読切小説
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負けられない戦い
  一日目
今日は晴れ。
私の出番は無い。早く使われる日が来て欲しいな〜〜。

  二日目
今日は晴れ。
又私の出番は無い。戸の側らで逆さに立っている。

  三日目
今日も晴れ。
またも私の出番は無い。でも明日は雨が降ると誰かが言っていた。
明日に期待しよう。

  四日目
今日も晴れ。
どうして?今日は雨じゃなかったの?・・・気を取り直して待つ事にしよう。

  五日目
今日も晴れ。
なんでなんだろ〜〜。私がここに来てから晴ればかり。オカシイナ〜〜。

  六日目
今日も晴れ。
明日こそはと期待してみる。・・・・雨にならないかな〜〜。

  七日目
今日も晴れ。
早く雨になれ〜〜、早く雨になれ〜〜と念じてみる。

  八日目
今日も晴れ。
念じ方が足りなかったかな。もう少し強く念じてみよう。

  九日目
今日もはれ。
より強く念じてみる。・・・やり過ぎたら倒れちゃった。

  十日目
今日も晴れ。
雲一つ無く恨めしい。晴れなんて嫌いだ。

  十一日目
今日は曇り。
私の祈りが通じてきたみたい。この調子で頑張ろ〜〜。

  十二日目
今日も曇り。
気合を入れて念じ続ける。・・・・夕方、軒下に何か吊るされた。
なんかやな感じがする。

  十三日目
今日は晴れ。
何で!!もう少しだったのに!!

  十四日目
今日も晴れ。
原因が解った。あの吊るされたヤツ!アイツは「テルテル坊主」というヤツで天気を晴れにする力があるんだ。何よ!こっちを見て笑っているなんて。

  十五日目
今日も晴れ。
く〜〜〜!!相変わらず笑っていて!!いいわよ!!!こうなったら勝負よ!
絶対降らせて見せるから!!!

  十六日目
今日も晴れ。
ヒタスラ念じ続ける。雨よ降れ〜〜!雨よ降れ〜〜!

  十七日目
今日も晴れ。
ヒタスラ念じ続ける。雨よ降れ〜〜!!雨よ降れ〜〜!!雨よ降れ〜〜!!

  十八日目
今日は曇り。
良し!!この調子で一気に勝負をつけてやる!!雨よ降れ〜〜〜〜!!!

  十九日目
今日も曇り。
雲の色も黒い色が多くなってきた。これなら!!・・・・夕方、とんでもないことが起こった。アイツが増えていた!しかも五人に!!
油断した、念じ疲れて寝ていた間に援軍を呼ぶなんて・・・

  二十日目
今日も曇り。
何か雲の色が薄くなっている?負けるもんか〜〜〜!!

  二十一日目
今日も曇り。
雲が、雲が凄く薄くなってる〜〜!!このままじゃ負ける、そしたら私の出番が・・・

  二十二日目
今日も曇り。
毎日力の限り念じ続けてもう限界・・・このままどこかの引き出しに仕舞われてしまうの。・・・・夜中、軒下にまたアイツがつるされた。私にトドメを刺すつもりね!なんてヤなヤツ!!!・・・あれ、よく見たらアイツと違う。頭を下にして逆さになっている。・・・ま、いいか。それより念じるのよ!!

  二十三日目
今日は晴れ。
そ、そんな!!こんな事って・・・・・いつの間にか夜になっていた。このまま仕舞われてそのまま忘れ去られてしまうと思うと。・・・あれ、なんか空が暗いな。あ!月が出てない!!

  二十四日目
今日は雨!!!
やった!やったやった!!!雨だ!雨が降ってる!!!遂に私の出番だ!!!
さあ、早く私を使って!早く早く!!!!




「行ってきま〜〜す」
 玄関を開けて外に出ると手に持っている傘を広げる。今広げたのは古道具屋で見つけた番傘で、何となく気に入ったのでネダリに強請って父さんに買ってもらった。この傘を刺して出掛けるのを楽しみにしていたんだけど、今まで晴れ続きでこのまま使えないのは悔しいと考えて、
「まさか『ルテルテ坊主』が本当に効くなんて。やってみて良かった」
 雨の中を上機嫌で歩いてゆく。所々にある水たまりをピョンピョンと飛び跳ねて避けながら鼻歌まじりに歩く。
「これからもよろしくね」
「はい、ご主人様」
14/07/14 19:14更新 / 名無しの旅人

■作者メッセージ
子供のころ新しく買ってもらった物を早く使いたくてこんな事しませんでしたか?私はこれをして怒られました。


ルテルテ坊主・・・頭を重くして吊るすことで雨を降らせる効果があると云われている。テルテル坊主を逆さにしたことからこの名前が付いたとか。

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