読切小説
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生活の荒野に舞い降りたキキーモラ
「今日も今日とて残業か……」
 11月だと言うのにものすごく冷え込む夜道を、俺はひとりトボトボと帰っていた。時刻は23時……帰ったら風呂を沸かして入って寝るだけだ。沸かすのは面倒くさいが、朝シャンはこの時期つらい。
 もっと早くに帰宅してゆっくりと飯を食って風呂に入ることだってできるのだが、俺は寂しい一人暮らし。帰宅しても何もすることがない。孤独を実感してしまうだけだ。彼女? うるせぇな、彼女いない歴=年齢の27才だよ。中学高校は男子校だったし、大学は工学部で女っ気なかったしな。
 そんなわけで俺は残業を多めにとって遅くに家に帰る生活をしている。飯は外食かコンビニ飯だ。まるで荒野のような、面白みも華も何もない生活だ。
 自分が住んでいるアパートが見えてきた。アパートのエントランスを俺は何気なく通ろうとしたが、とんでもない事実に気づいて足を止めた。
 俺のアパートの部屋の電気がついている。朝6時に出る時には消したはずだ。つまり、俺の部屋に誰かが勝手に入ってきたと言うことだ……!
「マジかよ……泥棒か何かか?」
 金目の物はそれなりにある。預金通帳とか。小型金庫にしまってあるが、今日日はその金庫ごと盗まれる世界だ。油断できたものではない。
「……あるいは、おふくろか?」
 そう言えば大学時代、何度かおふくろが合鍵使って家に上がってきて部屋の片付けをしやがったことがある。お陰で何がどこに行ったか分からなくなって 俺はマジギレしたっけな……だと言うのに何回か来たおふくろだ。大学卒業してからはもう社会人だからと言うことでそんなことはしなかったが……そう言えば今年はお盆の時期、帰らなかったな……それを不安に思って勝手に来たことも考えられる。
 いずれにせよ、良くないことしか考えられない。だが、いつまでもここでぐずっていてもしかたがないだろう。階段で2階にあがり、自分の部屋の前に立つ。ドアを開けて、あえて大きめの声でただいまと言った。泥棒ならこれで慌てて飛び出してくるはず。おふくろなら返事をするはず……
「おかえりなさいませ、旦那様♪」
 返事はかえってきた。だがそれはおふくろの物とは全然違う。まるで鈴のような可愛らしくて爽やかな声で、それでいて媚びていない、聞くだけで肩の力が抜けてリラックスできるような素敵な声だった。
 いやいやいやいや、声がいいのはともかく……お前、誰だよ!?
 警戒して玄関で身構えていると、奥から声の主が現れた……誰じゃこりゃ?
 顔はとても綺麗だ。少し垂れた優しそうな目、すべすべとしてそうな肌、口紅などしていなくても魅力的な笑みを作っているくちびる……すんごい美女だ。
 でも格好がかなりおかしい。無地の黒いロング・ワンピースに白いフリルつきロング・エプロン……早い話、メイド服。まあ、これはコスプレと片付けられる気もする。
 一番の特徴は人間じゃないことだった。手首からは羽箒のような羽毛がふさふさと生えていて、腰からは狼のような太くてもふもふとした尻尾が生えていて機嫌よさそうに振られている。スリッパを穿いているからわかりにくいが、チラリと見える足首はなにか硬い鱗か殻のような物で覆われていた。
 ふむ、魔物娘か……彼女いない歴=年齢な俺でも、魔物娘を見たことくらいはある。だから、彼女が人間じゃないことには驚かない。人間に対して危害を加えるような存在ではないことも知っている。だけどさすがにいきなり家にあがりこまれて、メイド喫茶のメイドよろしく挨拶をされたらさすがに驚いた。
「だ、誰だお前……」
 絞りだすような声でそういうのがやっとだった。にっこりと笑い、スカートを左右に開いて膝を曲げるお辞儀をしながら彼女は答えた。
「申し遅れました。私、キキーモラのローディナと申します。日頃より頑張っていらっしゃる旦那様、矢崎琢己(たくみ)様に仕えるべくこの度参上いたしました」
「仕える……?」
「はい、掃除洗濯お食事、なんでも致します。旦那様が望まれるのでしたら……ぽっ」
 何か最後に言った気がするが、それより俺は違うことに気が気じゃなかった。
「掃除洗濯って……まさか、もうやってしまった!?」
「はい、旦那様の帰りが思った以上に遅かったので……」
 最後まで聞かずに俺は靴を脱ぎ捨てて部屋に上がった。これじゃおふくろと同じだ! 勝手に片付けられてどこになにが行ったか分からなく……!
 と思ったが、リビングに入ってみて俺は拍子ぬけた。思っていた以上に片付いていない……いや、このキキーモラ、ローディナが手を抜いたとか仕事ができないとか、そういう意味ではない。俺が片付けていなかった食器は洗って食器棚にしまわれ、コンビニ弁当の空き容器や菓子の空袋などは全部捨てられている。だが、会社の資料などの場所は移動していなかった。片付けやすいけど探しづらくて取り出しにくい横積み状態だったのが、ボックスファイルに入れられて縦に並べられている。書類だけではない。本や漫画なども横積みになっていたのが縦に整列されなおしている。だが、俺がどこにいったのか分からなくなったりしないよう、元あった場所からは移動させていない。おふくろはしなかったその心遣いと仕事ぶりに俺は感動した。……エロ本とエロDVDも同じように直されてなければ。
 とりあえず、ローディナの仕事ぶりは分かった。が、それ以外は分からないことだらけだ。
「えーっと、ローディナさん……」
「まあっ! 私は旦那様の使用人ですっ! 敬称付けなどしないでくださいませ、恐れ多いです……」
「じゃ、じゃあローディナ……」
「敬語もご容赦くださいね?」
「あ、ああ……その……」
 初対面の人(?)相手にさん付け禁止・敬語禁止はやりにくいなと思いながら、俺は呼びなおす。
「なんで俺のところに来たんだ? 見ての通り俺は平社員の貧乏一人暮らし、メイドを雇うお金なんてないよ?」
「お金なんて望みません! 私たちキキーモラは殿方、特に働き者の殿方の所に現われ、身の回りの世話をしてお助けすることを喜びとする種族なのです!」
 魔物娘が闊歩するこの現代、それぞれの生態はそれなりに俺も把握している。リャナンシーは芸術活動をする者のところに現れる。ベルゼブブやデビルバグは不潔な所に現れる。それと同じようだ。自分は働き者かどうか……家にいると寂しいからという惰性ではあるが、確かに夜遅くまで働いていることを考えると、俺は働き者に分類されるのかもしれない。自分でそう評価するのはかなりくすぐったいけど。
 とにかく、このキキーモラのローディナは俺のところに住み込んで(本当の意味での)メイドのお仕事をするようだ。
「そう言ったことゆえ旦那様、ふつつか者でありますがどうぞよろしくお願いします」
「あ、ああ……よろしく」
「早速ですが、ご飯にしますか? もう夜も遅いですが、お味噌汁くらいなら身体にいいかと……それとも、お風呂にしますか? すでに沸かしています。それとも……」
「ストップ! ストップ! あ、ああっと……今日は疲れたからお風呂にする!」
 なんかアブナイ単語が飛び出しそうだったので慌てて俺は遮った。聞く俺がこっ恥ずかしいわっ! それはともかく、本当に疲れたから風呂に入ることにする。仕事で疲れていたけど、一日の終わりにこんなビッグもビッグなイベントがあってさらに疲れた……
「お背中、お流ししましょうか?」
「いいっ! いいっ! 自分でやる!」
 逃げるようにして俺はヒョコヒョコとみっともない足取りで風呂場に逃げた。そのまま背中流されたりした日には俺の貞操が危ない!
 脱衣所に入って俺は息を詰めて様子を伺ってみる。貪欲な魔物娘のことだ。俺が拒否しても突撃してくるかもしれない。だが意外なことにローディナは入ってこず、別の作業を始めたようだ。仕える相手がいらないと言ったら、それを守るらしい。それがローディナ個人の性格なのか、それともキキーモラ全体に当てはまることなのかは分からないけど。
 とにかく、俺の貞操は守られた。いや、彼女いない歴=年齢で童貞の俺だから……その、セックスには興味あるけど……でも、こんなドタバタで何が何だか分からないうちにヤッてしまって、挙句の果てに「認知して……」なんてことにはなりたくない。首を振りながら俺はスーツを脱ぎ始めた。



 風呂から上がると入れ替わりでローディナが風呂に入ることになった。俺は特にやるこもないので明日の準備をする。そしてローディナの手によってメイキングされたベッドに入ろうとした。その時
「だ、だ、旦那様っ!」
 焦った声が風呂場から聞こえてきた。何事か。ゴキブリでも出たのだろうか。行ってみると、風呂場からローディナが首だけを突き出してこちらを見ていた。濡れている髪にドキッとする……じゃないよ! 下! 下も見えちゃってる! 脱衣所に出しているのは首だけだけど、その下のおっぱいとか見えちゃってるから……!
 俺は思わず両手で目を覆う。でも見てしまいそうだ。俺は顔を横に向けた。それも良くなかった。脱衣カゴの中にはローディナのメイド服と、下着が入っていた。真面目そうなローディナに似合う、白のショーツとブラだ。俺は顔から火が出るかと思った。ローディナも羞恥心と言うものはあるようだ。上ずった声で俺に話しかける。
「も、申し訳ありません、旦那様。でも、でも……」
「でもっ!? でもなんだ!?」
「私、掃除道具とかは持ってきましたがお着替えとタオル類を持ってくるのを忘れまして……」
「分かったっ! 俺の家のタオルとかスウェットとか好きに使っていいから早く隠してっ!」
「はい、申し訳ございませんっ!」
 にゅっとローディナの腕が伸びてバスタオルを一枚ひっつかみ、風呂場の中に引っ込んだ。ふぅ、と俺はため息をつく。やれやれ、ドキドキしたよ。ううっ……ローディナの胸、そんな巨乳ってわけでもないけどそれなりの大きさがあって、ハリがあって形が綺麗だったなぁ……って何を考えているんだ、俺はっ! あんな姿を見てしまったら仕方がないのかもしれないけど、そんなエッチなことを考えている俺を俺は自分で心のなかで叱りつけてベッドに向かった。
 しばらくするとローディナが出てきた。俺のスウェットの替えを着ている。ローディナは女性にしては身長が高いほうなので丈などは俺の物でもあっていたけど、肩幅など体格は違うのでやっぱりダボダボだった。
 俺が寝るのでローディナも寝るようだが、そこでふと俺は思い出した。
「ねえローディナさ……ローディナ、どこで寝るの?」
「はい、この床で寝ます。あの……申し訳ございませんが、余っている布団を一枚お譲りいただけ……」
「だめだめっ! 絶対ダメッ!」
 俺はローディナの言葉を遮った。うん、それはいけない。絶対いけない。
「女の子を床に寝かせるとかダメっ! 俺が床で寝るからローディナはベッドで寝てっ!」
「そ、そんな! 旦那様を床に寝かせて使用人はベッドで寝るだなんて……そんなの、絶対いけませんっ!」
「いやいやいや、女の子を床に寝かせるほうが……」
「いいえ、主人を寝かせるほうが……!」
 こうした堂々巡りの議論を数分間。ローディナはまだ元気なようだったが俺は疲れていた。議論に終止符を打つべく、妥協案を出した。
「じゃあ、二人でベッドに入ろう」
 今思えばとんでもない妥協案だ。女の子を床に寝かせる並に、いや、それ以上の問題行為かもしれない。だけど残業、突然のキキーモラの襲来、そしてとどめのこの議論……俺は疲れきっていたのだろう。すでに目も半分閉じていた。
「ほ、本当にいいのですか?」
「ああ、いいよ……」
 そう言いながら俺は布団に潜り込み、ローディナに背を向けるようにして横向きに寝転がった。ややあってローディナが潜り込んできた。背中にローディナの体温を感じて温かい。それに、いい匂いがする。俺の家のシャンプーとは違う、いい匂いが……それらが、今布団に俺以外の人間(?)、それも女性が入っていることを実感させ、ドキドキさせる。が、やはり疲れていたのか俺はすぐに眠りに落ちてしまった。
「おやすみなさい、旦那様……」
 最後に鈴のような澄んだ声が遠くで聞こえた気がした。



「お先っ!」
 19時、仕事を終え、すみやかに片付けて俺は職場を出ようとする。前は惰性で残業していたが今は必要以上の残業はしないと心に決めている。まぁ、それでも定時退社なんてなかなかできないし、19時退社なんていい方なんだけどね。だが今日は、今日は特に早く帰りたい。
「矢崎、お前、最近早めに帰るな」
 同期の一人が話しかけてきた。さらに後輩も俺に話しかけてくる。
「最近どうしたんっすか? 彼女でも出来ました?」
「ん、いやぁ、そうでもないよ」
 少し取り繕うように言う。実際のところ、ローディナは彼女ではないだろう。でも、俺が最近仕事にモチベーション高くかかれるのは、彼女のおかげだろう。帰ったらコンビニ弁当やカップ麺ではなく、彼女の温かい手料理が食べられる……これだけで仕事を早めに切り上げて帰る価値がある。さらに、掃除や選択もやってくれるので、仕事に集中できるのもありがたかった。ちなみに、部屋の片付けだけどローディナが来た週の末に二人で片付けた。これで俺が普段どこに何をしまうかが決まり、彼女はそれに忠実に片付けをしてくれる。
 そんなわけで俺は前とくらべて早く帰ろうと努力を始めた。仕事もダラダラせず、時間も質も、目標を持って挑むことができた。ローディナは「いつも頑張っている人のところに来た」と言ったが、今思えば全然ぬるい。座っていただけも同然だ。
 こうしたとってもありがたい存在のローディナが来て一ヶ月経つ。だけど俺はローディナに何もお礼をしてあげられてなかった。そりゃ、ローディナの食費とかは俺の金から出ているわけだけれども、そしていつもありがとうと言っているわけだけれども、そんなのお礼に入らない。何かもっと、彼女にちゃんとした形でお礼がしたかった。そんなに肩肘張った贅沢なものではないもので。そこで俺はローディナが来た一ヶ月記念と言うことで、家でちょっとお祝いをしようと持ちかけたのだった。それが今日だ。早く帰りたくもなる。そして今日は金曜日。明日の事を気にしなければならないということもない。会社の忘年会とかぶってなくて助かった。
「ん〜、なんか怪しいぞお前」
「彼女じゃなきゃ、忘年会シーズンにかこつけた合コンっすか?」
「さぁね。とにかく、お先に」
 同期や後輩に余計なことを聞かれないように、俺は職場を飛び出した。



「ただいまっ!」
「おかえりなさいませ、旦那様」
 アパートのドアを開けると、鈴のような声とともに美味しそうな匂いが漂ってきた。ちょっと部屋が蒸している。煮込み料理らしい。リビングに入ってみるとボルシチとビーフストロガノフ、グリーンサラダが並べられている。贅沢というわけでもないけど、手間のかかる料理だ。ローディナもここに来て一ヶ月記念ということで、気合を入れて作ったらしい。
「コートをお取りしますね、旦那様」
「そこまでしなくていいのに……そんなことより、これ。おみやげ。今日、一緒に飲もう」
「わーっ! ヴォトカですね! 私、大好きです!」
 俺が渡した700ccの瓶にローディナは目を輝かせる。キキーモラはロシアが故郷らしい。そのためか、ローディナはかなりの酒好きで、しかも強い。キキーモラ全体としてはどうか分からないが、少なくともローディナはそうだった。そんなわけで俺は帰る途中、ウォッカをおみやげに買ってきたのだった。
 夕食の準備も整えられ、早速小さな記念パーティーが開かれる。料理がちょっと豪勢と言う以外はいつもどおりの食事。二人でたわいもない話をし、笑い合い、ローディナの料理に舌鼓を打つ。大学時代やローディナが来るまでの社会人時代では考えられないような、明るくて暖かく、楽しい食事だった。それもこれもこのローディナのおかげ……
「だからさ、ローディナ」
 始めは緊張してできなかった呼び捨ても、今ではできる。ローディナのことを使用人として見下したりしているわけではなく、気を許せる、一緒に暮らしている人(?)として。
「はい?」
「ローディナが来てくれて本当に助かっている。ありがとう」
「そ、そんな旦那様ッ! 急に改まって言われると恥ずかしいです……!」
 頬を紅く染め、それでもまんざらでも無さそうにローディナは笑って言う。
「でも本当に感謝しているんだ。だからさ、何かローディナにお礼がしたいんだけど……」
「えっ、さっきのヴォトカの上にですか?」
 俺は頷いた。あれはほんの手土産だ。マンティスの彼女を持つ別の部署の後輩に聞いた。女に何かプレゼントするなら、花束とか手土産とかを用意しろと。ただ、それをメインにしてはいけない、とも。
 ウォッカのグラスを手に取り、ローディナは少し考えこむ。ちなみにボトルの1/3がすでに空いているが、ほとんどローディナが飲んだ物だ。俺はあんまり酒に強くないので、オレンジジュースを入れてスクリュー・ドライバーにして飲んでいる。
 しばらく考えていたローディナだったが、やがて答えた。
「申し訳ございません、今は思いつきません。またあとでもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ。お手柔らかな物で頼むよ」
「ふふふ、ご安心を」
 とりあえず、ローディナへのメインのお礼は後回しとなり、和やかな食事は続くのであった。



 ローディナからのリクエストは何もないまま食事は終わり、風呂も済ませた。このままダラダラとしている理由もないので寝ることになってしまった。俺が先に布団に潜り込み、その後でローディナが潜り込んでくる。
 キキーモラのローディナがこの家にやってきて一ヶ月経ち、いろいろ慣れてきた俺だけど、これだけは未だになれなかった。女性と一緒のベッドに入っているということを意識してしまうと緊張してしまう。なので、俺は寝るときは大抵、ローディナに背を向けて寝る。そしてなんだかんだ言って仕事で疲れているのか、すぐに眠りに落ちることが多かった。
 今日もまた、すぐに眠ろうかと目を閉じる。あまり飲んでいないが、アルコールの影響ですんなりと眠れてしまいそうだ。その時、ローディナが声を出した。
「旦那様、もう眠られましたか?」
「いや、まだ起きているよ。どうした?」
「もし……もし普段の旦那様へのお世話のご褒美をいただけるのでしたら……」
 食事の時に俺が言った、お礼の件らしい。今言うとは何なのだろう? 訝しがりながら、俺はローディナに背を向けたまま続きを促す。
「その……ギュッて抱いて、ナデナデしてもらえますか?」
「え、えええっ!?」
 驚いて俺は思わず大きな声を出してしまう。酔いも吹っ飛んだ。今まで異性と付き合ったことなかった俺は当然、女の子を抱きしめた経験もない。何か高い物をねだられるより、ある意味ハードな要求であった。
 だけど、俺は女の子に慣れていないだけで、女嫌いなわけじゃない。そして何より、ローディナのリクエストだ。俺は寝返りを打ってローディナの方を向く。直ぐ目の前、30cmも離れていないところにローディナの顔があってドキリとした。脚とかに至ってはほとんど触れ合っている。
 闇夜の中で、ローディナの目が期待に輝いている。自分でお礼をしたいと言って彼女にここまで期待をさせておいて、それをふいにするのはナシだろう。
 緊張でガチガチだったが、俺は両腕を伸ばした。片腕は首の下に通して後頭部を抱き、もう片腕は背中に回す。そして、頭をゆっくりと撫でた。髪は頭頂部側は髪の毛のようにさらさらとしているが、先っぽの方に行くにつれて犬などと同じように、ふかふかとした感触だった。不思議な感触だったが、悪くない。むしろ心地いい。
 撫でられているローディナの方も気持ちいいのだろうか。うっとりと目を閉じて俺にされるがままにされている。尻尾が布団の中で振られ、背中に回っている俺の手を何度も撫でた。
「あの、その……尻尾も撫でた方がいい?」
「ええ、お願いします……あ、引っ張らないでくださいね。それは痛いですから……」
 気をつける、と言って俺は尻尾を、覆うようにしてつかみ、上下に動かした。もふもふとした毛並みがてのひらに感じられる。温かい手触りで、いつまでも触っていたいくらいだ。
「んっ……」
 気持よさそうな声をローディナは上げる。猫だったらごろごろ鳴いているかもしれない。彼女のリラックスした表情を見ていると、動悸は止まないもののリクエストに答えてよかったなと俺は思えた。
 とその時、彼女の腕が俺の方に伸びた。首筋を彼女の手首から生えている羽毛がかすめる。その手はさらに背中に回って、俺を彼女の方へと引き寄せようとした。二人の胸と腹が密着する。
『ちょ、ちょ……!?』
 俺は慌てた。胸が密着している……つまり、彼女のおっぱいが俺の胸板にあたっているのだ。三枚の布地が間にあっても、それは分かる。分かってしまうとどうしても意識してしまう。意識すれば……身体は自ずと反応する。
「旦那様……すごくドキドキしている……それに……」
「わーっ! ストップ! ここでおしまいっ!」
 俺は彼女を離そうとした。だがそうは行かなかった。女の物とは思えない力で抱き寄せられ、さらに身体を密着させられる。当然、身体に起きた変化で心臓以外の部分が、ローディナの身体に当たる。すなわち……俺の、アソコ。そう、俺は勃ってしまっていた。しかたがないだろう!? 年頃の女の子に抱きしめられるとか、そんな経験なかったんだ!
「旦那様のここ、すごく硬くなっている……」
「ご、ごめん……」
「なぜ謝るのですか? 私の身体に魅力を感じてくれているのだから、こうなっているのですよね? 女としてとても嬉しいです」
「そ、そうなの……うぇ、えああ……」
「そうです」
 俺の声が変になっているのは、ローディナがスウェットの上から俺のアソコを撫でたからだ。異性に大事なところを撫でられる。それだけで俺はどうにかなってしまいそうだった。
 でも……でもだ。俺とローディナは付き合っているわけではない。付き合っていないのに、こんなエッチなことをするのはどうなのだろうか。俺の頭の中で快感と背徳感がぐるぐると回る。
 何も言わなくなった俺を見て、ローディナの顔が曇った。
「ひょっとして、お気に召しませんでしたか? もしかして、私にこうされるのは嫌ですか?」
 ローディナの手が股間から離れる。さらに彼女は身体も少し離した。少し俺はホッとしたが、それ以上に残念な気持ちが沸き起こる。気持よかったのが消えたのもあるが、何よりローディナが悲しそうな表情をするのが辛かった。
「そうですよね……私は旦那様の都合なども考えずに押しかけてきた存在、しかも人間じゃない……ちょっと家事ができるからって、あつかましすぎましたね……」
 そうじゃない、そうじゃないんだ……! 思っても言葉が紡がれない。それでも気持ちは積りに積もっていた。
 気持ちが爆発して理性も背徳感も吹き飛ばしてしまったのだろうか。気づいたら俺は離れていこうとするローディナの身体を、片腕を張って妨げた。そのまま、ローディナに覆いかぶさるような体勢を取る。急な俺の行動にローディナは目をぱちくりさせた。
「だ、旦那様? どうなさったのですか?」
「違う、違うんだ……あの、その……」
 ローディナと過ごして一ヶ月になるが、やっぱり女性と話すと言うのは俺にとって慣れていないことらしい。言葉が迷子になる。挙動不審になっている俺だが、それでもローディナは何も言わず、待っていてくれた。
「突然押しかけられて驚きはしたけど、ローディナが来てくれて、俺は感謝しているし、うれしいと思ってる……それに、その羽毛とか尻尾とか、とてもかわいいと思う……」
 素直な感想を言うと、驚いた表情だった彼女の頬がさっと赤くなった。俺は続ける。
「だから、その……さ、ローディナにも喜んでもらいたくて……でも、ごめん。その……俺、何がなんだか良く分からなくなっちゃって……」
 言っているうちに少し俺は自分の気持ちが分かった気がした。女慣れしていないのもあるし、付き合ってもいないのにという気持ちもある。けど何より、ローディナへの感謝の気持ちを示そうとしているのに、いやらしい気持ちを抱いているのが嫌になったのだろう。現に今でも、こうして押し倒しているローディナの胸を見てみたい、揉んでみたいという欲求が俺の中にあった。でも、それはローディナに対するお礼の態度なのだろうか、そう思ったのだ。
 上手く表現できなかったが、人の感情に敏感なキキーモラのローディナだ。俺が言わんとしていることを察してくれたらしい。にっこりと笑い、下から俺を抱きしめてきた。また彼女の手首の羽毛が俺の首筋をくすぐる。
「いいですよ、旦那様……私もらしくなく、ちょっと早とちりしてしまったみたいです……それに、最初に言ったではないですか……『抱いて』って」
「ぐっ……!」
 そうだ。『抱く』には『エッチをする』って意味もあるはずだ。それを考えれば、俺はローディナにセックスすることを了承したことになる。穏やかそうに見えてもやはり魔物娘だ。そのしたたかさに俺は苦笑する。
 だが、漏れた苦笑はそれだけではなかった。なんて言ったって俺は彼女いない歴=年齢の男だ。早い話、童貞。風俗に行ったこともない。だからこういう時、どうすればいいか分からなかった。えーっと、AVではどうしたっけな……
「あの、ごめん……俺、こういうの初めてだからさ……どうしたらいいか分からなくて……」
「あら、大丈夫ですよ。私も初めてですが……母さまにいろいろ教わりましたから……」
「えっ!?」
 ローディナが母親にエッチなことを教わったことより、彼女が初めてということに衝撃を受けた。はたして初めてが俺でいいのだろうか……
 また迷いが生じた俺に従者は助け舟を出す。
「旦那様……まずはキスからしましょう……?」
「え? あ、ああ……」
 ローディナがそっと目を閉じて俺を待つ。ここは童貞だろうとなんだろうと、男から行くべきだろう。緊張でガチガチだったが、俺も目を閉じ、そのくちびるに自分のを押し付けた。



「はふっ、んっ、んふぁあ……旦那様ぁ……」
 キスの合間、吐息の合間にローディナが俺を呼ぶ。そして声の合間はにちゃっといやらしい粘液音と、俺とローディナの吐息が明かりを消した一人暮らしの1LDKのマンションの部屋に響いた。
 最初は軽く、押し付けるだけのキスだった。でもこれはほんのご挨拶だ。キキーモラは、そして俺はそれ以上のことを望んでいる。積極的に仕掛けてきたのはやはり、魔物のローディナだった。俺のくちびるを割って舌を挿し入れ、俺の舌を撫でる。俺は何もできずに、普段のおとなしい彼女のイメージとは異なる積極的な舌使いに目を白黒させるばかりだった。
 どのくらいそうされていただろうか。ローディナが俺から顔を離した。彼女の舌と俺の舌を銀色の糸がつないでいる。
「その……ごめん。俺からは何もできなくて……」
「ふふ……いいんですよ。無理せず、抱きしめてくれるだけでもいいんです。私は旦那様に仕える者ですから……旦那様を気持ちよくするのも当然のお仕事です」
 そうローディナは笑ってくれた。だが、彼女に主導権を握られてばかりと言うのもちょっと悔しい。俺は思い立って、彼女の胸に手を伸ばしてみた。そしてむにゅりと力を込めてみる。手触りは彼女が寝間着に着ているフリースのパジャマしか感じられなかったし、ブラの感触もあったけど、でもその奥でむにゅりと柔らかい物が潰れた感じがした。
「あんっ……ふふふ、おっぱいに触ってみたいですか?」
 ちょっとエッチな声を上げたローディナは、妖しく笑って俺を誘う。せっかく主導権を握ろうとしたのにまた握り返されている……だがそれにも気づかないくらい、俺は彼女の胸をはっきりと見ることができるという期待感に夢中になり、頷いていた。
 パジャマを脱ぐべく、彼女は上体を起こした。そして、ピンク色のフリースのパジャマの裾に手をかけようとする。その時、俺は思い立って彼女の手をとどめた。
「脱がしてあげるよ……」
「そ、そんな……! 旦那様の手を煩わせるわけには……!」
「脱がしたいんだよ」
 普段、コートの脱ぎ着をさせてもらっているというのもあるが、やっぱり自分の手で彼女を脱がせたいという欲望のような物もあった。察したローディナは裾から手を離し、軽く両腕を広げて俺の行動を待つ。人の服を脱がせるなんてやり慣れていないため、ちょっと不格好だったかもしれないが、俺は彼女のパジャマを脱がせた。彼女の上半身は、水色のブラ一枚だけになる。肩ストラップをずらして俺はそのブラも取り除いた。はらりとブラが力なくローディナの身体を滑り落ち、役割を果たさなくなる。そしてとうとう彼女の胸が露わになった。一ヶ月前、風呂場で少しだけ見えた胸が今、目の前にある。
「その……私の胸、どうですか? ちょっと小ぶりかもしれませんが……ハリと形は自信がありますよ?」
「……すごく、綺麗だと思う」
 そう答えながら、俺は彼女の胸に無意識のうちに手を伸ばしていた。実った手のひらサイズの果実の感触を楽しむ。力を込めるとむにゅりと指は柔肉の中に沈み込むのだが、ゴムボールのような弾力を持って押し返してくる。どんな素材にも真似出来なさそうなその感触に俺は夢中になる。
「んっ、はっ……そんなに私の胸がお気に召しましたか? 嬉しい、です……っ」
 俺に胸をもまれているローディナの顔は緩み、口が半開きになっている。その口から喜びの声と熱い吐息が漏れる。
「旦那様……揉むだけじゃなくて、その……先っぽも、いじってください……」
「先? ここ?」
「んっ! ひゃう!」
 胸の先端で尖っていた乳首を人差し指で弾くように触れてみると、彼女は身体をびくりと震わせた。
「ご、ごめん。痛かった?」
「いえ、そうではありません! むしろ……気持よくて……」
 痛くなかったら良かった。むしろもっとと言う合図ではないだろうか。AVでやっていたことを脳内で思い出し、俺は右手の親指で彼女の乳首を転がしながら、もう一方の乳首に吸い付いてみた。
「ふあ、あっ! だんな、さま……! んっ、んあぁあ!」
 乳首はかなり弱いらしく、彼女はひっきりなしに、吐息とは全く異なる声を上げる。その声をもっと聞きたくて、もっとローディナに感じて欲しくて、俺は夢中で彼女の胸にむしゃぶりついた。俺の舌や親指が乳首を転がすたびにローディナは声を上げ、頭を軽く反らせて身体を震わせる。
「ああ、旦那様……まるで、赤ちゃんみたいに……んぅう!」
 ローディナが俺の頭を撫でながら喘ぎ声混じりに言う。赤ちゃんみたいと言われて俺はちょっとドキッとした。そう言えば、俺は確かにローディナに甘え、母性のような物を求めていて、それが現われてしまったのかもしれない。ちょっと恥ずかしくなって俺は胸から顔を離した。ローディナが少し物足りなさそうな表情をしたようにも見えたけど、いつまでもおっぱいをしゃぶっているわけにもいかないだろう。ローディナもそれは分かっていたみたいだった。
「旦那様のソコ……とても苦しそう……」
 言われてみると、俺のスウェットの股間の部分はこれまでにないくらい、大きなテントを張っていた。ローディナの胸に触れ、エッチな声を聞いてたらこうなってしまった。
 ローディナが僕のスウェットの下に手を伸ばした。その間に俺は上のスウェットを脱いでしまう。ベッドの上で俺は生まれたままの姿になった。
「旦那様は楽にしていてください」
 そう言ってローディナは手で軽く俺の上半身を押して、俺を仰向けに寝かせた。何をするつもりかと俺が訝しがる前に、俺の腰のあたりでひざまずいている彼女が行動を起こす。上体をさらに曲げ、顔を俺の股間に近づけ……そしてそのまま、そのくちびるに俺の物を納めていった。
「ローディ……ううぅ!」
 驚いた俺の声はすぐに快感で漏れる声で中断される。温かいローディナの口内にペニスを包まれる感じはこれまで経験したことのない感覚だった。
「んっ、んっ……」
 咥え込むだけでは終わらない。ローディナはゆっくりと、その頭を上下させた。それにあわせて俺の幹に這わされているくちびるも動き、ペニスをしごきぬく。ぬるぬるとくちびるが這う感触に俺は声を漏らしながら身体を震わせた。
「んっ、ぷはっ……旦那様、気持ちいいですか?」
「あ、ああ……すごく気持ちいいよ……」
「良かった……母さまに教わり、ねぶりの果実を使って練習してきたかいがありました……もっともっと、気持よくして差し上げますね」
 そう言ってローディナは再び肉棒を咥え込んだ。さっきより頭が動くペースが早くなっている。さらに、いつの間にか片手の指が根本に添えられて、細かく上下に動いてしごいていた。それだけではない。もう一方の手は俺の胸に伸ばされており、乳首の先端をくすぐっていた。さっき、俺が胸を攻めた仕返しと言わんばかりに。しかし、指でくすぐっていない。手首に生えている羽毛でくすぐっていた。羽毛でくすぐられるそのぞくぞくとした快感に俺は身体を震わせる。
 いつの間にか彼女の下のパジャマがずり落ちていた。ブラと同じ色の、薄水色のショーツが顕になる。そのショーツに包まれた尻と、尻の上にある羽毛と尻尾が、ふりふりと俺を誘うかのように揺れていた。
 しかし、それを見て楽しんでいる余裕はない。先端と根本と乳首……3点を同時に攻められて、恥ずかしいくらいに限界が早く近づいてきた。
「あっ、ちょ、ローディナ……出る……出るから……!」
 射精の予感を訴えると、ローディナは一度俺のペニスから口を離した。しかし顔はほとんど離さない。
「大丈夫です。このまま私の口の中に出してください」
 そう言うなり彼女はまたペニスを咥えこんで頭を動かした。さっきよりずっと早い。彼女の頭の動きで髪の毛がさらさらと揺れる。
 口の中に出すのは申し訳ないと思うから止めてと言う意味だったのに、追い込みをかけてくるローディナ。その攻めに俺は為す術もなかった。
「うわあぁあ……ちょ、そんなにしたら……う、うぅうう!」
 出る、と宣言する間もなく、ペニスが膨れ上がり、そのまま勢い良く彼女の口内に精を解き放った。少し驚いたような声を上げたローディナだったが、口は離さない。
 びゅくっ、びゅくっと二度に分けて精液が出た。それでも彼女は口を離さない。クールダウンさせるかのように、尿道に残っている精液を絞りだすかのように、ゆっくりと頭を動かしてペニスをくちびるでしごきぬき、軽く吸いたてる。
「あっ、うっ……ローディナ……」
 その刺激で射精したばかりの俺の萎えかけた肉棒はすぐに硬度を取り戻す。再び固く張り詰め、さらに表面についた精液を綺麗に舐めとってから彼女はようやく口を離した。
「ごちそうさまです、すごく濃くて、美味しい精でした」
 どうやら飲んでしまったらしい。そう言えば魔物娘は男性の精を糧としているのだ。口内に出されて飲むことは抵抗ないし、むしろ好んでそうする。一番好むのは中に出されることらしいけど。
 そしてそれはローディナもそうだった。ベッドの上に正座している彼女はもじもじと身体をよじる。
「あの、旦那様……その……私、もう……我慢が……」
 俺は頷いて、さっきローディナが俺にしたように、そっとローディナを仰向けに倒した。脱がす前に彼女が濡れているかどうか、股間に触れてみる。そこは冷たく濡れていて、大きな染みを作っていた。
「すごく濡れている……」
「うぅ、恥ずかしいです……」
 魔物娘でもそこは恥ずかしいと思うらしい。両手で彼女は赤くなった顔の下半分を隠す。その反応にそそられながら、俺はショーツに手をかけて下ろしていった。ローディナも抵抗せずに、俺が脱がせやすいように脚を軽く動かして調節した。かくして彼女も俺と同じように、生まれたままの姿になった。
 彼女の身体は喩えようもないくらいに綺麗だった。肌は雪を思わせるような白さで染み一つない。身体のラインは家事をして回ってそれなりに引き締まっていて、それでいて女性らしい可憐さも残している。さらに目を引くのが、腰から生える羽毛と尻尾、手首の羽毛、そしてハーピーのような脚だ。人ならざるその部分は異形のおぞましさなどではなく、むしろ官能すら覚えさせる。その身体が、俺に触れてほしい、気持よくして欲しいと、発情してベッドの上で打ち震えていた。
 俺ももう我慢できなかった。そそくさと彼女の脚の間に身体を割り入れ、ペニスに手を添えてローディナのクレヴァスに先端をあてがう。彼女のソコはぬるぬるになっており、男を受け入れる準備が整えられていた。しかし、逆にそれが今の俺には仇となっていた。亀頭が秘裂のぬめりで滑ってしまい、なかなか入らず、入り口を探り当てられない。
「旦那様……? 私から挿れましょうか?」
「……頼む」
 自分の初体験が下になるというのは少し恥ずかしかったが、ましてや相手も初めてなのに上になってもらうとか男としてどうかとも思ったが、そこは生まれつきの床上手の魔物娘に甘えることにした。
 二人同時にゴロリとベッドの上で寝返りをうち、上下を入れ替える。ローディナが上体を起こし、膝をついた。ペニスを掴み、何度か自分でも位置を確認するかのように先端を秘裂に擦り付ける。そしてゆっくりと腰を落としていった。
「うあっ、あ……! ロー、ディナ……!」
「んっ! んくぅうう!」
 二人の嬌声が絡まり合う。俺のモノが、ローディナのナカに入っていっていた。俺は自分の下腹部に目をやった。半分ほど、俺のペニスが見える。その幹に何か濃い色の液体が見えて俺はハッとした。血だ。
「ちょ、ローディナ……血が……!」
「大丈夫です……ちょっとだけ痛いですけど……」
「む、無理するなよ!?」
「無理なんてしていませんよ……むしろ、気持よくて、もっと……んぅうう!」
 そう言っている間も彼女は細い首をのけぞらせながらどんどん腰を落としていく。ついに、彼女と俺の太腿がぶつかり合った。同時に俺のペニスの先端が何かにぶつかる。彼女のローディナの子宮口だ。俺たちは深い所でつながり、一つになった。
 俺は気持ちいいが、女で初めてのローディナは辛いだろう。不安になって俺は声をかける。
「大丈夫、ローディナ?」
「大丈夫、じゃないです……」
 やはり無理をさせてしまったのか。苦い後悔が俺の心に沸き起こる。しかしそれが股間から沸き起こってきた快感に押し流されそうになる。キキーモラが腰をゆっくりと動かし始めていた。
「ちょ……ローディナ?」
「気持よすぎて……大丈夫じゃないです……! んんっ、はぅうう! 腰が、勝手に……あああっ!」
 言うなり、腰の動きがはっきりとした物になった。フラダンスのようにローディナは腰を揺らす。彼女が腰を動かすたびに、彼女の媚粘膜と俺の剛直が擦れ、互いに刺激をもたらした。
「くっ……本当に痛くない? 大丈夫?」
「ああっ、はいっ! それは平気ですぅ……うぅう、ああぁん!」
 腰をうねらせながらローディナは答える。その声にはもう辛そうな物は混じっていない。純粋に、快楽を貪る声が上がっている。
「旦那様は……んくぅうっ! どうですか? 私のおまんこ……気持ちいいですかっ?」
 俺を見下ろしながら、ローディナは尋ねた。普段、生真面目な性格で家事をしている清楚なイメージのローディナがおまんこなどと淫語を口にしている。そして訊ねている間にも腰の動きは休んでいない。彼女のギャップと腰さばきは、俺に答えを口で言わせる前に、身体で答えを出させた。
「あっ、ああ……!」
「んっ……出てる……旦那様のが……中で……」
 腰の動きをゆるめ、ローディナは喉を反らせてうっとりと目を閉じる。彼女の膣内で俺の肉棒がぴくぴくと脈打ちながら精液を吐き出していた。それを彼女は性器で俺の精液を味わう。
 精の放出が終わり、彼女もそれを味わい尽くしたところで、ローディナは目を開いた。そして背中を丸め、俺の顔を覗きこむ。
「いきなり出しちゃうくらいに気持よかったんですね、うれしいです」
「うっ、うう……」
 一方、俺はうろたえるしかなかった。ほとんど暴発だ。相手を満足させる前に自分が一人勝手にイッてしまった。それがとても申し訳ない。しかもさっきはフェラでイカせてもらい、まだ俺は彼女に、胸を攻めた以外は何もしていないのだ。
 恥じ入っている俺の頭をローディナは撫でた。俺の顔を覗き込みながら彼女は慰めの言葉をかける。
「大丈夫ですよ。たっぷりと中に出してもらえて、うれしいです……それに……今度は……ね?」
 彼女の言わんとすることが俺にも分かった。今度は最初の通り、俺が上になってほしいというのだ。ここで答えなければ男が廃るだろう。
 俺は頷いて腕を伸ばし、彼女の身体を抱きかかえる。そのまま上体を起こし、座位の体勢に持って行ってから、ゆっくりと彼女を仰向けに寝かせた。ローディナも俺の首に腕を回していたので俺は彼女に引っ張られ、覆いかぶさるような形になる。
「じゃあ、今度は俺……頑張るよ。行くよ……」
「はい……んあぁあっ!」
 正直、自分の動きが彼女を満足させられるかどうか不安だったが、これで良かったようだ。グイッと腰を突き入れると彼女の口から嬌声があがった。
 一突き一突き、ローディナが痛がったりしないか様子を見ながら腰を動かす。腰を引くと彼女は熱に浮かされたような声を漏らし、突き入れると短く、大きな嬌声を上げた。俺が突き入れるたびに胸が揺れるのが淫らだ。
「うっ、くうう……」
 俺は歯を食いしばる。俺が腰を動かすことで彼女が気持よくなってくれているのは嬉しいが、腰を動かすのは自分を追い込む行為でもあった。腰を引くたびにローディナの中の柔肉のヒダがカリ首を撫で、突き入れるとそのヒダが敏感な亀頭を撫でた。童貞だった俺に魔物の膣は酷だったようだ。フェラと先の暴発と二回の射精がなかったら、やはりここで我慢ができなかったかもしれない。だけどその射精のおかげでなんとか耐えられそうだ。何より、ローディナを気持ちよくしたいという思いが俺を踏ん張らせた。
「ああっ! いいっ! 旦那様が、頑張ってくれて……んはぅう!」
 不意に、今までにないような声をローディナは上げた。どうしたのかと思わず腰を止める。その腰に彼女の硬い鳥の脚が巻き付き、腰の位置をロックした。
「ここっ! ここがいいですぅう!」
 どうやら彼女の膣内の一番感じるポイントを突いたようだ。そこに当たり続けるように、意識してか無意識かは分からないがローディナは脚で固定してくれたらしい。少動きづらいが、ありがたいサポートだ。
 細かく腰を動かしながら、俺は彼女のその敏感なポイントを採掘する。そしてせっかく下半身がこれ以上にないくらい密着しているのだ。俺は腕を彼女の頭の横に包み込むようにして起き、手で髪を撫でる。
「あ……だんな、さま……くぅうん!!」
 俺の愛撫に彼女はハッと目を見開くが、すぐに結合部から上る快感に、俺の下で身体を捩った。
「だんなさま、だんなさ、ま……! わたし、だんなさまにつつまれて……ふぅああぅうう!」
「ローディナ、気持ちいい?」
「は、はいぃい! 気持ちいいですぅ! 気持よすぎて、イキ、イキそうになってぇええ……!」
 どうやら彼女を満足させられそうだ。安堵しながら俺は背中を更に丸め、彼女の耳元でささやく。
「俺もイキそうだ……ローディナ、一緒にイコう……」
「はいっ、ああ、あああああっ!」
「うくぅ……!」
 互いにきつく抱きしめ合い、その状態でゆさゆさと身体を揺すりながら高め合っていく。部屋には二人の昂った声と、俺の太腿とローディナの尻が小さくぶつかり合う音が響いた。
「……ッ!」
 ローディナが我慢できなくなったようだ。身体にぎゅっと力が入る。俺を抱きしめているその腕にも、腰に巻きつけている脚にも。脚に力が入ったことで俺のペニスがローディナの膣の最奥まで導かれ、子宮口に密着させられる。それを合図にしたかのように、射精が始まった。絶頂に達した俺の身体は、どくどくと三度目とは思えない量の精液を、キキーモラの身体に種付けしていく。キキーモラのローディナは仕えている主人の精液をその絶頂に震える身体で受け止めるのであった。



「……とても、気持よかったです」
 事が終わってすぐ。二人生まれた姿のまま並んでベッドに横たわり、布団を被っている。ローディナはまだ快感冷めやらぬと言った感じでうっとりとした声でそう言った。
 一方、俺の気持ちはすっきりしていなかった。確かに気持ちよかった。ローディナのことを気持ちよくさせることもできたし、彼女のエッチな姿も見れて満足だった。だが何かが釈然としない。
「旦那様?」
 そんな俺の様子に、ローディナが心配そうに声をかけてきた。旦那様。そう呼ばれて俺はなぜ、もやもやとした気持ちを抱えているか気づいた。
 ああ、そうだ。今回のセックスは結局、ローディナに誘われてなし崩し的にしてしまった物なのだ。最初に俺が抱いた『付き合ってもいないのにセックスするのはいいのか』という理性の悩みは解決されていない。それに気づいてしまい、俺の気持ちはさらに落ち込む。
「だ、旦那様……! そんな顔されると、私まで何か落ち込んでしまいます。一体どうされたのですか!?」
「なあ……その『旦那様』と呼ぶの、もう止めてくれないかな」
「えっ!?」
 突然の俺の言葉にローディナの顔が凍りつく。二秒ほど間があり、そして洪水のように彼女の口から言葉が紡がれだした。
「い、一体どういうことですか、旦那様!? 私は使用人として失格、クビということですか!? もしかして、私に何か落ち度でもありましたか!? な、何かありましたら言ってください……! その……」
「ちょ、待った待った。そう言う意味じゃないんだ」
 慌てて俺は彼女の顔に手のひらを突き出して静かにさせた。そうして彼女は静かにさせてから、俺は大きく息を吸った。うぅ……緊張するな……でも言わなければならない。
「ローディナ……これからは旦那様じゃなくて、名前で……琢己って呼んでくれないか?」
「ええっ!? そんな、恐れ多い……」
「俺だって最初、ローディナを呼び捨てにするのは気が引けたさ。それにさ……」
 ニヤッと俺は笑ってみせる。緊張しているからかっこいい笑顔になったかどうかは分からないけど、とりあえずは笑顔を作れただろう。
「恋人を旦那様と呼ぶのはちょっと変な気もするし、俺はなんかむず痒い。名前で呼んで欲しい」
「えっ……」
 始めは何を言っているか分からないと言った調子でローディナは口をポカンと開ける。だが俺が何を言わんとしているかが分かると、みるみるうちに顔を紅くした。チャンスとばかりに俺は畳み掛ける。
「ローディナ……もう俺はお前を使用人とかとは思えない……お前が好きだ」
 もう俺はローディナなしでは生きていけない。それは彼女が俺の身の回りの世話をしてくれているから、というわけではない。精神的な面でも俺は彼女なしでは生きていけない。
 俺がここ最近仕事にモチベーション高く挑むことができ、早く帰ろうと思ったのはローディナの手料理が食べたいからというだけではない。彼女と一緒に食べるのが楽しかったから、それがあっただろう。そしてさっきのセックス。自分が気持よくなりたいだけなら俺は完全にローディナに奉仕させて任せることもできた。でも彼女を気持ちよくさせたいと思ったのはやっぱり、彼女が好きだからなんだと思う。
「付き合ってくれないか?」
「……!」
 最後に一息に言ってのける。俺の告白を聞いてローディナはハッと息を飲んだ。そして動揺したように目をキョロキョロと泳がせる。
俺の部屋はローディナの「あの」「えっと」「その」と意味をなさない言葉だけが浮かんでは消える。ややあって、ローディナは答えた。
「はい、私も……頑張り屋さんな旦那様が好きです。使用人なのに、私が来てからもっと頑張ってかっこ良くなった旦那様のこと、いつの間にかお慕いしてしまうようになりました。その……ふつつか者でありますがどうぞよろしくお願いします、旦那さ……琢己、さ……ん……」
「ああ……」
 名前に敬称がついたのはやっぱりこそばゆいけど、当分はこれでいいだろう。俺だって出会って数日は反射的にローディナを敬称付きで呼んでしまったわけだし。
 しかしローディナに名前で呼ばれて一人ニヤニヤしているところに、このキキーモラはとんでもないことを言ってきた。
「それでは旦……琢己さん。恋人になって初と言うことで……もう一回、シませんか?」
「……えっ?」
 人生初のセックス、それも好きになったこのキキーモラとのセックスはとても気持ちよくて何度でもシたいけど、さすがに今日は疲れた。でも彼女の頼みも聞きたいし……
 俺が迷っていると彼女はくすくすと笑った。
「冗談ですよ」
「何だ、冗談か……」
「うふふ……」
「たはは……」
 二人、布団の中でくすくすと笑いあう。ひとしきり笑いあったあと、ローディナが腕を伸ばして、その羽毛で俺の頬を撫でた。
「琢己さんが疲れているのは分かりますよ。そこは使用人ですからね。これからも使用人として、恋人として、どうぞよろしくお願いします」
「ああ……」
 俺の方も手を伸ばし、キキーモラの頬を撫でる。
 突如俺の家に押しかけ、身の回りの世話をし始めてくれた、使用人以上の使用人の俺の恋人……彼女が着てくれてから、まるで荒野のように何も変化がない俺の生活が激的に変わった。まるで、そこから一気に緑が、花園が広がったかのように。
 そんな彼女になら家も背中も、俺の心も何もかも預けられる。彼女は、キキーモラのローディナは俺にとってはなくてはならない存在だ。
「ずっと……よろしく」
 彼女の頬を撫でながら、俺は噛みしめるようにそう言った。
13/11/19 20:34更新 / 沈黙の天使

■作者メッセージ
昨日の更新を見て、その可愛らしい姿に射抜かれました、グワーッ!
ドーモ、沈黙の天使です。
さすがに一番槍は狙えないとは思っていましたが、だいぶ出遅れましたね。
更新されたての魔物娘ということで、キキーモラの説明を見ていない人でもこのSSを読めば分かるようなSSを心がけたのですが……もうすでに何人も投稿していらっしゃいますね。やっぱりもう私は用済みですかね?
で、でも……もう一つの目的、このキキーモラのローディナさんを皆さんに「可愛い!」「うちに来て欲しい!」「エロい!」「オカズにした!」と言っていただけたら、私としては嬉しいのです。はい。

それにしても、リアルの事情をうっちゃって2万文字もSS書いちゃったな……明日からまた大丈夫なのか、私?
あぁあ……うちのところにもキキーモラさんが来てくれないかな……
え、何ステラ……? そんな怖い顔して……

アッー♥

PS 途中に拙著のキャラをこっそり出しましたが気づいていただけたでしょうか?

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