11:一番愛して欲しかったから[リビングドール]
何も変わったところはない、ごく"普通"のサラリーマン。
彼、飯田 俊男(イイダ トシオ)に対しての社内の評価を、皆は口を揃えてそう答える。
体調不良以外で休むことは無く、
安定した成績を残し続け、
残業の量もそこそこ。
人間関係も、深く踏み込むこともなければ、飲み会等には参加する。
男女共に、「彼はどんな特徴があるか?」と聞かれれば、回答に困ってしまうだろう。
そんな彼だからこそ、話題には上がらないのだが。
彼のプライベートは誰も知らなかった。
「専ら家でのんびりしている」以上の情報は、何一つなかった。
そこが、彼の一番の特異点などと考える人間は居なかったのだ。
***
「お先に失礼します。」
「あ、お疲れ様です。」
俊男はいつものように、会社を後にする。
いつもの満員電車。
いつもの街灯。住宅街。
そういえば最近、いつもすれ違う酔っ払っていた男性が、羽の生えた縞模様の女性と仲良く歩くようになった程度は変わったか。
だが、そこに嫉妬の感情は微塵もなかった。
彼には、"彼女達"がいた。
家で待っているであろう、彼女達の事を思い浮かべると、自然と進む足が早くなる。
「ただいまぁ。」
彼は独身である。
しん、と静まり返った寝室の明かりを点ける。
ずらり、と。
彼の愛する"彼女達"が、俊男を瞳に映していた。
***
俊男は元来、人形が好きだった。
「男の癖に」「気持ち悪い」
そんな言葉を受け続けた結果、
現在の"差し障りの無い表の性格"が造り上げられていった。
そして、それに反比例するように、密かに集める人形達への愛は深く、甘く、歪んでいった。
ところ狭しと並ぶ人形達の中に一つ、やや古びた、大きな人形がある。
彼が「エリザベス」と呼ぶこの人形は、彼が物心ついた時には既に、彼の近くにあった。
その頃は自身より大きかったこの人形も、今では少し大きな娘と言って差し支えないほど、小さく見える。
「あぁ、エリー。今日も疲れたよ...。」
俊男はその人形の膝に頭を預け、丸くなる。
彼の日課だった。
数多の人形に囲まれ、その中で人形の少女に膝枕される姿など、会社の人間は想像も出来ないだろう。
「あぁ、今日は僕の誕生日なんだ、エリー。...君の誕生日がいつなのか、それが分かればなぁ。」
彼は、その人形がいつから一緒に居るのか分からない。
「あそこのカトリーヌは4/2、あそこのルーシーは5/12、そこのお菊は7/31...他のは全部覚えてるのに!」
彼はグリグリと、エリザベスの膝に頭を押し付ける。
駄々をこねる子供のように。
「わたくしの誕生日は、今日、この日、ですわ。」
鈴の音のような、澄んだ声。
俊男は、がばりと頭を上げた。
エリザベスは、その海のような瞳で俊男を見据え、微笑んでいた。
***
「ただいまぁ。」
「おかえりなさい。」
俊男のもとに、エプロンを着けたエリザベスが優しく迎える。
「お夕飯、出来てますから。一緒に食べましょうね?」
「うん!」
彼女曰く、俊男が産まれてからずっと、彼女は一緒だったのだと言う。
そう、彼女は俊男が産まれた日に、プレゼントされていた。
彼女が動き始めたのには、理由が3つあると言った。
27年の間、彼からの愛を受け続けたこと。
魔物娘の魔力がこの世に流れ始め、その影響を受けたこと。
そして、もう一つは...内緒。
3つ目は教えて貰えなかった。
しかし、そんな事は俊男にとって些細なことでしかなかった。
愛する人形が、その愛に応えてくれた。
これ以上に幸せな事はあるだろうか。
「なんだか、柔らかくなったかい、エリー。」
「うふふ、トシオさんの愛をいっぱい頂いたからですわ。...ぅん♪」
膝枕されながら、俊男はエリザベスの太ももを撫でさする。
「トシオさん。お耳が危ないですから、じっとしてましょうね。」
「はーい。」
「うふふ、良い子、良い子。」
子供のように素直な俊男の頭を、彼女はまさに、子供をあやすように、優しく撫でる。
そして澄んだ声を、俊男の頭を溶かすように、耳元で囁きながら。
彼女は耳かきを動かす。
「トシオさんは、あまえんぼさんですねぇ...。わたくしは、そんなトシオさんも、だぁいすき、ですよ...」
耳かきの心地よさと、時折耳元に顔を近付けて、息がかかるように囁かれる気持ちよさに、俊男はすぐ微睡む。
「あぁ...エリぃ...夢みたいだよぉ...」
エリザベスはそんな様子を見ながら、慈愛の籠った目で俊男を見下ろしていた。
「他の子も...愛せば...きっ...と...」
俊男はとうとう、意識を手放したようだ。
ぴたり、と。
彼女の手は止まっていた。
静かに佇む人形達。
その中の"カトリーヌ"の無機質な瞳には、
エリザベスの、深海のような暗い瞳が映っていた。
***
「ただいまぁ、エリー?エリー?」
「はいはい、おりますよ。お帰りなさい。」
パタパタとエプロン姿のエリザベスが、姿を表す。
「エリィ〜」
「うふふ、よしよし。ご飯食べましょうねぇ。」
小さなお腹にすがり付く俊男。
いつものように頭を撫でるエリザベス。
この1ヶ月で、すっかり俊男は彼女に甘えるのが日常になっていた。
いつものように、膝枕をしてもらう。
頭を撫でられながら、俊男は弛緩しきっていた。
「うふふ、トシオさんは可愛いですねぇ...良い子、良い子...」
俊男は特に、頭を撫でられるのが気に入ったようだった。
少し前から行われる、"甘える時間"でも、それは同じだった。
「...トシオさんは、お仕事頑張りましたもんねぇ...うふ♪こっちも、いっぱい良い子良い子、しましょうねぇ♥️」
俊男の股間は、条件反射のように膨らんでいた。
寝間着をずらし、熱くなった芯を撫でる。
「...んっ...エリィ...」
「ほぉら...良い子、良い子...うふふ」
頭と同時に、下の裏筋を撫で上げられ、モゾモゾとする俊男。
「今日も頑張ったご褒美に、いっぱい白いおしっこ、しーしーしましょうねぇ♥️」
すべすべの小さな手に撫で上げられ、
カリを包まれ、
先端を指の腹でさすられる。
ふと、視界の端に映る棚が、少し寂しくなったような気がした。
しかし慈愛に満ちた愛撫を前に、俊男はすぐ限界を迎え、何も考えられなくなる。
「あぁエリー、出ちゃう、出ちゃうよ...」
「我慢しなくて良いんですよぉ?ほら、しー、しー...うふふ♥️」
耳元で囁かれながら、少し速められた手の中で、俊男は我慢すること無く、彼女の小さな手を白く染め上げた。
「わぁ、いっぱい出せましたねぇ♥️えらい、えらい...」
射精の解放感と撫でられる心地よさに、俊男は夢見心地になる。
「んちゅ...ぺろ...っふ、わたくしの栄養になりますからねぇ。いっぱい出してくれて、ありがとうございます♪おやすみなさい。」
***
「ただいま、エリー」
「お帰りなさい。」
直ぐに、膝をついて彼女の抱擁を全身で受ける。
今や生き生きと艶のある金髪は、女性特有の甘い香りで満たされていた。
「今日はお夕飯...」
「エリーが良い、エリーが先!」
「あらあら、わがままっ子ですねぇ♥️」
リビングは以前よりスッキリとしている。
人形が"置いてあった"所には、新調したベッドが置いてある。
元の人形を何処へやったのか?
俊男は聞くことが出来ないでいた。
聞こうとすると、母親に叱られる時のような、そんな雰囲気を彼女が漂わせるからだ。
それに。
今、繋がりながら優しく自分を包み込んでくれる彼女がいれば、寂しくない。
既に俊男の全てを彼女に委ねることが、当たり前になっていた。
「ん...っ...ぁ...っトシオ、さん...っ...気持ち良っさそうな顔して、可愛いですよぉ♪」
頬を赤く染めながらも、尚も慈愛に満ちた目で俊男を見つめる。
俊男はすがり付くように、彼女の乳を吸った。
「んっ!...うふふ...トシオさん、赤ちゃん、みたいですねぇ...んんっ」
彼女の甘い味を堪能しながら、俊男は何度目かの精を放つ。
「んんんっ!!...はぁ、はぁ...また、ぴゅーって、出来ましたねぇ...良い子、良い子...♥️」
「んん〜!」
自分より小さな身体に、精一杯抱きつく俊男。
脇に置いた、最後の"ルーシー"の瞳が、その倒錯的な光景を硝子玉に反射させる。
「これからも、愛情いっぱい、私に向けましょうねぇ♥️」
「魔力たっぷりの手で、良い子良い子してあげますからねぇ♪」
「もう、前みたいに、他の子に愛を向けて...寂しくさせないでください...ね?」
最後の同居人は、その部屋から姿を消す直前まで、彼女の暗い瞳を映し出していた。
彼、飯田 俊男(イイダ トシオ)に対しての社内の評価を、皆は口を揃えてそう答える。
体調不良以外で休むことは無く、
安定した成績を残し続け、
残業の量もそこそこ。
人間関係も、深く踏み込むこともなければ、飲み会等には参加する。
男女共に、「彼はどんな特徴があるか?」と聞かれれば、回答に困ってしまうだろう。
そんな彼だからこそ、話題には上がらないのだが。
彼のプライベートは誰も知らなかった。
「専ら家でのんびりしている」以上の情報は、何一つなかった。
そこが、彼の一番の特異点などと考える人間は居なかったのだ。
***
「お先に失礼します。」
「あ、お疲れ様です。」
俊男はいつものように、会社を後にする。
いつもの満員電車。
いつもの街灯。住宅街。
そういえば最近、いつもすれ違う酔っ払っていた男性が、羽の生えた縞模様の女性と仲良く歩くようになった程度は変わったか。
だが、そこに嫉妬の感情は微塵もなかった。
彼には、"彼女達"がいた。
家で待っているであろう、彼女達の事を思い浮かべると、自然と進む足が早くなる。
「ただいまぁ。」
彼は独身である。
しん、と静まり返った寝室の明かりを点ける。
ずらり、と。
彼の愛する"彼女達"が、俊男を瞳に映していた。
***
俊男は元来、人形が好きだった。
「男の癖に」「気持ち悪い」
そんな言葉を受け続けた結果、
現在の"差し障りの無い表の性格"が造り上げられていった。
そして、それに反比例するように、密かに集める人形達への愛は深く、甘く、歪んでいった。
ところ狭しと並ぶ人形達の中に一つ、やや古びた、大きな人形がある。
彼が「エリザベス」と呼ぶこの人形は、彼が物心ついた時には既に、彼の近くにあった。
その頃は自身より大きかったこの人形も、今では少し大きな娘と言って差し支えないほど、小さく見える。
「あぁ、エリー。今日も疲れたよ...。」
俊男はその人形の膝に頭を預け、丸くなる。
彼の日課だった。
数多の人形に囲まれ、その中で人形の少女に膝枕される姿など、会社の人間は想像も出来ないだろう。
「あぁ、今日は僕の誕生日なんだ、エリー。...君の誕生日がいつなのか、それが分かればなぁ。」
彼は、その人形がいつから一緒に居るのか分からない。
「あそこのカトリーヌは4/2、あそこのルーシーは5/12、そこのお菊は7/31...他のは全部覚えてるのに!」
彼はグリグリと、エリザベスの膝に頭を押し付ける。
駄々をこねる子供のように。
「わたくしの誕生日は、今日、この日、ですわ。」
鈴の音のような、澄んだ声。
俊男は、がばりと頭を上げた。
エリザベスは、その海のような瞳で俊男を見据え、微笑んでいた。
***
「ただいまぁ。」
「おかえりなさい。」
俊男のもとに、エプロンを着けたエリザベスが優しく迎える。
「お夕飯、出来てますから。一緒に食べましょうね?」
「うん!」
彼女曰く、俊男が産まれてからずっと、彼女は一緒だったのだと言う。
そう、彼女は俊男が産まれた日に、プレゼントされていた。
彼女が動き始めたのには、理由が3つあると言った。
27年の間、彼からの愛を受け続けたこと。
魔物娘の魔力がこの世に流れ始め、その影響を受けたこと。
そして、もう一つは...内緒。
3つ目は教えて貰えなかった。
しかし、そんな事は俊男にとって些細なことでしかなかった。
愛する人形が、その愛に応えてくれた。
これ以上に幸せな事はあるだろうか。
「なんだか、柔らかくなったかい、エリー。」
「うふふ、トシオさんの愛をいっぱい頂いたからですわ。...ぅん♪」
膝枕されながら、俊男はエリザベスの太ももを撫でさする。
「トシオさん。お耳が危ないですから、じっとしてましょうね。」
「はーい。」
「うふふ、良い子、良い子。」
子供のように素直な俊男の頭を、彼女はまさに、子供をあやすように、優しく撫でる。
そして澄んだ声を、俊男の頭を溶かすように、耳元で囁きながら。
彼女は耳かきを動かす。
「トシオさんは、あまえんぼさんですねぇ...。わたくしは、そんなトシオさんも、だぁいすき、ですよ...」
耳かきの心地よさと、時折耳元に顔を近付けて、息がかかるように囁かれる気持ちよさに、俊男はすぐ微睡む。
「あぁ...エリぃ...夢みたいだよぉ...」
エリザベスはそんな様子を見ながら、慈愛の籠った目で俊男を見下ろしていた。
「他の子も...愛せば...きっ...と...」
俊男はとうとう、意識を手放したようだ。
ぴたり、と。
彼女の手は止まっていた。
静かに佇む人形達。
その中の"カトリーヌ"の無機質な瞳には、
エリザベスの、深海のような暗い瞳が映っていた。
***
「ただいまぁ、エリー?エリー?」
「はいはい、おりますよ。お帰りなさい。」
パタパタとエプロン姿のエリザベスが、姿を表す。
「エリィ〜」
「うふふ、よしよし。ご飯食べましょうねぇ。」
小さなお腹にすがり付く俊男。
いつものように頭を撫でるエリザベス。
この1ヶ月で、すっかり俊男は彼女に甘えるのが日常になっていた。
いつものように、膝枕をしてもらう。
頭を撫でられながら、俊男は弛緩しきっていた。
「うふふ、トシオさんは可愛いですねぇ...良い子、良い子...」
俊男は特に、頭を撫でられるのが気に入ったようだった。
少し前から行われる、"甘える時間"でも、それは同じだった。
「...トシオさんは、お仕事頑張りましたもんねぇ...うふ♪こっちも、いっぱい良い子良い子、しましょうねぇ♥️」
俊男の股間は、条件反射のように膨らんでいた。
寝間着をずらし、熱くなった芯を撫でる。
「...んっ...エリィ...」
「ほぉら...良い子、良い子...うふふ」
頭と同時に、下の裏筋を撫で上げられ、モゾモゾとする俊男。
「今日も頑張ったご褒美に、いっぱい白いおしっこ、しーしーしましょうねぇ♥️」
すべすべの小さな手に撫で上げられ、
カリを包まれ、
先端を指の腹でさすられる。
ふと、視界の端に映る棚が、少し寂しくなったような気がした。
しかし慈愛に満ちた愛撫を前に、俊男はすぐ限界を迎え、何も考えられなくなる。
「あぁエリー、出ちゃう、出ちゃうよ...」
「我慢しなくて良いんですよぉ?ほら、しー、しー...うふふ♥️」
耳元で囁かれながら、少し速められた手の中で、俊男は我慢すること無く、彼女の小さな手を白く染め上げた。
「わぁ、いっぱい出せましたねぇ♥️えらい、えらい...」
射精の解放感と撫でられる心地よさに、俊男は夢見心地になる。
「んちゅ...ぺろ...っふ、わたくしの栄養になりますからねぇ。いっぱい出してくれて、ありがとうございます♪おやすみなさい。」
***
「ただいま、エリー」
「お帰りなさい。」
直ぐに、膝をついて彼女の抱擁を全身で受ける。
今や生き生きと艶のある金髪は、女性特有の甘い香りで満たされていた。
「今日はお夕飯...」
「エリーが良い、エリーが先!」
「あらあら、わがままっ子ですねぇ♥️」
リビングは以前よりスッキリとしている。
人形が"置いてあった"所には、新調したベッドが置いてある。
元の人形を何処へやったのか?
俊男は聞くことが出来ないでいた。
聞こうとすると、母親に叱られる時のような、そんな雰囲気を彼女が漂わせるからだ。
それに。
今、繋がりながら優しく自分を包み込んでくれる彼女がいれば、寂しくない。
既に俊男の全てを彼女に委ねることが、当たり前になっていた。
「ん...っ...ぁ...っトシオ、さん...っ...気持ち良っさそうな顔して、可愛いですよぉ♪」
頬を赤く染めながらも、尚も慈愛に満ちた目で俊男を見つめる。
俊男はすがり付くように、彼女の乳を吸った。
「んっ!...うふふ...トシオさん、赤ちゃん、みたいですねぇ...んんっ」
彼女の甘い味を堪能しながら、俊男は何度目かの精を放つ。
「んんんっ!!...はぁ、はぁ...また、ぴゅーって、出来ましたねぇ...良い子、良い子...♥️」
「んん〜!」
自分より小さな身体に、精一杯抱きつく俊男。
脇に置いた、最後の"ルーシー"の瞳が、その倒錯的な光景を硝子玉に反射させる。
「これからも、愛情いっぱい、私に向けましょうねぇ♥️」
「魔力たっぷりの手で、良い子良い子してあげますからねぇ♪」
「もう、前みたいに、他の子に愛を向けて...寂しくさせないでください...ね?」
最後の同居人は、その部屋から姿を消す直前まで、彼女の暗い瞳を映し出していた。
19/03/14 11:24更新 / スコッチ
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