連載小説
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後編
「う、うぐ……」
 深い闇の中から、フリーダの意識が這い出た。うっすらと目が開かれる。視界はまだぼやけているが、どうやら場所を移されたようだ。
『こ、ここはどこだ……』
 まだ力が入らない身体に鞭を打ってフリーダは頭を振る。
「あ、目が覚めたらしいよ」
 聞き覚えのある声がした。そちらにフリーダは顔を向ける。視界もはっきりしてきた。彼女が思った通り、そこにはワイバーンのサラがいてフリーダを見下ろしていた。武器を置き、鎧も脱いで平服姿になっているジェイクも横に立っている。今いる場所は広く、壁には障害物用のオブジェクトなどが寄せられていた。どうやら室内の訓練場にいるみたいだ。
「んっ……!」
 先ほどは確かに負けた。だが見下されたりするような筋合いはない。フリーダは立ち上がろうとする。だができなかった。見てみると、禍々しい緑色の光を放つ枷が両手首と両足首につけられている。おかげでフリーダは床に縫い付けられたように動けなかった。さらに、口には猿轡まで噛まされている。
「もう俺たちと戦うことはないだろうけど……念のため、拘束させてもらった。この村に住む魔女に頼んでな。さすがのジャバウォックもその枷は破れない」
 憎々しげにフリーダは竜騎士と騎竜を睨みつけた。こんなことをして何をするつもりだ、とその目が語っている。彼女の視線を涼しげに受け流しながら、サラは屈みこんだ。
「さっき、あんたは言ったよね? 『そんなワイバーンより絶対私の方がいい』って。そんなことがないことを……ジェイクにとってあたしが一番であることを見せつけてやるんだから」
 ぽりぽりと顔を微かに紅くしながら、困ったようにジェイクは頬を掻く。だがまんざらでもないようだ。擦り寄ったサラの腰に自然な動作で腕を回す。
「ね、ジェイク……」
「ああ……」
 フリーダの見ている前で二人が顔を寄せる。そのまま二人のくちびるがつながった。始めは軽く触れ合う、ついばむようなバードキス。小さな音と共に二人の軟らかいくちびるが押し付けられてひしゃげ合った。なまじ視力を含む身体能力も高いジャバウォックゆえ、その細かいところまでフリーダには見えてしまう。
「ん、んちゅ……♥」
「んん……」
 本当にまだ軽いキスなのに、それだけで二人の幸福感や快感が伝わってくるかのようだった。一度くちびるを離し、二人は互いの目を見つめた。二人とも口と目に笑みを湛えている。ジェイクがサラの顎に指を這わせ、軽く上を向かせる。その手の動きに任せ、サラは目を閉じながらジェイクに再び顔を寄せる。同時に彼女の腕から生えている翼はジェイクの背中を包んでおり、彼を身体ごと自分の方向に引き寄せていた。
 再び二人のくちびるが繋がる。今度はぎゅっと押し付け合うキスだ。先ほどのついばむキスとは違い、ずっと密着している。互いに絡みついている腕に力がこもり、相手を離したくないという雰囲気が、横で見ているフリーダにも伝わってきた。
「んんっ……」
 猿轡をされたまま、フリーダは呻いた。竜騎士と騎竜の絡み合いをみてジャバウォックは嫉妬する。戦いでも自分に勝ち、さらに互いに想い合い、淫らに絡み合う相手がいることに胸が締め付けられる思いだ。
「はふっ、んんっ♥ ジェイクぅ……」
「サラ……んっ……」
 二人のキスが更に激しい物となる。口を軽く開けて互いの舌を相手の口内に差し入れている。舌が蛇のように絡まりあい、にちゃにちゃといやらしい音を立てた。熱い吐息が二人の口から漏れ、ときどき相手の名前を囁く。
 抱きしめていたジェイクの手もサラの身体を求めて動き始めていた。髪を梳き、首筋や背中をふわりと這う。かすかにくすぐったそうにサラは身を竦めた。一方、ワイバーンのサラの手は細かい動作をするのが苦手なためか、ジェイクを抱きしめたままだ。
 背中を這っていたジェイクの手がふわりとまた這う。だが今度はサラの背中を撫でたのではない。手慣れた様子で彼はワイバーンの上の服を脱がせていた。よく見ていないと分からないくらいの早業であった。はらりとサラの胸元を包んでいた布が落ちる。
 現れたサラの胸は立派な物だった。大きさはフリーダの方に軍配が上がるかもしれない。しかし、鍛えあげられた胸筋の上に乗る乳房はツンと上向きで形も良く、ハリとツヤがあった。総合的に見ればどちらも甲乙つけがたいのであるが。
 その乳房をジェイクはむにゅりと揉みしだく。
「あっ……♥」
 短い声をサラは上げた。その身体から力が抜ける。崩れ落ちかけるサラの身体をジェイクはもう一方の手で支えた。だが胸から手は離れない。男にはなく惹き寄せて止まないその感触を彼は堪能する。その行動は男を楽しませるだけではない。揉まれているサラもまた楽しんでいた。胸から立ち上る甘い快感は全身へと回る。
「ダメだよ、ジェイク……そんなにされたら、あたし、濡れてきちゃう……」
「濡れてきちゃうじゃなくて、もう濡れてるだろ?」
 胸を揉みしだいていた手が下におり、腰回りを包んでいる布を外そうと動き回った。恥ずかしそうにサラは膝を寄せて抵抗してみせるが、形だけの抵抗に効果があるはずがない。あっという間に衣服は取り去られ、ワイバーンは生まれたままの姿にされてしまう。身体を離れた布切れには目もくれず、ジェイクはサラの股間に手を伸ばした。果たして彼の指先にぬるりと液体が絡みつく。
「あ、あっ……♥」
「ほら、やっぱり濡れている……伊達にサラと20年近くも一緒に過ごしてないぜ」
「うう、それならジェイクだって……」
 するりとジェイクの抱擁から抜け出し、サラは膝をついた。そして鉤爪のついた手でジェイクのズボンを脱がそうとする。やや苦戦していたようだったが、すぐにジェイクのズボンは下着ごと引きずり降ろされた。ぶるんと音を立ててジェイクの肉槍が現れる。サラが目を輝かせる。
「ほぉらやっぱり♪ ジェイクも勃ってるじゃん」
「まあ、な……サラが相手だからな」
「もう、そんなこと言われると我慢できなくなっちゃうよ……」
 そう言ってチラリとサラはフリーダを見る。自分が愛する男に言われて嬉しい言葉をかけてもらっている……そのことを誇示していた。悔しさにフリーダは猿轡を強く噛む。悔しがるフリーダを尻目にサラはジェイクのペニスに顔を寄せた。
「サービスしてあげる」
 そのまま彼女は亀頭にくちづけをした。立ったままジェイクがうめき声を上げる。喘ぎ声を漏らしたジェイクを見上げ、サラが満足そうに目を細めた。そのままジェイクを見ながらサラは彼の肉槍を焦らすように口付けをつづける。
「ん、れる……んっ、ちゅぱっ、はむっ……」
「あ、うっ……サラ、そこ……いい……」
「んちゅっ……うん、知ってる……それから、これも好きだよね……れるっ、れろ……」
 口を開いてそこから舌を伸ばし、亀頭に這わせる。びくびくと面白いくらいにジェイクの身体が跳ねた。ふふ、っとサラが笑った。舌での攻めはさらに苛烈になる。ワイバーンはべちゃべちゃと舌全体で敏感な亀頭を撫でてよだれまみれにし、さらに裏筋を舌先でつついた。
 脱がせるところまではジェイクのリードで進んでいたが、どうやらサラが優位なのが本来の夜の二人らしい。横で見せつけられているフリーダはそう判断する。
『くそっ、こんなの見せられたら……』
 フリーダは尻を揺らす。魔界鉄による発情で濡れそぼっていた彼女の性器だったが、二人の絡み合いを見ているうちにまた熱を持ち始めていた。たらりと自分の膣壁を粘液が伝うのを感じる。
 じろりとサラが発情したフリーダを横目で見た。睨んだまま彼女は顔をさらにジェイクの下腹部に近づけた。サラの口内にジェイクの肉槍が納められていく。
「ふわ、あ、サラ……あ……」
「ん、んっ……♥」
 サラが頭を前後に揺らし、くちびるでジェイクの肉槍をしごき始める。その間もサラの目はフリーダに据えられたままだ。ワイバーンは主張しているのだ。このオスは自分だけの物だと。誰にも譲らないと。
 目はフリーダを睨んでいるが、口は愛する男を喜ばせようと動き回っていた。かなりいい年している男が、女の口唇愛撫に悶えている。口の中がいかなる動きをしているかは分からなかったが、ジェイクの反応を見ているとどれだけ熱烈なフェラチオかはフリーダにも分かった。
「あ、舌が絡みついて……うあ……」
 竜騎士の声が昂ってきた。身体も細かく震えている。射精が近いのだと横で見ているフリーダにも分かった。きっとワイバーンの口内には先走りの液が鈴口から漏れているはずだ。
 ジェイクの様子に、サラも視線をフリーダから彼へと戻した。身体をひくつかせるジェイクを逃すまいと、翼の生えた腕を腰に回してホールドする。そして頭の動きを速くした。サラのくちびるとジェイクの肉竿が擦れ、じゅぷじゅぷと淫らな音が響く。
「ちょ、サラ……そんなにされると……」
 制止しようとするジェイクにサラは淫らに笑いかけた。このまま射精していいよ、と目が言っている。その視線と股間から上る快感に竜騎士は耐え切れなかった。
「で、出るっ……!」
 びくんびくんと男の身体が跳ねた。その直後、サラは肉棒から口を離した。ペニスが暴れ狂い、先端から白濁液を迸らせる。部屋に青臭い匂いが立ち込めた。
「あ、ああああ……♥」
 吹き出る精液をサラは顔で受け止める。サラの恍惚とした顔が白く汚れていった。
 射精を終え、ガクリと腰から崩れ落ちるようにジェイクは床に座り込んだ。
「ジェイク、腰を抜かしちゃうほど気持ちよかったの?」
「あ、ああ……」
「ふふふ、そうだよね。こんなにいっぱい出したんだもん♥ 気持よかったんだよね?」
 白濁に染まった顔でサラは満足気に、淫らに笑ってみせる。その顔をサラはジェイクに見せつけていたが、一方でフリーダにも見せつけていた。
「ん、れる……んちゅ……」
 爪で顔についた精液をかき集め、その爪に舌を這わせて精液をなめとる。それもジェイクとフリーダ、同時に見せつけるようにやっていた。
 先ほどのフェラチオは口内射精で終わっても良かった。精液を味わうのであれば、そちらのほうが楽である。しかしサラはあえて射精し始めのところでジェイクのペニスから口を離した。もちろん、精液を顔で受け、それをフリーダに見せつけるためだ。自分が心も身体も許している男はこの男だけ、そしてこの男の精液を浴びたり味わったりするのが許されているのは自分だけ。そう彼女はアピールしているのだ。
 だがこの程度の見せつけでサラの腹の虫は治まらないらしい。
「ねぇジェイク……今度はあたしも気持ち良くして……♥」
 甘えるようにして擦り寄る。ジェイクもサラの考えていることは分かっているようだ。仕方がないなと苦笑しつつも、拒まない。むしろ彼もこの先を望んでいる。
 床に足を投げ出すようにして座っているジェイクにサラが跨った。翼の生えた手をジェイクの肩に添え、用を足すかのように脚を開いて腰を落としていく。一度射精してもなお硬さを誇るジェイクの肉槍と、サラの丸い尻との距離が縮まっていくのが、横から見ているフリーダから見えた。
 ジェイクのペニスがサラの尻の影に隠れた。がくんとサラが身体を弓なりに反らせる。
「あっ、はあああ……♥ 入ってる……あたしのおまんこに……ジェイクのが……ふあぁあん♥」
 嬌声を上げ、いやらしい言葉を口にするサラ。その姿はとても少し前に竜となって戦っていた者と同一人物に見えない。
 サラが腰を振り始める。その腰使いは竜の気性と同じく、激しい。そして彼女の尻とジェイクの太ももがぶつかり合い、パンパンと乾いた音が立てていた。
 竜騎士が騎竜に乗られて攻め立てられている様子をジャバウォックは見続けている。翼に隠れていてフリーダには見えないが、サラの胸は激しく揺れていることだろう。そして尻の丸みの下からときどき、サラの愛液に濡れた肉竿がちらちらと見えた。
『くっ、これも……!』
 フリーダは直感する。同じ騎乗位でも脚を開いている騎乗位を選んでいるのは、サラが自分に見せつけるためなのだ。このオスが自分の物であることを示すための。
 そして竜騎士と騎竜による当て付けは、もう一つジャバウォックに苦難を強いていた。このような濃厚な絡みを見て、欲情しない者はいないだろう。フェラチオの時からフリーダの身体は火照っており、そして今、挿入が始まってからは耐え難いほど彼女の秘洞はうずいていた。だがフリーダの手足は封じられている。自らを慰めることも叶わないのだ。
 服の一部は自分の体液で冷たく濡れて肌に貼り付いており、気持ち悪い。だがその冷たさに反して下腹部では熱が渦巻いている。熱を逃そうとするかのように、フリーダの腰がくねった。
 そんなフリーダのことなどどこ吹く風と言った調子でジェイクとサラは交わり続ける。
「ほら♥ ジェイクにも……んんぅ♥ 見えるでしょう? ジェイクのちんぽが……あたしのおまんこの中を出たり入ったりするのが……んぁああ♥」
「ああ、見えるよ……サラのアソコがめくれ上がって……ぬるぬるした液が出て……」
 だが一方で二人はフリーダに見せつけることを忘れていない。二人の実況は互いの情欲を煽るだけでなく、フリーダにわざと聞かせている節もあった。
「ほらほらジェイク……! こんなのも好きでしょう? ん、あんっ♥ ほらほらぁ♥」
「うあ、サラっ……その動き、激しくて……!」
「だめ、まだイッちゃだめ……♥」
 サラの腰の動きが回転させるような動きに変わった。おそらくサラは子宮口をジェイクの亀頭に押し付けているのだろう。敏感な先端を攻められてジェイクの声に余裕がなくなった。夫がどういう腰の動きに弱いか熟知しているサラだからこそできることと言えよう。
 だが受け身がちのジェイクの方もやられっぱなしではない。右手をサラの尻の方に持って行き、尻尾の付け根を摘むようにして愛撫した。びくびくとサラの身体が跳ねる。
「あっ!? ダメ、ジェイク……そこは、弱い……♥」
「一緒にイキたいんだろ? じゃあ、そうさせろよ」
「そうだけどぉ……ああぁっ!? あ、あん♥ やっ♥ ジェイクからもぉ♥」
 下から突き上げられ、サラがショートヘアーを振り乱しながら嬌声をあげる。その間も彼女の腰の回転は止まらない。ジェイクは射精をこらえようと歯を食いしばりながらピストン運動をしている。
 もうすぐふたりともイク……横で見ているフリーダにもそれが分かった。自分も自慰で絶頂の快感は分かっている。全身が爆発するようで、それでいてふわっと雲のように軽くなり、落っこちるようでどこか怖いけど、どうしようもないくらい気持ち良く、それ以外全てがどうでも良くなる感覚……あの感覚を今、目の前のワイバーンが自分の手ではなく、男の手によって味わうのだ。しかも、膣内に精液を出されるというおまけつきで。そちらの方はフリーダは分からない。
 そしてその瞬間が今、訪れた。
「イク、イクぅう……! あ、ァあああっ♥」
「うくっ……!」
 二人のグラインドが不意に止まった。代わりに二人は互いに掻き抱きあいながら細かく震えていた。同時に達したのだ。おそらく二人の結合部ではジェイクの愛と欲望の証が溢れかえっている。
 同時に最高潮に上り詰めた二人を見てフリーダは歯噛みする。自分より格下のはずの相手に愛の営みを見せつけられている……これほどの屈辱はない。それを見て自分が発情してしまっているのが、更にフリーダを情けない気持ちにさせた。力が抜けた目でフリーダは二人の様子を見ている。
 しかし、出会ってそうそう侮辱されたサラとジェイクの怒りはかなり深かったようだ。
「ジェイク……気持よかった?」
「ああ、最高だった……」
「良かった♥ あたしも気持ちよかったよ♥ ねぇ……もう一回、シない?」
「な……!?」
 驚きの声を漏らしたのはフリーダの方だった。ジェイクの方は仕方がないなと笑いつつも当然否とは言わない。
 まだこれ以上、自分の前で交わり続けるのかと、サラの容赦のない仕打ちに驚愕する。しかし、二人はただ二回戦を始めるだけではなかった。
 ジェイクが上体を倒す。それをまたぐようにしてサラはジェイクの上で身体を回転させた。下になっているジェイクも少し身体をずらして位置を調整する。
 思わずフリーダは目を背けたくなった。でも淫らな魔物娘はそれから目を離せない。ジェイクとサラは背面騎乗位の体位を取ったのだ。それだけではない。結合部をフリーダに見せつけるように下半身を彼女に向けたのだ。
サラがゆっくりと腰をあげる。ぬるぬると肉棒が彼女の膣から抜け出ていく。すでに二度の射精をしていると言うのにその剛直は萎えている様子を見せない。また騎竜に種付けをし、かつ彼女を気持ちよくしようと彼の肉槍は張り詰めていた。すでにジェイクはインキュバス化しているのだろう。
「あ、ああ……」
 尻で影になっている時以上に、ジェイクのペニスが見えている。しかも今度はサラがソレを咥えこんでいる様子も見えていた。しかしサラが前かがみになっているため影ができており、全部は見えない。だからこそフリーダは見つめてしまう。
「んんぅう♥」
「うあ……!」
 サラが腰を打ち落とした。そそり立った肉棒がサラの身体の中へと消えていく。二人の嬌声が絡まりあった。互いの性器が互いにこすれあって刺激しあい、嬌声を上げさせるのだ。
 再びサラは腰を持ち上げ始めた。さっきよりはペースが早いが、それでもじらすかのように、ゆっくりと。その間も二人は声をあげた。抜くときだってこすれあっているのだ。当然と言える。
 腰がまた打ち落とされる。挿入感に二人はまた声を上げた。またじっくりと引き抜き、撃ち落とす。この淫らなサイクルが繰り返される。徐々にペースを上げながら。
「は、あ……あ♥ ジェイクのが、擦れて……いい……!」
 熱に浮かされたような声でサラが喘ぐ。その腰捌きはもう穏やかではない。丸い尻がジェイクの下腹部に叩きつけられ、パンパンと乾いた音を立てる。それとは裏腹に二人の結合部ではぐちゅぐちゅと粘着質な音が部屋に響いていた。音にさらにサラとジェイクの声が合わさる。淫らな重奏にフリーダは耳を塞ぎたかった。だが手枷がされているためそれは叶わない。いや、もしかしたら手枷をされていなくてもしなかったかもしれない。目は自由なのに、彼らから目を離さなかったのだから。
「だめぇ……またイッちゃうぅう……♥」
 甘えるような声をサラは上げた。言葉の通り、絶頂が近いらしい。一方、ジェイクの方も余裕がなさそうだった。二度の射精を経たというのにだ。それだけサラの腰捌きがツボを得ており、膣内が心地よかったということだ。
「サラ……」
 それを訴えようとするかのようにジェイクが上体を起こそうとする。ジェイクの動きに合わせてサラも身体を少し倒した。首をひねったサラは翼の生えた腕を伸ばし、背後にいるジェイクの頭を抱え込んだ。
形としては、二人は股間をフリーダに突き出しているような感じになる。そのため、愛液と精液に濡れ、陰唇が深々と陰茎を咥えこみ、二人が一つになっている秘密の部分……それがフリーダに見せつけられていた。
「んっ、んっ、んんんっ♥」
 サラが腕を回していたジェイクの頭を引き寄せる。そのまま二人のくちびるは繋がった。キスをしたまま二人は腰をゆすり合う。ジェイクは下で身体をひねるようにして、腰を左右に振っていた。その動きで彼の肉棒はワイバーンのとろとろの蜜壺を撹拌する。サラは変わらず腰を上下させている。上体を少し反らせている上にジェイクも動いていてやりづらいはずなのに、ヴァギナからペニスが抜け出たりすることはない。そのため、二人は背面騎乗でキスをしながら腰を動かすという難しい状態でも、絶頂に向けて確実に快感を高めていた。
「う……く……」
 フリーダがうめく。股間を突き出されて見せつけられている二人の結合部。もはや何も彼女の視界を遮る物はない。繋がっているだけではなく、動いている様子も全てが見えた。サラが腰を持ち上げるたびに彼女の陰唇が愛液を擦り付けながら肉竿を撫でていく様子、腰を打ち付けられるたびにジェイクの身体の一部がサラの中に潜り込んで行く様子、それらが見えてしまう。
『もうやめてくれ! 分かった! 私の負けだ……! だから早く終わって……!』
 好奇心から目を逸らすことはできないものの、彼女のジャバウォックとしてのプライドは完全に二人によって打ち砕かれ、悲鳴をあげていた。
 幸いと言おうか、その終わりの時はすぐにきた。最初に動いたのはジェイクだった。ペニスの根本が、フリーダから見ても分かるくらいぶくりと膨れ上がる。射精が始まっていた。二度、三度と肉槍は脈打つ。男は自分の女に己の体液を送り込んでいるのだ。
「んんんんんんっ!」
 膣内射精された刺激で、サラが続けてイッた。キスをしたまま彼女はジェイクの身体の上で硬くなる。ワイバーンの顔は恍惚にとろけていた。女の身体の快感、オスに種付けされるメスの本能的悦びをサラは極めている最中だ。
 その様子をフリーダは最初から最後まで、まざまざと見せつけられたのであった。




 魔法の枷と口枷が外された。だがフリーダは立ち上がらず、床に突っ伏したままである。自慰すらできずに焦らされた情欲と敗北感で、その気力すら起こらない。
 フリーダは力のない目を上げた。生まれたままの姿でジェイクとサラが立ち上がり、近寄ってくる。そして目の前でしゃがみこんだ。起き上がって攻撃したりすることもできるが、そんな気はすでに消失していた。
「確かにお前は強い。俺とお前、サラとお前の一対一での戦いだったら、お前が勝つだろう。だけど……」
「支えあっている者は弱くはないわ。分かったでしょう?」
 フリーダは何も言わなかった。結果が全て。過程を見ても文句のつけようがない。二人は互いにかばいあいながら連携して攻撃をしていた。その戦いには相手への全幅の信頼が見て取れる。この二人についにフリーダは敗北した。
 そして、その二人の強さは戦いだけではない。今見せつけられたセックスでもそうだった。二人は互いに想い合い、愛撫しあい、腰を振っていた。そこにも信頼があった。ありきたりな言葉で言うと、愛という言葉がふさわしいだろう。
 二人の絆にはどうあがいても勝てそうにない。フリーダは思い知った。
「さて、ジャバウォックの客人さん。この村は観光と男探しなら歓迎だ。ゆっくりしていくといいさ」
「さっきみたいに暴れたりしなければね」
 そう言って二人は奥の部屋に消えた。おそらく、水浴びでもしているのだろう。ばしゃばしゃと水音が聞こえてきた。
 のろのろとフリーダは立ち上がった。打ち負かされていた彼女の目には光が戻っている。
 この二人に勝つにはどうするか……自分も、あんなふうに信頼できる男を探すことだ。
「見ているがいい……きっとイイ男を見つけて、見返してやる……!」
 ここにはいない二人に、そして自分自身に言うようにフリーダは口にした。そうだ、自分は「他を圧倒する淫らな存在」だ。あの二人にやられてそのままではいられない!
 そのリベンジだが、ジェイクを自分の物にするという選択肢は、すでにフリーダの中にはなかった。
 確かにジェイクはいい男だ。ただ、自分にふさわしい男とは少し違う気もする。そもそも、彼の魅力はサラという無二の伴侶あってのものだったのだ。二人と戦い、セックスを見せつけられたことでそれが分かった。
 ジェイクとサラ、竜騎士と騎竜……二人は一心同体である。
 フリーダが今自分にふさわしい男として、そしてサラとジェイクを見返すのに欲している者は、サラにとってのジェイクのような男……無二の伴侶たりうる男だ。そういう男を得る。
 決意したフリーダだったが、その眉がかすかに寄った。下腹部の不快感を感じたのだ。先ほど二人のセックスの見せつけに当てられ、彼女の股間はびしょ濡れだ。内股はべとつき、服も冷たく貼り付いている。何より、自慰などもできなかったため、不完全燃焼でフリーダの膣は疼いていた。
「……宿でもとって、水浴びしよう。出口はこっちか……」
 のっしのっしとフリーダは、水浴び場とは反対側の扉に向かった。しかし、扉に手をかけたところで彼女はくるりと振り返り、水浴び場の方を見た。
 自分は先ほど、彼らを見返してやることを誓った。だが、その見返すために必要なのは、いい男を捕まえることではない。その男と信頼と絆を作り、愛しあうことが大事である。それを教えてくれたのは彼らだ。
「……ありがとう」
 ぽつんとフリーダは、やはりここにおらずキャッキャと騒ぎながら水浴びをしている二人につぶやき、室内訓練場から出て行った。




 不思議の国から飛び出したジャバウォックのフリーダの婿探しの旅はこうして始まったのであった。
14/02/06 20:37更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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■作者メッセージ
そんなわけで、ジャバウォックSSと見せかけて、竜騎士・ジェイクとワイバーン・サラの見せつけセックスでした!
いかがだったでしょうか?
本当に、ジャバウォックのフリーダが不思議の国から飛び出したと思ったら、ジェイクとサラがメインになってもうた……
副口から火炎弾を吐きまくり、格闘術に優れ、さらにエロいフリーダさんも好きなんだけどなぁ……
でもエロに関しては、サラとジェイクのラブラブエッチができたので満足です。ラストの後ろにいるジェイクの頭を抱えてキスとか、射精の瞬間とか書いていて楽しかったです、ふぅ……

そんな訳でジャバウォックとワイバーンのSSはこれにておしまい。
また次のSSでお会いしましょう、ごきげんよう。

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