連載小説
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我らその名も!
こんな世界が存在する。
言い表すなら作物を作って一生を過ごすような
江戸時代の農家にモニター着き呼び鈴チャイムがついていそうな、
王国のお城に受付のフロントがあって王様まで電話で連絡できるような。
ファンタジー世界と現代がこれまた中途半端に合併したような世界。

【テミスバスタ】

中途半端な文明の発展、それらの中途半端な社会への浸透化が進んだ世界。
色々と国と国とでトラブルこそあったが時代が進みに連れて
発展していく文明を人類は世代交代とともに見守りながら
まぁそれなりに平和な日常を過ごしていた。

しかし、それは突如として現れた。
空の彼方から突然ブラックホールのような
黒い渦が巻き起こったと思えば
突如その渦より舞い降りた女性姿をした無数の魔物娘たち。
そして魔物娘を従える実力者たち、

【魔界幹部会ダークラバーズ】

彼女たちはこのテミスバスタに対して
新たなる支配を宣言。
突然の侵略者に慌てふためきながら抵抗を選択した
テミスバスタの人々。

そして今日も、ダークラバーズによるテミスバスタの
侵略が始まろうとしていた。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



見渡す限りのどかな平原。
快晴の青空、心地よい太陽の日差し、
これで鳥の鳴き声など聞こえれば中々のものだろう。



≪ドカァーーーーーーーンッ≫


しかしここで起こっているのは実はのどかさなどとは程遠い戦闘であった。


「ガァアアーーーーーーッ!!」

轟音が鳴り響く平原の戦場にて、
聞こえるのは男の大声。
しかし戦場だからといって苦痛の叫びではない。
その男の叫び声は闘いに挑むもの特有の…
いや、それはさながら猛獣のような咆哮に近い雄叫びであった。


「た、隊長ぉ!砲撃、効いてません!!」
「お、おのれぇ…!銃士隊、撃ちまくれぇ!!」

ファンタジー特有の中世の鎧に身を包まれながらも
手には近代兵器に近いライフル銃を持った兵士たちが
怯えた表情を浮かべながら、先に仕掛けた砲撃によって巻き上がった煙に向けて銃撃を連続させる。

「やったか!?」
「隊長ぉー!それ言っちゃだめなやつ!!」

そして、雄叫びの主…無数の銃撃を受けてもなお
何事も無かったかのように煙から、人影が姿を現した。
浅黒い肌、紫色の刈上げヘア、黒い服の上にはアメフト選手のようなショルダーガード、肩当てで体を固め、赤いマントと靡かせる。
そして何よりその男に特徴的だったのは目であった。
眼球全体が闇のように黒ずみ、瞳は血のように赤く染まり、
対峙する兵士たちをその瞳に写していた。
まるで兵士たちが血まみれにでもなっているかのように…。
まるで悪魔か地獄からの怪物のような風貌、
彼の姿を見ただけでも兵士たちの戦意は萎縮していった。

「た、たたた隊長、奴は平然としています!ど、どうします!?」
「ば、化け物めぇ!このような危険な戦場になどいられるか!!私は自分の部屋に戻る!!」
「隊長ぉおおおおおおおおっ!!??」

「フンッ!!!」


目の前で起きている茶番同然のやり取りを無視して
その異様な風貌の男は地面に拳を叩きつけた。
すると周囲一体に激しい振動が発生し、
なんと男が打ちつけた拳から銃士たちのいる場所に向かって亀裂が走った。

「わっ、わわわっ!!」
「ひぃー!!」
「た、退却だぁっ!全軍撤退ぃ!!」

およそ人間技ではない光景を目の当たりにし、戦意を喪失した兵士たちは隊長の指示を聞いた瞬間、慌てて戦線離脱を行い去っていく。
残った男はというと、とくに彼らに追い討ちをかけることなく去っていく兵士たちを見送るのだった。









「…………………いぃぃぃ…っったぁぁあァーーーーー!!!!」





そしてだれもいなくなった平原で男は苦悶の表情で叫び、蹲った。

「ちっくしょあいつら!いきなり大砲なんかで撃ってきやがって!!
魔物娘どもならどうとでもなるだろうがオレは人間だぞ人間…!!
しっかもお前これ、煙の中で苦しんでいたところお前…
撃ってくるとか!あんまりだろ!悲鳴上げてたじゃん!!」

苦痛の叫びではないと言ったな、あれは嘘だ。

「頼むよほんっと…。部分強化の術で体を硬くしたって痛いもんは痛いんだって…!!ベースボールだってヘルメットしてても球が頭に当たると痛いだろ!」

だれもいない平原で一人まるで溜まるに溜まっている不満を撒き散らすかのように男は愚痴を連続で零した。


「はぁ、だがまぁこれで戦闘終了だろ。とっとと帰ってゆっくり休むとするか…あぁ、でもどうせ『あいつら』グチグチ言いやがるんだろうなぁ〜…」

彼は自分が得意とする部分強化の術を足へと発動し
一気に自分たちの本拠地に戻ろうとしたところ、
突如その耳に異質な空気音が届くのであった。
それも、無数に…。

「なにぃ…っ!!」

すぐさま振り返った瞬間、男は自分が写した暗黒と真紅の瞳の光景を疑った。
自分に向けて、無数の砲弾が飛来していたのだ。


「グゥッ…グルゥゥアァァァアアアアーーーーーーーッ!!!」


男は再び、獣のような咆哮を上げて自ら持てる力を全力で発動し回避行動に移った。無数に飛んでくる砲弾を避けては弾き飛ばし避けては弾くの繰り返し。自分を通り過ぎた砲弾の着弾地点では轟音が響き、破壊力を物語る。

「ぜぇっ…ぜぇっ……!」

回避に魔力を注ぎ込みすぎたのが原因か、
砲弾を全て回避することに成功したものの、息は上がり汗は流れ落ち、自らの油断を呪った。


「見ろ!奴は弱っているぞ!」
「次弾装填準備!次で決めるぞ!」

見れば兵士たちが逃げていった平原の向こうから
見たことの無い最新式の大砲が一列に並べられ、砲口の先は一点集中でこちらを狙っていた。

(や、やっ、やややややややややっべぇえ〜〜〜!!!!)

内心で無数の滝汗を流し男は焦っていた。
突然の奇襲に魔力の殆どを防御に回してしまったせいで
残り魔力は数少ない。それに引き換え新手の敵兵たちは無数の新型大砲を引きつれ、銃士兵も大量に引き連れている。
元よりこちらの油断を誘う作戦だったのかどうかはわからないが、完全に足元をすくわれてしまった。
この魔力が枯渇しかけた状態では撤退に注ぐ魔力も残っていない。

(か、かくなる上は…!おいおいマジなのか、覚悟を決める的なあれなのか!!)

「ガアァァァアアアーーーッ!!!」


「敵、突っ込んできます!」
「な、なんと命知らずな、迎え撃て!!」


男が選んだ選択肢は玉砕覚悟での特攻。
懐に入り込めばやりようはあると踏んでの行動であった。
威勢の良い咆哮を上げる一方で、男の内心は後悔の涙でびしょ濡れであった。

(ひぃーーーー神様女神様仏様お得意様魔王様なんでもいいからお助けぇーー!!いや、魔王軍のオレが神様祈っちゃダメだろ!
でもこの際だからお助けぇーーーー!!!)

「オオォォオオオオオオオオオ………ッ!!!!!」














「必殺!!ダークプリンセスビィイイイイイイイイイーーーーーーーーンムッ!!!!」




「ぬゑっ!!!??」




突如、決死の特攻を仕掛けた男の後方から
毒々しい色合いをした光線が、無数の大砲に向かって飛来し、
瞬間、轟音と共に大爆発が発生した。

『わぁぁぁぁーーーーー!!!』

その爆発に大砲は粉々に粉砕され、見るも無残な姿へと変貌するも
どういうわけか周囲にいた銃士兵たちは無傷のまま吹き飛ばされていった。

「ぎゃあああぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!!!!??」

そしておまけに特攻を仕掛けようとして巻き込まれた男の悲鳴は爆発の轟音を上回りかねない大声で草原に木霊するのであった。






「げほっごほっ…さ、最新型の大砲が!い、一体何が起こったと言うのだ!!?」
「隊長!あ、あそこの丘の上に!!」
「なにっ!?あ、あの五つの異形の人影…!?
そ、そんな…まさか…!!」






「ふふふっ、その通り!
誰かと聞かれたからには名乗るとしよう!」
「ちょっと姫様!まだ向こうは聞いてませんわよ!?」

「……………我らの名、その魂に刻むことね!!」

「流した!自分のミスをゴリ押した!!」
「仕方ないねぇ、ここはもうこのまま名乗る流れに入るしかないよ!」

「テミスバスタの兵士たちよ!耳掃除をしてとくと聞くがいいわ!
私の名は「わたくしの名は!!」「我が名は!!」」
「ストップ!被ってる!!」
「あんたらなにやってんだい!ここはまず姫が名乗ってから順番に名乗るのってリハーサルしただろ!!」
「いや…姫様が遅いからつい我慢できなくて…」
「ついじゃない!我慢しなそこは!!こういう登場シーンってのは綺麗に決めてこその登場でしょうが!!………って、姫…?」
「わ、われらの…われらの名はぁぁ…ひっく…ふぇぇん…(´;д;`)」
「泣いちゃったよ!せっかくの初登場シーン決まらなくて泣いちゃったよ!!これだからバリバリの温室育ちはぁーーー!!」
『姫様ごめん!!』
「ほら姫、ティッシュ!鼻チーンっ!」
「チーンッ(つд;)」





『………………………』

別の意味で兵士たちは戦慄した。




「…では、気を取り直して。姫!ワンモアセッ!!」
「ずず…よし、うん!
ふふふっ、少し恥ずかしいところを見せたわね」


((((いやほんとに))))



「では改めて名乗らせてもらおうかしら。
そう、私こそ!魔界幹部会!第一位!
リリム!【暗黒未来】のエルナンディルナ!!
私の絶対的な力、味わいたいか人間たちよ!」

「そしてあたしが姫の片腕。
魔界幹部会第二位!
デーモン!【邪悪知識】のクラティカ!!
姫の邪魔をする奴は、容赦しないよ…?」

「ほーっほっほっほっ!私こそかの有名な
魔界幹部会第三位!
ヴァンパイア!【鮮血刃】のソフィリア!!
太陽の光など私にとってはなんてことありませんけどちょっと吐き気がするんで日陰で休んでかまいませんかしら?」

「我らの前に立ちはだかるものは粉砕する!
魔界幹部会第四位!
人虎!【獣腕粉砕】のタラマ!
如何なる壁も我が腕に掛かればクラッカーも当然!」

「色々ツッコミどころあるかも知れませんがスルーで…。
魔界幹部会第五位…
キマイラ、【絶望咆哮】のナクレラ。
正直この人たちと知り合いと思われたくありません」





『我ら!五人揃って!
魔界幹部会!ダークラバーズ!!』(どーーーんっ)







「…………………」
「………………………………………………………」
「…………………………………………………………………………」
「……………………………………」







「…揃った……?」
「……揃った」
「つ、ついに……!」
「とうとう…何十回と練習した成果が…!」
「……………………」

『ぃやったぁ〜〜〜〜〜♪』


みんなでそれぞれ万点の笑顔ハイタッチする光景は微笑ましかったが
……なんだこれ?




「えーっと…つ、ついに現れたか魔界幹部会!!」
「隊長…あれに乗ってあげるだなんて…なんて優しいお方なんだ!!」


















「……オレ、忘れられてね?」

エルナンディルナのプリンセスビームにぶっ飛ばされた彼、一応この物語の主人公…。
魔界幹部会唯一の人間、第六位【狂乱】のギュラスは
吹き飛ばされた拍子に地面に叩きつけられ、地面に人の型を綺麗に残して状態で一人虚しく呟くのであった………。

15/10/04 18:34更新 / 修羅咎人
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■作者メッセージ
どうもお久しぶりの方はお久しぶりです。

今回、どたばたハチャメチャのギャグ路線で
がんばってみたいと思いますw。
忙しい環境故亀投稿になる危険性はありますがあしからず。
設定とか色々ごり押しが目立ちますがそれもあしからず。
文字のミスなどございましたら気付きしだい直していきます。

とりあえず序盤はこんなもんで。
後々うふんあはぁ〜んなシーンも書いていきますはい!
次からは色々と主人公(笑)と幹部たちとの絡みを
書いて行きたいと思います。それではノシ

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