読切小説
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奉仕と貴方とオレと本心
高校三年生ともなれば毎日が慌ただしいものだ。
日々朝からある学校の課外に出ては授業を受け、放課後にもある課外に出席しては帰ってから赤本を開く。机に向かって勉強を繰り返し、とれる休憩はごくわずかな物。それが大体の高校三年生の生活であり、受験生というものだ。
だが、両親が仕事で不在のうちではそうもいかない。登校の二時間前から起きては洗濯、料理、弁当作りに勤しんで帰ってきたら夕食、風呂掃除、洗濯ものの取り込みとやることは多々ある。そんな忙しい毎日では勉強だってまともにできるわけがない。
そんなオレの事を心配してか、ある時父親がお手伝いさんを雇ってくれた。



メイド服姿の『セルヴィス』さん。



特徴的な藍色の長髪に、滑らかだが青白い肌。血が通っていないのではないかと心配になるほど青く、だからと言って不健康なほど痩せているわけではない。
メイド服という厚手の生地でも隠せない見事な胸の膨らみにすらりとした腹部、スカートに隠れながらも艶めかしさを醸し出す臀部に伸びた両足。切れ長で大きな瞳にすっと通った鼻筋。ふっくらとした色っぽい唇に凛々しい眉。日本人離れした顔立ちだが親しみある微笑み浮かべたその容姿は誰もが美女というだろう。
ただ、なぜか若干湿っぽい。服や体が濡れているのではないが時折肌が濡れたように光っている。近くに寄れば湿り気を感じることもある。その湿気のせいか、時折背筋にぞっとした悪寒が走ることもしばしばあった。
まるで人ではない化け物のような、人間の姿に押し込めた人外の存在感。時折舐めるように向ける視線に何度鳥肌が立ったことか。もしかしたら食べられるのではないか、そんな不安を抱くことも多々あった。
だが、慣れてしまえば彼女は優秀でよくできたメイドさんだった。
ただ、よくできたメイドではあっても完璧とはいいがたい。





その理由の一つが―彼女の視線だった。





「ではこちらのスプーンをお使いください」

もう日常と化したある一幕。それは夕食を終えた時の事。
セルヴィスさんが手渡してきたのは銀色で細いシンプルな形状のスプーン。ただ、うちにあるものとはちょっと違う。ならこれは元から彼女が持っていたものだろうか。

「あ、ありがと。それじゃあ頂きます」
「…」

そうして食べ始めるのだが一つおかしなことがある。もういつもの事だが決して慣れるようなことではない。
すぐ隣に立つセルヴィスさんはいつもオレが食べる様子をじっと見つめていた。デザートを掬って、口へ運び唇へ触れる。その一動作を彼女はすぐ隣で穴が開くほどに見つめている。見つめすぎて睨んでいるようにも見えてしまう。
だが、隣にいるオレの双子の姉―黒崎あやかには目もくれない。うちにあったスプーンを使いながら食べている様子には反応せずどうでもいいと言わんばかりに見ていない。二つの瞳はただひたすらにオレだけを見据えていた。

「……あんた何見てんの?」
「失礼しました。ユウタ様のお好みに合う味付けだったか不安だったもので」
「は?あたしは?」
「アヤカ様のご注文には全力で対応させて頂きました。完璧だと思うのですが」
「まぁ、別に悪くないけど。でもなんで不安だからってそんなにゆうたを見てるの?」
「ユウタ様はそういったことはあまり言わない方ですので表情から読み取った方が手っ取り早いと思いまして」
「オレの事なら平気だよ。普通に美味しから大丈夫」
「それはなによりでございました」

オレの言葉と訝しげな視線を送るあやかに平然と言葉を返す。だが、二つの瞳は相変わらずオレだけを捕らえていた。
結局のところセルヴィスさんは先に食べ終わったあやかには一瞥することもなくオレだけを見続けていた。



それが、いつものこと。



他にも……たとえば風呂の時。





体を洗い終え湯に浸かり、さぁ出ようかと思って戸を開けようとするといつもその先にセルヴィスさんがいる。オレの出るタイミングが最初からわかっていた、というわけではない。彼女はただ単に脱衣所で待っているからだ。

「お体の方を」
「いや、拭いてるからいいよ」
「……なら、お召し物を」

そう言ってセルヴィスさんはいつもオレに下着と寝巻を差し出してくる。だが、オレは風呂から上がったばかりでバスタオルを巻いた姿のままだ。
それでも一切の感情を表にせず彼女はただ微笑み待ち構えている。ただ、うっすらと浮かんだ笑みと共に向けられた二つの瞳がじっとこっちへ向けられているのは恥ずかしいものがある。

「ありがと。着替えるから出ててくれない?」

差し出された下着と寝巻を受け取ろうと手を伸ばす。
が、いつも渡してもらえない。それよりも早く彼女の手は逃げていく。そのせいでオレの手は空中をただ掴むだけだった。

「…セルヴィスさん?」
「御着替えのご奉仕をしますので足を上げてください」
「いや、セルヴィスさん?」
「上げてください」

徐々に距離を詰めてきた彼女は寝巻を傍に置いて両手をわきわきさせている。心なしか青白い頬が赤く染まっているようにも見えた。
その姿に思わず師匠の姿が重なってしまう。最も、師匠なら有無を言わさず行動に移るのだが。



例えば以前オレが空手着に着替えるために更衣室に入ったときに潜り込んでくることが多々あった。



『師匠!いつもいつも何入ってきてるんですか!』
『違うんだよ!自分はただユウタが着替えるところを見たいだけなんだよ!』
『それだけなら…いや、堂々と言えばいいってもんじゃないでしょうが!』
『んふふ〜♪パンツ見っけ』
『師匠勝手に何してんですか!返して!!』
『ユウタはもっとこう、セクシーなパンツはこうよ。これとかおすすめだよ!』
『師匠、そのGストなんですか。下着返し…おい、仕舞うな』
『交換!交換ってことならいいよね?』
『いらないから返してください』
『それじゃあ等価交換!自分も使った下着あげるから』
『脱ぐな!』



それが師匠。
だが、セルヴィスさんは師匠と似ていても決して同じではない。
貞淑で静かで、メイドとして尽くす姿勢を貫いている。だが、その姿勢の中には確固たる意志があり、簡単には曲げられない意地がある。
最も、それ以上に何やら妖しい雰囲気も纏っているのだけど。

「出てってほしいんだけど…」
「大丈夫です。怖いことなど何もしませんので」
「怖いこと以前に異性の前で裸になりたくないんだけど…」
「私は大歓迎ですが」
「は?」
「お気になさらないでください。壁の染みでも数えてれば終わりますので」
「そこの壁滅茶苦茶綺麗に掃除されてるけど」
「頑張りましたので。では両手を上げてください」
「いや、セルヴィスさん」

ずいっと体を寄せてきたことで若干荒くなった呼吸音が耳に届く。後ろに下がるも風呂場への戸が壁となり行く手を阻んでしまう。
ここで出て行けと怒鳴れればいいのだろう。だが、年上の女性相手に強気に出られるわけもない。暴力に訴えるなんて当然論外だ。

「お着替えの方を…」

囁くような声色と共に目の前に迫るセルヴィスさんの顔。背けようにも片手が頬に添えられて動けない。背後の戸も開けば転がって危険だし、だからと言ってこのままの状態もまた危ない。
だが、オレの考えなど気にすることなく彼女は徐々に顔を寄せてくる。ふっくらとした色っぽい唇の間からは熱い吐息が漏れ出していた。いつも静かなに見つめてくる二つの瞳はやたらとぎらつき青白い肌と相まってどこか人外のような恐ろしさを、それと同時に人にはない蠱惑的な魅力を感じてしまう。

「ユウタ様、体から力を抜いてください」
「セル、ヴィスさん……っ」

高鳴る期待と捨てきれぬ常識と、腹部へと添えられた冷たい掌の感触に抵抗する気力をそがれ力なく手を下げたその時。

ばんっと、脱衣所の戸が突然開いた。

「ゆうた、歯磨きたいん…何してんの?」
「あ…あやか…」
「アヤカ様」

そこには我が麗しの暴君が虫けらを見るような目つきでオレとセルヴィスさんを見ていた。
オレの姿を見て、セルヴィスさんを睨みつけ、一つため息をついたかと思えば歯ブラシを取ってもう片手で彼女の髪の毛を掴む。

「出てけ」
「あいた」

特に感情の籠らない声と共にあやかに蹴り出されあやかもまた脱衣所を出て行った。



―それがいつもの事だった。





―そしていつもそれで終わる、はずだった。







「は?泊まってくる?」
『そ。今日は帰らないからご飯の用意もいいよ』
「そういうことは直接セルヴィスさんに言えよ」
『言ったところでゆうたにも伝わるでしょ』
「…ま、それもそうだけど」

電話越しに聞こえる不機嫌なあやかの声に眉をひそめる。かたかたと背後で物音がするようすから外から電話しているのだろう。

「んで帰りは?」
『多分明日。お姉ちゃんも大学って言ってたからゆうた一人だけかも』
「あー……お父さんもお母さんも今日は帰らないって言ってたからセルヴィスさんと二人だ」
『………』
「…あやか?」
『………変なことされないようにね』

その一言を最後に一方的に切られてしまう。声の聞こえなくなった子機を戻しため息をつく。今現在で夕食を作っているセルヴィスさんに伝えに行こうと振り向こうとしたその時だった。

「ユウタ様」
「ぅわっ!?」

突然背中にかけられた声に驚き跳ねてしまう。振り返ればほぼ間近、文字通り目と鼻の先にセルヴィスさんの顔があった。

「近っ」
「アヤカ様は今日はお帰りにならないのですね」
「ああ、うん。そう。だから今日の晩御飯はオレとセルヴィスさんのみでいいんだけど………近いよ」

オレの言葉に応えず彼女は顎に手を当て考え出す。藍色の長髪が揺れ腕が豊満な胸を押しつぶす。おそらく今夜の献立でも考えているのだろうが、その姿を眺めるだけでもぞくりとする。
年頃の男として二人きりは嫌なことではないが彼女は一人の女中であってお手伝いさんでしかない。父親もその目的のためだけに彼女を呼んでくれたのだ。だというのにあやかの想像する様な一線越えてしまうのはいただけないだろう。
なんて考える時点でオレはへたれなのだけど。

「ご両所様は仕事、お姉様もまた外出、アヤカ様は泊まり……となればユウタ様と私の二人きりですね」
「あ、そうだね」
「ユウタ様と私の二人きりですね」
「……何で二回言ったの?」

意味深な二度目の発言に怪訝な目を向けるがセルヴィスさんは涼しい顔で答えた。



「では、ユウタ様だけのとびきりの料理を………ご用意いたしましょう」










「いかがでしたか?」
「すごい美味しかったよ」

あれから用意されたのは普段と全く違うものばかりだった。
椅子にはカバーをかけ、ランチョンマットまで敷き、そこに並べられた料理はいつもの養殖や和食とは違う料理ばかりだった。
赤い色が特徴的な野菜の冷静スープやジャガイモ、玉ねぎと言ったものをオーブンに入れた重ね焼き。隠し味にミントの生葉を混ぜ込んだハンバーグ。どれも奇妙で見慣れぬものだがとても美味なものだった。
普段は慣れた料理ということで基本あやかの注文に応じていたがこんな変わった料理もまた良いものだ。

「では、デザートを」
「おぉ…!」

最後に持ってきたのはケーキだった。茶色の生クリーム、散らされたチョコレート。香しいカカオの匂い。スポンジとクリームの層の間にはイチゴが詰め込まれ、お皿には溶かしたチョコレートで模様を描いている。まるで高級レストランの一品のような見た目にオレは素直に驚かされた。

「それではどうぞ」
「ありがと」

いつものように手渡されたフォークを使ってケーキを切り、食べる。
口内に広がるのはまったりとした濃いチョコレートの味。生クリームを混ぜたのか随分とまろやかな甘さだ。べったりと張り付くしつこいくらいが好きなのだがこれもこれで結構いい。
ただし、いつものように間近で見つめてくるセルヴィスさんが気になってあまり味に集中できないが。

「……近くない?」
「いえ。どうぞ、私の事は気にせずにフォークをしゃぶるつもりで食べてください」
「…はい?」

しゃぶって、と言ったかこの女性。
淡々とした口調だったがフォークは飴ではない。飴細工でできているわけもない。そんなことする必要ないだろうと思って握り直すと彼女が一言。

「チョコレートにもこだわりましたので。フォークに付着した分までたっぷり味わってください」
「あ、そういうことね」
「ええ、例えば……失礼します」

オレの手からフォークを抜き取りケーキを切り分ける。一切れを突き刺すとお皿に描いたチョコレートの線を拭って差し出してきた。

「どうぞ、お食べ下さい」
「…いや、ならフォーク貰えるかな」
「どうぞ、このままお食べ下さい」
「いや、そのフォーク」
「お食べ下さい」
「……はい」

拒否させる気など全くないセルヴィスさんに促されるままおずおずと口を開き差し出されたケーキを食べる。

「…ん」

すると先ほどとは違う味覚が広がった。
苦い。
おそらくソースにビターチョコを用いたのだろう。今まで甘味に慣れた舌がすっきりとした苦味に塗り替えられ、次の瞬間まったりとした甘みが広がっていく。
一味足しただけだがこれなら飽きも来ないし何より慣れてしまうこともない。例えるなら西瓜に塩を掛けるのに近く、存分にケーキの甘味を味わうことができる。

「おいひいでふ」
「それはなによりでございました」

だがしかし、セルヴィスさんは口内からフォークを抜こうとしてくれない。不思議に思って横目で促すが彼女はじっとオレを、オレの口元を見つめたままだ。

「ぬいてくらはい」
「存分に味わってください」
「いぁ、もうのほってらいんれふが」
「しゃぶって下さい」
「…いぁ、らから………」

執拗に、オレの口内をフォーク一つで蹂躙する。既にケーキは飲み込んでいるというのに舌を弄り唾液を掬いあげて硬質な表面で歯茎をなぞって歯を鳴らす。その際決して痛みも不快感も与えぬように、その尖った先端で傷つけないようにと注意して。
その行為が何をしたいのかまるっきりわからない。まるでフォークと口づけでもさせようと思っているのだろうか。怪訝な視線を送るがセルヴィスさんは表情を変えない。ただ、いつの間にか後頭部へまわされた腕に必要以上の力が込められていた。

「ああ、涎が…」
「んぶっ」

あれだけ執拗にフォークを突っ込まれていたせいで気づけば唇の端から唾液が滴っていた。それを見つけたセルヴィスさんはフォークを引き抜くとどこに隠していたのかタオルを取り出し拭きだした。
それはもう先ほど同様で執拗に。

「動かないでくださいね」
「いや、これ動けなんんっ」

セルヴィスさんは唇を集中的に撫でていく。タオルの表面は柔らかく何度擦れても痛くはない。むしろ心地良さすら感じられる。だが、それにしたってあまりにもしつこい。
既に唾液は拭かれている。ケーキのクリームがついているわけではない。まるで唇の感触を指ではなくタオルで確かめるように何度も何度も撫でられる。
あと、息が荒い。耳を澄ますと明らかに乱れた息遣いがやたら気になってしまう。

「………ユウタ様」

タオルで唇を抑えたままセルヴィスさんは静かに囁いた。オレと彼女しかいない家の中。誰かに聞かれることもないというのに。
だが、それは耳元でとても小さく紡がれる。注意しないと聞き逃してしまうほどに小さく、か細い声でセルヴィスさんは言った。

「これとは別のものを…食べて頂きたいのですが」
「んん…?」

何とかタオルを押しのけると何を、と問うように視線を向ける。だが、彼女はその先を語ろうとはしない。

「…」

ヒミツです、そう言いたげに指と視線で示された。

「……あ、でもあやかにもないと。ほら、あいつ隠れて食べてるのが見つかったら怒るから」
「そのあたりはご安心を。これは…ユウタ様以外に食べて頂くつもりはありませんので」
「え、なにそれ。いいの?」
「はい。ご両所様にもお姉様にも、当然アヤカ様にもない―


―ユウタ様だけの……『ご奉仕』ですので」



その一言と共にぎらつく瞳に光が宿る。とても獰猛で本能が騒ぎ出す、危険な光を。
ぞっと走る悪寒を感じ椅子から立ち上がろうと力を込める。だが、それよりも先にセルヴィスさんは行動に移っていた。

「おわっ」

椅子に座るオレの上に、跨るように足を開いて腰を下ろす。ズボン越しとはいえ太腿に確かな重みと柔らかな感触が押し付けられた。
ずいっと寄せられる体。普段微笑んでいた顔は朱に染まり一目で正常でないことがわかる。

「ご奉仕ですので、拒否などさせませんよ」

いつもならあやかが間に入ってきて髪の毛引っ張るなり蹴りだすなりでセルヴィスさんを追い出してくれるのだが今日に限っていない。いや、あやかがいないこの日だからこそ彼女は行動に移したのだろう。
両親は帰りが遅い。
あやかはいない。
姉は大学に泊まってくる。
この家にいるのはオレとセルヴィスさんのみ。



「しっかりと…受け取ってくださいませ」



そう言って彼女の体が目の前で変化していく。
青白い肌がさらに青く。
細い足は液体のように溶けて。
伝っていく足に絡まっては膝から下が飲み込まれる。
そして、体の様々な部分から出てきたのは触手のようなもの。うねうねと蠢いて粘液のようなものを滴らせていた。
明らかに人ではない器官に色に感触に、その姿。

「っ……!」
「……恐ろしい、ですか?」

上から見下ろし威圧する―わけではなく。
どこか切なく遠慮がち。拒否されることを恐れてか弱弱しい声色に顔を上げた。

「セルヴィス、さん…?」
「私は、『ショゴス』です」

聞いたことはあるが、よく知らない。知っていることと言えば神話の中で出てくる架空の生き物で『てけりり』とか鳴くぐらいだったか。ちらりと見た画像では紫色の触手といくつもの目玉をぎらつかせていたが目の前の女性がそれと同じものだとは思えない。
…いや、足元まで崩れ絡みついてきた液状の体に触手といった人外の部分は似ているかもしれない。

「ぁあ、だから…」

若干湿っぽかったわけとか、最初に感じていた不気味な感覚はこのせいだったのかと妙に納得してしまう。
とりあえずあやかがいなくて本当によかったと思った。最悪この液状の下半身に乾燥剤ぶちまけられかねない。あれはそれぐらいやる。

「恐ろしいですか?」

再び紡がれる同じ言葉。
しかしその声色は震えながら、瞳も伏せられいつも浮かべていた微笑みは消え去っていた。
いつも見ていた綺麗な顔。ある日から毎日傍にいた存在。そんな今では当たり前のようにいる存在が人外だったという事実は衝撃的だろう。


―だが、人外だからと言ってセルヴィスさんが別人になるわけではない。


「ぜんぜん。恐ろしくないよ」

だらりと下げられた手の甲を指先で撫でる。ただそれだけの行為でも彼女ははっと顔をあげ、そして顔を綻ばせた。撫でていた手はオレの手に重なり合い、やや低くなった体温が溶け合っていく。
それは心地よいものだった。女性としての柔らかさと、人外としての体温と、甘い雌の香りと、いつも見慣れたその微笑み。

影も形も変わろうが、やはりセルヴィスさんはセルヴィスさんだ。

「ただ、恐ろしくないんで退いて欲しいんだけど」
「それは受け付けません」
「…」

頑固な部分は変わらないらしい。

「なら、聞き方を変えるけどオレの上に乗っている理由は何で?」
「それは私がこういうことができるからです」
「こういう、え?」

そう言ってセルヴィスさんは自分の腕を摘まむ動作をする。するとその指先にはなかったはずのスプーンが撮まれていた。袖の内側に隠せる大きさではないのにだ。

「これ、私の体の一部なんです。他にも今までユウタ様が座っていた椅子の上にあるカバーも私の体の一部です」
「え」
「ずっとユウタ様の体の感触が伝わってきて………あぁ♪」
「…」
「先ほども、こちらのフォークとなった私の一部をユウタ様に丁寧にしゃぶっていただいた時にはもう止まれなくなりました」

淡々とした口調ではあるもののとんでもない発言だった。色々な意味で。
口調に抑揚はないもののその顔は恍惚としている。若干師匠と似たところがあるのかもしれない。いや、ある意味ではあれ以上にぶっ飛んでるのかもしれない。
というか、セルヴィスさんの言葉通りならオレは今まで彼女に体をべたべたされるどころかキス以上の事すらしていたというわけか。彼女がひたすらオレを見つめ続けていたのは、口内にフォークを突っ込んでいた理由はつまり……そう言うことだからか。

「無論、フォーク以外にもできますよ」

既に隠す意味もないほど露わになった興奮状態で彼女は右手を差し出した。折れてしまいそうな細い指先に滑らかな肌。青色であることを除けば綺麗な手だ。
その指先から細い毛が生える。白く、細かく、びっしりと。何かと思えば徐々に指先の形が変わり、気づけば五本ともブラシへと変わっていた。

「お風呂の方まだでしたね。このようにしてたっぷり洗いながらご奉仕させていただきます」

毛先は柔らかくくにゃりと形を変える。その手をオレの首へと持ってきたかと思えば突然服の内側へと突っ込まれた。

「あぅっ」
「このように…ごしごし、と…」
「んんっ…」

柔らかなブラシの毛先が体を擦りあげていく。細かく数多に生えたそれは一本一本が肌を刺激しむず痒くくすぐったい感触を残していく。胸板を撫で、腹部を擦り、オレの体の感触を確かめるように動くとある場所に到達して、止まった。

「こちらがよろしいのですね」
「ちょっと、本当にやめ…ぁっ……ひ、ぅあっ!」

ぞりぞりとなぞりあげられる脇腹への刺激に思わず声が上ずってしまう。呼吸を乱して悶える姿をセルヴィスさんは愛おしそうに見下ろしている。身を捩って逃げようにも彼女は絶対にオレの上から退きはしないだろう。

「まだまだ沢山ご奉仕します」

満足したのかそれとも次の段階を欲したのかブラシが離れていく。服の襟が伸びてしまったがそんなことを気にする余裕もない。
セルヴィスさんが次に見せてくれたのはまた指先―ではなく掌だった。触手の一部が巻き付いたかと思うとそこから何かが徐々に落ちてくる。そして、気づけばだらりと垂らされたのは一枚のタオルだった。

「こちらも当然私の体です。沢山気持ちよくなって下さいね」

掌とくっついたままのタオルをズボンの間へと押し込んでいく。神経が通っているのか下着の中へと容易く忍び込み、そしてオレのものへと絡みついた。

「ぁっ!?」

人肌とは違うふわふわとした感触が敏感な部分に纏わりつく。きつくなく、さりとてゆるくもなく。僅かな隙間しかないはずの下着の中を柔軟なセルヴィスさんが刺激を与えてくる。さらにはズボンを履いたままという状態が密かにいけないことをしているみたいで興奮した。

「これなら痛くもありませんから身を委ねてください」

ズボンの上からタオルに包まれた股間を撫でまわされる。その圧力と締め付けてくるタオルの感触が堪らない。情けなく体を震わす様子をセルヴィスさんは嬉しそうに見つめ続けていた。

「あ、く…」
「存分にお出しください、ユウタ様」

やはり淡々とした口調だが興奮を隠せないのか掌に力が籠められる。タオルの方にも力が入り柔らかい布地がオレのものを締め上げてきた。先端を擦りあげ隙間なく纏わりつき裏筋を刺激しながら愛撫する様にうねる。そして、ズボン越しだというのに伝わる柔らかさと温かさがとうとうオレを限界へと押し上げた。

「んっ…!」
「あっ♪」

大きく脈打ち精液を吐き出した。下着につくことなく全てをタオルが吸収する。汚す心配がないのと一部とはいえセルヴィスさんの体を汚すという事実がさらに興奮に拍車をかけた。
射精を終え、引きずり出されたタオルにべっとりと付着した白濁液。それをセルヴィスさんは愛おしそうに見つめてると突然タオルを畳みだした。彼女の一部であるからか、そのまま体へと溶け込み戻っていく。なら精飲と同じことなのかもしれない。そう考えると……興奮する。

「ん、ぁ………これがユウタ様のお味なのですね…♪」

熱も匂いも味覚すらも取り込んだ彼女は感じているのだろう。うっとりとした表情を浮かべながら溶け込んだ掌を眺めている。小指から順に折りたたみ残っていた感覚を握りこむとセルヴィスさんは体を倒してきた。
布地越しに触れ合う互いの体。メイド服に収まった大きな膨らみが胸板で潰れ言葉にできない柔らかさが伝わってくる。

「あぁ…ユウタ様♪」

熱っぽい声と共に額が重なり、鼻が触れあう。至近距離で見つめあう気恥ずかしさから逃れようと瞼を閉じかけると彼女は唇に吸い付いてきた。

「んっ!」
「はむっ」

優しく甘く、唇を押し付けられる。音を立てて離してはまた慈しむように口づけられる。椅子に座ったオレの上で何度も繰り返すセルヴィスさん。応じるように顔をあげ、その唇に自ら唇を重ね合わせる。柔らかく、ほんのり甘く。情熱的な口づけを続けながら彼女はわずかに体を離した。

「ユウタ様……」

恥ずかしげに頬を染め、メイド服の裾をまくり上げてゆっくりと足を開く。既にどろどろに溶けているからかオレに跨りながらでも難なく動き、セルヴィスさんはそこを見せつけてきた。
隠すものは何もなかった。もしかしたら下着も彼女の体の一部なのかもしれない。晒されたのは青い肌に体毛のない滑らかな肌。ぴっちりと閉じた初々しい形。人のものではなくともそれは間違いなく女性の証だった。
そこからとめどなく溢れだした粘液は太腿を伝いズボンへと染み込んでいく。拭えぬほど滴った高ぶりを彼女は恥じることなく見せつけた。

「どうぞ、ご覧…ください…っ」

荒くなった息を吐きセルヴィスさんは見つめてくる。蕩けながらも真っ直ぐに見つめる瞳の奥には人にはない荒々しい獣欲が宿っていた。
ちろりと唇を舌が舐めていく。まるで捕食者の如く振る舞いの中にはメイドとしての姿を探すのは難しい。それだけセルヴィスさんも余裕がなく昂ぶっているということだろう。

「…っぁ」

ぞっとした。
人外の姿が怖いからではない。人間として、男として、奉仕という名の求愛を受けていることに。
背筋がぞわぞわと震えていく。目の前の女の姿と興奮に押し上げられるまま再び股間へ血が集まり硬さを増していく。

「…あ♪」

それに気づいたセルヴィスさんは嬉しそうに笑みを浮かべるとズボンの中へと手を差し込み下着ごと下げていく。
露わになったのは先ほどまで彼女が奉仕をしていた部分。見せつけられた雌の姿で既に硬く反りかえった男の証だ。

「ぁあ……♪これほど固くなられて」

熱っぽく呟いて彼女の手が伸びていく。細く可憐な指先はオレのものへと絡みつき感触を確かめるように撫で上げた。
表面に指を滑らせてカリ首をなぞりながら裏筋に這っていく。敏感な部分を本能的に知っているのかあまりにも的確な触り方だった。

「ん…っ」
「あ、は♪感じておられるのですね?」

先端から透明な粘液が漏れ出す。掬った指を潤んだ瞳で見つめている。指が触れ快楽が生まれ、それに応じて体が震えるたびにセルヴィスさんは喜んだ。
だが、本当の目的はその先。あと少しで到達する終着点。こんなところで止まってはいられない。

「それでは……私の、体を存分にご堪能くださいませ、ユウタ様」

青い肌を朱色に染めて興奮しながらもセルヴィスさんは腰を上げる。ちょうどオレの真上に来るように位置を定め、片手を添えながらゆっくりと腰を下ろしていった。
感じたのは何よりも熱く軟かな抵抗。徐々に飲み込み締め付けてくる肉の抱擁。それからぶつりと引きちぎる感触。そして、それ以上の溶けてしまいそうな甘い快楽だった。
飲み込まれていくとセルヴィスさんは眉をひそめて唇を固く結ぶ。突き刺される感触を堪えようと必死に耐えているのがわかる姿だ。それだけこの交わりが及ぼす快楽が凄まじいということだろう。

「あ、あぁ……はいり、ましたぁ…♪」

呂律の回らない口調でも交わり合った事実を嬉しそうに言葉にするセルヴィスさん。見上げれば蕩けた顔で愛おしげにこちらを見つめている。

「ゆうたさまと、ひとつ、に…なってます…♪」
「ん…うんっ…」

すがるように体を寄せて抱き合いながら応じるように頷くがそれ以上の事ができそうにない。
彼女が快楽を感じている。そうわかる程に体を震わせ甘い声を漏らしていがそれは、オレもまた同じこと。
ゆっくりとした動きだがじれったさを感じる前に果ててしまいそうだ。先ほど出さなければこれだけで絶頂していたかもしれない。そう思えるほど人外との交わりは―いや、セルヴィスさんとの交わりは気持ちがいいものだった。

「あ……あ…はぁ……ぁあ…っ♪」

熱の籠ったため息が吹きかけられる。互いに落ち着くまで抱きしめあいながら呼吸を整えあっていた。しかし交わり合った部分からは溶け合うような快楽が染み込むように伝わってくる。
交わり合った部分からはわずかに動いただけで卑猥な音が響いてくる。目を向ければセルヴィスさんの体なのか、それとも愛液なのかわからないぐらいに濡れている。ズボンも下着もびちゃびちゃだ。

「セルヴィスさん、大丈夫…?」
「は、ぃぃ…♪」

どう見ても大丈夫そうではない。それはお互い様なのだけど。
せめて負担を減らそうとゆっくり体を引こうとしたその時、がしりと、臀部を思い切り引っ張られた。

「ん!?」
「あぅっ♪」

椅子にもたれ掛っている姿勢で何も入る隙間はない。だというのに腰を押されセルヴィスさんとぶつかり合う。一体何が、そう疑問に思ったところで気づくのはあまりにも遅すぎた。
今座っている椅子の上にあったカバーは元々彼女の一部。ならば先ほどのタオル同様に自身の体へと戻ることも可能だ。
どろどろに溶けたセルヴィスさんの足の部分。そして溶けてくっついたカバー。挟み込まれたオレに逃げ場はなく、腰を引くこともままならない。
避妊という常識が頭の片隅にあるのだが快楽が容易く押し流していく。このままひたすらに溺れてしまいそうだった。
何とか抜け出そうと手を動かすとセルヴィスさんの腕とぶつかる。そのまま腕を伝っていくと彼女の手の平と重なった。

「あっ♪」

指と指が自然に絡み合っていく。互いの熱を溶かしあい、二人の境界線が消えていく。そんな風に感じるほど密着した掌をセルヴィスさんは見つめていた。

「あぅ、あ…♪」

恥ずかしそうに、でも嬉しそうに。
泣きだしそうで、だけど喜びを隠せない。
そんな表情を浮かべながら確かめるように指先に力が籠められた。

「ゆうた、さまぁ…♪」

切羽詰まった声色で喘ぎながらゆっくりと動き始めるセルヴィスさん。彼女はおずおずと体を跳ねさせた。メイド服越しに映る豊かな膨らみは動きに合わせて上下する。その様が何ともいやらしい。
お互いに服を着たままリビングで交わり合っている。普段集まることは少ないが家族で食事をしている空間で淫らな情事に耽っている。その事実に湧きだす後ろめたさがさらに互いを昂ぶらせていた。

「きもちっぃ、いいですか…っ?わた、しっの…中で、感じてくれてますかぁ、ああ♪」
「すごい、いいよっ…!」
「で、では…もっと、ぉ♪きもちよくなってください!」

情熱的な腰の動きときつい膣の締め付け。周りの肉壁が敏感な先端に纏わりつく。激しさこそないものの十分な締め付けに蕩けるような温かさ、筆舌しがたい柔らかさがオレへ捧げるように快楽を弾きだす。二人の境界がなくなってしまったかのような甘美な快楽だ。もしかしたらオレの体は既にセルヴィスさんに溶かされているのかもしれない。
虚ろな瞳だが真っ直ぐに向けられ、開いた唇からは力をなくした舌が垂れ下がっている。先からは唾液が滴り落ちオレの体を伝っていった。

「ユウタ、さぁ…♪あ、ああああっ♪ユウタさまっぁあ♪」

舌が回らないのかオレの名を呼ぼうにも喘ぎ声が混じりあう。それでも何かを伝えようとセルヴィスさんは必死にオレにしがみ付き、唇を重ね合わせてきた。

「んっ」
「んむぅっ♪」

先ほ初めてを済ませたとはいえあまりにも突然の事。目を白黒させていると彼女は舌をとがらせ唇の間へと押し込んでくる。
抵抗することもなく舌と舌を絡ませ合う。流れ込んでくる唾液も、吹きこまれる息も何もかも受け入れ飲み込んでいく。
上と下で交わり合い、体を隙間なく密着させ両足に至っては液状のセルヴィスさんに絡みつかれた状態だ。重なった掌が汗ばみ、青い肌にも玉の汗が弾けて飛ぶ。漂う汗の匂いが混じりあい、まるでお互いが一つに溶け合っているような錯覚すら覚える交わりだった。
その間も蕩けた足は纏わりつき密着した腰を押し付けられる。言葉を話す余裕もないセルヴィスさんはただひたすらに腰を動かし続けていた。



―それはどうやっても主に尽くす貞淑なメイドの姿には見えない。




―欲望に塗れ色香を惜しげもなく振り撒く妖艶な雌の姿だった。




上下左右に前後と腰を動かす度に愛液を飛び散らせいやらしい音を響かせる。
敏感な先端部にくっついてくる感触があった。近づけば吸い付き、離れようとすれば嫌がるように膣内が抱きしめる。周りの壁とはまた違う感触をもつそこへセルヴィスさんは誘導するように腰を跳ねさせていた。

「ぷ、ぁっ♪出していいですから…っ♪いっぱい、いっぱい…私の中に、ぃ♪」

射精するのをねだるようにセルヴィスさんは叫ぶ。肉と肉のぶつかり合う音を響かせながら打ち付けられる衝撃は徐々に力強さを増していく。それに伴い快楽は跳ねあがり、もう互いに猶予がないことを知った。

「わたしのっなかで、イって、ひぁ、ぁ…いってぇっ♪くだ、さいっ♪」
「セルヴィスさん、オレ、もう…っ!」
「や、ぁあ…も、ダメです、だぁ…あああああああああああっ♪」

体を上下に動かしていたセルヴィスさんが甲高い声を上げて動きを止めた。かと思えば大きく震え、目の前の二つの膨らみが揺れ動く。
次の瞬間いきなり強くなった膣内の締め付けに呼吸が止まった。瞼の裏に火花が散りオレはセルヴィスさんの膣内へと精液を吐き出していた。

「ぁああああああっ♪おなかの、なかぁ…ぁあ♪」
「んぁっ!?」

吐き出した精液をもっと欲しがるように膣内は強く抱きしめ、蠕動する。一滴すら残さない、むしろ魂すら絞り出されそうな強引で貪欲な締め付けだった。絶頂中の敏感な体が抵抗できるはずもなくオレは成すがままセルヴィスさんの膣内へ精液を捧げていく。

「あ…あぁ…あったかくて、いっぱい、はいってきて……♪」

あまりにも暴力的な快楽の波。絶頂へと押し上げて、押し上げたまま降りることすらできなくなる。呼吸をすることも忘れて重なり合った体を互いに強く抱きしめていた。このまま溶け合ってしまうほど気持ちよすぎる。だが、こうでもしないと体がばらばらに弾けてしまいそう。そんな快楽と恐怖の狭間で絶頂の波が過ぎ去るのを待っていた。

「あ、ふぁ……♪ん、ぁ……」

体から力が抜けオレの上に覆いかぶさったセルヴィスさん。肩を上下させながら顔をオレの首筋に埋めているせいで吐息がくすぐったい。身を捩って逃げようにも満足げに回された腕や溶け絡まった足がそれを許さない。
…なら、仕方ないか。
そんな風に考えながら体から力を抜き、握っていた両手を垂らして心地よい脱力感に身を浸す。体にかかるセルヴィスさんの重みに安堵を覚えながら小さく息を吐いた。
するとセルヴィスさんはゆっくりと顔をあげ離れた掌を自分の体に押し付ける。どうしたのだろうか、そう思って顔をあげると未だにぎらつく瞳が目についた。

「ユウタ様ぁ、失礼します……」

メイド服を摘まんだかと思えばその部分がざっくりと切れていく。指先が鋏のように変化しているらしい。
露わになったのは大きな乳房。体には無駄な肉がついていないのに大きく実ったそれは魅惑的な曲線を描いている。尖った先端部は硬さを持ち呼吸に合わせて柔らかそうに震えた。
部屋の明かりに照らされる一糸まとわぬ姿はあまりにも眩しく、美しいものだった。

「ユウタ様も…」
「え…?」

ただそれだけではない。オレの服にも指を這わせて引き裂いていく。こちらも鋏を使ったように一直線に裂けると床へ音を立てずに落とされた。
互いに肌の露出が増え、隠すものが一切なくなってしまう。だがその分触れ合う面積も増え、柔らかな女体の感触が伝わってくる。

「もっと……体が溶け合ってしまうくらいに、ご奉仕…してあげます…♪」

尽くすというよりも自身の欲望を混ぜ込んだ、メイドらしからぬ女の言葉をセルヴィスさんは囁いた。その言葉に、その声に、オレは答えるように再び掌を重ね合わせるのだった。


                      ―HAPPY END―











「あの……そろそろ離れない?」
「離れません。まだまだご奉仕は続けますので」
「そうはいっても流石にね、一晩中もしてたらその……人が帰ってきたらあれだから、あやかとかそろそろ帰ってきそうだから」
「大丈夫です。今はただ食事をしているだけではありませんか」
「いや、人の膝の上であーんしてるのは普通じゃないって」
「口を開けてください。あとできればしゃぶってください」
「んぶ、ちょっと、本当に待っんぐ」
「あぁ…♪ユウタ様の舌の感触が、堪りません…♪」
「あの、本当にそろそろ」

「ただいまー」

「っ!!」
「あら、アヤカ様」
「………………何その液体」
「私の体ですが」
「…」
「……何この触手」
「私の体ですが」
「……」
「あ、そ………………灯油、持ってくる」
「待ったあやか!待った!火事になるから待てって!!」
15/08/01 22:38更新 / ノワール・B・シュヴァルツ

■作者メッセージ
どうもお久しぶりです!ノワールです!
ちょっといろいろと忙しくなってしばらく空いてしまい申し訳ありませんでした

今回は新たに登場したショゴスさんのお話でした
命令しない彼とご奉仕するショゴスさん
一方的にご奉仕されてるせいでどうやっても拒否できませんね
今回セルヴィスさんは「奉仕」という大義名分を盾にやりたい放題やる暴走気味なメイドでしたw

ちなみに堕落ルートや他の現代編でもこれににた暴走メイド登場予定です

そして久々に師匠回想、およびお姉さん登場です
このお二方も別の物語で活躍させていきたいものですね

ここまで読んでくださってありがとうございます!!
それでは次回もよろしくお願いします!!

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