連載小説
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後編
 朝食の後、シャーリーは汽車の時間を確認して、「少しばかり調べ物をしてくる。駅で待ち合わせしよう」といって、出かけていきました。

 シャーリーは汽車の出発時間ぎりぎりに駅に飛び込んできて、あたしたちは大急ぎで汽車に乗りこむことになりました。ですが、なんとか予定通りスモーク・トランへと向かうことはできました。

「危なかったわね。何をしてたの?」

 座席について落ち着いてから、あたしは軽い昼食にと作ってきたサンドイッチをシャーリーに渡しました。

「ああ、ごめん。ちょっと裁判記録とヘンリー君の伯母という女性を調べていてね」

 シャーリーは、おいしそうにあたしの作ったサンドイッチを頬張っています。お腹がすいていたのか、急いで食べ過ぎて喉を詰まらせていたので、あたしのミルクたっぷりのミルクティーをあげました。

「ありがとう」

 はにかんでお礼を言うシャーリーはとってもラブリーです。

「言ってくれたら手伝ったのに」

 あたしは、シャーリーの口元についた食べかすを指でつまんで、自分の口に放り込みました。

「今度はそうさせてもらうわ。その時はよろしくね」

 シャーリーが笑顔であたしの頭をなでてくれました。シャーリーが男の子だったら、有無も言わせず、この場で愛してあげるのに。残念で仕方ありません。

 あたしたちがイチャイチャしているうちに、汽車はスモーク・トランに到着しました。

 スモーク・トランは、駅の周辺でさえ、店と呼べるものは数えるほどで、完全に農村の駅でした。駅前に広がる茨の荒野と田園風景が、のどかさを感じさせてくれます。もっと暖かくなって、天気のいい日にピクニックに来るには絶好の場所でしょう。
 サンドイッチだけじゃなくて、フライドポテト、白身魚のフライなんかを持って。シートを敷いて、一日中、イチャイチャするのは気持ち良さそうです。
 でも、今日は寒いし、仕事で来ているので、あたしたちは早速、辻馬車をつかまえて、ロリロット博士の屋敷へと向かうことにしました。

 このあたりだと、まだあたしたちのような存在は珍しいのか、遠目に見られていて、明らかに警戒されているのを感じました。ちょっぴり悲しい気分になっちゃいました。
 認知度は上がっても、実際に交流がないと、人間の反応はこんなものだとシャーリーは言っていました。

 辻馬車でロリロット博士の屋敷のある村に入ると、寂れてはいないものの、時間がゆっくりと進んでいる村だというのは感じられました。古き良きというか、古くさいというか、どっちを言うかは人それぞれだと思うけど、そういう村の風景でした。

 村を馬車で進んでいると、あたしたちは運良く、ちょうど帰ってきたところのヘンリー君とばったり会うことができました。

 ヘンリー君と合流したあたしたちは、お屋敷に向かいました。通いのお手伝いさんも、改築の業者も、博士が留守のために、今日はお休みとのことでした。

「早速だけど、お兄さんの部屋を見せてくれるかしら?」

 シャーリーは手始めに、ヘンリー君のお兄さんの部屋――今はヘンリー君が寝ている部屋に案内させ、部屋を調べ始めました。

 内側から鍵をかけて、外から開けれないか調べたり、窓枠に細工がないかを調べたりしていました。それと、壁や床、天井に隠し扉がないも調べていました。

 築年数の古い家なので、何か細工を追加すれば、そこだけが新しくなって、ばれてしまいます。元からの細工であれば、老朽化しているはずなので、隙間など、がたがついているはずだと、シャーリーは言っていました。

 結局は、何かトリックを施している形跡もないし、そういった仕掛けがあらかじめある家でもないということが分かりました。

 窓は築年数にしては、しっかりとしたものでした。ここは丘の上なので、風が強いことが多く、窓はしっかりしているそうです。扉の方も、重厚感ある分厚い木の扉で、鍵もこじ開けた跡はありませんでした。

「部屋の人が招き入れない限り、中には入れそうにないわね」

 あたしは、調べた結果を総合して感想を漏らしました。しかし、シャーリーはそれには同意せず、しばらく考えこんでいました。

「あの、シャーリーさん。やっぱり、僕の考えすぎでしょうか?」

 不安そうなヘンリー君は、シャーリーにおずおずと尋ねると、シャーリーは壁の上の方を指さしました。そこには、取ってつけたようなパイプが壁から生えていました。
 パイプの直径は、女性の腕より少し細い程度でしょうか。それほど太くはありませんでいた。

「ヘンリー君。あのパイプはいつからあるの?」

「換気のためと、義父が取り付けさせたものです。たしか……兄の婚約が決まった後だったと思います」

 ヘンリー君は首をひねりながら、なんとか思い出してシャーリーに答えました。

「だとすると、かなり間抜けな業者ね。室外じゃなくて、隣の部屋に換気なんて」

「確かに。今まで気づきませんでした」

 ヘンリー君はシャーリーに指摘された奇妙さを、軽い驚きとともに首をひねりました。

「あと、この紐はなんの紐なの?」

 ベッドの上に垂れ下がったカラフルな組み紐を握って持ち上げた。

「それは台所に繋がっていて、引っ張ると台所の呼び鈴が鳴るそうです。でも、僕たちは自分のことは自分でしていたましたし、部屋にいる時間には手伝いの人は帰って居ませんから。おそらく兄も使ったことはないです」

 シャーリーは紐を引っ張ってみました。しかし、天井に固定されていて、ベルが鳴る気配はありませんでした。

「これでは、何のために取り付けたのかわからないわね」

「ほんとだ。今まで気づきませんでした。義父からそう聞いていたのに、意味のない紐だったんですね」

 ヘンリー君も試しに紐を引っ張っていました。紐は天井の上で固定されているのでしょう。びくりとも動きません。

「紐と言えば、お兄さんが気を失う前に、まだらな紐とか言ってませんでしたっけ?」
「ええ、そうです。……こ、これが関係するんでしょうか?」

 あたしの言葉に彼は持っていた紐を手放して少し後ずさりました。

「結論を急いでも仕方ないですよ。それは可能性の一つにすぎません」

 シャーリーは可能性の一つといいましたが、おそらくはそれは低いのでしょう。

「そうね。紐というのは、ヒモ、つまりは、博士がパトロン的な存在になっている旅芸人たちのことかもしれないものね」

 あたしもシャーリーに同意した。魔力のこもった紐であれば別ですけど、その紐は、用途が不明ということ以外は、どう見ても普通の紐にしか見えませんでした。

「そういえば、あの人たち、露出の高い格好ばかりしていました」

 旅芸人たちの姿を思い出して、ヘンリー君が思い出して教えてくれました。まあ、旅芸人というと、人目を引くためにそういう格好が多いんですけど。

「なるほど。情報をありがとう。さて、それじゃあ、今度は博士の部屋を見せてもらえるかな?」

 シャーリーはヘンリー君にお願いしてロリロット博士の部屋に案内してもらいました。

 部屋はお兄さんの部屋よりも大きくはありましたが、部屋としては扉や窓の構造も同じでした。
 シャーリーは、博士の部屋側の通気口を見上げ、そのそばに例の役割不明の紐がぶら下がっているのを確認していました。

「こっちにもあるのね」

 あたしが不思議に思っていると、シャーリーはそれにはさして注目していなかったようです。

「この金庫は?」

 謎の紐よりも、部屋の調度品の中で、ひときわ異彩を放っている大きな黒い金庫に注目するのは当たり前でしょう。

「危険な薬と、大事な書類を入れておくためのものと聞いています。前に開けているところを見ましたが、書類が沢山入っていました」

 シャーリーは金庫の周囲をくるりと回って、床などを調べていました。

「博士には庭いじりが趣味とかあったりする?」

「いいえ。義父は内科医ですが、往診で外科もしているようです。なので、雑菌の多い土は触りたくないようです。庭に出て、水をやっているところも見かけたことはありません」

 ヘンリー君の回答にシャーリーはうなずいて、博士の机などを軽く調べて、何やら匂いを嗅ぐように鼻を突きだしていました。
 シャーリーは化学実験の趣味があって、なにやら妖しいお薬を調合したり、鼻が曲がりそうな悪臭の液体を作ったりしていたので、薬品のにおいには敏感でした。

「博士に持病などがあって、薬を常時服用していたりする? そういった気配があるように感じたことは?」

 何かにおいを感じたのか、テーブルのそばで足を止めて、ヘンリー君に確認しました。

「いいえ。僕たち兄弟もでしたが、義父は体が丈夫で、かなり無茶をしても風邪一つ引きません。義父がベッドで寝込んでいるのを、今まで見たことは一度もないです」

 ヘンリー君は、けげんな顔をしてシャーリーに答えましたが、シャーリーは満足そうにうなずきました。

「シャーリー、何かわかったの?」

 付き合いの浅い人にはわかりませんが、それはシャーリーのドヤ顔です。なので、証拠がそろったのでしょう。あたしは早く答えが知りたくて尋ねました。

「ええ。ヘンリー君が迅速な行動をしてくれたおかげで、赤い糸が正しく結べそうよ。でも、油断できない状況なのも違いないわ。今から言うことをきちっと守ってくれる? それは一生に関わることよ」

 シャーリーはあたしにウィンクしてから、まじめな顔でヘンリー君に言いました。

「はい。もちろんです。僕のことはシャーリーさんにお任せしています。なんなりと言ってください。その通りにします」

 ヘンリー君は時々見せる、男らしい顔つきで答えました。ショタの魅力は、こういうギャップですよね。あたしの周囲のミルクがざわめきます。

「では、私たちはいったん、村の方に戻って、そこで宿をとります。できれば君の部屋から見えるところがいいのだけど?」

「それなら、丘を下ったすぐそこに『金色の麦穂亭』という宿があります。そこなら、こちらが見えると思います」

 ヘンリー君は窓を開いて、丘の下にある少し大きい建物を指差しました。

「ばっちりね。それでは、君はいつも通りに帰ってきた博士と夕食を食べてから、頭が痛いなど言って、部屋に戻ってください。そして、部屋に入ったら窓を開けて、ランタンを回して私たちに合図をくれますか?」

「はい。わかりました。でももし、何かまずいことになったら、どうしましょう?」

「そうね……その時は、聖典のユーノ伝、第三十五節にあるように」

 シャーリーの言葉にあたしは首を傾げました。

「あ……はい。“その松明にて十字を切れ。正しきものを見誤らぬように”ですね?」

 ヘンリー君の答えにシャーリーは「その通りよ」とにっこり笑顔になりました。

「合図があってから、私たちは宿を出て、こっそりとあなたの部屋、つまり、お兄さんの部屋に窓から忍び込みます。それは、そちらがまずいことになっていても。大丈夫。私たちはこうみえても、かなり強いんですよ」

 シャーリーがそういうので、あたしはあまり自信はありませんでしたが、胸を張って、自信満々なポーズをしました。

「もし、計画通りに進んでいるなら、ヘンリー君には、壁が壊れていて寒いですが、本来の自分の部屋へ行って、静かにしておいてください。物音はもちろん、明かりもつけないように」

「一晩ぐらい平気です。毛布を持っていって、かぶっていれば耐えれます。これでも男ですから」

 ヘンリー君は胸をたたいて了承してくれました。あどけない少年がこういう仕草をするのは、きゅんときますね。ヘンリー君って、意外と、天然お姉さんたらしなのかもしれません。

「そうね。でも、くれぐれも、このことを博士に気付かれないように。もし気付かれたら、あなたは裸のキングよりも襲われやすい存在になってしまいます」

 シャーリーはヘンリー君にくれぐれも行動は慎重にと忠告しました。

「すべてが終われば、この絡まった赤い糸を説明します。ですが、全て片付くまで。そう。明日の朝までは、何があっても私を信じて従ってください」

 ヘンリー君は神妙な顔でうなずき、あたしたちは村に戻り宿をとりました。

「さて、ウァトソンちゃん。これから先は危険なことがあるかもしれないの。どうする?」

 宿で、ヘンリー君の部屋がよく見える丘側の部屋を指定して落ち着くと、シャーリーがあたしに今更なことを訊いてきました。

「ここまで来て置いてけぼりなんて、焦らしプレイでもひどいわ。一緒に行くに決まっているじゃない。これでも、あたし、強いんですから」

 さっき、シャーリーがヘンリー君に言った言葉をそのままいってやりました。戦闘が得意な魔物娘相手ではお手上げですけど、普通のならなんとか頑張れるぐらいの自信はあります。

「そういってくれると助かるわ。もし、私の推理が外れて、ヘンリー君を守らないといけないときが来たら、頼りにしているわ」

「じゃあ、安心ね。シャーリーの推理が外れるなんてありえないもの」

 あたしがそういうと、シャーリーははにかんで「そんなことはない」と照れていました。

 夕方を過ぎて博士が帰宅したらしく、馬車が村を通過して、屋敷へと入っていきました。

 交代で窓を見張っていると、夕闇に沈んだ屋敷の窓でカンテラの明かりが回されました。ヘンリー君からの合図です。まわしているということは異変もなかったようです。

 あたしたちはそっと宿を抜け出し、丘を駆け上がり、誰にも見つからずにヘンリー君の部屋にたどり着きました。

「あなたのことは責任をもって守ります。愛の女神に誓って」

 シャーリーは部屋に忍び込むと、ヘンリー君の額にキスをして、祝福を与えました。見ようによっては、姫の寝所に夜這いに来た騎士が誓いを立てるようにも見えます。
 ヘンリー君も少し驚いた表情をしましたが、嬉しそうにうなずきました。そして、しっかりと防寒の準備をして、窓から外に出て、崩れた壁から本来の自分の部屋へと行きました。

 あたしたちはそれを確認して、お兄さんの部屋の鎧戸と窓を閉めました。

「相手に警戒されないように、部屋の明かりも消すし、しゃべったり、物音も立てれない。チャンスは今夜切りよ」

 シャーリーはあたしに念を押した。シャーリーと楽しめないのは残念だけど、この縁結びが終われば、思う存分楽しめると我慢しました。

「それと、これを飲んでおいて」

 シャーリーは錠剤を一つ、あたしに渡しました。

「中和剤よ」

 シャーリーは錠剤の正体を言いましたが、あたしは気にも止めずに口に入れて飲み込みました。シャーリーはそれを見て、苦笑を浮かべつつも、自分も同じものを飲みました。

 あたしたちが息を潜めて一刻ほどすると、隣の部屋に人の気配がしました。ロリロット博士が部屋に戻ってきたのでしょう。

 あたしは緊張に手を握りしめました。しかし、いつの間にか、そばにいたシャーリーがその手の上に手を乗せて、優しく微笑んでくれました。
 あたしはその笑顔に、張りつめすぎた緊張を少し緩めました。そうです。長丁場になるかもしれないのです。あんなに緊張していては持ちません。
 やっぱり、シャーリーはすごい人です。

 シャーリーはベッドの前の椅子へと、足音一つ立てずに戻りました。キューピットの基本装備である弓矢を、臨戦態勢で準備もしていました。
 彼女の持つ金の矢で射抜かれれば、たちまち愛に目覚め、鉛の矢で射抜かれれば、愛に飢える。キューピッドの弓矢は恋愛の最終兵器です。

 ロリロット博士はあたしたちのいる部屋の前に何度かやって来て、中の様子をうかがっている気配がしました。どうやら、ヘンリー君が寝ているかどうかを、確認しに来ているのでしょう。

 夜も深まって来た頃、部屋に甘美な香りが漂いました。その香りはよく知るものでした。

 愛の女神に仕える眷属、つまり、あたしたちの仲間であるガンダルヴァのお香です。これは、その中でも催淫効果のあるものです。あたしは少し焦りましたが、シャーリーがあたしの方に微笑みかけました。そこで先ほどの錠剤を思い出しました。

 さすがは、シャーリーとあたしは思わず抱きつきたくなりました。でも、我慢しました。

 香りが部屋に充満してしばらくすると、隣の部屋でなにやら動きがあるのを感じました。シャーリーもそれを感じたのでしょう。心なしか、気を張っているように見えました。あたしも緊張を高めました。

 すると、例の通気口から、紫と肌色、それに黄色の斑模様になった紐がしゅるりと垂れ下がりました。そして、役に立たない呼び鈴の紐に絡みつくようにして、ベッドの方へと降りようとしていました。

 シャーリーは今だとばかりに矢をつがえ、弓を引き絞り、狙いを定めると矢を放ちました。一瞬の早業に、あたしは腰をうかせる程度のことしかできませんでした。

 矢は見事に斑模様の紐に当たり、金の矢はスポンジに当たった水のように、紐の中に吸い込まれていきました。

 すると、どうしたことか、紐は逆再生でも見ているかのように、もと来た道を引き返して、通気口の中へと消えていきました。

 シャーリーはほっと、緊張を解いて、あたしに微笑みかけました。ラブリーです。カッコイイです。最高です。
 あたしがそうそう思っていると、ロリロット博士の部屋から悲鳴が聞こえました。

「え? 何があったの?」
「これで縁結びは解決ね。おつかれさま、ウァトソンちゃん」

 驚いているあたしに、シャーリーは、隣の部屋で隠れているヘンリー君を呼びに行くように頼んできました。

 あたしがよくわからずにヘンリー君を連れて戻ってくると、シャーリーはロリロット博士の部屋の前にいました。

「シャーリー。一体全体、何が何だか。説明して欲しいわ」

 あたしがせがむのを予想していたのか、シャーリーはにこやかに笑みを浮かべました。だけど、ヘンリー君の方を見て、少しばかり複雑な表情を浮かべました。

「ヘンリー君。これから見るものは、君にとっては、少々、刺激的で衝撃的かもしれないわ」

 シャーリーの言葉にヘンリー君は少しばかり青ざめてはいましたが、男の子らしく、力強くうなづきました。

「僕は、シャーリーさんに依頼した人間です。どんな結末も知る義務があります」

「よろしい。では、これが今回の赤い糸だ」

 シャーリーはロリロット博士の部屋の扉を開けた。鍵はかかっていなかったようで、あっさりと全開になりました。
 扉の向こうの景色が目にはいるよりも先に、あたしの鼻に青臭いいい匂いが感じられました。それが何の匂いかは、あたしのミルクと同じぐらい知っています。

 部屋の中では、ロリロット博士が半裸にされて、斑模様の紐に巻き付かれ、愛撫されていました。悲鳴を上げようにも、口の中に紐の端が突っ込まれているから、うめき声以外は漏れ出すことはできずにいました。
 下半身は局部を露わにされ、何度か吹き出した劣情の痕跡が散らばっていました。それが匂いの元です。でも、それは金の滴でも集めるように、いいえ、それ以上の熱心さで斑模様の紐が床を這いつくばって集めていました。

「……お義父さま」
「どういうこと?」

 ヘンリー君はロリロット博士の痴態によろめき、あたしは首をひねりました。
 博士を襲っているのは、さっきあたしたちの部屋に入ろうとしていた紐なのはわかりましたが。

 シャーリーはテーブルの上を見渡し、一つの小瓶を手に取ってから、紐に絡め捕られているロリロット博士に近づいていきました。

「こういこと」

 小瓶の中の液体をロリロット博士に振りかけました。その途端、斑模様の紐がうごめき、紐から何かへと形を変えようとしました。やがて、それが人の形になろうとしていたのがわかりました。

「え?」

 人型ではあったけど、人にはない翼や尻尾がついていました。その翼や尾の形状からすると、サキュバスか、その亜種というのはわかりました。
 少しカールした金髪で、ちょっと小柄で、ボーイッシュな印象のあるサキュバス属……インプかなにかかな?

「……まさか、兄さん? ……ジュリアン兄さん?」

 ヘンリー君は、ほぼ元の姿に戻ったと思われる紐を見て驚いた様子でつぶやきました。
 これにはあたしも驚きました。ヘンリー君のお兄さんなら、男のはずです。なのに、女の子だったなんて。

「アルプよ」

 シャーリーがあたしの疑問を一言で解決してくれました。あたしもアルプの存在は知っていたけど、滅多にいる魔物ではないから失念していました。

「ジュリアン君はインキュバスになったのちに、精の生成能力を壊して、女性と同じように魔物化した魔物、アルプになった。そうよね?」

 シャーリーの解説にアルプがおとなしくうなずきました。どうやら、触手化解除の薬と一緒に、沈静の薬も配合されていたようです。

「ヘンリー、ごめんなさい。あなたに何も言わなくて去ってしまって」

 アルプになったジュリアン君が、伏し目がちにヘンリー君に謝りました。

「そんな! 兄さんが、生きていてくれただけで十分だよ」

 二人は感動の再会に涙をにじませていました。

「シャーリー、あたしにはさっぱり状況が理解できないわ」

 二人の愛情はわかるけど、状況がわからないで、シャーリーにもう一度、説明を求めました。そうしないと、あたしのミルクが知恵熱で沸騰寸前です。

「少しばかり、複雑ではあるのよ、今回の縁結びは」

 シャーリーはとりあえず、全員に服を着て居間にでも移動するように提案しました。このころにはロリロット博士も、ようやく、緩慢ではあったけど動けるようになっていました。

 それから三十分ほどして、全員が居間に集まりました。シャーリーは皆を見渡して、軽く頷きました。

「では。まずは、ロリロット博士。あなたは、魔物の過激派と呼ばれる派閥に属する団体の構成員で間違いはないわね?」

 シャーリーの切った口火に全員が驚きの表情をしました。もちろん、あたしも含めて。

 ロリロット博士はそれを否定しようとしましたが、シャーリーの自信満々な目を見て、諦めたようです。

「どこでそれを知った?」

 肯定の代わりに質問をしてきました。

「よく隠蔽されてはいたわ。でも、借金の処理で、どうしても無理がかかったわね」

 シャーリーが博士の質問に答えると、博士は眉根を寄せていました。

「ストーナー未亡人の借金は、かなりの額だったわ。よく口先三寸でそれだけ借金できたと感心するほどね。この古びた屋敷だけでは、あの借金の肩代わりはできないわ」

 シャーリーが屋敷の中を見渡しました。確かに、このお屋敷はかなり古くて、あまり綺麗とはいえないし、交通の便もよいとは言えないから、あまり価値はなさそうです。

「なのに、ここの屋敷は七つも抵当権が出されているのよ。はっきり言って、異常ね」

 抵当権なんて普通は一つ、よほど価値があっても、二つとか三つ程度なのに、確かに異常です。

「調べたのか?」

「面倒だったわ。汽車の時間に遅れるところだった」

 にっこりと微笑むシャーリーに、ロリロット博士は顔を引きつらせていました。多分、凄い量の書類を調べたんだろうなってわかります。シャーリーは、そういうことを調べるのが恐ろしく速いんです。

「借りた相手は、巧妙に隠していたけど、熱心な親魔物派閥の資産家や貴族たちだったわ。そこで確信したのよ」

「でも、どうして? 過激派と言っても親魔物派なんて、ここじゃあ、隠す意味あまりないわよ」

 あたしはふと思いついた疑問を口にしました。

「おそらくだけど、彼が医者だからよ」

 あたしはシャーリーの言葉に首をひねった。

「親魔物国家では人間の医者が少ないでしょ? 中立や反魔物のは特にね。そこで、彼は中立から反魔物寄りの医者として営業してもらう。そして、重病や重傷の人間は、こっそりと魔界の薬などを使って助けていたのよ。違ったかしら?」

 シャーリーの言葉に博士が苦々しく頷いた。

「なるほど。そうやって親魔物派に鞍替えさせたのね」

「というか、過激派の思想だと、反魔物の人間が意地張って死なれるのを防ぎたかったんでしょうね。鞍替えしてくれたら、それはラッキー程度で」

 シャーリーの言葉に博士はうなだれていました。どうやら、正解らしいです。

「そうしているうちに、博士は反魔物派の人間たちと繋がりができて、ストーナー未亡人と知り合って結婚した」

「ロマンスねー。所属の対立する二人が愛で結ばれるって」

 あたしはそういうロマンスが大好きなのでうっとりしました。ミルクが桃色に染まりそうです。

「残念だが、彼女は私を愛してはいなかったよ。彼女が愛したのは、私のお金だ。私も、ジュリアンとヘンリーの兄弟が愛おしかっただけだ」

 ロリロット博士がうっとりしているあたしに乾いた笑みを浮かべていました。なんだ。残念です。

「愛の女神の眷属を名乗る身としては、なんとも言えない結婚ね」

 シャーリーが肩をすくめた。

「愛の形は色々なのだろう?」

「そうね。で、彼女の借金やトラブルで、そのままマダガで開業を続けるのが難しくなって帰国した。もちろん、過激派の後ろ盾があるから、それを頼れば、開業を続けることはどうにかなったかもしれない。でも、そうすれば、過激派とのつながりを探られるかもしれない。家族を守るために帰国したわけね」

 シャーリーが推理を再開しました。

「その通りだ。私の周辺は過激な反魔物派のものも多かったからな」

 親魔物派に寝返ったと思われて、反魔物派の人たちから報復が行われる可能性があったようです。

「でも、不幸にも奥さんは帰国して早々に、事故死してしまったわけだけど」

 シャーリーは少し含みを持たせて言いました。

「あれは完全に事故だ。それに、遺体は過激派団体に頼んで、死者の国に送り届けた。今はゾンビとして蘇って、楽しくやっているようだ」

 ロリロット博士は、シャーリーの勘繰りを懸命に否定していました。

「気に障ったのなら申し訳ない。ともあれ、借金は過激派の信奉者から借り替えて、返済を続けた。村人たちの往診をしなかったり、協力を断ったのは、そのあたりの懐事情がばれて、過激派とのつながりが発覚するのを恐れたためね」

「村はまだ保守的で反魔物寄りだからな」

 つまりは、借金返済に協力してもらうと、何かと内情を聞かれたりする。協力してもらっていると無碍にはできない。秘密を保持するのに距離を置くと、それが逆に憎しみになるということらしいの。人間ってややこしいわよね。

「そうしていると、ジュリアン君の縁談話がやってきた。それが彼の意に添わないことはわかっていた。そこで強硬手段に出たのね。魔物に襲わせて、快楽に目覚めさせて、魔界に亡命してもらおうとね」

 シャーリーの言葉に博士は口をへの字に曲げた。

「これまでの慎重が嘘みたい。思い切ったことをするのね?」

 あたしは村人と距離を置いて孤立したりと、慎重だった人の行動とは思えませんでした。

「時間がなかったんでしょう。それに、ジュリアン君の相手はよろしくない噂のご婦人だったからね」
「そうだったの?」
「ええ、その筋では有名な未亡人よ」

 後で聞いたら、若い男をお金で買って、虐待するのが趣味のお金持ちだそうです。二年ほど前に突然、失踪したそうだけど。

「でも、魔物が人を襲ったとなっては、この国の政治情勢からも親魔物派には困る。魔界を広げることを目的とする過激派としてもよろしくない。それで策を打ったのよ」

「策?」

「通気口を作って、媚薬成分のあるお香をたいて、ジュリアン君を興奮させておいて、魔物をその穴から送り込む」

 シャーリーが博士の作戦を単純に説明しましたが、あたしは納得できませんでした。

「あんな穴を通ろうと思ったら、スライムとかじゃないと無理よ。でも、そのあたりの魔物が一度捕獲した男を離すとは思えないけど?」

「軟体ということで、ショゴスとかもいけるけどね。でも、今回はその制限はないわ。なにしろ、どんな魔物も通過できるから。でも、かなり知能の高い魔物――デーモンあたりじゃないかしら、ねえ、博士?」

 シャーリーの言葉に、博士は苦々しそうな表情を浮かべていました。

「お見通しというわけか。その通り。ジュリアンを誘惑したのは、デーモンだ」

「ありがとう」

「でも、どうやって? 転移魔法?」

 デーモンぐらいの魔物なら使える魔法だけど、転移魔法なら警察が残留魔力とかの反応で不審がるはずです。

「触手化薬を使ってよ」

「触手化薬? あれって、男の人が魔物の奥さんを襲うのに使うんじゃ?」

 触手化薬は、魔界では一般的に売られている薬で、それを飲むと、身体が一時的に触手になってしまうものなの。
 普通の身体と触手では構造が全然違うから、脳がパニックになって、理性が吹っ飛んで本能丸出しになるの。そうなったら、目の前のメスである奥さんをめちゃくちゃに犯すのよね。それで人気がある薬なの。

「普通はね。それを逆転の発想で魔物に使ったのが、ロリロット博士の素晴らしい発想よ。知能の高い魔物と限定したのは、触手化薬を飲んでも知性が少しは残るようにするためよ」

 あたしはシャーリーの推理に感心しました。

「ジュリアン君はそれで快楽漬けにされてしまった。そして、翌朝、襲ったデーモンがそそのかして、魔界へと連れ帰った。これがジュリアン君失踪の全貌よ」

「そそのかされたんじゃありません!」

 シャーリーの推理にそれまで沈黙していたジュリアン君――もとい、ジュリアンちゃんが反論しました。

「あたしは、魔物に襲われてしまった。そうなっては、もう婿にはいけない。だから、魔界に堕ちるのはしょうがないと思いました。でも、残された義父と弟のことが心配で、そのことをデーモンさんに相談しました」

 そこで、これが博士の仕組んだことであることを知り、ヘンリー君にも危害がないようにちゃんとすることを約束してもらったそうです。

「ジゼルさん――あたしを誘惑したデーモンさんは、触手になってあたしを襲っているときに、あたしのひそかな恋心にも気づいていて、アルプのこともそこで教えてもらったんです」

 ジュリアンちゃんは、染めた頬を手で隠して、身体をくねらせていました。

「まさか、ヘンリー君を?」
「違うわ。ロリロット博士を、よ」

 あたしの驚きの声をシャーリーが冷静に訂正しました。

「どうしてだ? 私はお前たちにいい生活もさせてやれず、辛い思いをさせてばかりいた男だぞ?」

 ロリロット博士が怒鳴るように、ジュリアンちゃんに問い詰めました。

「あたし、知っていたんです。あなたが、あたしたちをどれだけ愛おしく思っていてくれていたのか。そして、そのためにどれだけ苦労をしているか。血のつながらない、愛してもいない女性の子供である、あたしたちのために……」

 目を潤ませてジュリアンちゃんは博士にすがりつきました。

「感謝の気持ちがいつしか、恋に変わったのね」

「でも、あの時のあたしは男の子で、あなたに自分の気持ちを打ち明けることはできなかった。どうせ、あたしの恋は遂げられることがない。それなら、あなたのためにと、伯母にあたしを売ってくれるようにお願いしたんです」

「兄さん……そんなことを……」

 ヘンリー君も初耳だったらしく、驚いていました。

「でも、アルプのことを知って、あたしの恋はかなえられるとわかったの。でも、お義父様を連れ去ったら、ヘンリー一人になっちゃうでしょ?」

 ジュリアンちゃんが小悪魔の笑みを浮かべていました。

「そこで伯母からの手紙を偽造して、ヘンリー君が同じ状況になったとロリロット博士に勘違いさせた。そして、同じ作戦を実行させたんだよ」

 シャーリーの言葉にジュリアンちゃんが頷いた。

「ジュリアン君の時は、窓からデーモン――ジゼルさんを博士の部屋に招き入れる。窓を閉めて、博士が金庫の中に隠れてから、ジゼルさんが触手化薬を飲んで、触手になる。
 そして、通気口を通ってジュリアン君の部屋に侵入する。あとはジュリアン君を襲って、騒ぎになって潮時になったら、通気口から博士の部屋に戻る。
 解除薬を浴びて元に戻り、合図の笛を吹く。博士はそれを聞いて金庫から出てくる。
 こういう段取りね」

「そうだ。目の前に男がいると、知性があっても襲いかねないからな」

 シャーリーが博士の部屋で匂いをかいでいたのは、解除薬の匂いを探していたとのことでした。

「だけど、ヘンリー君の時は、窓を開けた段階で博士が金庫に隠れるように計画の変更を持ちかけられたんでしょう?」

「その通りだ。恥ずかしがり屋だからと言われたから、ドッペルゲンガーやナイトメアあたりかと思っていた」

 ロリロット博士はがっくりとうなだれていました。

「ジュリアンの時は、初めてだったから何度か練習をしてから実行した。ヘンリーには、ジュリアンの時のノウハウがあるから、練習は昨日の一回だけで、今日が本番の予定だった」

「ヘンリー君が快楽の虜になったところで、ジュリアンさんはヘンリー君に種明かしして、ロリロット博士に二人で魔界へ移住することを説得するつもりだったわけね」

「できれば、万魔殿に」

 ジュリアンちゃんがとろけた表情で言うと、それにはシャーリーも苦笑を浮かべた。

「これが今回の縁結びの全貌よ」

 あたしは思わず拍手しそうになりました。

「お義父様、ヘンリー、いっしょに魔界に行きましょう。そして、三人で仲良く暮らしましょう」

 ジュリアンちゃんが二人に向かって提案しました。

「しかし、私は――」

 ロリロット博士はその提案に乗ることにためらいました。

「お母様は死者の国ですでに夫を見つけて、幸せになっています」
「そうか。それは、よかった」

 愛してはいなくても、妻だった女性のいく末は気にはなっていたようです。博士は、ほっとした表情を浮かべていました。

「お義父様は十分に、お医者様としても、過激派としても、あたしたちの父親としても、お仕事をしました。残った借金も、ジゼルさんがお義父様の活動に対して、褒賞金として返済すると言ってくれました」
「いや、しかし――」

 ジュリアンちゃんに迫られて、博士は困惑したように尻込みしていました。ええい! こんだけ、熱烈に愛を訴えられて、まだわからないの?
 シャーリーに頼んで鉛の矢でも打ち込んでもらおうかと、彼女を見たら、すでに怖い笑顔で鉛の矢を番えようとしていました。

「もう、自分の幸せを掴んでください」
「私は、いいのだ。お前たちが幸せにさえなれば」
「あたしは、あたしの幸せは、お義父様を永遠に愛し続けることです!」

 ジュリアンちゃんはロリロット博士に抱きつきました。もう、ジュリアンちゃんはロリロット博士を夫として認識してしまっていることは明らかでした。
 博士もようやくそれがわかったようです。

「私で、いいのか?」

「お義父様しか、あたしが愛する、夫にしたい人はいません」

 顔を上げ、涙を浮かべるジュリアンちゃんをロリロット博士は熱い抱擁で受け入れました。感動的です。ミルクのシャワーを二人に浴びせて祝福したい気持ちです。

「さあ、ヘンリー君。君はどうする?」

 シャーリーが、少し置いてけぼりを食らっていたヘンリー君に訊きました。

「僕は……」

「ヘンリー、一緒においで」

 ジュリアンちゃんとロリロット博士が抱擁の輪に招くように手を広げました。

「僕は、魔界には行きません」

 しかし、ヘンリー君の答えは二人の期待を裏切りました。あたしもびっくりです。

「僕は、主神教団に入信して、神父になります」

「どうして!」

 主神教団といえば、魔物に好意的でない集団の第一位です。下手すれば、あたしたちにも敵意を向けかねない存在です。そこの神父になるなんて、博士たちに敵対するということです。
 あたしも何か言おうとしましたが、シャーリーがあたしの肩に手を置いて、「大丈夫」と微笑みました。

「兄さんがいなくなった後、僕は一人でした。お義父さんもほとんど家にいませんでしたし、村の人は僕を避けていました。でも、神殿のシスターさんだけは、僕を温かく迎え入れてくれました。僕は、そんなシスターさんのように、嫌われて行き場のない誰かを受け入れる場所になりたいんです」

「じゃあ、あたしたちの敵になるの?」

 ジュリアンちゃんが悲しそうな顔をしていました。でも、ヘンリー君は首を振りました。

「神様は僕たちを試しているんです。魔物と共存する世界を人が選べるかどうか。だから、僕は神父になって、そのことを教団の内にも外にも訴えたいんです。人が愛に生きれば、魔物たちとも共に歩めることを」

 それは親魔物派閥が大勢いる国でも、神殿内部で主張するのは危険なことでしょう。でも、ヘンリー君の意志が固いことは凄く伝わってきました。

「わかった。ヘンリー、お前に家督を譲るように書類を作ろう。屋敷と土地を処分すれば、少しはまとまったお金ができる。そこから神殿への寄付などすれば、神父になるのも難しくは無いだろう。私は……そうだな。旅芸人の若い女に入れ込んで失踪したとでもしておこう」

 ロリロット博士がしみじみとしながら、ヘンリー君の歩む道を少しばかり歩きやすくしていました。

「だが、寂しい思いをさせてしまっていたな。すまないことをした」

 博士はヘンリー君に頭を下げた。ジュリアンちゃんも一緒に頭を下げていた。

「いいえ。お義父さんが僕たちを育ててくれていなかったら、きっと今頃は土の下です。それだけで、十分です」

 ヘンリー君は涙を浮かべて、博士に抱きつきました。それから、三人で抱き合って泣いていました。あたしも、もらい泣きしちゃいました。

「さて、縁結びも終わったし、これ以上はお邪魔ね。帰りましょう、ウァトソンちゃん」

 シャーリーはあたしにそう言って、朝一番の汽車で、あたしたちの下宿に戻ったのでした。

 これがロリロット博士失踪の全貌です。

 この縁結びは、実の兄が魔物になり、義父がその夫になったことが公表されると、ヘンリー君の主神教団での立場が危ういものになるから、公表しませんでした。
 でも、そのヘンリー君も、例のお世話になったシスターがダークプリーストになってしまい、その彼女を守るために教団の追っ手から逃亡したので、その心配もなくなりました。


 では、また、何かの縁にお会いしましょう。
 あなたに、赤い糸のお導きがあらんことを。
17/03/24 18:15更新 / 南文堂
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■作者メッセージ
お読みいただき、ありがとうございます。
ご存知、シャーロック・ホームズ。「まだらのひも」は、その中でも、おそらく一番有名な話ではないかと思います。今回はそれを魔物娘でパロディにしてみました。

ミステリーなんて書いたことがなかったから、四苦八苦しました。苦労した割には、ミステリーっぽくないですし……。
少しでも、楽しんでいただけたなら、幸いです。

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