連載小説
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後編
「……どうだった、かな?」

 水無月さんは気恥ずかしげに微笑んでいる。気がつけばいつの間にか、あの旧校舎へ戻っていた。水無月さんは一人だけで、元どおりケンタウロス種の姿だ。あの勝気な彼女ではなく、はにかみ屋の水無月さん。
 そうか、あれは夢だったんだよな、と今更ながら思う。二人掛かりで前後から挟まれ、ぐにゃぐにゃされて。

「……あ」

 ふと、彼女は俺の下半身に目を向けた。ズボンの下で朝と同じ状態になっているそれに。
 しどろもどろになる俺の前で、水無月さんは制服の上着を脱いだ。ワイシャツ姿で胸部分のボタンを一つ外し、その中……夢の中と同じ、柔らかそうな谷間をちらりと見せてくる。どくん、と胸が高鳴った。

「ここに……挿れて?」

 顔を真っ赤にしながら、誘惑してくる水無月さん。恥ずかしがってはいるけど、夢の中と同じ好色さが瞳に宿っていることに俺は気づいた。エロ漫画だったら瞳の中にハートマークが浮き出ているだろう。
 その視線と、ワイシャツの隙間から覗く谷間。夢の中と同じように、快楽に身を任せたいという欲求が強くなる。

 いつの間にか、俺のペニスは露出していた。彼女はその場に屈み、胸の位置を俺の股間の高さに合わせる。確かケンタウロス属の骨格はラクダの特徴も併せ持っていて、脚を折りたたむことができるんだったか。魔物学で習った気がする。
 磁力が発生したかのように、水無月さんの胸へ吸い寄せられていく。夢の中でされたように、あの柔らかい谷間で揉みくちゃにされる快感を想像しながら。

「……あっ。ゴメン、ちょっと待って!」

 今まさに、ワイシャツの隙間から挿入しようとしたとき。水無月さんは何かを思い出したかのように、脱ぎ捨てた制服をまさぐった。

「えっと……これ!」

 ポケットの中から取り出したのは、小さなボトル。先端が細くなっており、キャップを取るとそこを谷間に挿入し、中身を搾る。途端に甘い香りが漂い、ワイシャツの隙間から見える谷間にねっとりとローションが絡みついた。

「よし……これで、すっごく気持ちいいと思うから……どうぞ♥」

 一層淫らでいやらしくなった胸を、水無月さんは自分から近づけてきた。ペニスの先端がワイシャツの隙間をくぐる。その直後、にゅるんと谷間に埋もれてしまった。

「ううっっ!?」

 ぬめる胸がペニスを擦ってくる感触。思わず声をあげてしまい、水無月さんが驚く。けれど俺が感じているのに気づいて、またはにかみながら微笑んだ。

「気持ちいいんだ……?」

 熱っぽい声で問いかけてくる彼女に、快感がまた増した。夢の中での強気さとのギャップにも胸が高鳴る。この水無月さんにも、あんな風に前後から挟まれてみたい……蕩けた頭でそんなことを思う。
 すると、背中に柔らかな塊が当たった。体の前に手が回り、ぎゅっと抱きつかれる。覚えのある温もりだった。

「これ、気に入ってくれたの?」

 背後に現れた二人目の水無月さんが、耳元で囁いた。さっきの、夢の中の海と同じように

「……ここは……まだ夢……?」
「ふふっ……どうなんだろうね?」

 前にいる水無月さんが悪戯っぽくはぐらかした。顔は真っ赤になっていて気恥ずかしそうで、けれどさっきの強気な彼女と同じ、淫らな感じがあった。

「でもね、敬十郎くんがもっと……もっとえっちなことしたければ……夢が叶っちゃうよ」
「ほら、聞こえる? 蹄の音……」


 カポッ カポッ

  カポッ カポッ

 旧校舎の床に足音が響く。それは左右から聞こえ、俺に息がかかる距離で立ち止まる。
 左に水無月さん、右にも水無月さん。二人は制服のワイシャツを羽織っただけで前を開け、大きな胸と白いおへそを見せていた。気恥ずかしそうに乳首を隠していた手で、俺の手を左右からそれぞれ握り……やっぱり、胸の谷間へと導く。

「えへへ……マッサージしてあげる」
「ちょっと恥ずかしいけど……♥」

 手を谷間に挟んで、優しく圧迫される。ムニムニと形を変えながら手を揉みほぐす感触に、思わずペニスが反応してしまった。ローションまみれの谷間でぴくんと跳ねた肉棒。前にいる水無月さんが「わっ」と歓声を上げた。

「すっごく気持ちよさそう……♥」
「ねえ、『私』たち。お耳のマッサージもしてあげようよ」
「そうだね……お耳にはツボがたくさん集まってるから」
「おっぱいでお手手をむにむにしながら……お耳は、口で」

 左右の水無月さんが、両耳にそれぞれキスして、耳たぶを口に含む。唇や舌だけでなく、歯の冷たい感触も当たったが、痛くはない。優しく丁寧に甘噛みされ、むしろ気持ちいい。
 くちゅくちゅと音を立てながら耳を刺激され、手は柔らかい胸でもみくちゃにされる。おっぱいを揉んでいるのではなく、おっぱいに揉まれている。そして、下半身の方も……

「じゃあ、動かすね」

 ワイシャツの上から胸を掴み、上下に動かし始める。谷間に閉じ込められたペニスにふくらみがヌルヌルと擦れていく。夢の海でしてもらったのと同じくらい気持ちいいし、気恥ずかしそうにしながら淫らなことをする水無月さんに興奮した。耳が左右の口と舌でとろけそうになって、後ろからは優しく頭を撫でられる。
 幸せだ。

「さっきはおっぱい、途中で止めちゃったから」
「今度はこのまま出していいよ?」

 耳を舐める舌の音に混じって囁きが聞こえる。その声に導かれるかのように、射精への欲求が高まってきた。前後左右に感じる胸の柔らかさと質量に身を委ね、自然と目を閉じる。
 ぬるり、ぬるりとペニスを滑っていくふくらみ。左右から耳をくすぐる舌と唇。それらに翻弄されたまま、どんどん気持ちよくなっていく。

 先ほどの海の夢で、俺はすっかり欲望に忠実になってしまっていた。我慢する気もなく、ただただペニスが脈打つのに任せる。

「あっ、出てる……♥」

 嬉しそうに呟き、彼女はより一層強く肉棒を胸に抱く。玉袋の中身全てがその柔らかさに吸い出されるかのようだった。いや、吸い出されている。あまりの気持ち良さに脱力して、左右と後ろの水無月さんに完全に体重を預けてしまう。
 先ほど水着姿の彼女に中出ししたのと同様、全てが溶けてしまいそうだ。その間中、両手はおっぱいで、両耳は口で気持ちよくされていた。

 やがてゆっくりと射精が止まり、胸がペニスからぬるりと離れる。目を開けると、正面の水無月さんは相変わらず赤面しながらもニコっと笑って、服装を整えた。ワイシャツに精液の染みができたのも気にせず、その上に制服を着て、くるりと後ろを向く。
 すると他の水無月さん三人が俺を持ち上げて、正面の水無月さんの下半身……黒い馬の体に乗せてくれた。

「それじゃ、行こっか」

 俺を背中に乗せて、彼女は得意げに歩き出す。その上半身にもたれかかって、胸に手を回し、柔らかさを味わい続ける。ほぼ無意識のうちに。

「……どこへ?」

 ぼんやりと残った理性で尋ねる。

「えっとね……私のお家!」









…………










 次第に頭がはっきりとして、軽やかな金属音が聞こえてきた。
 目の前には椅子に座った自分の姿……いや、鏡がある。床屋で使うようなポンチョを着て座った俺の頭上で、水無月さんが銀色のハサミを踊らせている。リズミカルにチョキチョキと音を立て、髪が少しずつカットされていく。

「そろそろ、切りたかったんでしょ……?」

 優しい微笑みを浮かべ、散髪をしてくれる水無月さん。確かにそろそろ床屋へ行こうかとは思っていた。先ほどの水着姿のように、俺の願望が彼女には分かるのか。

「ここが水無月さんの家?」
「うん。普通の夢よりも、ちょっとだけ現寄りの世界に住んでるの」

 話をしながら、目の前の鏡で部屋の中を見回す。如何にも理髪店だ。待合席には茶菓子の皿や漫画本が置かれ、折りたたみ式の洗面台やシャンプーも完備している。

「私の家、代々床屋さんなの。私も結構自信あるから、安心してね」

 その言葉通り、慣れた手つきだった。見とれてしまうくらいスムーズにハサミを操り、どんどんカットしていく。全く危なげがない。

「全体、少し短めに整えてくね」

 ハサミの鳴る音を聞いているうちに、気分がリラックスしてくる。そのままボーッとしながら、鏡に映る水無月さんの姿に見とれる。

「……よく、来る人にこういうことしてあげるの?」
「うん、癒し部だから。男の子にしてあげるのは初めてだけど」

 ふと気になったことを尋ねると、水無月さんは手を動かしたまま答えてくれた。何故か少しホッとする。

「『男は自分が相手の最初の人になることを望み、女は最後の人になることを望む』っていう言葉があるけど……」

 話しながらも耳付近の髪を少しずつ切っていく。今のは確か、オスカー・ワイルドの言葉だったか。

「敬十郎くんは?」

 耳元で囁かれ、またぞくっとしてしまう。両親のことをふと思い出す。行き遅れたくないというだけで、好きで結婚したわけでもない。外では仲の良い夫婦を演じているだけの、夫婦と言えるのか分からない2人。一緒に暮らしていて疲れるようになったのはいつの頃か。
 続いてあの海で聞いた「処女と童貞の交換会」というワードを思い出した。互いに相手の最初の人になって、けれどそれだけで終わるよりは……

「……最後がいい、かな」

 そう答えると、水無月さんは鏡越しに笑顔を見せた。頬を赤らめながら。

 折りたたみ式の洗面台が展開され、俺は促されるままに顔を突き出した。お湯で髪をある程度濯ぐと、再び顔を上げさせられる。
 そして鏡越しに、水無月さんが胸元を肌蹴るのが見えた。白い大きな胸が露わになって、股間が条件反射を起こしてしまう。だけど、その直後の光景にさらに目を奪われた。彼女が細い指でおっぱいを揉み、膨らみをむにゅっと変形させる。さっき股間で味わった柔らかさ。
 次の瞬間、ピンク色の乳首から乳液が搾り出されたのだ。とろみのある甘い匂いのする液体を、水無月さんは掌に受け……俺の頭に塗り始めた。

「こんなエッチなシャンプーがあるの、夢の中だけだよね……♥」

 優しい手つきで母乳を泡立てる水無月さん。甘い、そしていやらしい香りが部屋中に広がっていき、泡が空中を泳ぐ。頭皮に母乳が染み込んでくるような感触がすごく気持ちいい。だけど同時に、股間の疼きが止まらない。

「痒いところない?」
「……それ、訊く?」
「あはは……♥」
「ふふっ……♥」

 笑い声は前後から聞こえた。今気づいたが、俺の股間は先ほどからずっと丸出しのままだ。怒張したそれが、温かいものに包まれる。女性器とも胸とも違う、温かく、柔らかく蠢く感触。海でしてもらったのと同じ気持ち良さだ。
 しゃぶられている。

 優しいフェラを受けながら、頭をしゃわしゃわと洗ってもらう。流し台へ前のめりになるよう促されると、肉棒が口の奥へぐっと押し込まれる。全体を舐めしゃぶられながら、母乳シャンプーをお湯で洗い流され……そのままお口の中へ射精してしまう。
 体の中がすっきりしていくような気がした。



「……おばあちゃんがね、言ってたの。この人が好きだと思ったら、その直感を信じなさい、って」

 頭を拭いて、椅子の背もたれを倒して俺を寝かせ、耳掃除をしてくれる水無月さん。射精の快感も治まり、性感とは違う心地よさに包まれる。

「私たち魔物にはそういう力があって、それで大体上手くいくから、って。あとは……目覚まし時計に気をつけろって言われたっけ」

 カリカリと耳かきが擦れる音と一緒に、彼女の声が優しく入ってくる。入れ替わりに梵天が入り、ふわふわとした感触が耳の中を刺激する。夢の中なのに眠くなってきた。

「私、そんなにはっきり自分を信じられるのかなって思ってたけど……」
「今朝、敬十郎くんと手が触れたときに……この人だ、って分かったんだ」

 すべすべとした手が顔を撫でていく。それの手の動きに釣られるように、だんだん眠くなっていった。夢の中なのに。

「夢を通じて、敬十郎くんの疲れの原因が分かったの」
「疲れを癒してくれるはずの家が、疲れの原因……辛いよね。だから……」

 次第にフェードアウトしていく意識。最後に見えたのは、俺を見下ろす瞳だった。


「私、敬十郎くんを私のものにしちゃう」












 ……次の日から、俺の日常はいろいろ変わった。家から街中を歩いて通学することはなくなり、いつも夢から醒めれば学校にいる。そして下校後は夢へ帰る。
 彼女と一緒に。

「お待たせ、敬十郎くん」

 ホームルーム後、いつも旧校舎で待ち合わせる。俺は部活に入っていないが、水無月サエリさんは変わらず癒し部にいる。ただし……こう言ったら恥ずかしいけど、俺専属だ。他に部員としてやることは後輩への指導で、特に散髪に関しては彼女から教わりたがる子が多いらしい。

「……今日はどうしよっか?」

 現実世界でのサエリさんはいつもはにかみながら俺を背中に乗せ、肩越しに振り返り訊ねてくる。

「俺は……草原がいいかな」
「じゃあ、お散歩しよっか」

 サエリさんは歩き出す。俺は彼女の髪に顔を埋め、胸に手を回し、目を閉じる。
 蹄の音を聞いているうちに、涼しい風が頬を撫でた。

 目を開けると、緑の草原が一面に広がっている。夢の世界では何もかも自由自在だ。緑の絨毯のような草が風に揺れ、波打ち、音を立てている。晴れ渡った空の下、サエリさんはゆっくりと歩く。
 俺は彼女の背中にもたれかかって、胸を揉んだりする。制服越しでも柔らかさが気持ち良い。

「んぅ……そんなに揉むと、母乳でちゃうよ……♥」

 くすぐったそうに振り返る彼女とキスをして、そのうち足が止まる。やがて二人とも服を脱ぐ。散歩と言っても結局いつもこうなる。

 水無月さんと会ったあの日から、もう家には帰っていない。両親はそれがきっかけで色々と考えたらしく、離婚するつもりだと連絡が来た。俺は賛成だ。仲が良いように見せかけるだけの仮面夫婦でいるより、そっちの方が前向きだろう。

 起きているときも夢にいるときも、俺はもうサエリさんに囚われている。だからこそ今までの息苦しい家から解放され、自由になれた。

 そして何より、心の中に抱えていた不安……自分もいずれ両親と同じような家庭を作ってしまうのではという悩みも消えた。そんなことは有り得ないと今なら断言できる。


 サエリさんとキスを交わし、体に触れ合う度、それを実感した。




 ―fin
21/11/02 07:06更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ
お読みいただきありがとうございます。
いやはや、やっと書けましたわ。
仕事量の増加と優秀な人材が他部署へ回されるせいで、毎年ハードになる一方ですが、とりあえず漢方薬のおかげで体調は好転しつつあります。
今後もぽつぽつとですが書いていきます。

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