連載小説
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魔物アプリ……クノイチ編
 嘗て巷であるアプリゲームの存在が噂され、それを目当てに誰も彼もがスマホゲームにのめり込むという社会現象が起こってから丸一年余り。その噂は事実かどうかは確認のしようがないが、あの頃と比べて落ち着きは取り戻したかに見える。あくまでも表面上はそう見えるだけで、もしかしたら今でもアプリゲームを探し求めている人間がいるかもしれない。
 当時の自分は噂のアプリゲームに興味が無かった上に、アプリ自体が何処にも見当たらないので単なるガセネタの一つだと決め付けていた。仮にあったとしても、肝心の“噂”は一片たりとも信用していなかった。

 けれど―――それはとんだ大間違いであった。

「嘘……」

 スマートフォンの画面から濃厚な紫煙が噴き出し、瞬く間に部屋中に充満していく。不思議と息苦しさもなければ、煙が目に沁みるという事もない。だけど、今目の前で起こっている現実離れした出来事のせいで頭が上手く働かず、その事実に気付くことは遂になかった。
 やがて煙が薄れていき元の見慣れた部屋の光景が見えてくると、床に落ちていたスマホの直ぐ傍に見慣れぬ人物が立っていた。

 女性だ。それも黒い布地に怪しげな紫色を取り入れた忍び衣装を身にまとった女性。しかし、胸や太腿(主に大腿部)の露出が激しい上に、女性の魅力的な肉体美も相俟って目のやり場に困ってしまう。これは性的な意味で目に毒だ。女性好きにとっては眼福かもしれないが、初心な僕にとっては強力な毒だ。

 鼻から下は紫色の布地で隠されているが、それでも尚くっきりと見える顔のラインからして、彼女が絶世の美女と呼ぶに相応しい美貌を持っている事が分かる。恐らく男性が十人彼女の横を通り過ぎれば、十人とも間違いなく振り返るであろうぐらいの美女だと断言出来る。

 そんな見目麗しい女性が何故か僕と同じ部屋に居る。

 それを見て脳裏に過ったのは、一年前に幻と謳われたアプリゲーム……魔物アプリに関する噂であった。噂の内容は『ゲームをクリアしたら美しい女性を恋人にできる』という何とも胡散臭いものだ。当然そんな眉唾な噂など有り得ないと一ミリたりとも信用していなかったのだが、スマホから美しい女性が現れた現実を見る限り、もしかしたらガセではないかもしれないと思い始めていた。





 そもそも僕こと服部幸平が魔物アプリに出会ったのは今から半年前の事である。その頃は魔物アプリによる噂騒動も落ち着きを通り越して全く耳にしていなかったので、てっきりアプリの噂はガセネタで、信用している人間は既に居なくなったものだと思っていた。
 ところが、スマホを通じたネットサーフィンをしていた最中、偶然にも魔物アプリを紹介するサイトを見付けてしまったのだ。当初は『何だこれ?』と軽い気分であるゲームアプリをダウンロードしたのだが、後々で調べてみると件の魔物アプリだと知って驚いたものだ。
 因みに魔物アプリのサイトを紹介した方が良いかと考え、もう一度サイトを探そうとしたが既にサイトは消されていた。今になってよくよく考えてみれば、十分に不気味且つ怪しいと言わざるを得ない。

 しかし、自分とて人の子だ。一年前まではネットや社会の至る所で『どんな人間でも素敵な恋人が出来る夢の様なアプリ』等と胡散臭い噂が飛び交った魔物アプリの真偽を確かめたかった。言葉の使い回しや言い方でどうにでもなるが、要するに人間誰しもが持つ好奇心が擽られてしまっただけだ。
 それに魔物アプリという認識以前に、こっちは純粋にアプリゲームを楽しむつもりでダウンロードしたのだ。魔物アプリを知ろうが知らなかろうが、どっちにしろゲームをする事に変わりはない……即ち結果オーライだと深く考えずにポジティブに向き合うことにした。

 そして僕がダウンロードしたアプリゲームは『クノイチスレイヤー』というゲームだ。内容は迫りくる追手から只管に逃げ、道の途中で仕掛けられた罠を躱し、待ち伏せる敵を撃破してゴールを目指すという所謂『逃げゲー』である。
 ゲーム画面には最初期のファミコンみたくドットで作られたクノイチが映し出されており、真上には彼女のHPゲージが表示されている。それがゼロになるか、背後から追ってくる追手に捕まればゲームオーバーという仕組みだ。
 しかも操作するクノイチは常に一定の速さで移動しており、ストップを掛ける事が出来ない。出来る操作は敵に向かって武器である手裏剣を投げるか、ジャンプして罠を回避するか、速度を遅くしたり速くしたりするぐらいだ。つまりは只管に走り続ける上にタイミングや一瞬の判断も必要となるノンストップ逃げゲーなのだ。
 幸いにも一度失敗してやり直しても、敵や罠の配置は変わっていないので、失敗を繰り返しながら道を覚えてしまえばクリアする事も難しくはないという親切設計だ。

 そうして開始したクノイチスレイヤーは単純な作りと操作ながらも、やり応えのある良作であった。単調過ぎず難解過ぎない程良い長さのステージ。各ステージごとに変化する仕掛け罠。背景を置き去りにして駆け抜ける姿は疾走感に溢れ、そこに高ジャンプのアクションを織り交ぜれば益々忍びらしく見える。

 アクションを楽しみながら敵から逃げる斬新なゲームは中々どうして遣り甲斐のあるゲームであり、夢中になるのに然程時間は掛からなかった。

 ステージは全部で15あり、それらを全てクリアするとEXステージなる特殊なステージが出現する。今までのとは比べ物にならない難易度の高さ、敵の数も多い上に仕掛け罠もプレイヤーの心理の裏を掻くような憎たらしい配置となっている。
 3つあるEXステージで挫折しそうになったものの、何度も何度も繰り返す事でステージ構造と罠の位置を覚え、一つ一つを着実にクリアしていった。

 そしてEXステージを発現させてから2ヶ月後に当たる今日、遂に最後のEXステージを攻略し、完全クリアを成し遂げたのであった。クリアした直後にドッと気が抜け、同時に得も言われぬ感動と達成感で体中が満たされていく。
 あとはスタッフロールとか見ながら終わりかなー……なんて呑気に考えていたら、画面に突如メッセージが出現した。メッセージの内容は『ゲームクリア、おめでとうございます!』と最後までプレイしてくれたプレイヤーの健闘を褒め称える言葉が二行で綴られており、他のゲームでも見受けられる製作者の粋な計らいかなと軽い気持ちで眺めていた。

―――が、次の行に書かれた文章に目を滑らした瞬間、それまであった達成感や感動は一気に体の内から吹っ飛んでしまった。

『このゲームをクリアした貴方に特別な特典を用意しました!! それを受け入れるも拒否するも、選択は貴方の意思次第です!!』


『人生を棒に振りますか?』


 意味深な文章と色々と勘繰ってしまいそうな怪しい質問、その下には『YES』と『NO』の二択が並んでいた。その文章を岩のように硬直した表情で見詰めること十数秒、漸くコレが魔物アプリと呼ばれる胡散臭い噂の火種となったゲームである事を思い出した。

 この時までは件の恋人云々の噂に関して、これっぽっちも信じてはいなかった。多寡がゲームをクリアしただけで恋人なんて出来る筈がないと僕の中では断言していた。

 ところが此処に来てゲームクリア後のコレだ。特別な特典とは何か。何を受け入れるのか。人生を棒に振るとはどういう意味か。様々な疑問の連鎖が頭の中で発生し、最早パンク寸前の状態だ。
 上手い話には裏があると言うが、これはどう見ても危ない話にしか見えない。だが、一方で表現が露骨過ぎて本当に危ないのかという疑問もあり、その裏に隠された思惑が全く読めない。
 暫くYESとNOの文字のみを交互に見遣り、どちらを選ぶべきか真剣に悩んだ。危ない橋は渡らないに越した事はないのだが、本心とも言える好奇心はYESの結果を求めていた。

 悩んだ末に僕が出した答えは折角クリアしたゲームの特典を無視するのは勿体無い。つまり、YESの選択を選ぶという事であった。

 そして期待半分、不安半分でYESの選択を押してから数秒後――――冒頭の美女が煙幕と一緒に現れましてビックリ仰天ってな訳ですよ。

 怒涛の展開に思考が置いてけ堀を食らってはいるが、とりあえず噂にあった『ゲームをクリアしたら美女に会える』と言うのは紛れもない事実のようだ。問題は果たして恋人になれるかどうかという点なのだが……と考えに耽っていると、不意に目の前の美女が深々と頭を下げた。
 いや、只単に頭を下げたなんてレベルではない。両膝と三本の指を床に着け、頭を深々と下げてお辞儀する。ソープ嬢の挨拶で行われる“三つ指を着いてお辞儀する”という正にアレだ。

 そして彼女は顔を上げるのと同時に目元をフッと和らげ、朗らかな笑みを僕に向けた。美しい女性に微笑み掛けられただけなのに、僕の頬は薄らと熱を持って赤くなり、心臓はバクンバクンと激しく鼓動していた。
 女性慣れしていない自分らしい反応だが、返って滑稽に見えていないかが不安だ。しかし、彼女はそんな自分の反応を気にもせず、三つ指を着けたままの姿勢で自己紹介をしてくれた。

「初めまして、旦那様。私、クノイチのアヤメと申します」
「アヤメ? アヤメって……えっ、まさかあのアヤメ!?」
「あのとはどれを指すのかは分かりませんが、恐らく旦那様の考えている通りだと思いますよ」

 アヤメという名前に最近聞き覚えがあるなと思ったけど、クノイチスレイヤーを始める前の説明文の中に主人公の名前が『アヤメ』であった事を思い出した。恐らく僕が頭に思い描いたことを向こうも察してくれたのか、アヤメはコクリと頷いて肯定してくれた。
 だけど、これで益々謎が深まった。もし目の前の美女があのアヤメだとしたら、どうしてゲームの中から現実世界へと現れたのだろうか。二次元のキャラが三次元に現れるのは夢みたいな空想だと言われているが、それが今正に現実で起こっている。

「あ、あの……どうしてゲームの中に居たアヤメがこっちの世界に?」
「やっぱり不思議に思われますよね。まぁ、説明すると長くなるんですけど……聞きますか?」

 いや、此処でどうして聞かないという選択肢を選べるのでしょうか。聞きますよ、聞くに決まっていますよ。そういう意思を込めて首を上下に振り動かすと、それまで姿勢を崩さなかったアヤメが立ち上がる。
 八頭身と呼ぶに相応しい彼女の長身は僕の頭一つ分……いや、1.5個分抜きん出ており、彼女が立ち上がっただけで自然と僕の視線は上向きとならざるを得ない。前々から自分がチビだと分かっていたが、此処にきて改めて思い知らされるとは……。おまけに相手が女性なので、その事実が返って僕の心に突き刺さる。

 まぁ、そんな個人的な心情はさて置きだ。アヤメは実の弟を見詰めるような慈愛の籠った眼差しを向けたまま、肝心の説明をし始めた。

「魔物? 魔法? え、じゃあ……アヤメは魔物なの?」
「ええ、その通りでございます」

 口元に手を軽く添えて短く微笑するアヤメ。布のせいで顔の半分は隠れてはいるが、それでも残りの半分だけでも花が咲くような笑みを浮かべている事は容易に想像が付いた。彼女の立ち振る舞いは正に高嶺の花と呼ぶに相応しく、大抵の男ならば彼女の笑みに見惚れていたかもしれないが、生憎と彼女の説明を聞いて状況を受け入れるのに必死だった僕はそれどころじゃなかった。

 アヤメ――と言うよりも彼女達クノイチは魔物と呼ばれる生物の一種であり、普通の人間とは異なるそうだ。確かに腰辺りから生えている先端がハート型とも武器とも取れる尻尾や、エルフのように尖った耳は人間には無い特徴だ。
 そして人々の間で様々な噂が飛び交った魔物アプリの正体は、魔界に生息する魔物娘を封印し、プレイヤーが特定の条件……ゲームクリアや条件達成を機に現実世界に具現化させるという魔法で作り上げられたシステムの一つだそうだ。

 僕達からすれば単なるゲームだが、彼女達にとっては唯一人間社会へ渡る為のゲートであり、最後の通行手段だそうだ。

「ゲート……なんですか?」
「そうです。このアプリさえあれば自由に魔界と人間界を行き来する事が出来ますし、旦那様を魔界へ招待する事も可能です。これも全部アプリを開発して下さったバフォメット様のおかげです」
「へぇ……。よく分からないけど、凄いんだね」

 バフォメット様が誰なのかは知らないし、彼女達の目的が何なのかも知らない。尤も彼女の様な美しい魔物が人間界に現れてくれるだけでも世の男達は狂喜乱舞に違いないだろうけど。

 けれど、どうしても一つだけ聞いておきたい疑問があった。

「あのさ、もう一つだけ聞いても良いかな?」
「はい、何ですか?」

 優しい口調と共にニコリと目元に笑みを浮かべ、こちらが質問し易い雰囲気を作ってくれる。何て気遣いの出来る女性なんだと感動を覚えたところで、僕はその疑問を彼女に伝えた。

「僕の事を旦那様って呼んでいますけど、どういう意味ですか?」
 
 普通の男性ならばアヤメみたいな美女に『旦那様』と呼ばれれば鼻の下を伸ばして気を良くするだろうが、僕の場合は『おかしい』という疑問があった。確かに僕と彼女はゲームを通じて知り合ったみたいなものかもしれないが、それでも現実世界では初対面であり互いの性格や個性などは全く知らない筈だ。にも拘らず、彼女はいきなり僕の事を何の躊躇いもなく『旦那様』と呼んだ。
 これがメイドのゲームならば納得もいくが、生憎と僕がやっていたゲームはアクションに近い逃げゲ―だ。『旦那様』と呼ばれるようなゲームでないのは確かだ。もし僕がアヤメの立ち位置ならば、プレイヤーの事を『プレイヤー様』か本人の名前で呼ぶだろう。
 そう考えるとアヤメの『旦那様』呼びはゲームクリアの特典の一つか、それとも彼女が僕を喜ばせようとする遊びの一環なのか。もしくはそれ以外の何かしらの理由があるのだろう。

 『旦那様』呼びの裏に隠された秘密を自己解釈した上で出した質問だったのだが、それまでニコニコと笑みを浮かべていたアヤメの周囲の空気がピキリと氷結して固まった。あくまでも個人的にそう見えただけなのだが、空気を読むことは極めて大事な事だ。そう心掛けているからこそ、僕は今の質問が地雷だったのだと即座に気付いた。
 これはヤバい。急いで今の質問を取り消し、別の質問をするべきだと脳内で何度も言い聞かせるが、こういう時に限って都合のいい質問が浮かんでこない。ああもう、こんな事になるのなら複数の質問を考えるべきだったと後悔しても時既に遅しだ。

「あ、あの―――! 初対面なものですから気になってしまって――――!」
「気になります?」
「……はい?」
「私が貴方を旦那様と呼ぶの、気になります?」

 慌てて弁明しようとした矢先、彼女の柔らかな言葉がやってくる。声色は先程と全く変わらない優しいものなのだ。けれど、何故だろうか。それがとても恐ろしい響きに聞こえてくる気がするのは。そう、まるで顔は笑っているけど目は笑っていない……それと同じだ。因みに今の彼女は笑顔を浮かべているが、元々が吊り目である事もあって糸目となっており、瞳に込められた感情が全く読み取れない。

 けれど、ここで遠慮して『結構です』なんて言おうものならば、この空間が彼女から発せられる不機嫌なブリザードで凍て尽されるであろう。無論、これは比喩だが強ち間違っていない気もする。
 取り敢えず、彼女の言葉に従って『はい』と答えるとアヤメはニコニコと笑みを浮かべたまま、こちらへ一歩近付いた―――次の瞬間、自身の豊満な胸の谷間に手を入れた。
 一瞬『は?』と間の抜けた声を漏らしてしまったが、一秒と経たぬ内に胸に入れた手を引き抜くと、その手には赤い縄が握り締められていた。最初は何が何だか分からず茫然としていたが、それまで細く閉じられたアヤメの糸目が薄らと見開き、翡翠に似た輝きを持った瞳が垣間見えた。しかし、この時の彼女の瞳の中には美しさだけでなく、獲物を見付けた狩人の如くギラ付いた輝きも混在しており、瞬時に僕は身の危険を察知した。

 だが、それに気付いた頃には彼女が手にしていた縄は僕の肉体を縛り上げ、完全に自由を奪ってしまった。正に一瞬の出来事であった……なんて呑気に言っている場合ではない。

「な、何これ!?」
「何って……クノイチならば誰もが覚える縄を用いた縛法です」
「そ、そうじゃなくって……! どうして縛る必要があるんですか!?」
「あら、それは当然じゃありませんか♥」

 殺気は無いが逃がす気など更々ないと如実に物語る鋭い眼差しが僕のチキンハートを射貫き、身も心も完全に逃げ場を失ってしまった。情けない話ではあるが、この時の僕の口からは『あ…あ…』と言葉を発することさえままならなかった。

 それを見た彼女が満足そうに妖艶な笑みを浮かべ、顔をそっと近付けると耳元で妖艶な響きを込めた声色で囁く。

「たっぷりと可愛がってあげますからね、旦那様♥」

 その瞬間、『あ、詰んだ』と僕の中にある第六感が明確な死刑宣告を告げた。



「んむっ♥ ちゅぶ♥ んあっ♥」
「ひぅっ! あ、ダメ…! そんなに僕のチンチンを吸っちゃ……!」
「……じゅるるるるるるるる♥」
「あひぃぃぃぃぃ!!♥♥♥」

 身動きが取れなくなった僕のズボンを下ろし、その中に隠れていた男根に咥えこみ、実に美味しそうに舐めたり吸ったりを繰り返すアヤメ。
 顔の下半分が隠れていても顔のライン等で美女だと分かり切っていたが、フェラチオをする際に明らかとなった素顔を見て、改めて彼女が美人だと実感した。
 そんな絶世の美女にフェラチオをされる感動よりも、初めて経験するフェラチオの快感に頭が真っ白になり、女の子のように情けない悲鳴を上げる事しか出来ない。これではどちらが攻めで、どちらが受けなのか分かりやしない。いや、間違いなく襲われているのは僕なんですけどね……。

 おまけに時折アヤメは僕を上目遣いで見上げては、『旦那様のチンポ、熱くて火傷しそうだけど凄く美味しい♥』だの『旦那様のイカ臭い精液、アヤメの口の中にビュッビュッて出しても良いですよ♥』だのと卑猥な言葉で挑発するので、僕の男根は不埒な意味で元気となり、存在感を増す一方だ。

「うふふふ、旦那様のオチンチンが舐める度にピクピク反応して可愛いですよ♥」
「あ、アヤメさん……もう……」

 もう辞めて……と口を開き掛けたが、言葉の続きを察知したアヤメは、それまで優しく弄っていた睾丸の袋をギュッと力強く握り締める。股間に襲い掛かった激痛に肛門が反射的にキュッと閉まり、驚きにも似たゾワッとする電流が背筋を駆け上がる。

「ひぐっ!!」
「もう……何ですか? まさかこれだけで音を上げる訳じゃありませんよね?」

 本人はニッコリと爽やかな笑みを浮かべているが、背後のオーラは全く正反対だと一目で分かった。コレは間違ってもNOと言ったらアカン奴やと瞬時に判断した僕は無言ながらもコクコクと首を何度も上下に振った。
 僕の反応を見てアヤメのオーラが一瞬和らいだのを肌で感じ取り、ホッと胸をなでおろした―――のも束の間、縛られて身動きが取れないのを利用し、僕の体を指先一つで押し倒したのだ。それこそ本当にチョンと軽くだ。

 倒れた際の衝撃が背中に伝わり、視界が反転して真っ白い天井が目に飛び込む。そして倒れた僕の体に重圧が掛かり、ふと視界を下へ移動してみればアヤメが僕の下半身に跨っていた。僕の勃起した男根を掴み、自身の肉壺に宛がいながら。

「それでは、早速頂きま〜す♥」

 愉悦に染まった笑みを浮かべながらアヤメは腰を下に降ろした。彼女の唾液と僕のカウパーに塗れていたおかげか、まるでローションをぶっ掛けられたかのような滑りがあり、驚くほどにあっさりと彼女の中に男根が収まってしまった。
 だが、本当の驚きは入ってからだった。彼女の肉壺の中にある肉襞がグニュグニュと動き、僕の肉棒に絡み付く。時には万力のように締め付けたかと思えば、時には全ての肉襞で優しく舐め回すように肉棒を愛撫する。
 生まれて初めてとは言え、このような高度な技術を駆使したセックスを味わってしまうと、他の女の子では満足出来なくなりそうだ。そう思えてしまう程に彼女とのセックスは快感だった。

「ふふふ、アヤメの中で旦那様のオチンチンがピクピクしているのが分かりますよ♥」
「あ、アヤメ……! 僕……もう……!」
「ええ、思い切り中で出して下さいませ♥ 旦那様の若い子種でアヤメの子宮を満たして下さいませ♥」

 耳元でソッと囁かれた妖艶な色気が詰まった言葉は、僕からすればこの上ない甘美な媚薬に感じられた。直後、僕は彼女の台詞通りに子宮目掛けて思い切り射精してしまう。
 男根の竿が脈打ち、亀頭の口から精液がジェット噴射の如き勢いで発射される。更に彼女の肉襞が射精する男根を扱き上げ、尿道に残っている精液を一滴残さず搾り取ろうと蠢いているのが分かる。
 マスターベーションの時とは比べ物にならない程の量を出していると実感しながらも、僕の男根が衰える気配はなかった。寧ろ彼女の中で益々大きくなる一方だ。

「ん……しょっと♥」

 可愛らしい掛け声と共にアヤメがゆっくりと腰を持ち上げると、彼女の肉壺に収まっていた巨大なままの男根が抜け出て、少し冷ややかな部屋の空気に晒される。

「それじゃ、今度は旦那様にも頑張って貰いましょう♥」
「え?」

 そう言うと彼女は僕の自由を奪っていた縄をシュルリと意図も簡単に解いてみせた。突然解放された事に戸惑いながらも上半身をゆっくりと起こすと、僕の目前に今にも齧り付きたくなる程に美味しそうな白桃があった。
 無論、これは言葉の比喩だ。実際にはアヤメが四つん這いの格好となり、僕に向けて白磁器のような光沢を放つ綺麗なお尻を突き出していた。白桃の割れ目に沿って視線を下ろしていけば、陰毛も生えていない秘部から僕が射精した精液の塊が零れ落ちていくところだった。

 それを見て思わずゴクリと唾を飲み込めば、その嚥下の音がアヤメの耳に届いたのか、彼女はクスリと笑うと両手でお尻の割れ目を広げながら誘ってきた。

「あら、見ているだけで良いのですか? 旦那様のお好きなように触っても良いんですよ?♥」
「僕の……好きなように?」
「ええ、そうです。私の体は旦那様のもの。つまり、胸もマンコも好きに弄る権利は貴方にあるんですよ♥」

 甘美な誘い文句に僕の我慢のゲージが振り切れ、気付けば彼女の肉々しいお尻を鷲掴みにしていた。女性特有の肌の柔らかさと共に、強く押しても弾き返される張りのある弾力が指に伝わる。世の男達が、この感触に夢中になるのも分からないでもない気がした。
 これだけでムラムラしてきた僕は、遂に彼女の秘部にまで指を伸ばしてしまう。僕の精液とアヤメの愛液に塗れた秘部に指を入れ、ゆっくりと前後に出し入れする。卑猥な水音をBGMにしながら夢中に掻き回せば、まるで荒いメレンゲのように泡立ち、泡立てば泡立つほどに彼女は乱れていく。

 だが、僕の指だけでは満足出来ないのか、彼女は甘さと切なさを織り交ぜた声色で僕に嘆願した。

「ああん、旦那様ぁ♥ そろそろアヤメのマンコに、旦那様の勃起チンポを突き入れて下さいませぇ♥」
「う、うん…!」

 最初の頃は初めてのセックスで戸惑っていたくせに、今では自分の意思でセックスをする事に何の躊躇いも存在しなかった。海綿体が膨張してガチガチに硬くなった男根を彼女の肉壺に突き入れ、思う存分に腰を前後に動かし彼女を喘がせた。

「ああっ! 凄いです! 旦那様のオチンチンが私の奥をぉぉぉぉ!!♥」
「うぁ! アヤメの中…! やっぱり……キツイ!」

 前へ突き入れれば膣の肉が行く手を遮るように立ちはだかり、それを掻き分けるように進む度に肉襞と擦れ合い、肉棒にこの上ない快感が駆け抜ける。そして後ろへ引いて抜こうとすれば今度は逆に肉棒を逃がすまいと膣全体が凄まじい圧を掛け、男根を締め上げる。
 それを交互に繰り返すだけの単純な動作ではあるが、勃起して触感が敏感になっている男根には至極の快楽を与えてくれる。

 だけど、やはり僕自身がセックス初心者である事に変わりはなく、一分も経たない内に股間に精液が込み上がる感覚が伝わってきた。

「ご、ごめ……! もう……ああっ!!」

 彼女に断りを入れようとしたものの、僕の男根は迫りくる濁流を塞き止める事が出来ず、そのまま彼女の中へ本日二度目となる膣内射精をしてしまった。彼女の中へ直接精を注ぐ瞬間をこの上なく気持ち良いと感じる一方で、やってしまったという背徳感が僕の中に蠢く。
 射精し終るのと同時に男根を引き抜く。一発目と同じか、それ以上に濃い精液が溢れるのを見て『申し訳ない』という情けない感情が込み上がる。そして彼女に謝罪しようとした矢先だ。

 彼女がこちらへ振り向いてニコリと笑みを浮かべた次の瞬間、目にも止まらぬ早業で抱き上げられた。誰がと聞かれれば僕が。誰にと聞かれればアヤメにだ。おまけに背中と膝下に手を添える、所謂『お姫様抱っこ』と呼ばれる形でだ。
 当然ながら女性にお姫様抱っこをされる恥ずかしさもあれば、自分が抱っこされているというパニックもあって僕は慌てふためきながら間近になった彼女の顔へ目を遣った。

「あ、アヤメ!? こ、今度は何をする気なの!?」
「決まっています。今度はお風呂場に行って旦那様の身体を綺麗にさせて頂く所存でございます」
「だからって僕をお姫様抱っこする必要があるの!?」
「それは可愛い旦那様を抱っこしたいという私の我儘です」
「我儘かよ!」

 彼女からすれば自分の胸か鳩尾に届くほどの身長しかないチビの僕は可愛いと見えるのだろう。けれど、それでも男である僕の自尊心は大きく傷付いた事に変わりはない。

「さぁ、旦那様♥ 今度はお風呂に入りながらアヤメを可愛がって下さいませ♥」

 ニコニコと微笑みながら語り掛けるアヤメに対し、僕は表面上は初心な子供のように『うん……』と恥ずかしげに頷き従いはしたものの、心の中では『犯しまくってやる』と今さっきまであった後悔の念や背徳感は吹き飛び、歪な決意が完成していた。

 けれど、セックスを覚えたばかりの若造と、セックスに関しては百戦錬磨並の技術を有する魔物娘。どちらに軍配が上がるかなど一目瞭然なのに、自尊心を傷付けられ、ちっぽけな復讐に燃える僕は気付きもしなかった。

 そして………。

「あっ! 駄目! 駄目駄目駄目!! お尻に指を入れちゃ……!」
「ふふ、旦那様は菊穴が弱いのでございますね♥ でも、此処を刺激すると旦那様のオチンチンはもっと元気になるんですよ♥」
「そ、そそそそそんなのは望んじゃいない――――!!」

ズリュッ

「あひぃぃぃぃぃぃ!!!♥♥♥」

 お風呂場にてアヤメの手による肉体開発を施され、新しい扉を開けてしまった僕なのでした……。
15/08/12 14:44更新 / ババ
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■作者メッセージ
今回はネームレス様から頂いたアプリゲームを参考にして書かせて頂きました。アプリを提供して下さったネームレス様、誠に有難うございます!
ネームレス様が提供して下さったクノイチスレイヤーではアクションRPGとありましたが、少し個人的に手を加えてハイスピードアクションRPGとさせて頂きました。その点については申し訳ありません。m(−−)m
因みに今回の男性主人公である服部君ですが、彼に関する描写が殆ど無かった事に今更になって気付きました(汗)

因みに箇条書きで説明すると―――

・黒髪のボーイッシュ
・猫目に猫口
・チビでガリ痩せ

―−−と、見た目はこんな感じです。最後の方はクノイチさんが抱き抱えていたので何となく分かった人も居るかもしれませんが念の為に。

彼がお風呂場で何に目覚めたのかは読者の皆様のご想像にお任せします(ぉ)

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