連載小説
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刺客(しきゃく)その2
正信は草むらに身を隠し周囲の物音に気を配る。
しかし聞こえるのは鳥の囀りや目の前にいる上士の一人が立てる音ばかりである。

「静かに、周囲の音が聞こえませぬ。」
「・・・どうして・・・どうして我らまで・・・何故じゃ・・・」

注意したが眼前の上士は怯えきっており、正信の言葉も右から左といった按配である。
正信は軽く嘆息すると、改めて周囲の状況を観察し始めた。



時間は少々前に遡る。
正信が南の藩との領境にある山を移動中のことである。
同行者の一人である上士が山中でもよおしてきたので少し待って欲しいと言ってきた。
当然厠など有りはしないので、そこいらでするしかない。
仲間の上士達は呆れながらも早く行って来いと男を送り出した。

しかしそれから、待てど暮らせど男は帰ってこなかった。
遠くへ行き過ぎて迷ったか、はたまた何処ぞから落下して登れなくなったか。
そんな声が他の上士達からしだいに上がり始めた。
それならと二人が見てくると行って、またまた山中へと消えた。

流石に上士達も真剣な表情になり、皆で揃って行方をくらました三人を探しに出かけた。
程なく、山中を少し下ったところで倒れている三人を発見。
どうしたと駆け寄った上士の一人が突如飛んできた矢に頭を射抜かれ死んだ。
元々襲撃があることを予期していた正信の反応は早かった。
二射目が来る前に素早く木の陰に身を隠す。

「皆様方! 曲者です!! 身を隠してください。お早く!」

しかしそんな正信の呼びかけに対しても上士達の反応は鈍かった。
信じられんとばかりに倒れている男達に駆け寄りその死を確認する。
そうしているうちに放たれた次射がもう一人の上士の肩を穿つ。

「ぐあぁあっ。」
その悲鳴が上士達に事態を強制的に理解させる。
自分達は今、命を何者かから狙われているのだと。
そして彼らは蜘蛛の子を散らすように山中を逃げ出した。

パニックを起こして統制を無くした上士らは、がむしゃらに山中を逃げる者。
正信同様に死体の周囲の物陰に身を隠す者。坂を上り馬まで走るものに分かれた。
それらを物陰から見ていた正信は考える。

(自分だけでなく、上士の方々まで無差別に襲っている。
こちらに寄越された彼らは恐らく、
五郎左衛門の気に触ることか失態をやらかした過去があるのであろう。
自分を下手人に襲わせるついでに皆殺しというわけか。
だとすると、自分が相手の立場ならまず始めに・・・)

そう考えたところで上手の方、坂の上から悲鳴が聞こえてきた。
それなりに距離もあり、詳しいことは判らないが馬の嘶きも響いてくる。

(やはりそちらか、恐らく馬は走れなくされてしまっているであろう。
どうする? 人数の居るうちに討って出て倒してしまうが正解か?
いや、敵の正体も人数も判らぬ。こうなった以上、南の藩に行くのは諦めた方が良い。
何としても生き延びて帰る方向で考えねば・・・)

正信は慎重に物陰から物陰へと移動を始める。その間も思考を回転させ状況の把握に努める。

(此処で襲撃を受けたのは偶然、
上士の方が道端で御小水をして終わりであればこうはならなかった。
そして山道とはいえ、馬なしで馬の脚に付いて来るのは難しい。
であれば待ち伏せ、恐らく誰かが厠へと別行動を取らずとも、
先の方で道は塞がっていたのだろう。
そして立ち往生させてから襲撃する手筈だったのだ。
この推論が正しければ引き返すより他にない。
だが土地勘のない山中を我武者羅に逃げるなど自殺行為。
水も食料も馬といっしょだ。山へ逃げ隠れても助かるまい。
やはり危険ではあるが来た道を引き返すしかない。)

そして彼は草むらにて震える上士と対面し冒頭へと繋がるわけである。

正信はとりあえず手近に落ちていた石を投げて離れたところで音を立て、
そうしてから自分は耳を澄まして周囲に気を配る。
反応して動く物音や気配はない。下手人は今この周辺にはいないと彼は判断した。

「私は上へ参ります。ついてきますか?」
「・・・何故・・・我らが・・・」
「知りませんよ。生きて帰れたら五郎左衛門様に伺って見たらいかがです?」
「くっ・・・仕方ない。何か考えはあるのか?」
「恐らく道は敵に塞がれて居ます。引き返すしかありません。」
「しかしそれでは敵の思う壺ではないのか?」
「ええ、ですが山中に逃げても水も食料もなく野垂れ死にます。
敵は周到に準備してここを襲撃する場に選んだのです。
恐らく上の道以外から下山することはかないますまい。」

正信の言葉に上士は頷き、二人は用心深く坂之上へと移動をした。
その間、矢は二人に一度も飛んではこなかった。
そして上に出た二人は最初に上に上った上士達の死体と、
山中に逃げた上士らが刀を抜いて一人を囲んでいるところを目撃した。

(何処にも行けず結局ここに戻っていたか。)

上士達が囲んでいる相手の姿を視認する正信。
道着の様なものを着込み、頭にはバンダナの様に手拭を巻いている。
顔には鎧武者が付けるような髭の生えた翁の面を付けて顔を隠している。
露出した腕や首は日に焼けて浅黒い色をしている。

(まるで漁師の様な肌をした奴、元海賊か何かか?)
さらに正信はその両手に握られた見慣れぬ武器に注目する。

(十手? いや、十手よりも鉤の数が一つ多い。)
それは釵(さい)と呼ばれる武器であった。敵はそれを両手に一つずつ持っている。
上士の一人が奇声を上げ斬りかかる。それを難なく体を開いてかわすと瞬間男の腕が霞む。
槍のように鋭く尖っているわけでもないサイの先端が上士の胸部に吸い込まれていた。
刺すというより押し潰すように心臓を突き、瞬く間に停止させていた。
刀を振り切った姿勢のまま鼻と口から血を吐き出した上士はゆっくりと崩れ落ちる。

(いけない、技量が違いすぎる。)
正信は上士達に助言を飛ばす。
「卑怯などと言ってはおれません。前後左右から同時に掛かるのです。」

「お・・・おう。その通りよ。だいたい卑怯というなら。」
「こやつの不意を突く襲撃がすでに卑怯。」
「覚悟いたせ!」

同時に構える上士達、だがそれに対しても敵は身じろぎ一つしない。
ゆったりと力を抜いたように見える姿勢でそこに立つだけである。

「しゃぁ!」
一人の上士が掛かるのを合図に、少し遅れて残りの二人もそれに続く。

(うまい!)
それは偶然ではあるが、
時間差攻撃となり前のようにかわして対応することは不可能であった。
初太刀をかわせば続く弐の太刀参の太刀を避けきれない。
だがその最初の一撃、敵から見て右側の一撃を囲いに突っ込む形で回避すると。
さらに前進を続け正面と左から迫る剣撃に対し両手のサイを突き出した。

(両手の一撃を片手ずつで止めるかよ。いや・・・あれは!)
男は刀をサイの鉤で絡め取ると両手首を回転。
さらに両腕を交差させて刀の軌道を強引に変えてしまう。
上士らの正面の敵へ打ち下ろしたはずの一撃は、
斜め隣にいたもう一人の上士を互いに切り裂いていた。
峠に響く二つの悲鳴。そしてそこで敵の動きは止まらない。
初太刀を放った上士が敵の背中から次いで突きをみまう。
しかし軽業士のように飛んで切り裂かれた二人の向こうへ抜けると、
上士の一人を蹴り飛ばし突きへの盾とする。
刀は深々と肉に刺さり、傷ついた上士に止めを刺す。
それと同時に武器を相手から奪った敵は、
もう一人の傷ついた上士も背中から一撃し絶命させる。

あっという間に三対一が二人死に残りも刀を失うという状況へと転じる。
「ぬ・・・ぬ・・・ぬわ〜〜」
恐怖に耐えかねた残りの上士は素手で組み伏せに掛かる。
敵の武器は間合いが広いわけではない。
そして懐に入り掴んでしまえば多少は無手の不利を消せる。
そう考えてのことであった。だがその考えはすぐに敵によって砕かれる。
上士は突如視界の斜め下から伸びた何かに頭を殴打され、前のめりに倒れて意識を失った。

「蹴り・・・だがあんな脚を高く上げる蹴りなど。」
敵の放った蹴り、俗にハイキックと呼ばれる頭部への蹴り。
威力は大きく、当たり方しだいでは一撃必殺となりえる。
だが動作が大きく外したときのリスクが大きいため実戦的とは言いがたい。
当然正信達の通う道場などではこのような攻撃については教えられていない。
それでも一対一の状況、そして無警戒の相手に放たれるそれは不可視にして不可避の一撃だ。
相手の武器ばかりに集中し、想定外に放たれた一発は奇襲として立派に機能した。
倒れた上士に対し、敵は大きくもう一度脚を振り上げ、首に踵を打ち下ろした。
ごきぃ と鈍い音が響き、上士はぴくりともしなくなった。

十数名ほど居た正信と上士の一団は、
何時の間にか正信と草むらに隠れていた上士の二人だけになっていた。
「正信よ・・・なんぞ手は?」
「ありません。左右から挟むように掛かれば互いの刃で倒れることは回避できましょうが。
正直逃げたいですね。でも背を見せてよい相手ではありません。」

びびりすぎて逆に覚悟を決めたらしく、残った上士は正信とは反対方向に回りこむ。
相変わらず敵は一言も発さず。ただ体の向きだけ変え、正信と上士を自分の左右に割り振った。
そして同時に掛かる正信と上士、上士が上段から攻撃を振り下ろすのを見て取った正信は、
自身の身を沈めて相手の脚を刀で横薙ぎにした。その剣速は上士達のものより一段速い。
そんな正信の薙ぎを片足を上げつつ回避、
もう一人の方へ間合いを詰めると敵はサイで刀の根元。
上士の手首を取る、そして体を入れ替えるように上士を正信の側へ投げ飛ばす。

(返す刃での追撃を封じ、体制を立て直す間を得たつもりだろうが、読んでいたぞ!)
上士の体に正信が隠れる刹那、正信は懐から葉を取り出して念じる。
投げ飛ばされた上士の陰から飛び出す三つの影。初めて敵の目が見開かれ驚愕の感情が覗く。
まったく同じ姿の正信が三人、敵に迫りつつそれらは左右から袈裟掛けに切り下ろす。
驚きで回避するという間を外された敵は、左右からの一撃をサイで受けようと突き出す。
だが刀はサイを突き抜けると溶けるように正信諸共消える。
後ろに控えていた本物の正信はがら空きになった正中線に向かって渾身の一撃をみまう。

完全に捉えた! そう思った正信であったが、敵は彼の予想を一段上回る反応でサイを戻す。
だが不完全な状態で戻したサイは正信の渾身の両手切りを受けきれない。
サイは叩き落されるものの、その減速の間に敵は上体を反らしつつ後方に飛んで一撃を回避。
道着は浅く切り込まれ裂けているが、下の地肌は赤い筋がついている程度。
かすり傷といってよかった。

(なんという。あんな無理な体勢からもまったく軸がぶれない。だがこれで武器は無い。)
会心の一撃を回避されたとて、正信はこの好機を逃しはしない。
敵の脚にも注意しつつもう一度返す刃で切り上げる。避ける敵。逃さぬと放たれる正信の連撃。

(完全に間合いの中、今度こそ避けられまい。)
体重を乗せた必殺の一撃、敵にはこれを避ける術は無い。
敵は正信のそんな予想を再び上回る。
上段からの一撃、押すも引くも出来ぬ間合い。ではどうする?
敵は両腕は上に上げ、何と正信の白刃を両の手で受け止めた。

(馬鹿なっ!)
真剣白刃取りという技術がある。両掌で刀を挟んで取るという絶技だが。
はっきり言って眉唾物である。本気で打ち下ろした真剣は指だけで挟んで止められはしない。
だからといって掌まで使えば斬れてしまう。
両者の間に大人と子供以上の身体能力の差がないと実現は難しいであろう技術だ。

だがこの敵は正信の一撃を受け止めた。掌というより、両手の甲を使い挟んで止めた。
驚く正信だが、良く見ると敵の手には何時の間にか何かが付いていた。
今で言うメリケンサックのような物がその指にはまり、それで刀を挟み受けていた。

鉄甲(てっこう)という武器で馬具の蹄鉄から開発された代物である。
サイが落とされた直後、それを避けている最中に敵は指に嵌めていたらしい。
するりっ 刀を挟んだまま敵が間を詰める。

(しまっ!)
ズドンッ!! まるで大砲を打ち込まれたような衝撃。
正信は両の足が一瞬浮き上がりまるで落ちている感覚に襲われる。
そしてそのまま後方に吹っ飛び転がる正信。敵の正拳突きが彼の胸を抉る。
鉄甲を付けたままでの正拳、本来なら命にすら関わりかねない一撃だ。
だが正信は寸でのところで自分から後ろに飛んで威力を空に逃がしていた。
敵もその事は手応えから感じている。
完全に決まれば飛ばずにその場で前のめりに倒れる代物だ。

正信は道から外れ坂ノ下へと転がっていく。
敵はあせって深追いはせず、とりあえずさっき投げ飛ばした上士の一人を殺すべく。
そちらの方を振り向いた。だが、投げ飛ばしたはずの男は陰も形もなかった。
正信との戦いに集中しすぎて逃げるのに気づかなかったようだ。
男の受けた命は皆殺しである。であれば雑魚とて逃がすわけにいかない。
彼はぐるりと辺りを見回すと、その後に現場から走り去る足跡を発見する。

男はちらりと正信が転がっていった山中に目を向けるが、
すぐに逃げた男の足跡を追った。


※※※


生き残りの上士は逃げていた。ただひたすらに走る。
あんなのとやり合っていたら命がいくつあっても足りない。
正信を囮にした形だが、自分に何が出来るというのだろう。
まだ死にとうない。何故じゃ。
自分は藩内でも代々上士の家で長男として生まれた。
親の代から五郎左衛門様とは昵懇の仲、
あの方からうまい汁を吸いつつ、面白おかしく程ほどの出世をし、
それなりの嫁を貰い晩年は趣味に現を抜かしつつ楽隠居。

そんな風に考えていた自分の人生、
それが何故命を取るだの取られるだのという話になってしまったのか。

彼にはとんと解らないのだ。
自分が啜るうまい汁とやらが、他人の生き血で出来ていたことも。
そして今度は自分がその生き血を絞られる番になってしまっただけだということも。

走っていたがしだいに息は上がり、彼はとうとう立ち止まってしまった。
縄と板で作られた橋の掛かった渓谷がこの先にあり、そこまで行けば自分は助かる。
かなり老朽化した橋で、来るときも馬を一頭ずつ行かせた按配であった。
橋を渡った後、橋を掛ける縄を切って落としてしまえば、
流石のあの男も追いつくのにかなり時間が掛かるはず。
その間に実家に逃げて私財を持って藩を抜けるしかない。
色々と問題は山積みであったが、今はこの山を無事に降りること。
その事が彼の心を占めていた。

だが、見えてきた渓谷と橋の袂には、浅黒い肌をしたあの男がすでに彼を待ち構えていた。

「・・・どうやって?」
この山は彼の選んだ狩場、当然逃げられた時の事も考え、
山中から回りこめる裏道のある場所を選んでいた。

上士は上がった息のままその場にへたり込む。
絶望が彼の気力を根こそぎ削いでいた。
これは夢、これは嘘、そんな言葉が彼の中でぐるぐる回る。
しかし眼前の死神はゆっくりと彼に迫り、その鎌を振り上げていた。

「待て。」
止めを刺そうとした敵に対し、浅い息を吐きながら苦しそうに正信が追いついてきた。
胸を押さえながら額には脂汗が浮んでいる。控えめに見ても肋骨の何本かが折れている。

正信は懐から葉を一枚取り出すと再び分身して見せた。
それに対し目を丸くする上士、敵はもはや動じない。

「私が一瞬ですが時を稼ぎます。その内に橋を渡ってしまってください。」
「か・・・かたじけない。何も出来ず。」
「いいえ。」

じりじりと間合いを詰める正信の一団と反対に橋へと遠ざかっていく上士。
二人を見つめると敵は踵を返して上士の方へと迫る。

「ちぃ。」
「なんでじゃ〜。」

敵を追い橋へと走る正信達と揺れる橋の上を逃げる上士。
敵は不安定な橋の上でもほとんどスピードを落とさず上士に迫る。
船上での戦いに慣れているが故の驚異的なバランス感覚が、
この敵の揺れる橋上でのスピードを維持していた。

正信の一団が橋の上に残らず乗っかると、そこで敵は振り向いた。
そして ひゅんっ と懐から取り出した石つぶてを正信に投げつける。

「痛っ。」

幻影を貫いてつぶては本当の正信の位置を敵に教える。
正信の位置を確認した敵は、一気にその速度を持って正信との間合いを詰める。

「しまった!」
位置を特定され、頼みの綱の幻影も消えた正信は慌てて構えるが。
先程の一撃のせいで体のキレは著しく落ちていた。
その事を確認すると、敵はもはや用心は不要とばかりに決めに来た。
正信も刀を構え、残った精魂を込めて決死の一撃を放つ。

先程よりも明らかに速度の落ちた突きの一撃、しかもその体重の乗せ方と、この足場を考えれば。
続く二撃目は撃てず。それどころか隙だらけになるであろう。
その事を見切った敵は、冷静に刀身が自らに届く前に両腕で体の前面に弧を画き。
突きを受けて外した・・・はずだった。

刀が彼に届く前に彼の体を謎の衝撃が襲う。
熱さと痛みを胸に感じる。それはまるで斬られたかのようで・・・
「?・・・?!」

敵の胸には何時の間にか刀が差し込まれていた。
届いているはずの無い刀が届いていた。
間合い、彼ほどの使い手が一度立ち会った相手の間合いを計り間違えるなど・・・
普通であれば有り得なかった。普通であれば・・・

「?・・・そ・・・それ・・・は・・・」
違和感に彼は気づいた。正信の持っている刀が、何時の間にか伸びていた。
そして刀の柄には、葉っぱが一緒に握りこまれていた。

「化かされただろ? 僕には勝利の女神様がついているのさ。」
正信は死んだ上士の面々の中から、持っていた刀を拝借していた。
自分の手持ちより大きくて長い刀と取替え、
それを八百乃の葉で自分の刀と誤認させていたのである。
事前に手負いになっていたことも功を奏した。
刀の重さによる振る速度の低下を、怪我のせいであると敵に思わせられたからだ。

かくして敵が此処と狙って刀を弾こうとしたその時には、
実際の刃はすでに敵に命中するという事態に相成ったのである。

「・・・」
敵を貫いたまま、正信はぐらりとその身を揺らした。
彼ももう限界であった。狙いたがわず心の臓を一突き。
敵はすでに息絶えた。上士も正信もそう考えていた。

「ぐぅぅぅぅぅおおおおおおっ。」
刀に貫かれたまま血反吐を吐いて咆哮する刺客。
ふらつく正信は驚いて身を引こうとするが、その体はがっしりと相手につかまれていた。
敵は仮面の向こうでにやりと目だけで笑うと、橋の上から渓谷へとその身を躍らせた。
手負いの正信も一緒に、その高さは下に川が見えるとはいえ、
怪我人が落ちて生存できるものではなかった。


12/07/31 15:12更新 / 430
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■作者メッセージ
予想通り分割する必要があったのでその3へ続く。

まあ必死に戦ってますが図鑑世界に於いては底辺同士の戦いです。
レベル一桁同士の戦いって感じです。
当代狸頂上決戦を読めば解るかと思いますが、
インフレがハンパないでござる。
武太夫でもレベル十幾つとかそんな想定です。

まして神とか魔王とかレベルとなるとチートレベルでございますよ。
シュカもウロブサも所詮そこら辺と比べると雑魚になってしまいます。

次元とか世界のルールの書き換えとか夫婦喧嘩で世界がやばいレベルですからね。

インフレっぱねえっす。

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