読切小説
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睨みますわよ
精霊使いになるという事は、永久に安住の地を得られないという事である。
ただそこに居るだけで魔界の濁った魔力を放出し続ける彼らは、常に移動し続けなければならない。

太陽が地平線の下に隠れそうな時刻。
森の中をひたすら進む青年、アゾットもそんな精霊使いの一人である。
「マスター、どうされました?そんな浮かない顔をなさって」
彼の隣で寄り添うように歩いていた精霊―イグニスのサラ―が、心配そうに声をかけた。
「ああ、いや……さっきからアティの姿が見えなくて。こんな湿気の多い所で消えちゃう事もないだろうし……」
彼はそう言いながら、視線をあちこちに移して、もう一体の精霊―ウンディーネのアティ―を探している。
「あ、彼女でしたら私達の後ろに居ますよ、ほら」
彼女が彼の背後を指差す。鬱蒼と生い茂った木々の陰。
まるで怖いものを見て親の後ろに隠れた子供のように、アティは木の後ろに身を隠して、二人の方をじっと見ていた。
「何やってるんだ、彼女」
彼女の身に何も起きていなかった事に安堵のため息を漏らしつつ、彼はつぶやいた。
「さぁ……アティ先輩、最近いつもああして私達の方を睨んでくるんですよ?もう怖くて怖くて……」
アティの方が先に契約したので、サラは彼女の事を『先輩』と呼ぶ。
そうこうしている内に、太陽は完全に沈み、森の中が徐々に闇に覆われてきた。これ以上歩くのは危険である。
水のせせらぎの音を頼りにして川を見つけると、彼らはその側に腰を下ろした。
川原から一抱えある大きな石を見つけると、サラがその上部を両手でさわさわと撫でる。すると、そこから焚き火程度の手ごろな炎が姿を現した。
「マスタぁ……」
アゾットが背負っていた大きな鞄から寝袋を取り出した時、サラが彼に声をかけた。
すすす……と音もなく彼の真横に寄り添い、甘い声を出す。
「体が、火照って仕方がないんです……私の子宮が、マスターの精液を欲しがってうずうずするんです……」
左腕を彼の首に回し、右手は自らの秘所に這わせ、耳元で囁く。強力な魅了の魔力が込められた声と、秘所から響くくちゅくちゅという湿っぽい音が、主人の鼓膜を震わせ、性的興奮を昂ぶらせる。
これではいくら大量の魔力を持ち、元素を操る力を持つ精霊使いであっても、抗う事はできない。アゾットは自分の心の奥深くで、情欲の炎が燃え盛るのを感じた。
彼は右腕でサラの腰を抱き寄せると、荒い息を漏らす彼女の口に、自らの口を押し付けた。
「ん……んちゅ……ますたぁ……」
自分が求められたという喜びに全身を打ち震わせながら、彼女は口付けを受け入れた。
二人の舌がさながら二匹の蛇のように絡み合い、口の間から漏れた唾液が糸を引いて地面に垂れる。
サラの口内は暖炉の炎のように暖かく、風の吹き抜ける夜の川原の肌寒さを忘れさせてくれる。
「れる……ふぅ、んっ……ますたぁ、下、脱いでください……」
唇を離し、彼女が言う。アゾットは無言で言われた通りにズボンを引き下ろした。
「うわぁ……」
今か今かとわくわくしながら凝視していたサラの目の前に、彼の勃起しきったペニスが晒される。
喜びと興奮で、彼女の全身を包む炎が大きくなり、揺らめく。
辺りを照らす赤い光が更に強くなった。
「マスターのここ、熱い……私の手より暖かいですよ?」
やんわりと両手のひらで愛する主人のペニスを包み込む。
優しい刺激にもかかわらず、アゾットは快楽で小さく声を漏らした。
「気持ちいいのを我慢する顔、とっても可愛いですよ」
サラがアゾットの眼前に自らの顔を寄せ、荒い息を抑えることなくつぶやく。
彼女の甘い息の香りに、彼の頭はぐらぐらする。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
二つの吐息が交錯し、二つの唇は再び密着した。
「んっ……れる……んんっ!」
キスを交わしながら、サラは器用に主人の裏筋を甘く引っかいた。
それがとどめとなり、アゾットはなすすべなく、彼女の手の中に大量の白濁をぶちまけてしまう。
「ぷぁっ、あーあ……マスター、駄目じゃないですかぁ……こんなにあっさり果ててしまって……」
名残惜しそうに彼女は唇を離し、彼女はつぶやいた。
粘っこく指に絡みつく精液を、うっとりとした目つきで舐めしゃぶる。
「ちゅぱっ、ちゅぽっ……もう、ザーメンは全部ここに出してくださいって、いつも言ってるじゃないですかぁ……」
彼女は両手の人差し指で、恥部を包む肉をくぱっと広げる。
アゾットは、彼女のひくひくとうごめき、とろとろと愛液を垂らす桃色の秘肉を見つめ、ごくりと唾を飲み込んだ。
再度の興奮。射精直後で萎えかけていたペニスが、再び硬さを取り戻した。
「あはっ、マスター、すごく興奮してる……もう挿入したくて仕方がないんですね……」
サラは腰を曲げて近くの木に両手をつけ、彼のいる方に腰を突き出した。
ぷるんと肉付きのいいお尻が、彼の眼前に晒される。
「私も、もう我慢できないです……どうぞ、マスターのお好きなように……」
すっかり理性を失った主人は、その言葉に誘われるまま、彼女のくびれた腰を力強くつかんだ。そして間髪入れずに乱暴に挿入。
「にゃっはぁ!マスターのちんぽきたぁ!」
たった一突きで、痺れるほどの快感が彼女の全身を駆け抜けた。
反射で小さく体を縮めこませ、膝が曲がり、足がガクガクと震える。
すっかり力の入らなくなった指が、かすかに木の幹にすがり付こうと引っかく。
「あ゛ーっ、あ゛ぁあぁぁー……ちんぽぉ……しゅごいぃ……」
挿入しただけで、サラの全身は主人のペニスが与える快楽で絶頂しきってしまった。
だが、最高潮まで興奮したアゾットが、それだけで終わらせるはずがない。
彼女のおなかの前に腕を回し、彼は力いっぱい彼女の上半身を持ち上げた。
「ひゃっ!」
サラが小さく悲鳴を上げる。自分の体を支えていた両足が宙に浮かび、上半身が目の前の木の幹にぺたりと密着させられた。
「はぁ……はぁ……サラ、動くぞ……」
「えっ……マスター、まだイったばかり……はにゃぁ!」
制止の声を彼は無視し、乱暴に腰を前後に動かした。
「あ゛っ!あっ!あっ!」
空気を押し出されるかのように、ペニスが奥に突かれるたびに、彼女は大きく声を漏らす。
アゾットは腰をつかむ手の力をさらに強め、彼女が落下しないように支える。
「う゛んっ!ふぅっ!ふぅぅんっ!」
彼女も自分の体がずり落ちないように、木の幹に両腕を巻きつけて、何とか体を支えていた。
彼が強く腰を突き入れるたびに、彼女の宙に浮いた両足がぶるんと揺れる。
――ああ……私、マスターのオナホに……精液を出すための道具にされてるぅ……
相手の事を一切考えない暴力的な腰のストロークに、サラの脳内は被虐的な幸福感に包まれていた。
彼女には誘い受けの気質があるのだ。
「はぁ!はぁ!ぐっ……うぅっ……」
しばらくすると、アゾットの荒い息の中に、うめき声が混じるようになった。
彼女は快楽と幸福感で頭がぐちゃぐちゃにかき混ぜられた状態でなお、本能的に彼の射精が近い事を悟った。
「はぁっ、ぐぅっ、締まるぅ……」
そして本能的に、彼女は膣肉をぎゅっと締め上げた。
ぞりぞりぞり……とカリが膣の肉ひだをえぐるようにこすり、子宮口に尿道口を押し付けた。
アゾットはぎゅっと強く両手をにぎり、体を前に倒して彼女の耳元に口を近付けた。
「出す……ぞ……」
臨界点を突破した白濁が、彼女の子宮に容赦なく注がれた。
「はにゃぁぁぁ!せーえききたぁぁぁ!」
舌をだらしなく垂らし、サラは歓喜と絶頂の声を上げた。
「……」
二人の性交を、ウンディーネのアティは川の水に半分同化しながら、黙って見つめていた。

翌朝。
「マスター!朝ですよー!」
太陽が昇り、森の小鳥達がさえずる頃。サラはアゾットが眠っている寝袋のそばに立ち、元気のいい大声を出した。
「うぅーん……」
彼は眠い目をこすりながら、のそのそと寝袋から体を引きずり出す。
「ふぁーあ。相変わらず元気だなぁ、お前は」
両腕を伸ばし、大きくあくびをしつつ彼はつぶやく。
「ふふん、私は炎の精霊ですからねっ。体温が高くて寝覚めがいいんですよ!」
わはは!と豪快に笑いながらサラは自信満々に答えた。
「それに比べて、もう一人の方は……」
彼はちらりと川の方を見た。
「……」
川の流れに逆らうように、三つの水でできた膨らみがあった。
水にほぼ同化している、アティの顔と胸である。
彼女は水の精霊であり、体温が低いせいなのか、早起きが苦手である。
「おーい、アティ。起きろー」
川辺に寄り、アゾットがその膨らみに声をかけた。
呼吸に合わせてわずかに上下する胸の動きが、ぴたりと止まった。
その直後、にわかに水が持ち上がり、それが女性の形に整えられた。
彼女の閉じた瞳が、静かに開かれる。
「……」
無言で彼を見つめる。
「お、おはよう……」
彼女の異様な様子に気圧されて、アゾットは少し震えた声で朝の挨拶をした。
「……」
だが、アティはいまだ黙ったままである。
「……おはようございます」
しばらくして、彼女はようやく挨拶を返した。
しかし、それはとても素っ気無いものであった。
その上、彼を見る彼女の瞳が、とても主人を見る目ではなかった。
まるで、汚物を見るような、冷めた瞳。
アゾットは、その理由を必死で考えた。
――何か彼女に悪い事をしたか?……いや、そんな覚えは一切ない。
――最近もちゃんと『契約更新』を済ませた。あの時はいっぱい愛したし、いっぱい愛してくれた。
――じゃあ、一体何で彼女はこんな冷めた瞳で俺を?
彼の頭の中がハテナマークでいっぱいになった。
そんな彼を尻目に、彼女はするりと彼の横を通り抜けてしまった。

「なぁ、サラ……」
昼。太陽が少しずつ元気になり、熱視線を送り出す頃。彼ら三人は森の中を歩いていた。
目的地は森の北にある街。
大陸の中では比較的大きな街で、旅で消費した物資を全て補充する事ができる。
彼らはその他、大陸内のいくつかの大都市を数年かけて回るのである。
その間に、小さな村や集落を回り、困っている人を助けたり、都市の珍しい物品と生活必需品を交換したりする。
精霊使いは、魔物を従えているために親魔物領に受け入れられ、精霊を使役できるために教会領からも歓迎される。そのため、関所をほぼ顔パスで通る事ができる。それ故に、大陸中を自由に歩き回る事ができるのだ。
三人の並び順は昨日と同じであった。
先頭を歩くアゾット。彼にぴったりと寄り添って、腕を絡ませるサラ。
そして、最後尾で二人をじっと見つめるアティ。
歩き出して数時間後、アゾットはついに耐え切れなくなってサラに声をかけたのだ。
「何ですか?マスター」
クリクリと大きな瞳が、愛するご主人様を見つめる。
明るく元気で、擦り寄って甘えるサラは、猫を思い起こさせる。
「俺、アティに何か酷い事したかな?」
切実な悩みを正直に述べる。
「ああ、確かに先輩、今日も絶好調で睨んできますね……」
二人でこっそり後ろを向くと、10mほど向こうの木の陰に、アティが立っていた。
暗い瞳が二人を見つめる。圧倒的な威圧感に驚き、二人は慌てて前に向き直った。
「何なんだよぉ……あいつ何であんなに怒ってるんだよぉ……」
「私だって分かりませんよぉ……三日ほど前からずっとあんな感じですよぉ……」
二人は涙目になりながらささやき合った。

夜。
三人は、太陽が沈む前に何とか街にたどり着く事ができた。
街の南にある宿屋の一室を借り、一夜を過ごす。久しぶりの屋根のある寝床である。
「……」
大きなベッドが二つ並び、床面積も広い。おそらくこの宿の中で一番いい部屋であろう。
だが、部屋の中は異様な緊張感に包まれていた。
部屋にいるのは、アゾットとアティの二人のみ。
サラは、宿の大広間の暖炉に入り込み、そこの炎と同化している。薪が必要なく、サラが火の管理をしてくれるので、宿の主人に大変喜ばれるのである。
アティは相変わらず無言で、機嫌の悪そうな表情をしている。
「なぁ……」
片方のベッドに腰掛けていたアゾットは、もう片方のベッドの隣でうじゅうじゅとうごめいているアティに声をかけた。
沈黙に耐えられなくなったのだ。
「……」
彼女は返事をしない。
「何で、最近そんなに機嫌が悪いんだ。昼に聞いたら、サラも知らないって」
「またサラって言いましたね」
彼の言葉を、アティはさえぎった。
「思えば、サラが来た頃からずっとそうでしたわね。『サラが』とか『サラに』とか。最初は新しい子が来たから、珍しくてそう言っているだけかと思っていたんですけど。最近はその頻度がもっと多くなってきて。私、もうあの子の名前を聞くのはもう耐えられませんわ……それに、今日も昨日も、ああやってサラといちゃいちゃして……あんなに腕を絡ませられて……もう、もう……私……」
そうまくし立てると、彼女は先ほどの様子からは想像できないほど素早く、彼の胸に飛び込み、彼の体を後ろに、ベッドに押し倒した。
「単刀直入にお聞きします。私とサラ、どっちが好きですか?」
「え……あ……うーん……アティも、サラも、俺の大事な精霊だから……」
彼の言葉に、彼女の顔はより一層険しいものとなった。
「私は、『どっち』と聞いてるんです。両方なんて言うのは駄目です」
アティはそう言って自らの体を前に倒し、顔を彼の顔の目の前まで寄せる。
「どっちですか?私ですか?サラですか?どっちが本命なんですか?どっちなんですか?どっち?どっち?どっち?」
「あ……う……」
鬼気迫る表情に、アゾットは声を出す事ができなかった。
それに、そもそも彼の中では、アティとサラは全く同レベルで、世界で同率一番の愛すべき女性である。
なるべく平等に扱うようにしていた。契約更新も一日おきで交互に行っていたし、旅をする時も三人横に並んで歩いていた。
だから、彼にとってどちらかを選ぶ事は不可能であった。
「そうですか。答えられないんですね……でしたら、ご主人様がもう、私の事しか考えられないようにして差し上げます」
その言葉と同時に、彼女の体がぐにょりと形を変えた。
下半身が溶け、ざわざわと彼の体を這い回る。
素早く彼のもがく両腕をベッドに押さえつけ、両足も水でできた縄で縛り上げ、完全に動きを拘束する。
「アティ!いきなり何をうむぅっ!」
非難の声を上げる彼の口を、彼女は自らの唇で押さえつけた。
「れるぅ……ちゅぅ、あぁむぅ……」
両手を主人の両頬に添え、舌を絡ませる。
拘束から逃れようとしていた彼のもがきも、キスを続ける事により、徐々に力を弱めていった。
水の魔法。相手の興奮を、人工呼吸の要領で流し込んだ水の魔力で抑え込んだのだ。
「ぷはぁ……落ち着きましたか?これから一晩中、じっくり私の体を教え込ませるんですから、そんなつまらない事で体力を消耗してはいけませんからね」
上半身だけ残ったアティが、彼の股間の上に垂直にのしかかる。
腰の断面から水でできた触手を出し、器用に、素早く彼の衣服を脱がしていく。
ものの十数秒で、彼は全裸になってしまった。
「あら、もうこんなに勃起なさって……」
アティはアゾットの体を見下ろしてくすくすと笑った。
彼女の視線の先には、自分の透き通った体から亀頭をはみ出して、先から粘液をにじませるご主人様のペニスがあった。
彼女は体を前に倒すと、彼の両腕を自らの両手でしっかりと押さえつけた。
役目を終えた拘束具は、溶けて彼女の下半身に移動し、両足を形成する。
お尻も膨らみを取り戻し、肉付きのいい恥部も元通りになった。
「では、ご主人様の困ったおちんちん、挿入して差し上げますわね……んっ」
アゾットの返事を聞かず、彼女は膣内にペニスを挿入した。
水でできた彼女の体は、粘液を自由自在に作り出す事ができるので、前戯を一切行わずにすんなりと挿入する事が可能である。
「うっ、くぅっ……」
「はぁ、あぁ!」
敏感な粘膜をこすられる刺激に、二人は同時に声を漏らした。
「あぁ!はぁ!あんっ、はぅんっ!」
挿入した直後から、アティは全力で腰を上下させた。
昨日はアゾットがサラを道具であるかのように容赦なく突いたが、今日はその逆である。
アゾットがまるで自分専用の張り型であるかのような、乱暴な腰振り。
ぬちゅっぬちゅっと接合部から流れ出る粘液の音が、部屋中に響く。
「ぐぅっ、くっ……」
「あぁ、もう、ご主人様ったら、そんなに苦しそうなお顔をなされて……もう出るんですか?出されるんですか?」
鼻先が触れ合うほどの至近距離で見詰め合う二人。吐息が交錯し、熱気に包まれる。
「だめだっ……もう、出る……」
「出るんですね?出ちゃうんですね?でも……だめです」
アゾットが射精するために腰を突き上げた時、アティは無常にも腰の動きを止めてしまった。
「まだ射精しては、だめです」
「そんな……どうして」
にたりと邪悪な笑みを浮かべ、アティは主人の泣きそうな顔を眺めた。
「出そうなの、終わりましたか?では、もう一度動きますね」
今度はゆっくりと、彼のペニスが暴発しないように、慎重に腰を動かし始めた。
先ほどよりも、粘液の奏でる音が大きくなっている。寸止めのせいで彼のペニスから我慢汁があふれ出たからだ。
「あはぁ、ご主人様のおちんちん、すごいですよぉ?さきほどより硬くて大きくて、私のおまんこの奥に、いっぱいキスしてますよ」
彼女は、彼の腕をつかむ手の力を強め、ストロークの幅を大きくした。
亀頭の先っぽ、抜ける寸前まで腰を持ち上げ、彼女のお尻の肉と彼の太ももの肉がつぶれるほど強く、奥まで腰を落とす。
そして、最奥までペニスを突き入れると、力いっぱい膣肉を締め付ける。
凶悪な、優しさを微塵も感じさせない快楽。前よりも早く、アゾットは限界を迎えようとしていた。
「うっぐぅ……出るぅ……」
「あら、先ほどよりも早いですね。それじゃあ、休憩です」
またもや腰を止める。とくんとくんとペニスは震えるが、射精には至らない。
「アティ……なんで……」
二度も絶頂をお預けされて、アゾットは涙目になりながら問いかけた。
「あら、ご主人様。そんなにお漏らししたいんですか?白くてこってりした精液、びゅぅびゅぅって、いっぱい出したいんですか?」
彼は精一杯うなずく。
「でしたら、サラに搾り取ってもらえばよろしいじゃないですか。ご主人様が大好きなサラに、おなかがパンパンになるまで、子宮に精液注ぎ込めばよろしいじゃないですか」
「で、でも……今日は彼女は一日中暖炉に……」
「でしたら、明日まで我慢すればいいことでしょう?」
即答であった。
「そんな、ここまでしておいて……」
「お漏らししたいのなら、私の事が一番好きだって言って下さい」
きゅんきゅんと、揉み解すように膣肉を締めたり緩めたりするアティ。
「私の事、世界で一番好きだって言って下さい。世界中の誰よりも……サラよりも、アティの事が好きだって、言って下さい」
水でできた肉ひだを自在に操り、彼の亀頭をさわさわと優しく刺激する。
「あうぅ……」
快楽が駆け巡るが、亀頭への刺激は射精にはつながらない。
「早く、言って下さい。そんなに苦しそうな顔をなさって、早く絶頂したいのでしょう?でしたら、一言……世界一愛していると、仰って下さいなっ」
そう言い切ると、彼女はぎゅぅっと膣の入り口を強烈に締め付けた。
尿道を封鎖し、頑として射精させないという意思表示である。
「うっ……うぅっ……ぐぅぅー……!」
彼の頭の中に、精霊二人の映像が駆け巡った。
以前の優しい、柔らかな笑みを浮かべるアティ。
ぎゅっと強く抱きついて、愛の言葉を恥ずかしげもなくささやくサラ。
彼の左右の腕を、それぞれ両側から自らの腕と絡ませる彼女達。
あの頃は、まさか今こんな状況になるなんて思っていなかった。
彼は、アティがここまでサラに嫉妬しているとは、夢にも思わなかった。
――どうして、こんな事に……
目から涙がこぼれる。
彼の体中を駆け巡る、人外の快楽。
次第に、彼の頭の中からサラの姿が消えていった。
「俺は……」
「はい……」
しゃがれ声でつぶやく彼の言葉に、アティは耳を傾ける。
「俺は……アティが……好き……だ」
「どれくらいですか?」
先ほどまでとは打って変わって、柔らかな微笑を彼女は浮かべる。
「世界で……一番……誰よりも……愛して、る……」
二筋、三筋、ぽろぽろと彼は涙を流す。
「私も、ご主人様の事、世界で一番愛しています」
直後、彼女は腰を勢いよく浮かせ、肉のはじける音がするほど、加速をかけて腰を落とした。
射精に導くための、最後の一押し。
「あぁ……ご主人様の精液……いっぱい出てます」
軽く目を閉じ、アティは精液が子宮壁を叩く刺激に酔いしれた。
二人は同時に絶頂し、同じリズムで痙攣した。

翌朝。
「先輩、せんぱーい」
眠っているアティの肩を、サラが指で叩いて起こした。
「あら、サラ。ずいぶんと早起きね」
アティはゆっくりと目を開けると、体を預けっぱなしであったアゾットの胸元から、上半身を起こした。
「私は火の精霊ですからね。って、あっ!いいなぁ、つながったまま寝てたなんて……」
アティの女性器が彼のペニスをくわえ込みっぱなしなのを見て、サラはぷくっと頬を膨らませた。
「でも、という事は、昨日は……」
「そう、大成功」
アティはにやりとほくそ笑む。それにつられて、サラも笑みを返した。
「ホント、最初に聞いた時は、私びっくりしましたよ。『病みレイププレイがしたい』だなんて……」
「だって、ご主人様、普段は優しいのに、契約更新する時はイケイケなんですもの……たまには可愛い顔も見てみたくなっちゃって……」
「そういえば、先輩が契約したばかりの頃は、先輩がずっとリードしてたんでしたっけ」
アティはこくりとうなずく。
「そうよ。一番最初に契約した時なんか、私が上になってあげてね。『お姉ちゃん、出ちゃうぅ!』ってすっごく可愛い顔してたんだから……」
「へぇ、ショタマスターですか……ゴクリ」
「お前ら……」
いつの間にか目を覚ましていたアゾットが、ドスの利いた声を上げた。
「あ……」
「マ、マスター……お、おはよう、ございます……」
二人の顔に冷や汗が垂れる。
「本気でアティの事心配したのに……まさかドッキリだったとはな……」
彼は握りこぶしを作り、プルプルと震わせた。
「ご、ごめんなさーい!」
「だめだ!今日は罰として契約更新なし!」
「そんなー!」
「あんまりですわー!」

結局アゾットはムラムラして我慢できなくなり、その夜は仲良く3Pをしたという。
10/11/04 01:55更新 / 川村人志

■作者メッセージ
上下関係のある描写は書くのが難しい

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