連載小説
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Vtuberやってます

「おいっすー。皆さん元気だったかな?」

パソコンのディスプレイにくるくるとくせっ毛のある茶色い髪にぱっちりと二重に開かれた美少年とも美青年ともとれる顔が映っている。
視聴者の数は少ないものの、複数回に渡る放送でこなれた挨拶を口にしている。
少し待てば視聴者から返事の挨拶や冗談混じりのコメントが飛び交い始める。

『まってた』『おいすー(^^♪』『いつ結婚してくれるの?』『好きです』

「待っててくれてありがとう!結婚に関してはご縁がなかったということで」

『絶望した』『皆で結婚しよう』『お断り、ということはまだチャンスが』

コメントと登録された名前を見返してみればいつものメンバーで嬉しくも変わんねぇなとも思う。
こんな動画配信を思いついたのはつい数ヶ月前である。
ゲームに給料を注ぎ込み没頭していると当然ながらお金は無くなる。
消費者金融に駆け込もうとも思ったが友人の話を聞くと、返済が遅れるとエライ事になると教えられそのまま口を噤んでしまっていた。そういや最近あいつ彼女できたっていってたなぁ、と。
元々パソコン系に興味、関心があったので色々とネットの海に漂っていると天啓ともとれるページを見つけてしまった。

【男性Vtuberに人気の兆し?】

その一文を読み進めていくとある程度の視聴者数を確保できれば投げ銭という機能が解放され、投げ銭の数%を支払うことで残りは全て投稿者に還元されるというシステムがあるということだった。

まさに天啓っ・・・・・・!!
我ここに神を見たり!!

それからの行動は早かったと自分でも思う。
無けなしの貯金をはたいて撮影機材、ペンタブ、3D2Dソフトを購入し絵を起こしてモデル化。
多少の準備期間は必要だったもののライブ公開には耐えうる素体を作り出すことに成功した。後に月額制で必要な機器のレンタルや素材提供のあるサービスを見つけてしまい、後悔した後に動画を提供した。

まあ、そんなこんなでお金を稼ごうとする20代のサラリーマンである俺はこうしてあくせく毎日何かしらのネタで配信をしているのである。
正直、見ている人が少なくても好き勝手にできるこの環境を好きになってるし、大体いつものメンバーでゆるく話している方が性に合っている、と思っている。

「今日はなにしてこうかな?なんかいいのあります?」

『ナニ?』『お歌の時間』『ナニ(真顔)』『つきあって』

「ほんと欲望に忠実ですねー!少しは隠せよ」

『ひどい』『訴訟』『さきっちょだけだから!』

「いや、ないから・・・・・・。今日は短時間放送だからお話の時間だオラ!!」

『聞くだけ聞いてそれか』『童貞?』『ミルクは好きですか?』
『乳牛混じってんぞ』『草』

「毎回同じこと聞いて飽きないんですかね・・・・・・」

この大手動画サイト淫Tubeの規約はだいぶ緩い。ゆるゆるである。
淫語を喋ってもお咎めはなく、ある程度の裸体を晒しても局所を完全に隠してしまえばBANもされない。男性のみではあるが。
しかし制限もあることにはあり裸体を晒す系のエッチ系動画は収益化が不可能になってしまうのである。そしてそれ系の淫Tuberの八割は魔物娘が男性に変化しているものであり、再生数に厳しく反映されている。
魔物娘の世界は男性が減っていて厳しいのである。

『初めて来ました』『私も』

「だいたい・・・・・・、ん゛ん、初めまして!Vtuberの有薗葵です!宜しくお願いしますね!」

『ここだけ神』『メッキ』『可愛い』『濡れた』

「すこし静かにしてもらえますかね・・・・・・?美少年系vtuberでやってるんで」

『メッキ剥がれてんぞ』『葵くんのファンやめます』『こわい』『びっくりしてミルク飛び出ました』


こうして、新人Vtuberの夜はふけていく・・・・・・。


To be continued.,,,

19/12/20 19:40更新 / つくね
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■作者メッセージ
みじかかったり長かったりします

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