ヘタレ攻めクノイチ大作戦！
「 こんばんはー・・・ あ、暗殺しにきました・・・ 」
私に暗殺の才能がないことを悟った瞬間である。なんで言った私。
窓から入りながら暗殺しに来たことをオドオドと告げるクノイチなんて他にいないわ・・・
自分ながら情けない・・・ヘタレすぎるでしょう私。
いやほんと。恥ずかしすぎて死にたい・・・
でも私は今からもっと恥ずかしいことをしようとしているのだ。
そこで寝ているクソ師匠に対して！
・・・ね、寝てるううううう！？
えっと、待って、落ち着いて私。
うん、どうしよう。
最初の計画がまず頓挫しちゃった。
クソ師匠はこれでも一流の盗賊。寝ているときでもその感覚が鈍りはしないはず。
当然の如く侵入者に気が付いて応戦か逃亡の準備を整えているだろうと思ってたの。
・・・まさか寝てるとは思わなかったわ。
ベッドでぐーぐー寝息を立てながら寝ているクソ師匠の近くに立って観察してみたわ。
・・・絶対これは寝たフリじゃないなぁ・・・
計画、ちょっと練り直さなきゃ・・・師匠が起きてること前提の計画だったしね。
計画では、起きていたところで逃げたとしても私の身体能力だったら追いつける。
応戦してきたとしても実力的には私のほうが上だし、組み付いて押し倒せると思っていたわ。
十分に勝算がある暗殺。私とクソ師匠の戦力差を冷静に分析した結果よ。
でも。
私の妄想ではクソ師匠は何らかの切り札を持って私をコテンパンに叩きのめして撃退するの。
何故か妄想の中では紐とかで動けなくなるような道具を使われる想像しかできなかったわ。
そのあとクソ師匠はこう言うの。嫌らしい笑みを浮かべてね。
「 おい、クソガキ。 それ、高かったんだぜ？ その代償は身体で払ってもらおうか。 」
そんなこんなであれよあれよと暗殺は失敗して私はクソ師匠の慰み者にされちゃうの。
いくら泣いても叫んでも誰も助けてくれなくてクソ師匠に好き勝手されちゃうの。
えへへ。
・・・な、なによ。いいじゃない。別に、私は、それでも、いいんだし・・・
誰に言うわけでもない言い訳を心の中で用意して自分を落ち着かせる。
でも妄想の中ですら暗殺失敗してる私は、もう致命的に才能がないんじゃないかと思う。
うん、なんでだろう。全然成功するイメージが湧かないの・・・
失敗するパターンはそれこそ百通りは思い浮かんだわ。
百回も妄想したの？とか言わないで。
・・・したわよ。この一か月間、ずーっと。
そう、まだクソ師匠に暗殺を宣言してから一か月しか立ってない。
宣言した時は私は「 いつか立派な女性になって戻ってくるわ 」という意味で言ったの。
うん、一番最初はそのつもりだったし、今でもそのつもり。
でも私は今ここに侵入している。クソ師匠の寝床に忍び込んでいる。
暗殺を実行しようと思っているの。
なぜって？
が。
我慢できなくなったのよ・・・
何よ悪い！？いいじゃない別に！何か文句でもあるの！？本能に従ったまでよ！
別に笑ってもらっても構わないわ！性欲に負けた私をせせら笑うといいわ！
・・・あはは・・・
ついうっかり力なく自嘲してしまった私は、この情けない一か月を振り返ったわ。
里のみんなと合流してまず一番最初にしたことは、謝ることだったわ。
今まで出来なかったことが素直にできたの。
皆から驚かれたわ。
一か月前とはまるで別人のようになったって言われたの。
それから、色んなことを言われたわ。
強くなった。感覚が鋭くなった。言葉に棘が無くなった。優しくなった。綺麗になった。
それを私は誇らしくは思ったけれど、それよりも私を変えてくれた人が誇らしくなったの。
私の中で師匠が絶対の存在になっていったわ。
ここ、までは良かったのだけれど。
やっぱりちょっと、寂しかったの。
あの人の傍に居れないって事で心がぽっかり穴が開いた気分になったの。
だからずーっとあの人のことを考えていたわ。
皮肉げな笑いで私と言い争いをしていた姿や煙草を吸ってる後ろ姿を思い出したり。
冷静に私を見極めてくれる視線を思い出したり、頭を撫でて褒めてくれた感触を思い出したわ。
でも、逆効果だった。
どんどん切なくなっていったの。
胸の奥が切なくなって。お腹のあたりが何か欲しがっていって。
本能が、あの人を欲しがっていったの。
でも、立派になってからあの人の元へ戻ると決めていた私は、必死にそれを抑え込もうとしたわ。
自分で自分を慰めたの。
あの手を思い出しながら、自分の胸を弄ったり。
あの声を思い出しながら、自分の股を擦ったり。
どんどん寂しさが膨れ上がっていって、どんどんあの人のことを考えて。
私の頭の中はピンク色の靄で覆われて、あの人との逢瀬を妄想しながら自慰行為に勤しんだわ。
毎日。ね。
毎日毎日、私は彼との記憶を思い出す事では満足しなくなって、過激な妄想へ育っていったわ。
例えば。
「 なんだクソガキ。縛ってほしいのか？なら跪いて縛ってくださいって言えよ。 」
「 ほれ、舐めろよ。拘束されたまま情けなくその舌を伸ばして届かせてみろよ。 」
「 もっと締めろ。貧相な身体を使って貰ってる事に感謝の言葉を吐きながらな。 」
今のは全部妄想。でも、私には実際に言われたかのような臨場感がある誘惑の台詞。
そう、クノイチたる私が見事に誘惑されているのだ。
・・・なお、ぜんぶ妄想で私が暗殺失敗したときのクソ師匠の台詞。
わたしには、ひぎゃくてきなしゅみはないわ。ごかいしないでよ。
クソ師匠が悪いの。そうなの。私の趣味じゃないもの。だから私は無理矢理させられてるの。
私の口の悪さを矯正しようとクソ師匠が私を縛り上げてそれでも私の口の悪さは治らないからクソ師匠は何故か持ってるダークエルフの鞭で私をバシバシと叩いて快楽で意識がぶっ飛びそうになった私の胸をその指で弄繰り回して私の大事なところを滅茶苦茶に掻き回して私の口内もその指で散々嬲ってその間耳元でスケベな言葉をささやかれ続けた後ねっとりとしたキスをしてきてお互い唾液を味わってもう完全に出来上がった私にああここで私のことを椅子のように扱って座られるのもいいなぁでもそれよりもこのまま頭をつかまれてクソ師匠のモノを無理矢理口の中に突っ込まれて道具みたいに扱われて喉の奥にどくどくと出されてしかもそれを全部飲まなきゃいけないんだけどちょっと地面にこぼしちゃってそれを手足を縛られたまま這いつくばって舐めろって言われてその瞬間をマジックアイテムで記録されて人生終了しちゃうの。
無理矢理よ。今のは全部無理矢理させられてるの。全部無理矢理ね。誤解しないで。
ほんとうにごかいしないでね。もういちどいうけど、わたしにひぎゃくてきなしゅみはないわ。
と、いうわけでクソ師匠成分が足りなくなって死にそうな私は暗殺することを決意しました。
同僚からの褒め言葉も頂いたわ。
可愛くなった。魅力的になった。蠱惑的になった。妖艶になった。エロくなった。
完全に恋する乙女ね。クノイチとしても完璧よ。身体はあんまり成長してないけど。
最後以外褒め言葉は好意的に受け入れたわ。というか最後言ったのだれ！？殴るわよ！？
同僚みんなから私が暗殺に出向くことを応援されながら私は出発したわ。
だから今ここに居る、のだけれども。
うーん。どうしよう。
いや、ある意味では想定内ではあるのだけれども全く起きる気配がないのは想定外だった。
私はちょこんとベッドの横で座り込み師匠を観察することにした。
寝姿が意外とかわいいなぁとか思うのは私だけかなぁ。
こう、私の奥から母性が溢れてくるような、子供みたいに安心しきっている、そんな寝顔。
この人本当に"影猿"のクリフなのかなぁ・・・と一瞬迷ったがさすがに見間違うことは無い。
いや、嗅ぎ間違うことは無い。師匠のにおいを感じ取れるのだ。
でもねんのため、ねんのためすこしだけ、くそししょうかどうかにおいをたしかめねばならない。
私は寝ている師匠の胸元に顔を近づけて匂いを嗅いだ。
くんくん、すんすん。
すーはーくんくんくんかくんかすはすはすーすーすんすんくんかくんかくんかすーはー。
ええ、くそししょうね、まちがいないわ。わたしはかくしんしたわ。
クノイチの鋭敏な感覚を甘く見ないで頂きたいで欲しいわね。
忍術を応用すれば犬並みの嗅覚を手に入れることすら可能よ・・・！
そうだ、にんじゅつをわすれていた。えへへうっかりさんだなぁわたし。
忍術使って精度を高めなければ確証は得られないよね！仕方がないなぁ！レッツ再チャレンジ！
やばい。
いったいどのくらい時が過ぎたのかさっぱりわからない。
記憶が完全に飛んでいる、なぜだろう。一時間は過ぎていないといいけど・・・
師匠は完全に寝たまんまなのは幸いなんだけど、どうして起きないのだろう。
さすがに一時間（仮）の間、胸に顔押し付けられて違和感くらいは感じると思うのだけれど。
起きない、といえば似たような話を聞いたことがあるなぁ、と突然それを思い出した。
それは故郷ジパングの忍びの里の先代頭領の話。
刀の達人であり、寝ている間でも感覚が研ぎ澄まされ、瞬時に攻撃に移ることができる。
殆ど睡眠時間をとることが無く、床に着くことは無いのだが信頼する夫の前でだけ眠れるという。
他の人が近寄ると瞬時に切られるのだけど、夫だけは近くに寄り頬を突いても絶対に起きない。
最強と呼び称された先代頭領が最強で無くなった逸話だった。
そういえば。この人は。
私を気に入ってる、と言ってくれていた。
もしかすると。この人の感覚の中に入って良い許可が出ている？
ここまで起きないのだ。この推測は私の中でそれを答えにして良いという結論になった。
頬をつねる。やばい。口元が緩んでどうしてもにやけ顔が収まらない。
この人から完全に肯定された気分になった。それだけで私の心が満たされた気持ちになる。
傍から見たら幸せオーラが出てると言われるくらいなにかいろんなものが溢れているだろう。
ああ、この人のことがこんなに愛しくなるなんて。
もう、本当に我慢が出来なかった。
寝ている彼へ私は、人生で初めての口づけを彼に捧げた。
少しだけ、最初煙草の香りがしたが、思ったより煙草の香りはキツいものではない。
銘柄は知らないが、結構上品なものなのかな。と思った。
そして、彼の唾液の味を認識した。
美味しい。
おいしい、おいしい、おいしい、おいしい、おいしい、おいしい、おいしい！
もう私の味覚では甘味、酸味、塩味、苦味、旨味で味を表現できない。
味覚が完全にイカれてしまっている。
ただただ、おいしいのだ。嫌な味は全然感じない。
ずっと口づけを交わしてもいい、このまま口がくっついても構わない。
そんな気持ちにさせた。
でも、私は口を離して、準備していた通りにしなければいけない。
暗殺によく用いられる媚薬、それを口移しで彼に飲ませるのだ。
用意してきた巾着から紙で包んだ小さい丸薬を取り出し、口に含み口移しで流し込んだ。
こういった状況は想定されており、房中術に寝ている相手への口移しの技術が存在する。
私は、口に関する技術だけは高く評価されていた。いや相手は練習用の模型なんだけどね？
むせることなく彼の喉を通り過ぎた。さすがに彼も起きるだろう。
なにせひょろひょろのモヤシ系男子であろうが忽ち獣みたいに魔物娘に襲い掛かるタケリダケ。
その成分を分析して凝縮した丸薬を口移しで流し込みクソ師匠に飲ませた。
別に襲われたいからとか思って飲ませたわけじゃないよ？よく使われるんだよこれ？
お互い起きてる状態で押し倒した後、誘惑する自信がなかったからとかじゃないよ？
わたしはかくじつなほうほうをとっているのです。
でも。
・・・起きないなぁ。おかしいなぁ。
さすがに薬の効力が発揮されている頃合いなんだけど。
なんでだろうな、おかしいなと思って丸薬を包んでいた紙をちら見して。
間違えた。睡眠薬だコレ。
あはは。笑え。
この愚かな私をだれか笑ってぇぇぇぇぇぇぇ！
なんでそんなものを用意したのかという時点から私の臆病さが伺えるわ。
なにせ、クソ師匠を押し倒した後、進退窮まった時に使おうと思っていたものなの。
もしも、嫌われかけたとき実は夢でしたで全部終わらせようと思ったの。
タケリダケの丸薬があればまったく必要ないシロモノだったけど私はこれを捨てれなかったの。
臆病な私を笑うがいいわ・・・
もうこれ、起きる起きないの次元じゃないなぁ・・・多分朝まで起きないなぁ・・・
ああ、丸薬の包み紙の色まで変えておいたのに何で間違えるかなぁ・・・
どうしよう、と考えた後。もう私は。
ヤケクソになってタケリダケの丸薬を飲み込んだわ。
用意した睡眠薬は、ちょっとした媚薬の成分もあるものを選んだ事だし大丈夫。
あれ、こんなに回り早いの？もう冷静な思考ができないや。
服、脱がなきゃ。ああでも全部脱いでる余裕無いや。
上下と下着だけ脱げば十分かな。
獣みたいになるから師匠に乱暴なことをしないようにしなきゃ。
クソ師匠のところにあったロープを自分の腕に巻きつける。
あれ、なんで私。自分の手首を自分で縛ってるんだろ。まあいいや。
尻尾あるから不自由しないし、きつく締めておこう。
あ、そうだ。声が響くとマズイ気がする。だれか来ちゃう。
暴走してる私から嬌声が勝手に漏れるよね、まずいよね。
口を布で塞いでおかないと。外れないようにきつく締めて、と。
師匠の服、脱がせないと。上から脱がして、下を脱がして。
パンツが盛り上がってる。
脱がせないと。
脱がせた。
ししょう、わたしのはじめてをささげます。とモゴモゴと言ったことだけは覚えていた。
正直どうやって帰ったか覚えていないが師匠にキスをして帰ったのは覚えている。
起きた瞬間も多分繋がっていたのだけれど、覚えていない。
もう自慰じゃイケなくなるくらいに気持ちよかった体験しか覚えていないのだ。
そう、この身体は完全に覚えている。クソ師匠のモノがまだ入ってる気分になっている。
お腹の中にタプタプとしたものが入っていることもわかる。それだけでイキそうになった。
もうこの身体は師匠専用。それは自分自身がはっきり認識できていた。
幸い、アタマオカシイ状態の私なりに冷静に考えたのだろう。
太ももに正の字で回数が書いてあった、多分書いたのは自分だ。
一応クノイチでは回数は太ももに書くシキタリ。
だけどクノイチの衣装を考えるとこれ丸見えになっちゃう・・・と恥ずかしくなった。
私は最後の最後、痕跡を残さないように掃除し後の始末を終え撤退した。
師匠からいっぱいいっぱいいっぱい搾り取ったけど。師匠にまだ愛してもらっていない。
今回の暗殺は大失敗。でも、まだ終わりじゃない。
だからまた暗殺に行きます。覚悟しておいてください師匠。
帰った後、同僚からヘタレ攻め忍者のあだ名を頂いたわ。屈辱・・・・！
＊ ＊ ＊
「 なんか俺の留守中に俺の部屋に忍び込んだやつがいるらしくてさ。 」
「 何か盗まれたのか？ 」
「 それがわけわからなくてさ。ロープなんか持ってってどうするつもりなのかね。 」
「 ・・・それは確かにわからないな。警戒しておけ。 」
私に暗殺の才能がないことを悟った瞬間である。なんで言った私。
窓から入りながら暗殺しに来たことをオドオドと告げるクノイチなんて他にいないわ・・・
自分ながら情けない・・・ヘタレすぎるでしょう私。
いやほんと。恥ずかしすぎて死にたい・・・
でも私は今からもっと恥ずかしいことをしようとしているのだ。
そこで寝ているクソ師匠に対して！
・・・ね、寝てるううううう！？
えっと、待って、落ち着いて私。
うん、どうしよう。
最初の計画がまず頓挫しちゃった。
クソ師匠はこれでも一流の盗賊。寝ているときでもその感覚が鈍りはしないはず。
当然の如く侵入者に気が付いて応戦か逃亡の準備を整えているだろうと思ってたの。
・・・まさか寝てるとは思わなかったわ。
ベッドでぐーぐー寝息を立てながら寝ているクソ師匠の近くに立って観察してみたわ。
・・・絶対これは寝たフリじゃないなぁ・・・
計画、ちょっと練り直さなきゃ・・・師匠が起きてること前提の計画だったしね。
計画では、起きていたところで逃げたとしても私の身体能力だったら追いつける。
応戦してきたとしても実力的には私のほうが上だし、組み付いて押し倒せると思っていたわ。
十分に勝算がある暗殺。私とクソ師匠の戦力差を冷静に分析した結果よ。
でも。
私の妄想ではクソ師匠は何らかの切り札を持って私をコテンパンに叩きのめして撃退するの。
何故か妄想の中では紐とかで動けなくなるような道具を使われる想像しかできなかったわ。
そのあとクソ師匠はこう言うの。嫌らしい笑みを浮かべてね。
「 おい、クソガキ。 それ、高かったんだぜ？ その代償は身体で払ってもらおうか。 」
そんなこんなであれよあれよと暗殺は失敗して私はクソ師匠の慰み者にされちゃうの。
いくら泣いても叫んでも誰も助けてくれなくてクソ師匠に好き勝手されちゃうの。
えへへ。
・・・な、なによ。いいじゃない。別に、私は、それでも、いいんだし・・・
誰に言うわけでもない言い訳を心の中で用意して自分を落ち着かせる。
でも妄想の中ですら暗殺失敗してる私は、もう致命的に才能がないんじゃないかと思う。
うん、なんでだろう。全然成功するイメージが湧かないの・・・
失敗するパターンはそれこそ百通りは思い浮かんだわ。
百回も妄想したの？とか言わないで。
・・・したわよ。この一か月間、ずーっと。
そう、まだクソ師匠に暗殺を宣言してから一か月しか立ってない。
宣言した時は私は「 いつか立派な女性になって戻ってくるわ 」という意味で言ったの。
うん、一番最初はそのつもりだったし、今でもそのつもり。
でも私は今ここに侵入している。クソ師匠の寝床に忍び込んでいる。
暗殺を実行しようと思っているの。
なぜって？
が。
我慢できなくなったのよ・・・
何よ悪い！？いいじゃない別に！何か文句でもあるの！？本能に従ったまでよ！
別に笑ってもらっても構わないわ！性欲に負けた私をせせら笑うといいわ！
・・・あはは・・・
ついうっかり力なく自嘲してしまった私は、この情けない一か月を振り返ったわ。
里のみんなと合流してまず一番最初にしたことは、謝ることだったわ。
今まで出来なかったことが素直にできたの。
皆から驚かれたわ。
一か月前とはまるで別人のようになったって言われたの。
それから、色んなことを言われたわ。
強くなった。感覚が鋭くなった。言葉に棘が無くなった。優しくなった。綺麗になった。
それを私は誇らしくは思ったけれど、それよりも私を変えてくれた人が誇らしくなったの。
私の中で師匠が絶対の存在になっていったわ。
ここ、までは良かったのだけれど。
やっぱりちょっと、寂しかったの。
あの人の傍に居れないって事で心がぽっかり穴が開いた気分になったの。
だからずーっとあの人のことを考えていたわ。
皮肉げな笑いで私と言い争いをしていた姿や煙草を吸ってる後ろ姿を思い出したり。
冷静に私を見極めてくれる視線を思い出したり、頭を撫でて褒めてくれた感触を思い出したわ。
でも、逆効果だった。
どんどん切なくなっていったの。
胸の奥が切なくなって。お腹のあたりが何か欲しがっていって。
本能が、あの人を欲しがっていったの。
でも、立派になってからあの人の元へ戻ると決めていた私は、必死にそれを抑え込もうとしたわ。
自分で自分を慰めたの。
あの手を思い出しながら、自分の胸を弄ったり。
あの声を思い出しながら、自分の股を擦ったり。
どんどん寂しさが膨れ上がっていって、どんどんあの人のことを考えて。
私の頭の中はピンク色の靄で覆われて、あの人との逢瀬を妄想しながら自慰行為に勤しんだわ。
毎日。ね。
毎日毎日、私は彼との記憶を思い出す事では満足しなくなって、過激な妄想へ育っていったわ。
例えば。
「 なんだクソガキ。縛ってほしいのか？なら跪いて縛ってくださいって言えよ。 」
「 ほれ、舐めろよ。拘束されたまま情けなくその舌を伸ばして届かせてみろよ。 」
「 もっと締めろ。貧相な身体を使って貰ってる事に感謝の言葉を吐きながらな。 」
今のは全部妄想。でも、私には実際に言われたかのような臨場感がある誘惑の台詞。
そう、クノイチたる私が見事に誘惑されているのだ。
・・・なお、ぜんぶ妄想で私が暗殺失敗したときのクソ師匠の台詞。
わたしには、ひぎゃくてきなしゅみはないわ。ごかいしないでよ。
クソ師匠が悪いの。そうなの。私の趣味じゃないもの。だから私は無理矢理させられてるの。
私の口の悪さを矯正しようとクソ師匠が私を縛り上げてそれでも私の口の悪さは治らないからクソ師匠は何故か持ってるダークエルフの鞭で私をバシバシと叩いて快楽で意識がぶっ飛びそうになった私の胸をその指で弄繰り回して私の大事なところを滅茶苦茶に掻き回して私の口内もその指で散々嬲ってその間耳元でスケベな言葉をささやかれ続けた後ねっとりとしたキスをしてきてお互い唾液を味わってもう完全に出来上がった私にああここで私のことを椅子のように扱って座られるのもいいなぁでもそれよりもこのまま頭をつかまれてクソ師匠のモノを無理矢理口の中に突っ込まれて道具みたいに扱われて喉の奥にどくどくと出されてしかもそれを全部飲まなきゃいけないんだけどちょっと地面にこぼしちゃってそれを手足を縛られたまま這いつくばって舐めろって言われてその瞬間をマジックアイテムで記録されて人生終了しちゃうの。
無理矢理よ。今のは全部無理矢理させられてるの。全部無理矢理ね。誤解しないで。
ほんとうにごかいしないでね。もういちどいうけど、わたしにひぎゃくてきなしゅみはないわ。
と、いうわけでクソ師匠成分が足りなくなって死にそうな私は暗殺することを決意しました。
同僚からの褒め言葉も頂いたわ。
可愛くなった。魅力的になった。蠱惑的になった。妖艶になった。エロくなった。
完全に恋する乙女ね。クノイチとしても完璧よ。身体はあんまり成長してないけど。
最後以外褒め言葉は好意的に受け入れたわ。というか最後言ったのだれ！？殴るわよ！？
同僚みんなから私が暗殺に出向くことを応援されながら私は出発したわ。
だから今ここに居る、のだけれども。
うーん。どうしよう。
いや、ある意味では想定内ではあるのだけれども全く起きる気配がないのは想定外だった。
私はちょこんとベッドの横で座り込み師匠を観察することにした。
寝姿が意外とかわいいなぁとか思うのは私だけかなぁ。
こう、私の奥から母性が溢れてくるような、子供みたいに安心しきっている、そんな寝顔。
この人本当に"影猿"のクリフなのかなぁ・・・と一瞬迷ったがさすがに見間違うことは無い。
いや、嗅ぎ間違うことは無い。師匠のにおいを感じ取れるのだ。
でもねんのため、ねんのためすこしだけ、くそししょうかどうかにおいをたしかめねばならない。
私は寝ている師匠の胸元に顔を近づけて匂いを嗅いだ。
くんくん、すんすん。
すーはーくんくんくんかくんかすはすはすーすーすんすんくんかくんかくんかすーはー。
ええ、くそししょうね、まちがいないわ。わたしはかくしんしたわ。
クノイチの鋭敏な感覚を甘く見ないで頂きたいで欲しいわね。
忍術を応用すれば犬並みの嗅覚を手に入れることすら可能よ・・・！
そうだ、にんじゅつをわすれていた。えへへうっかりさんだなぁわたし。
忍術使って精度を高めなければ確証は得られないよね！仕方がないなぁ！レッツ再チャレンジ！
やばい。
いったいどのくらい時が過ぎたのかさっぱりわからない。
記憶が完全に飛んでいる、なぜだろう。一時間は過ぎていないといいけど・・・
師匠は完全に寝たまんまなのは幸いなんだけど、どうして起きないのだろう。
さすがに一時間（仮）の間、胸に顔押し付けられて違和感くらいは感じると思うのだけれど。
起きない、といえば似たような話を聞いたことがあるなぁ、と突然それを思い出した。
それは故郷ジパングの忍びの里の先代頭領の話。
刀の達人であり、寝ている間でも感覚が研ぎ澄まされ、瞬時に攻撃に移ることができる。
殆ど睡眠時間をとることが無く、床に着くことは無いのだが信頼する夫の前でだけ眠れるという。
他の人が近寄ると瞬時に切られるのだけど、夫だけは近くに寄り頬を突いても絶対に起きない。
最強と呼び称された先代頭領が最強で無くなった逸話だった。
そういえば。この人は。
私を気に入ってる、と言ってくれていた。
もしかすると。この人の感覚の中に入って良い許可が出ている？
ここまで起きないのだ。この推測は私の中でそれを答えにして良いという結論になった。
頬をつねる。やばい。口元が緩んでどうしてもにやけ顔が収まらない。
この人から完全に肯定された気分になった。それだけで私の心が満たされた気持ちになる。
傍から見たら幸せオーラが出てると言われるくらいなにかいろんなものが溢れているだろう。
ああ、この人のことがこんなに愛しくなるなんて。
もう、本当に我慢が出来なかった。
寝ている彼へ私は、人生で初めての口づけを彼に捧げた。
少しだけ、最初煙草の香りがしたが、思ったより煙草の香りはキツいものではない。
銘柄は知らないが、結構上品なものなのかな。と思った。
そして、彼の唾液の味を認識した。
美味しい。
おいしい、おいしい、おいしい、おいしい、おいしい、おいしい、おいしい！
もう私の味覚では甘味、酸味、塩味、苦味、旨味で味を表現できない。
味覚が完全にイカれてしまっている。
ただただ、おいしいのだ。嫌な味は全然感じない。
ずっと口づけを交わしてもいい、このまま口がくっついても構わない。
そんな気持ちにさせた。
でも、私は口を離して、準備していた通りにしなければいけない。
暗殺によく用いられる媚薬、それを口移しで彼に飲ませるのだ。
用意してきた巾着から紙で包んだ小さい丸薬を取り出し、口に含み口移しで流し込んだ。
こういった状況は想定されており、房中術に寝ている相手への口移しの技術が存在する。
私は、口に関する技術だけは高く評価されていた。いや相手は練習用の模型なんだけどね？
むせることなく彼の喉を通り過ぎた。さすがに彼も起きるだろう。
なにせひょろひょろのモヤシ系男子であろうが忽ち獣みたいに魔物娘に襲い掛かるタケリダケ。
その成分を分析して凝縮した丸薬を口移しで流し込みクソ師匠に飲ませた。
別に襲われたいからとか思って飲ませたわけじゃないよ？よく使われるんだよこれ？
お互い起きてる状態で押し倒した後、誘惑する自信がなかったからとかじゃないよ？
わたしはかくじつなほうほうをとっているのです。
でも。
・・・起きないなぁ。おかしいなぁ。
さすがに薬の効力が発揮されている頃合いなんだけど。
なんでだろうな、おかしいなと思って丸薬を包んでいた紙をちら見して。
間違えた。睡眠薬だコレ。
あはは。笑え。
この愚かな私をだれか笑ってぇぇぇぇぇぇぇ！
なんでそんなものを用意したのかという時点から私の臆病さが伺えるわ。
なにせ、クソ師匠を押し倒した後、進退窮まった時に使おうと思っていたものなの。
もしも、嫌われかけたとき実は夢でしたで全部終わらせようと思ったの。
タケリダケの丸薬があればまったく必要ないシロモノだったけど私はこれを捨てれなかったの。
臆病な私を笑うがいいわ・・・
もうこれ、起きる起きないの次元じゃないなぁ・・・多分朝まで起きないなぁ・・・
ああ、丸薬の包み紙の色まで変えておいたのに何で間違えるかなぁ・・・
どうしよう、と考えた後。もう私は。
ヤケクソになってタケリダケの丸薬を飲み込んだわ。
用意した睡眠薬は、ちょっとした媚薬の成分もあるものを選んだ事だし大丈夫。
あれ、こんなに回り早いの？もう冷静な思考ができないや。
服、脱がなきゃ。ああでも全部脱いでる余裕無いや。
上下と下着だけ脱げば十分かな。
獣みたいになるから師匠に乱暴なことをしないようにしなきゃ。
クソ師匠のところにあったロープを自分の腕に巻きつける。
あれ、なんで私。自分の手首を自分で縛ってるんだろ。まあいいや。
尻尾あるから不自由しないし、きつく締めておこう。
あ、そうだ。声が響くとマズイ気がする。だれか来ちゃう。
暴走してる私から嬌声が勝手に漏れるよね、まずいよね。
口を布で塞いでおかないと。外れないようにきつく締めて、と。
師匠の服、脱がせないと。上から脱がして、下を脱がして。
パンツが盛り上がってる。
脱がせないと。
脱がせた。
ししょう、わたしのはじめてをささげます。とモゴモゴと言ったことだけは覚えていた。
正直どうやって帰ったか覚えていないが師匠にキスをして帰ったのは覚えている。
起きた瞬間も多分繋がっていたのだけれど、覚えていない。
もう自慰じゃイケなくなるくらいに気持ちよかった体験しか覚えていないのだ。
そう、この身体は完全に覚えている。クソ師匠のモノがまだ入ってる気分になっている。
お腹の中にタプタプとしたものが入っていることもわかる。それだけでイキそうになった。
もうこの身体は師匠専用。それは自分自身がはっきり認識できていた。
幸い、アタマオカシイ状態の私なりに冷静に考えたのだろう。
太ももに正の字で回数が書いてあった、多分書いたのは自分だ。
一応クノイチでは回数は太ももに書くシキタリ。
だけどクノイチの衣装を考えるとこれ丸見えになっちゃう・・・と恥ずかしくなった。
私は最後の最後、痕跡を残さないように掃除し後の始末を終え撤退した。
師匠からいっぱいいっぱいいっぱい搾り取ったけど。師匠にまだ愛してもらっていない。
今回の暗殺は大失敗。でも、まだ終わりじゃない。
だからまた暗殺に行きます。覚悟しておいてください師匠。
帰った後、同僚からヘタレ攻め忍者のあだ名を頂いたわ。屈辱・・・・！
＊ ＊ ＊
「 なんか俺の留守中に俺の部屋に忍び込んだやつがいるらしくてさ。 」
「 何か盗まれたのか？ 」
「 それがわけわからなくてさ。ロープなんか持ってってどうするつもりなのかね。 」
「 ・・・それは確かにわからないな。警戒しておけ。 」
15/07/05 00:48更新 / うぃすきー