつもと同じ光景である。

「これって名前とかあるの?というかただの騎士?」

ぐりぐりと優しく脇腹を弄ってみると恍惚の声を上げて喘いでいる。

『あー、それ、デュラハンだね』『多分、姫騎士デュラハン』『初めて見た』『私も』

「姫騎士?デュラハン?」

『首取れるから気をつけてね』『しかもくっころデュラハンだ』『濃いの来たねー』

次々と湧いて出てくるパワーワード。
言われた通りに頭を軽く小突いてみるとコロコロと姫騎士の頭が転がっていった。
あ、画面外にフェードアウトしちゃった。

『配信の手伝いしてくれるよ』『手取り足取り手伝いたい』『私も』『私も』『私も』

「えぇ……」

首がなくなった体は仮想空間に倒れ込んでびくびくと痙攣している。
……これで?




『クッ、コロセー!』

あ、遠くから声が聞こえてきた。

新人淫tuberは大変です。


20/02/03 20:30更新 / つくね
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