連載小説
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心の洗濯
「えっと……僕は……」
 痺れたように思考のまとまらない頭を抱えて身を起こす。
 まだ見慣れないけれど、この天井は僕の部屋のものだ。
 レンディスに引きはがされ、破壊された鎧は、ベッドの下のかごの中にあった。

 演習は既に終わってしまった。
 印象強く思い出せるのは、僕の顔に迫るレンディスの顔だった。

 僕は既にレンディスに組み伏せられ、撃破寸前まで追い詰められた。

 演習自体はルメリが居たのだからきっと勝ってはいると思う。けれど、戦闘の内容としてはひどいものだった。
 すべては僕が上空への警戒を怠ったことが原因であるだろう。

 情けない、と自分でも思う。だから、もっと強くなりたいと思った。休んでいる時間さえ惜しい。ゆえに、甲冑とカタナを持って、自室を飛び出そうとした。……そのときだった。

「いてっ!」

 白い服を着た女性とぶつかった。
 僕はその女性の大きな胸に抱き留められながらそのまま倒れ、どこかで嗅いだことのある甘いミルクのにおいを嗅いだ。

 ミュリナさんのにおいだった。

「もぅ〜、大胆なんですねぇ〜」

 ミュリナさんを押し倒す形になり、彼女はあおむけに倒れたまま僕の頭を抱き寄せた。ミュリナさんの手には濡れた手ぬぐいが握られていた。僕が気を失ってから、ミュリナさんはずっと面倒を見ていてくれたらしい。そして、ミュリナさんはその手拭いで髪についた乾いた泥をとってくれた。

 

 僕はどうやら、あの演習の後すぐに自室に運ばれたらしい。
 ミュリナさんに髪をなでられ、髪についた泥の不快さと共に感じるのはまだ自分が至らない人間だ、ということだった。
 僕はレンディスに負けた。その事実が楔のように心に突き刺さって抜けない。僕が上空への監視を怠らなければ、きっとメリーアの秘術は別の局面で効果を発揮しメリーアが負けることもなかっただろう。

 悔しかった。不甲斐なかった。エルメリア姐さんの義弟として、王族として、負けは許されないはずだったのに。

 あの班の中で、弱かったのは自分だけだったのではないか?
 
 そういった不安が心に芽生え、鎌首を擡げて僕に襲い掛かる。


 僕はどうすることもできなかった。不安にも抗えず、王族である、という重圧から逃げることもできなかった。きっとこれからも期待される勤めを果たすことはできないだろう。
 こんな自分が嫌になった。自己嫌悪とはこういうことを言うのだろう。
 僕はただただ怯える子供のように、ミュリナさんの大きな胸に顔をうずめて泣いた。

「えっ!? ちょっ!? なに!? とりあえずおっぱい飲む!?」

 ミュリナさんは上衣をずらし、ぶるん! と跳ねる大きな胸を露出した。
 胸の部分だけを覆うチューブトップ越しにも伝わっていた体温が、もっと強く、もっと暖かく、僕の頬や唇に伝わっていく。

 ミュリナさんの背中に手をまわし、ぎゅっと抱きしめた。
 すると、ミュリナさんも返すように僕を抱きしめた。

「もう何〜? なんか嫌なことあったの?」
 優しく、子供をあやすように背中にぽんぽんと少し触れて、また頭をなでてくれる。

 小さくミュリナさんの胸の中で首を振ると、柔らかな胸がプルンと弾んだ。

「言いたくないの?」
「……」

 言いたくないわけではなかった。理解してほしかった。けれど、言えなかったというのが正しいだろう。

 まだ自分が何者であるのかまだあやふやなままで、やれ王族だ、騎士だ、学院だ、演習だ、と僕の身の回りはめまぐるしく変化していった。

 そのなかで、のしかかるプレッシャーを、僕は言語化する術を持たない。

「よしよし、よしよし」

 それでも、ミュリナさんは何も聞かずに、落ち着くまで僕と一緒にいてくれた。こんなに、こんなにも落ち着くことが今まで一度もあっただろうか?

「もう、だいじょうぶです……」

 ミュリナさんの大きな胸に抱かれたまま小さくつぶやくと、ミュリナさんはぱぁっと明るい笑顔で笑った。

「そう? じゃあお風呂いこっか!」
「お風呂……ですか?」

 お風呂。聞きなれない言葉にどこか懐かしさを感じてしまう。
 何故だろう、と思っているとミュリナさんが口を開いた。

「お風呂っていうのはですね、ジパング式の沐浴場なんですよ! あったかいお湯に浸かって、体を温めることで魔力の傷を癒したり、魔力出力の向上を見込めるらしくて、この学院の研究過程学生の研究対象になっているんです」

 ニコニコと笑うミュリナさんに手を引かれ、部屋を出る。

「あとは、ジパングの言葉で、『お風呂は心の洗濯』なんて言葉もあるんです。だからきっと、ゆっくり気持ちいいお風呂を楽しんだら、悩みごとなんて忘れちゃいますよ!」

 
19/03/13 07:42更新 / (処女廚)
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■作者メッセージ
 お風呂回スタートッッッッ!

 ミュリナさんのお湯に浮く圧倒的おっぱいッッッ!


 あと豆知識ですが血行が良くなることによって母乳の出がよくなり、お風呂の中では何もしなくても母乳が染み出してしまうことがあるそうですよ。
 えっちですよね。

 あとは欧州のほうのお国ではサウナは温浴療養施設として裸での入浴が義務付けられていたことがあるそうです。もちろん混浴もあったそうです。

 彫りの深い汗だくヨーロピアン金髪美少女のおっぱいから汗と母乳の混じったエキスがたらたらと流れ出すなんて幻想的ですよね。

 味噌汁の出汁に使いたいくらいですね。

 もちろんジパング式だからみんな全裸です

 男湯……? この学院にいる一人のために予算使うわけないでしょ?

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