読切小説
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雨が降る、冷たい雨が。
 しとりしとりと静かに幽かに鳴る雨音、触れ合う粘膜が生むじゅぷっ、じゅぷっと粘ついた水音。俺の朝はいつも二つの音と共に始まる。
 段々と意識が覚醒し全身の感覚を取り戻すとともに、下半身に送り込まれてくる快楽に気づく。最早毎日のことであるため、特に驚くこともない。
 まぶたを開き脚の方を見下ろすと、果たしてそこには堕ちたる水精、我が愛しきウンディーネ、闇精霊のエレーンが俺の朝勃ち性器を一心不乱に咥えている姿があった。
 俺の起床に気づいた彼女は軽く髪をかきあげ、一時も性器を離したくないとでも言うかのようにカリ首を唇の端に引っ掛けながら朝の挨拶をする。

「おはようございまふ、マスター。……朝の一杯、頂いてますね?」

 そう言ってじゅるじゅると淫らな水音を隠そうともせず頭を上下に振り、舌を陰茎に絡める。
 やはり目覚める前からたっぷりと愛撫されていたらしく、まだ起きて一分も経たないというのに既に限界が近くなっていた。
 瑞々しい唇の摩擦、意志を持つかのように動き敏感な亀頭周辺を舐め嬲る淫舌、射精を待ち望み頬を凹ませ鈴口を吸い上げる喉が、一体となって本日最初の射精を啜り上げんとする。水を司るウンディーネの性か、口の奥から溢れる唾液は止めどなく、エレーンの口唇をぬめらせる。

「はぁむっ……んっ、ふぅふぅッ……じゅじゅじゅ、ぐちゅっ……」

 だらしなく唾を垂らし下品な音を立てるエレーンのフェラチオ奉仕はいつも俺にとって致命的なのだ。時折ちらりとこちらに向けられる流し目の、その言いようもない妖艶さがまた俺を昂らせる。欲情に蕩けた彼女の瞳に、かつて、ただの精霊だった時の清楚さは欠片も見いだせない。
 
「ふふっ……んー……じゅううううっ! ん、じゅるるるるるるっ! ん、んー……じゅるっ、じゅるるるっ、じゅるるるるるっ!」

 射精を待ちきれなくなったか、エレーンの口淫がより激しさを増す。殊更に音を立てて、まるでストローか何かのように俺の尿道を吸う。これ以上耐えようもなく、俺は愛する精霊に快楽を乞う。

「もう、駄目だ……、出るっ!」
「ん、ぅっ……! じゅうううううううっ! じゅるじゅるじゅるじゅるじゅっ! いいれふよぉ、まふたぁ……こくておいひいせーえき、いっふぁいくらさい……れろ、れろぉっ……んむ、じゅるるるっ!」

 一層激しい吸引に、腰の奥から何かがせりあがってくるのを感じる。肉棒を口いっぱいに頬張って、喉奥で亀頭を刺激するエレーンは一滴たりとも白濁を逃さないつもりらしい。度を超えた献身に、いよいよ忍耐の堤防が決壊する。

「いくぞ、エレーン!」
「ん、うっ!? ん、ぐっ……んぐ、んむっ……んく、んん……こくっ……こく、こくっ……ん、んっ……んぐ、んぅっ…… んふ……んんー……」

 股間にしがみついたまま、心底嬉しそうな表情でエレーンは子種汁を飲み下していく。唇の端から漏れそうになるのを、指ですくっては舐め味わう。インキュバスである俺の出した精液は連日の性交にもかかわらず半固体状に濃縮され、淫水精の口内に絡みつく。咀嚼するようにして少しづつ精を味わう彼女はどこかじれったそうにも見えた。
 何よりも愛する女の、そんな淫猥極まりない姿を魅せられては、いかに射精直後とはいえ俺の性器が萎えようはずもない。イカ臭い溜め息を吐きながら白濁ゲルを食べ終えたエレーンは屹立を見ると、また緩んだ笑みを浮かべた。

「マスターのこれ、まだこんなに元気……もっともっと、お世話しますね?」

 そう言って両膝を付き、俺の腰を跨ぐ。まだ手も触れてもいないのにぽたりぽたりと雫を垂らし布団を汚すほどに濡れきった陰唇が、俺のモノに狙いを定める。そのまま腰を降ろすと、今まで何度も俺自身を受け入れたというのに、未だ処女のようなキツさを失わない膣が亀頭を咥えこんでいく。

「愛撫も何にもしてないのに、もうびっしょびしょじゃないか。どこまで淫乱になっていくんだよ、お前は」
「ごめんなさい、マスター……マスターのおちんちんぺろぺろして、精液飲んで私、イっちゃいましたぁ……お口で感じる、えっちな精霊で、ゴメンなさい……」
「謝らなくっていいさ。そんな淫乱なエレーンが、俺は大好きだからな」
「ああ、嬉しい……! マスター、私も、マスターのことが大好きです……! 一生、死ぬまでお仕えします……!」

 殊勝な言葉を紡ぎながらも、下半身は欲望を隠しきれない様子で、見る間に俺の肉棒を根元まで飲み込んでしまった。無数の手指で扱かれるような、不規則に蠢く肉襞の強い締め付けに、思わず息を吐く。

「うっ……」
「アはぁ、マスターも、気持ちイィですかぁ? 私はもう、挿れただけでイっちゃいそうですう……」

 スレンダーな身体一杯に淫気をまとい、闇精霊がこちらに顔を近づける。その瞳は堕落と淫欲に濁り切って、この世の何よりも美しかった。
 軽いエクスタシーを感じているのか、細い手足を震わせながらもエレーンが腰を使い始める。事を始める前から十分以上に濡れそぼっていた肉筒は、ご主人様の肉槍を受け入れて今や白っぽく濁った本気汁すら分泌し始めていた。
 それほどまでに男に飢えた精霊の肉壷が気持よくないわけはなく、俺の両脇下に手を付き犬のように四つん這いになって浅ましく尻を振る彼女の媚態とあいまってたちまちのうちに性感を高められてしまう。

「マスターの、イイ……美味しい、大スキ……! もっともっと、マスターの白いの、下さい……!」
「ああ、今日も一杯膣内射精してやるからな……! まずは一発目、だ……!」

 我慢することを止め、自分でも腰を使ってみる。布団の弾力を活かし、リズムよく腰を打ちつけてやると、エレーンの嬌声が一段と高まった。
 同時に、俺のものへの摩擦も当然激しくなり、抽送に酔い痴れる蜜壺はさらに激しく絞めつける。自分でするのとは比べものにならない程激しく甘い悦楽に、動いている俺自身も追い詰められていく。

「ひぃ、いやぁぁぁっ! すごい、騎乗位セックスいぃッ! イヤッ、イく、マスターより先にイっちゃうぅッ!」
「俺も、そろそろ……」
「んっ、な、中に、中に下さい、マスターの精液、私の中に出してくださいぃッ!」

 持ち主の意に沿うように、淫膣が締まり、男性器全体に凄まじい快楽をもたらす。フィニッシュを目指して、エレーンの腰を掴み、肉筒の最奥まで男根を挿し込む。男女の会陰が触れ合うほど深く突き込んで、俺は精を放った。

「あああぁぁんっ! あうぅぅっぅっ! マスターの、マスターのが、奥で、出てる……! 熱くって、いっぱい……」

 絶頂に酔うウンディーネの表情は、どんな娼婦も及ばないほど淫靡に蕩けていた。焦点の合わない目をした彼女は、しかしまだ満足しきってはいない。

「ますたぁの、わたしのなかで、まだかたァい……もっと、いっぱい、えっちしてくださぁい……」

 呂律の回らないまま、またエレーンが腰を使い始める。俺にしても、彼女との性交以外にしたいことなど無いので、この反応は本当に嬉しい。精霊や精霊使いが神の味方だと考えているような奴らが見たら卒倒しそうな光景だが、この屋敷、いやここら辺り半径数百メートルには人間などまず居ない。

 ここは魔界。理性を蝕む淫雨が絶えず降りしきる、俺とエレーンのための世界なのだから。





 朝の日課を終え二人でしばし休憩した後。昼食まではいくらか時間があり、他の予定もない俺は、居間のソファーで寛いでいた。腿の上でエレーンを横抱きにし、気持よくスキンシップしていた時、玄関の方から物音が聞こえた。

「……? 今のは……? 誰か、来客でしょうか」
「別に誰でも、構わんよ」

 お前以外の人間にも、魔物娘にも、興味無いからな。そんな風に思うだけでも精霊には伝わってしまうのだろうか、腕の中のエレーンが頬を真っ赤にした。

「マスター……」

 こちらを見上げ、僅かに唇を尖らせる。これは彼女流のおねだりなのだ。ぷるぷるして肉感的な唇に自分のそれを重ねてやると、そっとまぶたを閉じる。
 俺が舌を彼女の口に入れると同時に、エレーンの方も応じてくる。精霊の口腔は人間に近い構造をとっており、それ故にフェラチオなんかもなかなかうまく出来るわけだが、そのひんやりとした感触は人にはない心地良さをもたらしてくれる。
 エレーンの方もやられるばかりではなく、積極的に舌を伸ばして俺の上顎や唇の裏などを優しく舐め味わい、舌を絡め合おうとしてくる。昼や夜食事をとった後は、こんな風にしてお互いの口でお互いに歯磨きしあうのもなかなか楽しいかもな、などと思っていたので、ドンドンと乱暴な音を立てて階段を登ってくる先程の闖入者には全く注意が向かないのだった。
 右手で頭を、左手で背中を支えてより深くくちづけると、彼女の方も両手を俺の首の後ろに回して応じる。
 お互い目を閉じ、キスの音と優しい雨音にただ耽る。いつもの昼の過ごし方である。激しく愛しあうのも良いが、こんな風に二人、相手の存在を感じ合いながらキスし続けるのも、同じくらい俺達の心を満たしてくれる。知らない人間がドアを蹴り開ける音などで、この安寧を乱せはしない。

「とうとう見つけたぞ、汚れた魔物使いめ! 神の名において、この私が貴様を討伐してくれる!」

 フェラチオの時も思ったことだが、エレーンの身体は全体的にとても汁気が多い。やはり水の精霊、飲んでも飲んでも新しく唾液が出てきて、飽きるということがない。
 起き抜けは精気が足りないのか貪欲になる彼女だが、日中はより温和で、殊更に精を欲しがるようなことは少ない。そこがまた、奥ゆかしくて良いのだが。朝や夜の激しいセックスで、ギャップ萌えを感じることもできるしな。

「裏切りの精霊使いよ、今日こそ天の裁きを……」
「(……うるさい)」

 呪言を軽く念じると、狼藉者の足元に青い同心円状の魔法陣が出現した。間髪入れず転送術が起動、侵入者は声を出す間もなく目の前から消失した。

「……あれ? さっきの方は?」
「あんまりうるさいから、ちょっと出ていってもらったよ。今頃湖で、水泳でもしてるだろうさ」

 魔性の雨が振り続くこの魔界を単身踏破してくるくらいだから、それなりの実力者だったであろうことは想像に難くない。
 それでも、既に闇精霊の魔力そのものと化した湖の真ん中に放り込まれて、無事である保証は無い。最低でも人間は辞めて頂くことになるだろうが、まあそんなことはどうでもいい。

「さ、そこのテーブルに腕をついて」
「え? な、何ですか?」
「もう、我慢出来ないんだろう? 後ろから、またいっぱい犯してやるよ」

 欲情を覚られた事を恥じたか、エレーンの頬がまた紅潮する。それでも拒むことなく、上半身を机に預けて綺麗なお尻をこちらに向けてくれた辺り、やはりそろそろキス以上のことがしたくなってきていたらしい。
 背後を取り、 手のひらサイズの美乳を両手で揉みしだく。人差指と中指で乳首を挟み、コリコリと弄びつつ柔らかいおっぱいを掌でたっぷりと味わう。
 敏感な胸を荒々しく責められ、エレーンが息を飲む。が、それで俺は手を休めることはないし彼女がそれを望む筈もない。乳腺を揉みほぐして、射乳を促すように乳房全体をじっくりと揉み、責める。
 ひんやり、しっとりとしたその乳肌は、凌辱者たる俺の手指を歓迎するかのように吸いつき、より一層瑞々しさを増す。魔物娘の平均と比べるとやや小振りながらも感度抜群なその乳房を蹂躙され、エレーンは溜まらず苦鳴を上げた。

「マ、スター……! そんなに、おっぱいばっかり……!」
「いいじゃないか。エレーンのムネ、俺は好きだぞ? こんなに柔らかくて、しかも感じやすいんだから」

 言って、被虐的な性感にしこり立った乳首を親指と人差指で挟み、ひねり上げる。敏感な部位を急に責められ、淫乱精霊がアクメ声を漏らす。

「ひ、いィィィッ! 乳首、いじっちゃ、やァッ!」
「いいぞ? 胸だけでイっても……。おっぱい揉まれて気持ちよくなる、やらしいエレーンの顔、俺に見せてくれよ……!」

 手の内に丁度収まる乳房をぎゅっと掴み、同時に指に力を込め、コリコリに勃起した乳首を左右ともに抓る。と、眼下の淫乱女は、感極まったように身を二度三度震わせ、テーブルに倒れこんでしまった。
 ぼうっと蕩けたその表情を見るまでもなく、エレーンの絶頂は明らかだった。愛液が洪水となって溢れ、垂れた雫が床を汚している様は隠しようも無い。

「……ま、スター、私、イきましたぁ……おっぱい揉まれて、乳首弄られただけで……」
「ああ。涙まで流して、そんなに良かったのか」
「はいぃ……私のおっぱい、あんまりおっきくないのに、こんな敏感でごめんなさい……」
「気にするな。掌にぴったり収まるお前のエロい乳が、俺は好きなんだよ」

 賞賛のことばに、精霊が歓喜の笑みを浮かべる。淫欲に染まりきったその緩んだ笑みこそが、俺にとって何よりも大切なものなのだ。
 こちらに尻を寄せ、脚を軽く開き、挿入をせがむ媚態はもはや魔物そのものといった風で、彼女が単なる精霊だった頃よりもなお愛しさが増してくるのを感じる。
 また、愛する女の胸を散々楽しんだ俺の方も、そろそろ我慢がならなくなってきたところだ。亀頭をびしゃびしゃに濡れた蜜壺に宛てがい、少し腰を進める。
 俺のものに慣れ切って、一番気持ちよく出来る形態をとっているのではないかとすら思える魔膣が、潤滑液を漏らしながら出迎える。入ってくるのが待ちきれない、とばかりに膣口が蠢き、肉筒が吸引力を高める。少し気を抜くとすぐにでも射精してしまいそうなのを抑えながら、ずぶずぶと陰茎を割り挿れる。
 根元まで挿入し終え、激しいピストン運動を待ち望んでいるエレーンを見て、俺は急に意地悪してやりたくなってしまった。腰を両手で抱え、いつもならここから獣じみた突き込みを行う筈の体勢で、動きを止める。予想した快楽が与えられないことに、闇精霊が悲しげな笑みを向けてくる。

「……どうしました? 動いて、下さらないのですか?」

 消沈と憔悴を湛えた彼女の問いに、俺は答えない。わざと嗜虐的な笑みを浮かべ、ただ立ち尽くすのみである。いいところでお預けを食らった彼女が、恥ずかしげもなく俺に哀願する。

「ねえ、マスター、私、もう、ダメです……動いて、ください……マスターの、硬くて太い勃起ちんぽ、、いっぱいぶち込んでください……!」
 
 淫らな言葉で俺の興奮を煽るウンディーネは、じれったいとばかりに自分で腰を動かし始めた。と言っても、俺に尻を抱えられた体勢では満足いくほどの快楽は得られない。寧ろ、中途半端な摩擦によってより性感が高められてしまい、ますます苦しくなってきたようである。
 満足に動けず、浅ましく尻を振って僅かな快楽を得ようとする彼女の卑しさ極まる様は、俺の獣欲を大いに満たしてくれるものだった。涙目で、息を切らしながら腰を動かし、更に追い詰められるエレーンの痴態に、男性器の硬度がつい増してしまう。

「あ、はァッ、こんなの、いやぁ……マスターの、欲しいのに……一杯ぶち込んで中出しして欲しいのに……こんなの、酷いですぅ……意地悪ですぅ……」

 とうとう本気で泣き出してしまった。あまりいじめるのも本意ではないし、俺の方もそろそろ耐え切れなくなってきたので、エレーンの骨盤を抱え直し、抜けかけていた肉竿を一気に挿入する。淫水の飛沫が飛ぶほど激しいストロークに、眼下の美女は背中を反らして喜び喘ぐ。勢いを殺さず、ガンガン腰を振り続けエロ膣を突き責める。焦らされた分、感度と絞まりと水分は今まで以上となっていた。

「ひ、い、イィぃぃん! これ、これが欲しかったんですぅ! おちんぽ、ごりごりされて私、イくぅぅぅ!?」

 ぷしゃっ、ぷしゃっと小さな水音が鳴る。二人の接合部から、透明な水が断続的に噴き出ている。こいつとの付き合いもそれなりに長い俺だが、精霊の潮吹きなんてものを拝んだのは初めてだ。一回突くごとに、膣の奥からエロい汁を漏らすほど感じてもらえたのは嬉しい限りだ。

「気づいてるか? エレーン、お前今潮吹いてるぞ。なんて淫乱なんだよ、魔物にしても異常だぞこれ」
「はひぃぃ……わらひ、きもちいーんれふ……! マ、まふたーの、ガチガチちんぽでおかされて、おしおふいちゃってるんでふぅ……! もっと、もっろ、イかせて、えっちなおしる、ふかせてくらはい……!」
「……!」

 ろれつの回らない、余りにもいやらしいおねだりに、脳の奥がカッと熱くなる。理性が消え、生殖本能のみが俺を支配する。
 上体を前に倒し、エレーンに背後から覆いかぶさり、より乱暴な、貪るような体勢を取る。まるで獣のようなスタイルに、蜜壺は歓喜の抱擁で応える。不規則かつ全方位的な女性器のうねりと蠢きが、女性の意志をもって行われるフェラチオや手コキとは全く異なる快楽をもたらす。ほとんどイきっぱなしのおまんこがここまで激しく精を求めるとは、俺は初めて知った。
 散々腰を振り続け、俺の限界も間近に迫っていた。もう、一刻の猶予も無い。我慢汁が鈴口から漏れでてくるのを感じたか、エレーンがこちらを向く。

「まふたぁ、でますか? せーし、ぴゅっぴゅしちゃいまふか? わらひのなかに、らして、くらさいまふか?」
「ああ、出すぞ……!」
「くだ、さひぃ! はやく、まふたーの、あついせーえきで、イきたい……!」

 乞われるまでもなく、もう、耐えられない。精霊が本気で精を欲した時、抗える男などいやしないのだ。
 肉棒を膣の一番奥までねじ込み、溜めに溜めた精液を解放する。どくんどくんと、音が聞こえてきそうなほど激しい射精に、淫婦は狂う。

「ひやぁぁぁっ! きて、きてるぅ! まふたのせーえき、なかにれて、わらひ、わらひぃいっ!」

 潮を吹くほど感じさせられ、何度となく絶頂していたエレーンの全身はかつて無いほどイきやすくなって、膣内で一度男性器が跳ねるたびにアクメに達し、断続的な射精の、その一度ごとにまた感じやすくなってしまっているのだった。

「ああ……あ……、おなかのなか、せーえきいっぱい……おいしくて、しあわせぇ……」

 精液を注ぎ終え、流石に虚脱した俺はソファーに座り込む。しばし休憩、と思ったところ、まだどこかぼうっとした様子のエレーンが脚の間に跪いた。

「ますたーのおちんちん、わたしがきれいにいたしますね……?」

 そう言って、愛液やら潮やら精液やらで汚れきった俺のモノを口に含み、舌でぺろぺろと舐めて綺麗にしてくれる。朝のような、激しく精を啜るような口淫ではないが、射精直後の肉棒にはこれぐらい優しい奉仕がちょうどいい。
 亀頭やカリ首や、敏感なところまで優しく丹念に舐め清められていると、一旦落ち着いたはずの性欲がまたムラムラと蘇ってくる。エレーンも、それを待っていたかのように笑むと、献身的なお掃除フェラを続行する。

「はむっ……んー……れろ、ん、じゅるっ……れろ、ん、む……れろ、じゅる……れろ、れろ……」

 瞬く間に復活させた男根を心底嬉しそうに頬張る彼女を見て、俺は自分がますますエレーンに溺れていくのを感じた。
 どうやら、愛の深さには、限界というものが無いらしい。







 ふと気づくと、外は夜。俺はエレーンと共に、全裸でベッドに倒れていた。どうやら数えきれないほど愛を交わした後、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。 
 目覚めと同時に感じたのは、激しい喉の渇き。いくらインキュバスとはいえ、あれだけ液を放てば水分不足にもなろう、ということか。
 外は激しく雨が降っている。眠っている彼女を起こさないよう、静かに部屋を出て台所へ向かう。居間には、昼に噴かせたエレーンの潮がそのまま汚れとして残っていた。
 ちょっと埃っぽいキッチンに入る。蝶番が錆びついて軋む戸棚を開け、古びたコップを取り、軽く洗ってから水を注ぐ。二、三度口をつけ、ようやく人心地ついた俺は手近な椅子に座った。雨音をBGMに、しばし物思いに耽る。

 最近では随分マシになってきていたのだが、やはり昼の勇者(?)の影響故か、車軸を流すような雨は一向に収まる様子を見せない。
 俺とエレーンの作ったこの魔界は、本人は認めようとしないが、創造した精霊の内面に強い影響を受けるらしいのだ。何らかの理由で彼女の感情が乱れると、雨風が急に強くなり、気持ちが落ち着くと、雨脚も弱まる。
 裏切り者とか、不浄とかいう単語を、気に病んでいるのだろうか。二人魔界で享楽に耽ることを、罪と感じているのだろうか。
 堕落してしまうまでは、彼女は精霊たちの中でも一際控えめで心優しい娘だった。それが、今のようになったのは俺の責任でもある。 
 無論俺はそのことを後悔などしていないし、今の生活が最高に幸せだと感じている。しかし彼女にはまだ、過去に未練があるのだろうか。正義の精霊使いを、自分の都合でダメにしてしまった、などと思っているのだろうか。
 何度聞いても、確固とした答えは得られない。耳に入るのは、雨の鳴る音のみ。
 残った水を飲み干すと、俺は立ち上がった。乾いた流し台にコップを置き、台所を出る。
 元より、俺達の前にも後ろにも道など無いのだ。俺達は、互いに愛しあう事しかできない。彼女が苦しんでいるとするならば、言葉を尽くすよりもまた愛しあうほうがいいだろう。彼女が苦しんでいるのは、きっと俺のことを思う故、だろうから。
 
 
11/08/10 17:57更新 / ナシ・アジフ

■作者メッセージ
気怠い感じが出したかった。

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