連載小説
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おまけ
スターシャン・町外れ



「ふぅ、たった二日離れただけなのに、随分長く離れてた感じがするわ」


転位魔法で、私は魔王城からスターシャンへと戻った。


「魔界の空気が無いから、色が戻ってゆくわ……」


髪の色を白からピンクに戻る。


「誰かが私の美貌に見惚れないようにと」


私は分厚い眼鏡をかける。

「これでよし」


私は魔王の娘第十九王女アンジェラから、どこにでもいる聖職者マリアに戻った。


「ただいま。星と海の町または人と魔物娘が愛し合う町。スターシャン」


「マリア……?」


昨日の朝から耳にしていない声が、後ろから聞こえた。


旦那様が壺を持ったまま立っていた。





「一昨日の夜に余所のモスマンが教会に来た!?」
「そう、丁度フェイが配達員から荷物を受け取っている最中にさ、空からモスマンの気配がしてね。慌てて駆け付けたときにはモスマンが配達員を襲っていて、フェイが何とか配達員毎モスマンを町まで運んだから教会の子供達には燐粉の被害は及んでないよ」
「そうだったの、私がいない間にそんな事態が……なのに私は事情も知らずにあなたを責めて……」
「まぁそこは気にしないで、今日はモスマンの燐粉がきっかけで結ばれたクラーケン夫妻の結婚式が昼から行われるんだ」
「モスマンの燐粉は縁起がいいと言われてるわね。クラーケン夫妻は幸せそう」
「そうでもないさ、燐粉によって病院の患者が発狂する被害があってね。フェイがその事を気にして今日は臨時看護婦として病院で働いてるよ」
「燐粉で幸せを手に入れた人もいれば逆に被害を受けた人もいる。まさに表裏一体ね」
「確かに。ただその患者さんにも好きな看護婦さんがいるようだから、カップル成立は秒読み段階だと思うよ」
「他人の恋に興味津々なんて、あなたらしいね」
「純粋な恋愛が好きなだけだよ」
「一度気になると、最後まで見届けたくなるなんて、誰に似たんだか」
「しいて言うなら、シャス姉の影響かな?」
「その台詞、ネレイス船長の前で言わないほうがいいわよ」
「もちろんさ、ネレ姉の機嫌が悪くなるからね」
「そういえば、ネレイス船長の仕事仲間の出張結婚式、うまくいったの?」
「エミはシー・スライムの夫婦誕生に感動してたよ。それから次の日は件のモスマンの結婚式、今日はクラーケンの結婚式と三日連続結婚式ラッシュさ」
「エミちゃんなら妄想全開で疲れなんて吹っ飛ぶでしょうね」
「そういう、マリアも大変だったんじゃないの?久しぶりの魔王城」
「まぁ、色々と……」
「ふーん……」

旦那様は眼鏡を少し下にずらして、私を見つめる。

「クリアとは仲良くやってるみたいだね。おや、妹達と仲良くなれたんだ。やれば出来るじゃないか」
「またそうやって私を見てる。そんな眼でじろじろ見ないでって言ってるでしょ」
「マリアの髪だって似たようなものじゃないか」
「確かにそうね。でも今の私はその程度の事じゃ動じないし気にもならないわ。妹達が教えてくれたの、この髪もリリムの個性であって、普通と違っても気にしなくていいって」
「マリア……少し変わったね」
「私なりに変わっただけよ。それにラヴとピーシュは私の髪で倒れてしまった後も私に接してくれた。それがとても嬉しかった」

シスター服のポケットから二つの魔宝石を取り出す。

「それは妹達の魔宝石?」
「そう、ラブ&ピース。愛と平和の魔宝石よ」


プロト教会・玄関


「お帰り、マリア」
「お兄さんもお帰り、またラブラブ壺?」
「マリアお姉ちゃん、イカの女の人が男の人にチューしてたけど、チューっておやすみ前以外でもするの?」

「コラ、子供が大人の恋愛を覗いちゃいけません!」

「マリアが怒った」
「アカオニモードだ」
「逃げろー」

「まったく、二日ぶりに会ったのに元気ね。もうちょっと寂しかったと甘えてもいいのに」
「それだけマリアが帰ってくるのを信じてるんだよ。それでも心配する娘もいるけどね」
「お帰りなさいマリア。大丈夫だった?」

河童の少女が玄関から出てきた。

「ただいま、沙羅。私は大丈夫よ。ドルチュはいい子にしてる?」
「ドルチュなら朝からずっと眠ってるよ」
「ドーマウスらしくて、よし!」
「はは、マリアはドルチュには甘いな。そろそろ僕たちも入ろうか、エミも子供達の世話で大変だろうし」
「心配ないわ、沙羅が代わりに見てくれるから」
「相変わらずだね。マリアは」
「それが私よ」

私は笑顔で教会に入る。

リリムのアンジェラとしての私は、今はお休み。

今の私は、この教会の院長ーーマリアとして今日も子供達の成長を見守る。

いつか彼らが大人になって愛を知るその時まで。



終わり?
























プロト教会・院長室



「良かった〜マリアも燐粉の被害から免れていて〜私達仲間だね、そうだよね?」
「ええそうね。私とエミちゃんはモスマンがスターシャンにやってきた夜に町を離れていた出張仲間ね。エミちゃんは三日連続の結婚式で疲れてるでしょう。壺の墨と媚薬投入は私に任せて、エミちゃんはクララ達を聖堂に連れていって」
「はーい」

エミちゃんが壺を残して、院長室を出る。

「さて、夫婦の愛のために墨と媚薬を入れますか」

私は笑顔のまま、結婚式用の壺に墨を適量入れ、媚薬をたっぷり入れた。



今度こそ終わり
13/12/18 22:50更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
こんばんは。
ドリルモールです。

マリアことリリムのアンジェラの帰郷話いかがでしたでしょうか。
話の途中で色々悩みましたが、何とか完結させることが出来ました。


今回の話は『星消す烏賊と閃光の海神官』と『星落とす悪魔と眼鏡の聖職者』に繋がります。

また次回。

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