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第九話 ジパング 後編

古い旅館。
日も沈み、虫たちが泣く頃。
薄暗い部屋の中で布団が一枚敷かれ、寒いのか頭まで被っている宿泊客とおもしき人物。
それはまるで何かに怯えているようにも見え、隠れているには程遠い間抜けな姿である。

そんな客人の部屋の襖がすぅー…とゆっくり開かれた。

「…ふふふ、よくお眠りになって。」

声はすれども姿は見えず、開いた襖の向こうには誰もいなかった。
だが、女性とも思える声は段々と近づいていく…それも天井の方から。

「この感じ…溜まりませんわ…。」

ゆっくりと天井から下りてきて声の主は布団の上に覆いかぶさった。

それはまるで蜘蛛の姿をしていて逃がさないと残りの足で布団の周りを囲んでしまう。

「さぁ、その綺麗な寝顔を見せてくださいな…?」

待ちきれない様子で布団に手をかけ毛布をめくった。

その中には―。

「?!」

大きな鞄が置かれていただけだった。

「そこまでだ。」

急に明かりが照らされ声の主が眩しさに目を細めた。
光で照らされたその姿は下半身が蜘蛛になった旅館の女将だった。

「女郎蜘蛛か…情報通りだな。」

仁王立ちする男、アレスが明かりの蝋燭を持って女郎蜘蛛へと近づく。

「…!」

女郎蜘蛛は隙を見てアレスに飛び掛ったが逆にアレスに首筋を掴まれ、アレスに押し倒されてしまった。

「妙な気は起こすなよ?」

女郎蜘蛛の首になにか冷たいものが当てられる。
それは女郎蜘蛛本人も良く知っている代物だった。

「…それは。」
「そう、これはあんたの同業者が使っていた痺れ針だ、威力は…聞かなくても解るな?」
「…二人をどうしたのですか?」

女郎蜘蛛は急に殺気を込めた目でアレスを睨みつけた。
どうやら彼女は勘違いをしているらしい。

「待て待て変な誤解をするな…ちゃんと生きてるよ、二人からあんたの事を聞いたんだ。」
「ななとたまから…、では私は売られたと?」
「だから誤解だ、俺は別にあんたを狩りに来たわけじゃない、その辺の説明をしたいがいいか?」

女郎蜘蛛は少しアレスを観察した後、諦めたように言った。

「…わかりました、どの道今の私に抵抗は出来ません。」
「ジパングの魔物は大人しくて助かる。」

アレスは女郎蜘蛛に向かい合って話した。


――――――――。


「なるほど…、魔王様の命ですか。」
「あぁ、だが強制はしない。…判断はそちらに任せる。」
「…さあて、どう致しましょうか?」

意地悪そうにふふっ、と笑う女郎蜘蛛の『アサギ』。
俺に危険がないとわかると手のひらを返したように生き活きとする。
彼女たちがこういう笑い方をするときは決まって良くない。
俺の長年の経験がそう言ってる。

「協力しても良いのですが、条件がございます。」

「条件?」

半ば予想できた答え、多分その条件とは…。

「私と一夜を共にし、満足させてもらえるなら貴方と夫婦になりましょう。」

やはりそうきたか…。
まぁどの道そうせざる負えなくなるが、問題は体力が持つかどうか…。

「…わかった、どうしたらいい?」
「ではまず…。」

そう言って急にアサギが俺の首に手をかけ優しく抱擁した。
彼女のその首筋から甘い女性の香りが鼻を擽らせる。
そして魅了を込めた目で俺に言った。

「動けなくしましょう。」

えっ、と俺が聞き返す前にアサギが離れていく。
その瞬間、俺は四方八方から飛び出してきた蜘蛛の糸の様なもので拘束されてしまう。

「い、いつのまに…。」
「ここは私の領域(巣)、このくらい出来て当然でございます。」

不敵な笑みをしながらゆっくりと近づいてくるアサギがおもむろに俺の浴衣に手を掛ける。
そしてするすると肌を露出させた。
その出てきたアレスの身体に、アサギはうっとりとした視線を向ける。

「はぁ…なんて逞しい、肩から胸に掛けての傷が痛々しいですが…それも一つの魅力…これほど魅力のある殿方は初めてですわ。」
「…世辞を言っても何も出ないぞ?」
「いいえ、出していただきます…このいやらしい臭いのする所から…。」

動けない俺を良いことにアサギは首筋や胸元を舌でねとりとなぞっていく。
その時に触れる彼女の豊満な胸がダイレクトに伝わり、生暖かく柔らかい感触が俺の肌に伝わった。
そして徐々に彼女の舌は下半身の方へと向かっていく。

「ふふふ、こんなに盛って…魔物の私でも興奮してくださるのですね?…苦しそうですし、慰めて差し上げます。」

彼女は反り立った肉棒を手で愛でながら先端を舌で擽った。
滑りとした感触が肉棒を包み、快楽を与えてくる。

「う、うわぁ…。」
「はぁ…その表情、良いですわ…そんな顔されたら頑張らないといけませんね。」

急にアサギが俺の肉棒を根元までくわえ込み、激しく口元を動かした。
空気の漏れるいやらしい音が部屋に広がり、俺が動けない分彼女のなすがままとなっていた。

「んぶ…ぶはぁ、どんどん大きくなっていきます、なんて逞しい一物なんでしょうか…。」

興奮した彼女は今度は根元を胸で挟んだまま吸引し始めた。
両手で挟み込まれた柔らかい谷間に肉棒が隠れてしまい、そこから出た先っぽを口で舐めていく。
唾液で滑りが良くなった肉棒が谷間を這うように出し入れを繰り返し、彼女の口へ入っていく。
激しさを増し、上下に滑らかに動くように肉棒をしごいていく頃には、俺はもう限界だった。

「もうイってしまわれるのですね?!胸に挟まれてこんなに大きくした一物から沢山出してくださるのですね?!…私の口にいっぱい、いっぱい精をかけて下さいっ!!」

彼女の興奮し切った叫びにあわせて俺は彼女の口目掛けて射精した。
どくどくと白い濁った液体が彼女の口の中へと入っていく。

「んぐっ…ん、ゴク…、ゴク…。」

最初は驚いて目を見開いていた彼女だったが次第にとろんとした表情でゴクゴクと精を飲み干していく。
量が多かったのか離したあとも口元から精が流れ出ていた。

「ふふ、…こんなに沢山いただけるなんて、溜まってらしたのですか?」
「いや、そういうわけじゃないが。」

昨日たまとななに襲われたばかりだというのに…。
俺もまた盛り始めてきているのかもしれないな、薬をそろそろ飲まないと。

「さぁ、もういいだろ…そろそろこれを外してくれないか?」

俺は腕や足に絡まった糸を見ながらアサギに言った。
だがアサギはまた意地悪そうな笑みを浮かべている。

「いいえ、私はまだ満足はしていませんわ?」
「…なんだって?」
「まだ、ここが残っていますよ…。」

そういうとアサギは裾を捲り上げ、陰部を晒した。
もう待ちきれないのか蜜壷から涎が出始めている。

「まさか…。」
「ここまで来てよもや若い女子の疼きを無碍になさるおつもりですか?」
「いや、もう俺は―」
「大丈夫、もう盛りきっていますわ…。」

八本の足を使ってアサギが器用に俺に抱きついてきた。
抱きついた拍子に肉棒の先端に滑りとした感触が伝わった。

「ぁん…もう待ちきれません、挿入しますね…。」

胸で顔を圧迫されながらゆっくりと肉棒が蜜壷へと入っていく。
そのとろけるような感触に俺の理性はなくなり、身体の全てを使って彼女を求めた。
…それが朝まで続いた。

――――――。


「旦那…大丈夫ですかい…顔色が良くないでっせ?」

ヨスケが心配そうに俺を見ながら話しかけてくる。

「あぁ…寝不足なだけだ、気にするな。」
「寝不足…あの旅館は気に入りやせんでしたかい?」
「いや…女将が綺麗すぎてついな。」
「そうでしょうとも…あんなに美人な女将もそうはいませんよ、しかし朝から旅館に行きたいだなんて…旦那も変わってますね?」
「…一度は行ってみたかったところなんだよ。」

本当はたまとななに同業者の居所を聞いて行っただけなんだが、面倒だからそういうことにしておこう。
あれから一夜終えて女将に起こされたときはかなり驚いた。
あの姿からは一変して大分おしとやかになってしまったんだからな、一瞬別人かと思ったぐらいだ。
…無事にヴェンのもとへ送って殆ど一睡しないままここにいる、そりゃ、やつれもするさ…。

「さて…今回はどちらへ?」
「それなんだが、ここを観光するのは今日で最後になるな。」
「最後…?」

俺の言葉にヨスケはキョトンとした顔になった。

「…お帰りになるんですかい?」
「いや、この町を出るだけだ…いろいろと行きたいとこがあってな。」
「道のりはご存知で?」
「適当に歩いてればなんとかなる、これまでだってそうしてきた。」
「そいつはいけねえ!…この辺は山道が多いからすぐ迷っちまいますぜ?…悪いことは言いやせんからやめといたほうが…。」
「すまんな、どうしても行かなきゃならないんだ。」
「しかしね…。」

ヨスケは心配そうに見ながら唸って考えていたが咄嗟に何かを思い出したかのようにぽんっと手を叩いた。

「そうだ、じゃああっしがせめて地図を書きやす。」
「地図?」
「どこまで行くかは知りやせんが…それなりに知られた所ぐらいなら作れやす、ちなみにどんなところへ行きたいんです?」

勝手に張り切るヨスケに若干押されながらも俺は行き先を考えてみる。
…無論彼女たちが出来るだけ多く出るような道のりが良い。
聞いた話によればここの彼女たちは親しまれていて地域によっては神として崇められている所もあるらしい。
となれば…。

「…そうだな、なるべく妖怪やらなんやらが出るところを頼む。」
「ちょ、旦那、気は確かですかい?!」
「大真面目だ、ここの妖怪は皆親しいんだろ?」
「それはこの町にいる妖怪がの話ですよ…山の方になると襲ってくる奴もいるかもしれやせんぜ?」
「危険なぐらい知ってるさ、それでも俺は行く。」
「でもね…。そもそも…旦那はどうしてそこまで妖怪にこだわるんですかい?」

怪奇な顔をしてヨスケは俺に確信めいた事を聞いてきた。
嫁にするためだなんて言ったら卒倒されそうだし、かといって俺にはそんな言葉巧みには
説明できない…。

「…色々と興味があるからな。」

説明できないからこれぐらいしか思いつかなかった。

「…。」

ヨスケはじっとこちらを見つめたまま黙っていたが程なくして諦めたかのように肩をすくめた。

「ふぅ…旦那には恐れ入りやしたよ、…じゃあなるべくそういう所を重心的に作りやす。」
「…すまんな。」
「いいんでさぁ、お得意様の頼みとあっちゃ断わる訳にはいきやせんからね、ささ、地図は明日お渡しするんで、今日は最後に相応しい観光にしましょう!!」
「おう、頼んだ。」

いつも通りにヨスケは張り切りながらここを案内してくれた。
…この嬉しそうな元気な声も今日限りだと思うと少しだけ寂しく思えた…。



―――――――。


「いやぁ…面白かったですね旦那?」
「あぁ、そうだな。」

芸やら食べ物やらなんやらを体験するうちに時間は過ぎ、辺りは薄暗くなっていた。
周りでは酒を酌み交わし、騒ぎ立てる店が多くなっていく。

「本来ならここでお開き…と言いたい所ですが今回は少し長引かせましょう。」
「大丈夫なのか?」
「酔っぱらいにさえ気つければ大丈夫でさ、それより夜道は暗くなるんで提灯がいりやすね。」
「提灯…あぁ、あの店の前とかにぶら下げている紙で出来た奴か。」
「そちらでは『らんぷ』とか言うんでしたっけ?…これから旅に出るんなら提灯ぐらいは必要でさぁ、とりあえず暗くなる前に仕入れときやしょう。」
「そうだな…じゃあ適当に―」

頼むと言いかけて俺は歩いている足を止めた。
そのまま周りを見渡す。

「…旦那?」

急に止まった俺を見てヨスケが不思議そうに見つめる。
俺はそこからある薄暗い路地の方を見ていた。

「今…確かに―」
「どうしました、旦那?」
「いや、気のせいか…?」

俺は首を傾げてその場を立ち去ろうとした。
しかし…。

「…―――。」

また”聞こえてくる”。

(気のせいなんかじゃない…何処だ?)

何かが啜り泣くような…消え入りそうな声だ。
路地の方へ近づいていくとそれは自然と消えていき、ある物の前で完全に止まった。
…これは?
何となく手にとってみる。

「それは…提灯ですかい?」

見た目は確かに提灯だがぼろぼろすぎて辛うじて提灯だと分かるぐらいだった。

「こりゃまたボロい提灯ですね…でも紙張り替えりゃまだ使えるだろうに勿体ねぇことしやがる。」
「…。」
「旦那、この提灯がどうか―」
「これだ。」
「へぇ……え?」

俺の突拍子もない返事にヨスケは俺を二度見した。

「旦那、まさかとは思いますが…?」
「この提灯にする、修理できそうなところはないか?」
「やっぱり…あるには有りやすが無理に拾うことは無いですぜ?提灯なんてここじゃタダで配ってるようなもんだし…。」
「いや、これじゃなきゃダメだ…そんな気がする。」
「はぁ〜…まったく旦那の頑固さには敵わねえ、ちょっとまってくだせぇ?」

そう言ってヨスケは近くの民家に入り家主に何かを話をしていた。
ヨスケが帰ってくると手に薄い紙を持って来ていた。

「お待たせしました、もう遅い時間ですし…あっしの家で修理しましょうか。」
「…いいのか?」
「狭いとこで申し訳無いですがそこが一番でしょう…ささ、こちらです。」

ヨスケに連れられて俺は彼の家へと案内された。
独特の文化の家々が並ぶ中、その一つの暖簾を開け中へと入っていった。


――――――――。


「…こうか?」
「あぁ、違いやす…もっとシワなく…。」

ヨスケに指導を受けながら提灯の紙を張り替えていく。
ジパングの文化は繊細なものが多く、紙を張り替えるだけでも一苦労だ。
こだわりがある分、中々難しい試みで俺も汗をかくほどに苦戦していた。

「ふぅ…こんなもんですかね、じゃあ仕上げと行きましょうか。」

形だけならほぼ出来上がった際にヨスケは黒いインクの様なものと毛のついた棒を持ってきた。

「それは?」
「墨と筆です、これで提灯に文字を書くんでさ。」
「文字…名前でも書くのか?」
「それでも良いですがどうせなら好きな言葉を書いてみてはどうですかい?」
「…そんなの書いても良いのか?」
「細けえこたぁ抜きにしましょうや、さ、何を書きやす?」
「そうだな…。」

筆を持ち頭に自分の好きなものを考えてみる。
いや、大切なものと言うべきか、イメージは大体出来ているから後はどう言葉で表現するかだ。
…こういうのはなるべく真剣に考えたい。

「…よし。」

頭の整理がつき、墨をつけた筆を紙の上へと走らせた。
黒いインクが紙に染まっていき、独特の形を彩っていく。

「…。」

ヨスケに見守られながら俺は二つの文字を書き終えた。

「どうだ?」

額の汗を拭いながら俺はヨスケに出来栄えを聞いてみた。

「旦那…これって。」

ヨスケは微妙な顔をしている。

「…変かな?」
「いや…言葉は素晴らしいんですが…良いんですかい?」
「何がだ?」
「だって…一昨日もその…。」

ヨスケはなぜか歯切れの悪い返事をする。
一昨日…?
一昨日と言えばななとたまに―。

「あぁ、そういうことか…心配するな、これで良い。」
「そうですかい?…意外とさっぱりしてやすね。」

最後に書いた紙を提灯に貼り付け完成した。
二人で顔を見合わせて笑う。

「ありがとう、お前には世話になりっぱなしだな。」
「いえいえ、あっしも旦那といて楽しかったですよ…さ、最後の記念に祝杯といきやすか!」

ヨスケは奥の押入れから酒を取り出してきた。

「今日はぱーっと飲んじゃいましょ!!」
「おいおい、俺は旅館に―」
「もう少しぐらい良いでしょ?…ささ、どんどんいきやしょう。」

そう言ってヨスケに酒を注がれてしまった。
やれやれと思いながらも俺はヨスケに少し付き合うことにした。
だがこの時は…俺は心底ジパングに来て良かったと思えた。


―――――。


「うう〜、くそっ。」

自分の部屋に帰ってきてそのまま布団に倒れ込んでしまった。
まだ頭がぼんやりして思うように動かない。

「ヨスケめ…強いのは止めろといったのに。」

下戸というわけではないがそれほど強い酒は飲めない。
あの後、酔ったヨスケにどんどん注がれてしまい結局フラフラになるまで飲まされてしまった。
明日ちゃんと起きれるだろうか?

「そうだ…提灯。」

酔った勢いなのか興味なのか分からないがせっかく作った提灯なので俺は火を灯してみることにした。
すると暗かった部屋にすっと明かりが灯り、ゆらゆらと光を放っている。

「…。」

幻想的な空間。
頭がぼんやりしているせいかもしれないがその光がとても美しく見えた。
それはまるで生きているかのように魅力を放っている。

「綺麗だな…。」

そこから俺の意識は暗いまどろみへと落ちていった。


――――――。

ゴソゴソ。

「…?」

いつの間にか寝てしまっていたようだ。
薄く目を開けてみるがぼんやりしてよくわからない。
だが確かに枕元で物音がした気がした。

「素敵です…♪」

少しずつ鮮明になってくるとそこには小さな人影が見えた。

「…?!」
「あ、ごめんなさい…起こしてしまいましたか?」

目の前の少女は深々とお辞儀する。
俺は飛び起きそうになったが頭がはっきりしてないせいで体が動かない。
二日酔いも入っているようだ。

「だ、誰だ?」
「『ちう』でございます、えーっと…旦那様は初めましてですね…。」

ちうと名乗った彼女は身体が火のように明るい、…いや火自体を宿した少女だった。
妙に露出の高い和装、そして人外と思わせる姿から魔物であるという事だけは見て取れる。
だが一体どこから入ってきた?
酔っていたとはいえ何も聞こえなかったし気配も近づかれるまで殆どなかった。

「旦那様の寝顔を見ていたらついつい見とれてしまいまして…。」

頬を赤く染めながらちうはもじもじとする。
というよりなんで彼女がここに?
待て…”旦那様”?

「待った、さっきからなんで俺の事を旦那様と呼ぶんだ?」

いろいろ疑問に思ったことはあるがとりあえずそこを彼女に聞いてみた。
すると彼女は当たり前のように話し始めた。

「旦那様は朽ち果てていた私を拾い上げてくれた命の恩人です、持ち主でもある殿方を旦那様と慕うのは当然でしょう?」
「でも、俺はお前を助けた覚えは…。」
「まだ…お気づきになりませんか?」
「…?」

少し含みのある言い方に俺は頭を捻らせる。
…そういえば彼女はどことなく何かに似ている。
例えば…提灯とか?

「…まさか?!」

俺は焦りながら部屋を見渡したがどこを探してもある物だけが見つからなかった。
それは今日ヨスケと共に作り上げ、寝る前に部屋で灯した―。

「提灯…。」
「やっと気付いて下さいました…♪」

ちうが急に立ち上がり、くるりと背中を見せてきた。
そこには紛れも無く俺の書いた二文字が書かれていた。

『妻愛(さいあい)』

最愛という字をもじった俺なりの言葉だ。
その文字が彼女が俺の提灯であるという決定的な証拠だった。

「こんなに素敵な言葉を頂けて…ちうは幸せでございます。」
「そ、それは良かった。」
「ですから…ちうは旦那様に恩返しがしたいです。」

するとちうはかけていた布団を捲り上げ、俺の上に跨り始めた。

「どうかちうの全てを…存分にお使いください。」

するすると自分の羽織っていた服を脱ぎ、彼女は幼い身体を露わにした。
だがその顔に幼さはなく、妖艶な色気を放っていた。

「ちょ、待った…そんないきなり…。」
「旦那様は、ちうの身体はお気に召しませんか?」
「そういうわけじゃないが…俺はそんなつもりで―」
「分かっております、ですが…これがちうなりの”尽くす”という気持ちです。」

彼女の色目かしい声と股間が彼女の秘部に当たる柔らかい感触で俺の肉棒はむくむくと大きくなっていった。

「私の身体でこんなに大きくしていただけるなんて…嬉しいです♪」
「いや…これは。」
「旦那様、全てちうにお任せ下さい…挿入、しますね?」

彼女のエスコートで露わになった秘部に俺の肉棒が深々と入っていく。
幼い身体に似合わずとろけるような膣内に俺は骨抜きにされてしまう。

「ふわぁ…旦那様の逞しいのが、入ってくる…。」

彼女に挿れた時、肉棒の先の方がとても暖かく感じた。
恐らく彼女のお腹の火に当てられているのだろう。
だが熱くは無いしむしろ気持ちが良いぐらいだ、そのせいか段々と膨らんでいってるような気がする。

「どんどん、大きくなって…んあ、腰が止まらないです…。」

俺の上で彼女は激しく上下に腰を動かし、秘部からは絶え間なく愛液が滴り落ちてきていた。
まだ俺の身体が動かない分、自由が効かないまま犯されている気分だ。
今日はこんなのばかりだな…。

「旦那様…ん、ちうは、もう…ぁあ!!」
「俺も…無理…!!」

激しさを増したちうの動きに俺は容赦なく射精した。

「ああっ…旦那様…。」

幼い彼女の身体にどくどくと精が注がれていく。
その瞬間、火は油を注いだかのように勢いを増していった。

「こ、これは…。」
「はぁ…はぁ…旦那様。」

妙に息が荒く血走った目をするちう。
確か発狂したレイやレジーナがこんな目をしていた気がする。

「ま、待てちう。」
「旦那様っ!!」

射精したのにもかかわらず、ちうはまた腰を動かし抱きついてきた。
先ほどとは比べ物にならないほどの勢いと火の強さで俺はまた肉棒を固くする。

そんなこんなで俺はちうに犯し尽くされてしまった…。


――――――。

「また、お疲れのようで…旦那?」
「…聞くな。」

朝早くヨスケに起こされて俺は町の外へとやってきていた。
目の前には橋が通っておりそこから山道へと続く道があった。

「昨日はすんませんでした…あっしが調子に乗ったせいで…。」
「お前が悪いんじゃない…ちょっと夢見が悪かっただけだ。」
「夢見…ですかい?」
「だから聞くな…。」

俺はちらりと手に持った提灯を見やる、心無しかションボリしているように見えた。
…二人の時は注意しないとな。

「本当にお前には世話になった、礼をしなければ―。」
「良いですよ、もう貰うもんも貰えましたし…あっしも充分でさ?」

そう言ってお金を渡そうとしたがヨスケは手を振って遠慮した。
…前から思っていたがこの男は情に弱い男のようだ。
俺と一緒だな…。

「あっしは…旦那が気に入りやした、また会えるのを楽しみにしておりやす。」
「あぁ…、それじゃ、行ってくる。」
「ええ、旦那…お気を付けて!!」

ヨスケに見送られながら俺は橋を渡っていった。
これからは旅がきつくなる…気を引き締めていこう。

…。

「…がんばれよ。」

ヨスケは一人アレスを見ながら呟いた。

「どうして黙ってたの?」

物陰から隠れていた少し軽装の河童の女性がヨスケへと近づいてきた。

「なんだいたのか…で何がだ?」
「貴方が魔王様の知り合いだってことよ、彼…私達の為に旅をしてくれているのよ?」
「ああ、そのことか…そんなの知ってるさ。」
「じゃあ―。」
「確かめたかっただけさ…。」

ヨスケは少し含みのある言葉を言った。
河童の女性はその言葉に首を傾げる。

「…なにを?」

河童の問いにヨスケは笑いながら答えた。

「旦那が魔物達をどう思ってるか…な。」
「…で、答えは?」
「ヴェンは人を見る目があるってことさ。」
「それ、どういう意味よ?」
「さあな?」

…河童を他所にヨスケはまた町へと戻っていった。
一人残された河童は気難しい顔をして橋の下の川へと戻り、アレスの行方を追った…。


11/12/13 18:44更新 / ひげ親父
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■作者メッセージ
クリスマスが近いですね…ひげ親父です。
なんとか更新が遅れましたが作れました。
皆さんは更新しまくってるのにその小説を見ることもできない…。
だらしねぇし…。
年末に近づいて仕事も落ち着きますし本格的に読んで行きたいですね。
あ、勿論更新もしていきますよ?
また次回も見てくださると嬉しいです。

ここまで見ていただいてありがとうございます!!

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