連載小説
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佐志原勇姫
 今日は彼氏の裕とデートだ♪ ……っと言ってもお家デートだけど。近いうちに海に行くことになっているけど、その交通費とかが結構馬鹿にならない。なのでその前後は節約のためにもお家デートをすると言うことになったのだ。
 そんな訳で今日は裕の家に遊びに来ている。今日は家族の人は誰もいないらしい。すでに親御さんには挨拶などしたから別にいられて困ることはないんだけど……まあ、やっぱりヤッている時の声を聞かれるのは恥ずかしい。
 部屋に入ってみると、やっぱりアタシが遊びに来ることを意識しているからか、部屋は片付けられていた。机の上には何も置かれておらず、本棚は整理されている。いかがわしい本は置かれていない。ベッドもホテルのスタッフがしたかのようにメイキングされていた。その下を覗いてみたけどその手の本はない。うーん、残念。 
「ゆ、勇姫先輩……か、勝手に本棚とか物色しないでくださいよ」
 裕がアタシを咎める。顔は緊張と羞恥心で赤くなっていた。そして言葉もつっかえつっかえになっている。緊張すると彼はよく口ごもる。特にアタシの前では。好きな人の前だと緊張してしまうらしい。
 彼はCDをプレイヤーにセットする。明るすぎずシックすぎない、インストゥルメンタルのポップチューンが小さな音量でかかり始めた。彼なりに雰囲気を作ろうとしているのだ。
「分かった分かった。アタシが悪かった。で、エロ本はどこにあるの?」
「も、持ってないですよぅ」
「何を言ってんだ、アタシと始めて会った時はバッチリエロ本持っていたくせに」
 彼と付き合う前……廊下を走っていたアタシと彼が衝突したのがアタシたちが出会ったきっかけだった。その時、彼はトートバックにエロ本を入れていたのだ。もっとも、それは彼の恋愛相談に乗っていた先輩のサキュバスの入れ知恵だったんだけど……
 アタシがあの時の事を言うと彼は顔をリンゴのように真っ赤にしながら、あの本はその先輩、村野美穂に返したのだと言う。ふーん……
 無言でアタシは彼がセットしたベッドの枕を横に投げた。裕が顔色を変えてアタシを制止しようとしたが遅い。シーツをひっぺがし、さらにマットレスをずらす。ビンゴ。ベッドフレームとマットレスの間にブツはあった。あの時裕が持っていたエロ本が一冊、さらにアタシが知らないエロ本が二冊……
「おーおー、健康的で何より」
「ちょ、先輩やめてください!」
 アタシの手からエロ本を取り返そうと裕はアタシに挑みかかったが、極普通の男の子がマンティコアに勝てるはずがない。あっさりとしっぽ一本で彼はアタシにねじ伏せられてしまった。その間、アタシは悠々とエロ本を読む。
 内容はオーソドックスと言おうかなんと言おうか、あられもない女のコや魔物娘の姿の写真が載っている雑誌。ちょいちょい、漫画や官能小説もある。ふむふむ……魔物娘のアタシが読んでもなかなか面白い……
 アタシがエロ本に夢中になっていると、アタシのしっぽで抑えこまれている裕がジタバタと暴れだした。
「うう、先輩ヒドイですよ……」
「なぁに、いつもどおりのことじゃん!」
 そう笑ってみせるアタシを裕は恨めしそうな目で見つめてきた。少し涙目なのがまたそそる……いや、これはガチで不満に思っているみたいだ。これ以上からかうのはやめておこう……しっぽをゆるめて彼を解放してやる。
 でもエロ本を読むのはやめられない。 ……まったく、アタシと言う存在がいながらこいつはオナニーをやっているのだろうか?
「どうなのよ?」
 じろりと横目でアタシは裕に訊ねる。
「え、いやその……し、してないです……いや、ちょっとだけなら……」
 裕の返事は曖昧であった。まあ、そうだろうな。多分、全くのノーってことは無いのだろう。でもやるのは本当に稀……それは彼の精液をいつも味わっているアタシだから分かる。雑誌もそんなに使い込まれた様子はなかったし。
「ゆ、勇姫先輩は?」
「なっ!?」
 アタシは油断していたのかもしれない。ここでまさかの裕の反撃があった。驚き、慌てふためいたアタシはエロ本を取り落としてしまう。その狼狽ぶりは彼の言ったことが図星だと言っているような物だった。
 じっと裕はアタシを見つめてくる。その目は期待と好奇心と、そしてちょっとだけ反抗心のような物も混じっていた。この弱気な性格の通り、いつも彼はアタシにやり込められることが多い。セックスだってアタシがリードすることがほとんどだ。ってか、むしろ逆レイプのノリに近い。そんな彼が見せてきた強気な姿勢……やっぱり裕も男なんだなと思い、ドキドキする……
 いや、ドキドキするのは羞恥心が強い。こら、アタシのオナニーのことでそんなに子犬のように目をキラキラさせてアタシを見るんじゃない! 顔に熱が上るのを感じる。
「で、その、先輩はどうなんですか?」
「うっ……まぁ、アタシだって一人でスることあるよ……裕とシたいけどもう夜も遅いとか……」
「や、やっぱ先輩もスるんですね……」
 おどおどしてつっかえつっかえな口調だけど、鼻息は荒い。オスの本能が現れている。そんな裕がアタシにとんでもないことを言い出した。
「あの、その……僕も、そのぉ……勇姫先輩が一人でシている所、見たいなぁって……」
「はぁ!? アンタ何言ってんの!?」
 心底呆れ返って大声をあげるアタシ。あ、しまった。これだと彼を萎縮させちゃうな……と思ったけど、彼はひるみつつも折れなかった。
「だ、だって……先輩の毒のせいで僕はしょっちゅう……お、オナニーを先輩に見せているし……だ、だから……これでお相子と言うか、その……不公平と言うか……」
「……」
 なるほど、そう来るか……
 マンティコアのしっぽに備わっている毒は強力な媚薬だ。射精しまくって疲れて萎えたちんちんだって一発でギンギンに回復させる。しかもすごいのは、その媚薬の効果は肉体だけに出て精神には出ないと言うことだ。つまり、心はいけないと思いつつも、身体は快楽を求めずにはいられないようにするのだ。
 さて、マンティコアのしっぽにあるのは毒針だけではない。しっぽの内側には肉襞がびっちりと備わっている。マンティコアが男に毒針を刺すときはすでにしっぽでおちんちんを咥えこんでいることが多い。しっぽに挿入している男がマンティコアの毒を受けたらどうなるか? 身体が射精しようと勝手に動き、しっぽで自分のペニスをしごいてしまうのだ。そう、強制的にしっぽをオナホにしてシコることになる。
 そういうわけで、裕はしょっちゅうアタシのしっぽをオナホにしてオナニーしている。本人の意志に関係なく。しかも初めて会った時から、付き合う前から。「性欲管理」とか言って、彼にアタシのしっぽをオナホとして使わせた。まあ、アタシがそれを強制している感じだったけどね。そして付き合ってからもしっぽオナホプレイはセックス前の準備前としてよくやっている。
 そんな訳で、オナホプレイなわけだから、裕の「オナニーをアタシに見せている」という言い分は分からないでもなかった。でも「だからアタシのオナニーも見せろ」と言うのはどうかと思うけど……うーん……でも彼はかなり見たがっている。しかもさっき「不公平」って言葉を使ったと言うことは、自分ばかりオナニーを見られて恥ずかしいと思っていてそれに不満を持っているのだ。これを放置するのはちょっとかわいそうだ。裕より優位に立っているアタシだけど、別に血も涙もない鬼畜と言うわけでもない。リクエストは答えてあげたいし、不満は抱かせたくはない。でもやっぱりオナニーを見せるのは彼が自分でも感じているとおり恥ずかしいわけで……
 考えがアタシの頭の中でぐるぐると回る。裕の希望を叶えたい、でもやっぱり恥ずかしい……いったりきたり、綱引きを繰り返していたが、ついに一方が勝った。
「……」
ぷつっ、ぷつっ……
 無言でアタシはブラウスのボタンを外していく。はだけたブラウスから自慢のおっぱいの谷間とブラが現れた。今日のブラはスモークピンク地に黒のハート柄が散りばめられた物だ。普段から着ている奴でカジュアルだけど、裏返せば気合が入りすぎていない。で、カジュアルだけど結構可愛い。お気に入りの一品だ。
「せ、先輩?」
 裕がアタシを見上げながら声をかけてくる。いつものように口ごもっているが、アタシのオナニーを見れるという興奮は隠せていない。不思議なことに、それがアタシの気持ちを煽った。カッと身体が熱くなり、その熱がアソコに集中した気がする。いわば、精神から来る媚薬?
「あ、あんまり……見るなよ」
 そう言いながらアタシはしっぽで拘束していた裕を解放した。裕はアタシの正面で座り込み、じっとアタシを見つめた。今はおっぱいとスカートの奥を見ている。
 下着が汚れるのはイヤだから、ショーツはさっさと脱いでしまう。ブラと同じ柄のショーツ。アタシがショーツに手をかけてから脱ぐまでは裕の視線もそこにあったが、脱いでからは一切興味を失ってしまったようだ。その目はまたアタシの身体に戻る。
 裕の食い入るような視線を感じながらアタシはオナニーを始めた。自分の雰囲気も高めるため、まずはゆっくりとおっぱいを揉む。両手で、ブラの上から、そっとたくし上げるように。ふーっ、と長い吐息がアタシの口から漏れる。だんだんおっぱいが「裕の目を楽しませる物」「ちょっと揺れて邪魔な物」から「触られて気持ちいい柔らかいところ」に置換されていく。そうするともどかしくなる。
 手を離すと快感が途切れてしまうんだけど、途切れるなら今だ。アタシは両手を胸から離し、後ろに回した。ブラのホックを外す。そしてブラとワイシャツを一緒に腕から抜き去り、ベッドの下に放り捨てた。これでアタシは首のリボンと靴下だけという格好。裕がごくんと喉を鳴らした。
「ちょっと……あんまり見ないでよ……」
 さすがに少し恥ずかしくなってアタシは言う。何を言っているんだ、もう数え切れないくらいエッチして隅から隅まで見せていると言うのに……しかし、裕だけ服を着ていてアタシはほぼ裸というこの状況はかなり恥ずかしかった。そう、そう言えば裕はまだ服を着ているのだけど……そのズボンの前面は、大きなテントが張っていた。意識すればオスの匂いすら感じ取れそうだ。
『あ……』
 じゅんとアソコがより熱を持った感じがした。もうそれなりに濡れてきたのかもしれない。でももうちょっと高めてからそっちの方に行きたい。膝立ちの体勢でアタシは再び胸に手をやり、むき出しになったおっぱいを愛撫する。今度は揉むだけではない。硬くなっている乳首も弾くようにイジる。
「んっ……!」
 神経が集まっていて感じやすいそこだ。思わずアタシは声を漏らしてしまう。裕にも聞こえてしまっているだろう。セックスでそれ以上の声を聞かせているというのに、やっぱりアタシ一人でオナニーをしているこの状況は恥ずかしい。でも、手は止まらなかった。
 双丘と肉球がむにゅむにゅと潰れあい、指先は乳首を転がし続ける。目を閉じるとそれによってもたらされる心地いい刺激をさらに感じることができた。それだけでない。目を閉じると裕の視線がまるで刺さるように感じられた。恥ずかしくなって目を開けると、ギラギラと瞳を獣欲にたぎらせている裕の目が見える。
『ああ、あんな目でアタシを見て……』
 その目がアタシを興奮させる。いつも裕に対して優位に立っていたけど、アタシって意外とMだったのかな? いや、SとMは表裏一体だと言う。今はたまたま受け身に回っているだけ……そんな言い訳を勝手に自分にしながらアタシは次の段階に進む。
 右手を胸から離してアソコへ。割れ目を指先でなぞってみる。
「んっ、ふ……!」
 声が出てしまう。クリトリスに触ってもいないのに。ちらりと視線を下に向けて右手を見てみる。手の獣毛はべっとりと愛液で濡れてへばっていた。頃合いだろう。
 アソコの入り口に少しだけ、指の腹をめり込ませ、軽く擦る。うん、入れることはない。ちょっと太いし爪も痛いからね。アタシはオナニーは指入れ派じゃない。こうして指に愛液を含ませてからその指を前の方へ……クリトリスに持っていく。
「はっ、はぅ、う……」
 びくびくと身体が震える。クリトリスは女の身体で一番感じるところと言われている。アタシもそうだ。いや、一番は裕のおちんちんで奥を突かれるのがいいかな……いや、それは別だな。オナニーではアタシはクリトリスが一番だ。
「あっ、はぁ、はぁ……んぅ……んふぅ!」
 こうして指で擦るのが良い。ベトベトになっても毛は毛。微妙に凹凸がある。それが敏感なクリトリスを撫でるのだ。じょりっといい具合に擦れると身体が反り返るほど気持ちいい。
 さて、右手を離してアソコをいじっているアタシだけど、右胸は寂しくないか。うん、このままだったら確かに寂しい。でもそのままになるということはない。なぜならアタシはマンティコアだから。
 長いサソリの尾がアタシの股の間を通って前にやってくる。尾先は中世の武器のフレイルのように棘付き鉄球のようだ。その先端をくぱぁとアタシは開けた。中はおまんこのように襞とイボが備わっている。吸引性もある。裕はここにおちんちんを突っ込んでシコシコしっぽごと持ってしごいて射精するのだ。
 けど……実はこのしっぽは裕のオナニー専用じゃなかったのだ。むしろ前から使っていた人がいる。誰か? もちろんこのアタシ。
 しっぽがアタシの右胸に吸い付いた。ちゅうちゅうと、アタシのしっぽがアタシの乳首を吸いたたてる。裕がおっぱいを口で吸うのと同じように。そう、裕と付き合う前からアタシはオナニーしていた。このしっぽを使って胸を攻めるのもだいぶ前からやっていた。今まで裕に秘密にしていたけど。
「んっ、あはっ……! はあ、はあ、あああ……!」
 声が昂ってきた。やっぱり気持ちよくなってくると声が出てしまう。自力では抑えられない。普段はまくらとかに顔を押し当てたりして声を抑える。近所迷惑になったりすると困るからね。でも今は裕がいるからサービスで聞かせてしまう。その彼はアソコをビンビンに熱り勃たせながらアタシのオナニーを見ていた。ややもするとその場で彼もオナニーを始めてしまいそうだ。いっそのことしてくれればいいのに……そうすればアタシも少し恥ずかしい気持ちが消えるのに。でも、彼がアタシのオナニーを見てあんなに興奮しているのも、また嬉しくもあった。
 気持ちよすぎて身体が膝立ちの姿勢を保つのが辛くなってきた。膝立ちの姿勢でオナニーをしているといつもそうなる。がくりとアタシは前に倒れこみそうになるのを、左手を突っ張って防ぐ。そうすると左胸がお留守になってしまう。愛液でべとついている右手をそちらに回し、荒々しく揉みしだく。でもそうすると今度はアソコが空いてしまう。どうするか?
 アタシはしっぽを軽く持ち上げる。しっぽの幹をアソコに押し当てた。そして腰を前後にくいくいと振った。裕の上に乗って腰を動かしているのと同じように。でこぼこしたサソリの尾にクリトリスが、割れ目が、入り口が擦られ、びりびりと電気が流れたかのような快感が脳へと走り抜ける。
「ああっ、ああああ!」
 裕が見ているのも忘れ、アタシは自分が自分にもたらす快感に夢中になる。背中がぐぐぐと丸まっていく。もうちょっとするとイキそうだ。自分を追いやるため、アタシの腰の動きはいよいよ激しくなる。ぎしぎしとベッドが激しく鳴った。
「ん!? あっ、うっ、くぅうううう!!」
 突然アタシは太ももでしっぽを挟み込み、ベッドに横向きに倒れた。それでも快感は止まらない。ぐねぐねとアタシは無意識のうちに身体を捩る。イッてしまっていた。
「せ、先輩……」
 裕がアタシに声をかけた。恥ずかしくなってアタシは身体をイモムシのように丸める。
 普段、アタシはこいつの前ではセックスの時でしかイカない。うん、指マンやクンニはされたことはあるけど、それでイッたことはなかった。そうなるまえにハメていたからだ。本番の時は彼もアタシがイク様子をじっくりと見ることはない。だから、全く恥ずかしくないと言ったら嘘だけど、それでもまあ気にはしなかった。だけど一人勝手にイク姿を見られた……それを見られるのは思った以上に恥ずかしかった。イキそうになっている時やイッている間は気持ちよさに夢中になってくると、それが退くとその羞恥心がより激しくアタシを襲う。
「先輩……その、先輩のオナニー……すごく、あの……エッチかったです……」
「バカぁ! 言うなぁ! 恥ずかしいでしょうがぁ!!」
 アタシはさらに身体を丸め、顔を隠しながら裕をしっぽでどつく。本当にこいつは何を言っているんだ。でも裕に言われなくても分かる。彼のおちんちんは爆発寸前になっており、興奮していたことを物語っていた。射精はさすがにしなかったようだけど、カウパーくらいは滲んでいるようだ。匂いで分かる。彼のアソコから精の匂いがぷんぷん漂っていた。その匂いがアタシを狂わせたのだろうか、それとも冴えさせて閃かせたのだろうか。アタシはぽつんと裕に言っていた。
「アンタもシなさいよ……」
「え……!」
「アンタもオナニー! シろ! シろよ! アタシばかりに恥ずかしい思いをさせる気かぁ!」
 叫びながら跳ね起きてアタシは彼を組み伏せた。ワイシャツのボタンをむしりとるように外していき、さらにベルトとズボンに手をかける。トランクスごと下ろすとアタシのオナニーを見て大興奮していた彼の分身が勢い良く飛び出してきた。案の定、先端からはヌルヌルな我慢汁があふれている。このままセックスしてもいいんだけど、それじゃ悔しい。アタシが今恥ずかしい思いをした分、裕にも恥ずかしい思いをしてもらわないと気がすまない。
 裕は股間を両手で覆い隠しながらもごもごと抗議の言葉を口にする。
「いや、だって、先輩……その……いつも」
「問答無用!」
「ひぅ! そ、それじゃ……不公、平……」
 尻すぼみになって蚊の鳴くような声だったが、それはアタシの耳に入った。そうだ、そう言えばそもそもアタシがオナニーをコイツに見せることになったのは、普段コイツがアタシのしっぽをオナホにしてオナニーしているのを見ているからだ。
 恥ずかしさのあまり怒鳴ってしまかったのは悪いと思った。だけどやっぱりアタシは恥ずかしかったわけで、気も済まない。このままいい具合にお相子にするには……そう考えてアタシは心のなかで膝を打った。
「分かった。じゃあ今から見せ合いっこしよう。それならいい?」
「へっ?」
 一瞬、彼は何を言われたか分からないという顔をしていたが、やがてガクガクと壊れた人形のように頷いた。考えてみりゃ裕もアタシのオナニーを見てじっとしていた、いわばおあずけ状態だった。彼もしごきたかったことだろう。
「今回は特別。アタシのしっぽはナシ。いつもアンタがやっているように、手でやること」
 素直に裕は頷き、おずおずながらも勃立した肉棒を握りこむ。その様子を見る限り、オナホを持っている様子はなさそうだ。
 脚をカエルのように曲げて座っている裕は、少し恥ずかしそうにしながらもオナニーを始める。手がしゅっしゅと上下に動いて硬くなっているおちんちんをしごいた。
 そんな彼の脚の下にアタシは自分の脚を滑りこませた。開いている脚に潜り込ませているため、当然アタシの脚も開くことになる。少し角度を調節すればおまんこが彼にも見えるはずだ。そうしてからアタシもオナニーを再開した。今度は彼のオナニーもじっくり見たいから、しっぽにアソコをこすりつけることはしない。クリトリスを指でいじる。またクリトリスを擦るアタシの獣毛。一度イッて敏感になったクリトリスはさっき以上にびりびりと快感をアタシの脳に伝えた。
「あっ、はう……先輩……!」
「ゆた、か……あぁんっ! はう、ああっ!」
 嬌声の合間に互いの名前を呼び合う。だけど今、自分を気持ち良くしているのは自分の手指。相手の身体ではないのだ。アソコは限りなく近いのに、二人はオナニーをしている……その倒錯したシチュエーションがさらにアタシを駆り立てた。
 だるいけど、アタシは少し腰を持ち上げた。これで裕の目におまんこが映るはずだ。一度イッて濡れ濡れになって、早くおちんちんを入れて欲しいと緩んでいるおまんこが。クリトリスと一緒にビラビラも弾くようにしていじる。ぴちゃぴちゃと行儀の悪い音がアタシのアソコから立った。
「はぁはぁ……どう、裕……んぅう、アタシの、はぅ……おまんこは……?」
「はい……すごく、エッチです……ぐちょぐちょに濡れていて……柔らかそうで……!」
 熱に浮かされたような声で答える裕。その目はアタシのアソコに釘付けで、手は夢中になっておちんちんをしごいている。アタシの身体とおまんこがそうさせている、彼を夢中にさせている……アタシの女としての、コイツの彼女としての矜持が満たされる。
 一方、裕のオナニーと言うのもまたそそる物だった。おとなしそうな彼の性格に反してなかなか凶悪な見た目だ。ビキビキ青筋が走っている幹、赤黒い先端……太さもそれなりだし硬さは肉棒の名前の通り。あんなものがアタシのアソコに入っちゃうなんて、ときどき信じられなくなることがある。まあ、あっさり入るし気持ちいいんだけどさ。そして、今は彼の手がおちんちんをしごいているけど、セックスの時はアタシのおまんこがしごいていると言うわけだ。まるでおまんこの中でのおちんちんの様子を見せつけられているみたい……ああ、アタシの中であんなふうになっているのね。
 相手のオナニーをオカズにアタシ達はオナニーを続ける。
「あ……あふっ……」
 裕のオナニーも見ていて興奮するけど、それとは別にアタシを掻き立てる物があった。彼のソコもアタシのアソコと同じくらい、我慢汁で濡れている。そこから漂う牡の匂いがアタシをクラクラさせる。これだけでもイッてしまいそうだ。無意識のうちに、オナニーのペースがあがり、ラストスパートをかける。
「せ、んぱい……こ、擦るの、激しくなって……い、イキそうですか?」
「うん、イキそう! イキそうなの!」
 イッてしまいそうではあるけど、イケない。ああ、イキたい……このままイッてしまいたい! 裕の匂いに理性を奪われたアタシは裕に絶頂が近いことを喚き散らしながらお豆をこすり続ける。
「んっ、あ……せ、先輩……僕も……ぼ、僕も……!」
 泣きそうな声で裕も射精感を訴える。まあ、我慢汁も出ていたからそうだろうな。あるいは、アタシがイキそうになっていたのを待ってくれていたのかもしれない。彼はそんな奴だ。ちょっと嬉しい。でもその気持ちも快感に押し流されてしまった。まあ、仕方がない。気持ちいいから……さらに、今やっているのはオナニーなのだ。見せつけているとはいえ、一人でヤッて、一人で気持ち良くなるオナニーだ。自分の快感に集中すればいい。裕だってそうだ。
 そしてその快感が、また限界に達した。
「んひぃい! イク、イクぅうう!」
 腰を突き出し、はしたない声を上げながらアタシはオーガズムに達した。その直後に裕も射精する。空中高く放たれた精液は、アタシのお腹にも降り注いだ。ああ、アタシの生オナニーをオカズにしてこんなにたくさん……イッた後特有のふわふわとした感覚を味わいながら、アタシはぼんやりと幸せを噛み締めた。でもどこかに、何かすっきりしない違和感を覚えながら……



 賢者モード。おかげでスッキリしない原因はすぐに分かった。二人揃ってイッたけど、これはあくまでオナニーであり、セックスじゃないからだ。アタシたちは付き合っていて、しかも今、一緒にいるんだ。それなら一緒じゃないとできないことをするべきだ。いや、生オナニーを互いに見るのも興奮したけどさ……やっぱ肌を重ねて、抱き合った方がいいよ。
 それをアピールするべく、アタシは裕の横に寝転がり、彼の手を取った。ああ、温かい……こればっかりは、オナニーじゃできないことだね……さらにその温もりを味わおうとアタシは裕の手にキスする。
「え、あ、あの……勇姫先輩?」
 戸惑ったように裕の声が揺れる。いや、いつも揺れているけど。ったく……アンタの身体に触れていたいんだ、察しろよ。
 アタシの行動に戸惑ってはいたけど、彼も同じようなことを考えていたらしい。その証拠に、裕のおちんちんはまた勃っている。アタシとセックスしたいってことでいいよね? アタシももう二回もイッちゃったけど、それで収まったわけではない。またアソコが濡れてきた。
 アタシも同じ気持ちだ。自分の身体じゃなくて、裕で気持ち良くなりたい。同時に裕も気持ち良くしたい。裕と一つになって、裕を感じたい。
 そう言いたいけど、それを全部言うのは大変だし、アタシもうまく言えない。だから、言えるのはこの言葉。
「ねえ、今度はオナニーじゃなくて……シない?」
「あ、はい……シたい、です……」
 やっぱり同じ気持ち。嬉しくなってアタシは裕にキスする。これも一人じゃできない、オナニーではできないこと。
 裕にキスしながらアタシは脚を上げ、裕を跨いだ。右手は裕の頬に添えられているけど、左手は下半身に伸びている。裕の勃ってるおちんちんを左手で掴んで固定した。そのまま腰を落としていく。にちゅっと、アタシのアソコに裕の先っぽが触れた。それだけなのに指なんかより良い気持ちになれる。
 アタシはさらに腰を落としていった。さっきまで裕自らの手でしごかれていたおちんちんがアタシの中に入ってくる。
「ふんんんんっ!」
 キスをしたままアタシは嬌声を上げる。裕もアタシの下で身体を固くしていた。ああ、裕も気持ちいいんだね……もっともっと気持ち良くしてあげたくなる。
 オナニーではない。もちろん、相手の身体を使ったオナニーでもない。セックスが、始まる。
14/07/21 00:10更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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■作者メッセージ
今日は何の日?子ノ日だよー
ごほん。何の日? 海の日? 間違ってはないけど俺の求める答えじゃない。
今日は7月21日、そうオナニー(0721)の日!!!
というわけで今年もやらせていただきました、自慰SS!
今回はしっぽが生オナホでいつも彼氏のオナニーを見ているマンティコアの佐志原勇姫ちゃんがオナニーを見せちゃいました!
セックスでエロいのはいつも見せつけているはずなのにオナニーになった途端、別の羞恥心が出ちゃいますよね! ……なんででしょう?
そこのところを表現できたら幸いです。あと、みなさんのオカズになったら幸いです!

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