連載小説
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1月 成人の日
「準備できたかい?そろそろ行くよ」

「もう少しです。・・・・すいません、お待たせ致しました」

着飾った彼女と供に俺は車に乗り込んで少しばかり離れた集会所へと向かう。目的は彼女の成人式の為だ。

「すいません旦那様、折角のお休みのところこのようなお願いを聞いていただいて」

「何言ってるのさ。君の一斉一代のイベントなんだからこういった時にはどんどんお願いして良いんだよ」

俺の言葉に彼女は少しばかり照れながらお礼をいう。その照れ顔にグッと来たのは内緒である。

暫く走っていると、ちらほらと着物を来た魔物娘達が見えてきた。その中には種族的に解りやすい着付けをしている者や、豪勢な着付けをしている者を横目で見る。言っちゃあなんだがやはりうちの彼女が一番だな。

「さぁ、着いたよ。・・それじゃあ俺は駐車してから2階に行くから」

「解りました。 カメラはお持ちになりましたか?私の席は後ろ側の3番目です。それじゃあ行って参ります」

笑顔の彼女を見送った後、俺も専用駐車場へと向かった。
さてここで疑問に思っただろう。何故成人をとっくに過ぎている俺が会場内にカメラ持参で入れるのかと。それはこの地区で行われた成人式が恋人募集中会場になっているからである。
最初の頃は俺も驚いたよ。会場の2階に成人過ぎている男性や魔物娘の方々が目を見開いて熱い視線を送ってくるんだからな。
それじゃあ、行かなければ良いだろうと思っただろうがそれはそれで、人生を不意にしている気持ちになるらしく今まで欠席者は一人も出ていない。


「うわぁ、相変わらず凄まじいことで」

会場に入ると、俺がやったとき同様恋人募集中の男女が下の階を見下ろしている。 ここにいる人たちでカップルになれば良いんじゃないか?と内心思っているのだが黙っておく事にする。そんなこんなで式は始まり静まり返った中にこだまする進行者のアナウンスや代表者の挨拶が行われていった。勿論、代表者の挨拶は我が愛しい彼女なのである。


「旦那様お疲れ様です。やっぱり人前での挨拶緊張しますね」

「お疲れ、可愛かったぞ。思い出のために写真も撮っておいたから後で家で一緒に見ような。・・それよりも」

「フフっ、心配なさらなくても私は旦那様一筋ですので他の方には目もくれずに帰ってきましたよ。 まぁ、声を掛けられそうになった所を他の方々が助けていただきましたけどね」

その言葉を聞いて俺は安堵の溜め息を吐き出し、その光景を見て彼女は再びクスリと笑いだす。その笑顔を見て俺は車のハンドルを手にしてその場を後にした。
16/01/10 22:50更新 / kirisaki
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■作者メッセージ
前作から結構間隔が空きましたが連載できるようにしていきたいと思います

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