読切小説
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悪魔と思ったら淫魔だった。
現代日本。科学の発展したこの世界にも魔導を信奉する者は居た。
この俺、日野本浩平(ひのもと こうへい)もその1人である。

中世の魔女狩りを発端として、世界大戦で飛躍的進歩を遂げた科学の影響により、異端の徒である魔導士は急速にその勢力を弱めていった。

そんな中で、我ら日野本家は早々に移りゆく時代への対応を進め、新政府による魔導師の摘発から逃れていた。
そして表向きは神社の神主をしながらも、細々と魔導の探究を続けてきた。

俺も幼い頃から魔導については親を始め親族から散々聞かされてきたので10歳を迎える頃にはその筋に関しては相当に明るくなっていた。
もちろん魔導については学校の友人たちにも口外せず、俺は無事高校卒業までに至った。

その後は一人暮らしを始め大学に通いつつ、家に帰って魔導の鍛錬に勤しむ毎日を送っていた。
幸い、家は裕福だったので生活費には困らなかった。
そのため俺は満足に魔導の鍛錬に打ち込むことができた。

そして今ー


「必要な物は全て所定の位置に…魔法陣も…うん、問題ないな。」

散らかった四畳半の中心の床に描かれた奇怪な魔法陣。それを囲むように置かれたこれまた奇怪な供物たち。
蜥蜴の尻尾を始めとしたいわゆる黒魔術で使うような怪しげな物品ばかりが一定のルールで置かれている。

その前で俺は手にした古ぼけた魔導書を見ながら詠唱を始めた。

「“曰く、その者は悪しき存在である。曰く、その者、魔導を齎した存在である。我、その者を敬う者。信奉せしは魔、悪、混沌に沈みに末世の到来。暗転せよ、流転せよ。堕落こそ我が最上の望み。”」

詠唱が進むたびに魔法陣は黒き輝きを放ち始めた。

…なんだ、思ったより簡単だな召喚術というものも。かつては魔導とは違った流派の技であったと伝えられていたが、根底は我らの魔導と変わらぬと見た。
あとは何が出るかだがー

「“…求めに応じその姿を現したまえ!『邪婬』の悪魔よ!疾く、我の下へ!!”」

…ん?邪婬?


詠唱が終わり、魔法陣から一層強く放たれる邪光。吹き荒れる暴風に辺りに散らばっていた本や紙類が宙を舞う中、浩平は微動だにせず魔法陣の中心をジッと見つめていた。
そして、一瞬眩い輝きを放った魔法陣からボフン、という音と共に辺りに煙が立ち込める。

「…さて、蛇が出るか或いはー」

「いったーい!…まったくもう誰よ、こんな雑な呼び方したのは!」

期待を込めた目で見つめていた浩平の眉がピクリと歪む。

…?女の声?


そして晴れ始めた煙の中から現れたのは浩平の思い描いていたものとはかけ離れた存在だった。

「あ!貴方ね、このぞんざいな召喚をしたのは!」

「な!?お、お前が…悪魔?」

青い肌、漆黒の瞳、禍々しい翼。そこまでいい。…だが、なんだろうかこの激しく淫猥な格好をした女は。…いやまあ、美人なのだが。軽く一目惚れしてしまったのだが。

「って、そういう問題じゃない!俺は確かに『地の王』の召喚術を行使したはずだ!!なのに出てきたのはただ破廉恥な格好した女ではないか!?」

「なにその言い方〜、勝手に呼んでおいて随分な言い様じゃない?」

「はっ!もしかしてこんな形(なり)をしていても立派な地の王なのか?
…だとしたら失礼した。私の名は日野本浩平。科学などという邪道が蔓延る現代で魔導を信奉する魔導師の1人だ。いや、正確には魔術師といったところか。」

「ふーん。ま、そんなの私にはどうでもいいんだけど。」

ど、どうでもいい?!

「…確認したいのだが、貴方は『アマイモン』で間違いないのか?俺の目にはどうしてもただの淫魔にしか見えんのだが…。」

「ええそうよ、私の名はアマイモン。悪魔…っていうのもあながち間違いでもないわ。」

「そ、そうか…。」

…ほんとだろうか?どの文献にもアマイモンが女性であるなどという記述は見当たらなかったんだが。

「あ、今私のこと疑ったでしょ!?ひっどーい!私はれっきとした悪魔ですぅー!アマイモンですぅー!」

「…いや、こんな軽いアマイモンがいてたまるか!絶対嘘だろ!?お前、どっかのヤリマンビッチサキュバスだろ!?」

つい出てしまった俺の発言に、自称アマイモンの女はピクリと眉を顰めた。
あっ…なんか地雷踏んだ…?

「あのねぇ…私だって好きで呼ばれた訳じゃないのよ?そもそも貴方が勝手に呼んでおいてそこまで言われる筋合いないと思うのだけど…?」

眉をヒクヒクとさせながら言う女の周囲にただならぬオーラが漂い始める。オーラは魔力でできているようで身体から滲み出る魔力だけでも相当な量が溢れ出ている。

「あ…いや…ちょっと言い過ぎた。…うん、よく見たらすごい悪魔っぽい、いやもうほんと大悪魔って感じ!」

今更遅いとは感じつつも、俺は自称改め、モノホン『アマイモン』さんに弁明する。
しかしアマイモンさんは許してくれる気は無さそうだった。

「そんな悪い子には〜…お仕置きだぁーーー!!」

「ひゃあぁぁぁぁ!?」

いきなり飛び上がったアマイモンさんは両手をワキワキさせながら俺に襲いかかってきた。魔術師である俺はもちろん肉弾戦は専門外でありそれでなくとも悪魔である彼女に力で敵うはずもなく、難なく組み伏せられた俺は何故か衣服を剥ぎ取られた。

「お、おい!何を…!?」

「何って…お仕置きに決まってんじゃな〜い?」

お、お仕置きって…。

「その……お、お手柔らかに?」

「だーめ。それじゃお仕置きになんないでしょ。」

言いつつ既にまっぱになった俺の上にアモイモンさんがのしかかる。

「お、重っ!!」

「!な、なんですってー!?…どうやらこれは徹底的に躾る必要がありそうだわ。」

あ、アマイモンさん?なにやら目から良くない光を放ってますけど…?

「重くない!重くないから、痛くしないでぇ〜!!」

「そぉれ〜!」

「いやぁーーーーー!!」


このあとめちゃくちゃレイプされた。









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆









「ふーん…貴方はこの世界の数少ない魔術師の1人ってわけ。」

こってり絞られた俺は落ち着いたころにこれまでの経緯をアマイモンさんに語った。
以外に彼女は現代の知識に精通していて説明と言っても、もっぱら自分のこれまでの経歴をざっくりと語っただけで済んだ。

「そういう貴女が居たのは魔王が治める世界…ってことなんですけど。そこんとこもう少し詳しく教えてもらえませんか?優しい魔物ってのがいまいち想像できなくて…。」

対する彼女が語ったのは、現代日本に住む俺にはにわかに信じ難い世界のことだった。いや、魔法とかは分かるんだが、人間を愛する魔王とその…魔物娘ってのがどういう種族なのかが分かりづらい。

「そうねぇ…説明って言われても私もこの姿になって随分経つから、その前のことはあまり覚えてないのよねぇ〜。…まあ、強いて言うなら魔物娘はみんな人間が大好きで、彼女たちは何があっても人間の味方…ってことかしら。」

「それがいまいち想像できないんですが…まあ、今僕がいるのはよく見知ったこの世界な訳だし、その疑問については追々教えてもらうとします。…でも、一つだけどうしても聞いておきたいのが…。」

「…?」

「その…魔物娘って、みんな男の精が食料って…マジですか?」

「うん!マジはマジ、大マジよ!」

…なんでそんな嬉しそうに答えるんだこの人は。

「…ってことは、アマイモンさんも今迄…その…たくさんの男の精を絞ってきたんですか?」

俺は少し恥ずかしそうに言った。当然だ、こんな聞き方をすれば彼女は当然…。

「あら〜?ヤキモチかしら?」

…こう言ってくるに決まってるから。

「い、いや!ヤキモチではないですよ?…ただ、経験人数はどのくらいなのかなぁ、って。素朴な疑問です。」

目を泳がせながらあれやこれやと言い訳するのを、ニヤニヤしながら見ていたアマイモンさんはさらに意地悪な笑顔でこう言った。

「…何人だと思う?」

「……。」

「うふふ…。」

「…………100人、くらい。」

「…あらあら、そんなに尻軽に見える?」

え?

「じ、じゃあ!30人…?」

「んーん。」

「10。」

「…(フルフル」

「……5?」

なかなか当てられない俺にアマイモンさんは痺れを切らしたのかいきなり立ち上がって顔をずい、と近づけてきた。

「あーもう!…初めて!貴方が初体験よ!!」

「……またまた〜、ご冗談を。」

「いいえ、大真面目よ?」

「……。」

そ、そんなバカな…!!こんな美人で妖艶な彼女が、今迄一度も性交をしたことないなんて!!

「う、嘘だ!!だってあんなに手慣れてたじゃないですか!!それに挿入しても全然痛そうじゃなかったし!!」

「魔物娘は大体あの手のことは生まれた時から本能的に刻まれてるもんなのよ。悪魔から生まれ変わった私でも生まれ変わった瞬間に脳内に刻まれてるの。それに私たちは破瓜の痛みは快楽に変換されるように出来てる。生きるのに必要な精液だってサバトが作った模造品で代用してたし。はい、これで納得した?」

パン、と手を叩いて話を締めようとするアマイモンさん。
…いまいち納得はできないが、まあ、魔物娘ってのがそういう種族だというならまあそうなのだろう。
俺もこの件に関してはこれ以上突っ込まないことにした。…あんまりしつこいと怒りそうだし。

「…とりあえずの疑問は払拭…されましたけど。…なんていうか、アマイモンさんってサバサバしてますね。」

重要なところをあらかた聞き終えた俺は、素朴な疑問を投げつつ、先ほどアマイモンさんが注いできてくれたコップの水を一口含んだ。

「そう?…まあ、前身が地の王だからねぇ。無意識にドライになってる部分もあるかも。あ!でもでも!貴方を愛してるのは本当だからね!?」

「ぶーーーーー!!!?」

突然の告白に俺は思わず口内の水を全て吹き出してしまう。

「あ、愛してるって貴女…。」

「うん!大好きよ、貴方のこと!…あ、あれ?てっきり貴方も同じ気持ちかとおもったんだけど…違った?」

そう言って悲しそうな顔をするアマイモンさん。…反則です、その上目遣い。そんな目をされたらこう答えるしかないじゃないですか。

「…ぼ、ぼくも…アマイモンさんのこと、初めて見た時から…す、好き…ですけど。」

初対面の人に向かって何を言ってるんだ俺は!!…でもアマイモンさんは俺の答えを聞いてパァ、と明るい笑顔になる。…うーん、可愛いな。

「こうへい君!!」

「のわっ!?」

俺の名を叫ぶなりいきなり飛びついてくるアマイモンさん。…む、胸が当たってる!おもっきし当たってる!!

抱きついたまま俺の名を何度も呟いているアマイモンさんをよそに俺は、自分の胸部に押し付けられたその柔らかい乳房に、そっと手を伸ばす。…いや、ちょっとした出来心で。

ふにふに。

「…や、やわらけ〜(ぼそっ」

「ん?…ほほーう。」

即バレた…。禁断の柔らかさに手を伸ばし、あまつさえ揉みしだいてしまった俺の手をアマイモンさんは直ぐに捉えた。そして、再びニヤニヤといやらしい笑みを向けてくる。

「さっきしてあげたばっかしなのに…もうしたくなっちゃったの?」

「い、いや。つい手を伸ばしてしまいまして…。決して性交を望んでいるわけでは。」

たっぷりと五回も搾り取られた俺には最早、射精できるだけの精子が残されていなかった。これ以上絞られたら出血してしまう!!

「あら大丈夫よ、言ったでしょ?私たちは人間をいたぶるような真似はしないって。…貴方はまだインキュバスになってないみたいだから今日はこれでお終いにしといたげる。」

…き、今日は…ねぇ。

明後日までの生存確率を真剣に計算しだした俺を尻目にアマイモンさんはゆったりと立ち上がりキッチンの方へと向かった。

「な、何する気ですか?」

「んー?夕飯の支度に決まってるじゃない。…んーと、何があるのかしら〜?」

当たり前でしょ、とでも言いたげに言い放った彼女は次の瞬間にはうちの冷蔵庫を勝手に漁り始めた。

「夕飯まで作ってくれるの?」

「そうよ〜?それだけじゃなく、掃除に洗濯、家事は全般私がやっといてあげるわ。」

な、なんと!!よく出来た娘じゃないか!?

「…って!そうじゃないですよ!!もしかしてウチに住むつもりですか貴女!?」

それはちょっと困る、いや、大いに困る!!実家が裕福とはいえ学生の1人暮らしである俺には2人分の生活費などあるはずがない!!

そんな俺のことなどお構いなしといった様子でアマイモンさんは冷蔵庫から取り出した食材でせっせと料理を始める。…その姿はかなり手馴れたものだ。

「もしかして、生活費とか気にしてる?それならあんまり気にしなくていいわよ。私、精液以外食べないし。」

「精液しか食べないって…そんな俺のなけなしのタンパク質だけじゃ死んじゃいますよ!?」

「あら、心配してくれるのね!ふふ…大丈夫。私たち魔物娘は精液が主食だから。それだけで十分生きてられるのよ、ていうか逆に精液貰えないと死んじゃうし。」

そ、そういうもんなのか!?

「そういうもんなんです。私、基本は悪魔だから魔法でなんでも出来ちゃうから電気もガスも使わないし水道代も気にしなくていいわよ?…あ、でもお風呂は貴方と一緒に入りたいかな♥」

うん、なら問題なし!!

「…って訳にはいかないよなぁ。」

「?どしてー?」

「いや、悪魔と結ばれたなんて知られたら本家の方が黙っちゃいないはずなんだ。あいつら、魔導師なくせにそういうのにうるさくてさ、血筋の配合には細かいんだ。」

俺の実家、日野本家は世界大戦後に世界の魔術師と交流が途絶えた後、単独で魔術を極めてきた家系だ。もちろん自らの血筋を他の魔術師の家と交え取り込むことには余念がない。先月も俺の叔父に当たる人物が、最近交流が始まった魔術師の家系である海狸家の令嬢と政略結婚させられたばかりだ。幸い、と言っていいのか新郎新婦ともに美男美女だから大して歪な結婚とならなかったものの、過去には歪なものもあっただろう。

そういった一族が、リスクしか生まない悪魔との子を欲しがるはずかない。ましてや嫡男たる俺には絶対に許してくれないだろう。

「…ふーん、なかなか大変なのね貴方の家って。」

「何を他人事みたいに言ってるんですか!?俺と貴女の問題でしょ!?」

「ま♥!俺と貴女、って…私照れちゃう!」

きゃっ、と両手を頬に当てながら身体をくねらせるアマイモンさん。…のんきなものだ。そう俺が思っているとー

「じゃあ人間ってことにしとけばいいんじゃない?」

「そんな…どうやって?」

「変身魔法使えばいいのよ。…この世界の魔術師の目を欺くくらい、悪魔の私にかかればどうってことないわ。」

そう言って調理へと戻るアマイモンさん。俺は不安な顔のままその背をジッと見つめていた。
それに気がついたのか、あるいは気づいていたのか。アマイモンさんはため息混じりに念を押してきた。

「…貴方も心配性ね、大丈夫だって言ってんでしょ?…失礼ながら貴方の魔術の腕を見させてもらってたけどね、あの程度ならぶっちゃけ小指一本であしらえちゃうわ。」

な、なんと!?お、俺の今までの努力を、こうもあっさり…!
18年の俺の研鑽を一言で打ち砕いたアマイモンさんは少し申し訳なさげに補足する。

「まあ、この世界なら仕方ないことだとも思うわよ?だって、右を見ても左を見ても機械仕掛けで、魔法なんてこれっぽっちと見当たらないんだもの。そんな境遇でその実力なら大したものだと思うわ。」

慰めてくれてるのだろうが、その程度の言葉じゃ打ち砕かれた俺の心は癒せない。否、癒されてたまるか!

それかは終始頬を膨らませていた俺に、申し訳なさそうな顔をしながら食事を用意するアマイモンさん。気がつくとテーブルの上にはまるでレストランの料理のような豪勢な料理の数々が並べられていた。

「こ、これは…!?アマイモンさんが作ったの!?」

「アマイモンでいいわよ。…まあ、ここに並んでるのは私が作ったものね。」

それがどうした、と言わんばかりにアマイモンは首をかしげる。
…おおぅ…これが最近の悪魔の腕前なのか。

「…食べていい?」

「どうぞ♥」

「そ、それじゃ、いただきます…。」

恐る恐る、パエリアみたいなやつのエビを箸でつまみ口へと運ぶ。
そして咀嚼。

「っ!!うまい!!!!なんだこれ!ホントにエビか!?」

「うふ♥お口に合うようで良かったわ。」

「うまいうまい…!(ガツガツッ」

「ほらほら、そんなに急いで食べると喉に詰まっちゃうわよ?」

うまい…うますぎる!!なんだこの料理は!?魔法でもかかってんのか!?

「…失礼ね。掛けてないわよ、正真正銘、私の手作り!」

そんなバカな…!記憶にある限り今まで食べた中でダントツ一番の腕前だぞ!?
まさか悪魔にこんな特技があったなんて…。

「特技…ってほどでもないけど。魔物娘ならだいたいこのぐらいは料理上手よ?」

「マジか!?」

魔物娘…恐るべし。

「確かに、例外もいるけど…それでも大半の娘は結婚してからでも頑張って練習するんじゃないかしら?知らんけど。」

なんて一途な…!!俺はますます魔物娘という存在に興味が湧いた。いや、好きになったというべきか。目の前のアマイモン以外見たことない俺でさえもその種族には好感が持てた。

「…ちょっと。浮気したら許さないからね?」

「っ!!…さっきから思ってたんだけど…心、読んでる?」

「ええ、もちろん♥…だからぁ、ちょっとでもよからぬこと考えたら……あとは言わなくても分かるわよね?」

…お、お仕置きですか。

「せいかーい!だからぁ…貴方は私だけを見てね?」

「は、はいっ!!!!そもそも貴女以上に魅力的な女性を俺は見たことがない!…今までは。」

「ん?」

「あ、いや!他の魔物娘と会ったって目移りしたりはしません!絶対に!!」

「うふふ〜♥…約束よ?」

可愛らしい笑顔。…ああ、俺はこの笑顔に落とされたのか。

アマイモンの作った高級ホテル並みの豪勢な料理を食べ終えた俺は寝る支度を始めた。…それにしてもあの料理。ホントに家にあるものだけで作ったのだろうか?ロブスターとかあったような…?

「あれ?お風呂は?」

布団をしき終えたところでアマイモンは拍子抜けと言わんばかりにそう言った。

「いや〜、今日はなんだかんだで疲れたし明日入ろうかと。明日土曜だし。」

「ちょっとちょっと〜、それじゃ約束と違うじゃない!お風呂は一緒に…でしょ?」

そんなキュートな笑顔されても…

「いや、俺は入んないんだから一緒もなにもないでしょ。アマイモン、悪魔なんだから魔法でなんとかしてよ〜。」

あ、しまった!思わず素が!!

彼女については種族も含め色々と聞いて安全だというのは分かったし、食事までいただいて完全に心を許していた俺は思わずダラけた様子でそう言ってしまった。

それを聞いたアマイモンさんは怒るでもなく、ただぷくー、と頬を膨らませたままジト目でこちらを見ている。
時間にして10秒ほど、俺は案外呆気なく折れた。

「…はぁ、分かったよ。今準備するから待ってて。」

「やったー!!もう準備はできてるから、ほら!さっそく入ろう!!」

え!?いつの間に!?

「んー、貴方が夢中で私の料理食べてる時かな?」

あの時か…。いや、それにしてもよく出来た娘だ。うん、元男とは思えんな。

「え?私、もともと女だけど?」

「え、アマイモンって女だったの!?」

衝撃の真実。だが、驚く暇も与えられない俺は衣服を脱がされ同じく全裸になったアマイモンに手を引かれて風呂場に直行した。アマイモンの豊満過ぎる胸は走るたびにポヨンポヨンと揺れていて俺はそれに釘付けになっていた。

「さぁて!どこから洗ってほしい!?」

なぜか張り切っているアマイモンに一抹の不安を抱きながらも俺は「頭から頼む。」
と答えた。

「…ふむ、まあまずは頭からよね。それに楽しみは後に取っておくものだし♥」

何を楽しむつもりだろうか?俺は今後の俺の身体の安否がますます不安になりながらもアマイモンに身を委ねた。

メ○ットのシャンプーを手に適量取ったアマイモンは手で軽く泡立てた後、頭に手をやった。

「メ○ットって…案外可愛いの使ってるわね貴方。」

「う、うるさい!乾燥肌なんだよ…。」

恥ずかしいところを指摘されて赤くなる俺と、それをニヤニヤしながら見つめつつ、俺の頭をゴシゴシと洗うアマイモン。適度な強さでまるでマッサージするかのように洗われ俺はあまりの心地よさに思わず緩みきった笑みを浮かべていた。

「あら、そんなに気持ちいい?」

「ああ…サイコー…。」

「うふふ♥それじゃあ、そろそろ流すわよ?」

シャー、心地よい暖かさのシャワーで頭をすすぐ。そしてすぐさまメ○ットシャンプーの横に置いてあった、メ○ットリンスを手に適量取る。

「リンスまでつけてるんだ、えら〜い!」

「う、うるさい!癖っ毛なんだよ…。」

再び辱められた俺は顔を赤らめ、アマイモンがニヤニヤと見てくる。

そして、ある程度メ○ットリンスを塗り込んだアマイモンは、今度はそのままスポンジを手に取った。

「あれ?流さないの?」

「リンスって直ぐに流さないほうがいいらしいわよ?…知らんけど。」

…なんか曖昧な情報だなぁ。

「はいはい、今度はお待ちかねのぉ…身体を洗いまーす!」

別にお待ちかねではないけど…と言おうとして俺が振り向くと既に彼女はスポンジを泡立てていて、手をわきわきさせながらをこっちをニヤニヤと見てくる。

「な、なんだよ…。」

「ふふっ、べっつにー?…はーい!じゃ身体洗いますよー、そっち向いててくださいねー。」

不敵な笑みが気になったが、俺はとりあえず前へと向きなおる。するとー

むにぃ。

「…!!」

こ、この柔らかい感触は!!ま、まさか!!!!

「おや〜?どうしたんです、お客さん?」

「誰がお客さんだ!!ていうか今背中に当たってるのは…!?」

「ん〜?もちろん、私のおっぱいですよ〜♥」

お…!?

この世のものと思えない快楽に俺の逸物が勝手に飛び起きる。…うん、これは仕方ないと思う。

「おやおや〜?お客さ〜ん、これなんですかぁ?」

むんずとアマイモンは俺の逸物を鷲掴みにする。そして上下にぬちゃぬちゃと擦り上げる。

「ば、ばか!今日は終わりって…言った…だろ!?」

「んふふ、こんなの見せられたら我慢なんて…できなっ…はむ!」

「うおっ!?」

するすると前へと回りこみ髪をたくし上げた彼女はパクリと怒張した俺の息子を咥え込んだ。

「や、やめろって!おい!」

「んふ、んむ…じゅる!」

そ、そんな!舌で舐めまわしながら上下になんて…!!た、耐えられん!!

「で、出るぞ!!ぐっ!」

「んむ!?…んぐ、んぐ。」

本日6発目とは思えないほどの射精。しかし、アマイモンはごくごくとそれを飲み干した。

「ぷはぁ…美味し♥」

「はぁ…はぁ…風呂場での射精は…かなり、体力使うな。」

「ふふ、その割には満足そうね。」

「…当たり前だ。こんな…び、美人に抜いてもらって嬉しくないわけないだろ!」

「まあ!…こうへ〜い!!」

「うあ!?だから、抱きつくなって…!おい!」

ぎゅーと抱きついたまま離れないアマイモンに俺は、“仕方なく”、彼女の背に手を回して抱き返す。

「っ!!」

「…何も言うなよ。…は、恥ずかしいからな。」

「…ふふ♥このツンデレめ。」

…うるさい。



しばらく抱擁していた俺たちだったが、やがて肌寒くなってきて泡とリンスを洗い流した後、2人一緒に風呂桶に浸かる。アパートの風呂なので全然狭いのだが、俺の上にアマイモンを乗せることで難なく入ることができた。

俺の足の上にちょこんと座り足を伸ばすアマイモン。…こうやってみると案外小さいんだな、この娘。

「…うん、私、デーモンの中だと小さい方みたい。…だからこの胸と合わせるとちょっと不恰好になっちゃうんだ。」

風呂に浸かってからなんだか先ほどより大人しくなったアマイモンはそう言って俺の顔を見上げてきた。

「…気持ち悪い…かな?」

「っ!!」

…何を言うかとおもえば。この問いに関する答えは決まっていた。だが、素直に口にするのが恥ずかしい俺はー

「…ばーか、そう思ってたら好きとか言わないっての。」

と、そっぽ向きながら答えてしまう。
その答えにアマイモンはー

「…うん!そうだよね、つまんないこと言ってごめんね。…私も好きだよ。」

そう、顔を赤らめて言った。







先の問答での気恥ずかしさからか、終始無言だった俺たちは充分に温まり、風呂を出た。
身体を拭き終え、タオルで頭を拭きつつ俺は先に部屋へ戻ったアマイモンの元へ向かう。
すると、彼女はまたもちょこんと布団の上に正座していた。なお、パジャマは俺の予備の物を貸し与えた。

「…どした?」

「あのさ……一緒に寝ても…いい?」

そう言ってアマイモン用に敷かれた布団の端をくにくにするアマイモン。

…ああもう、なんでそうもしおらしくなるんだよ!!ギャップ萌えか!!

ここにきて俺はようやく気恥ずかしさから開放されたのか、素直に答えることができた。

「当たり前だろ?…ほら、先入れよ。」

自然な笑顔で俺は言う。ようやく聞けた素直な答えにアマイモンは今までで一番の明るい笑顔で答えた。(…まだ会って1日も経ってないが。)

「…うん!!」




アマイモンが先に布団に入ったのを確認すると、俺は消灯し一緒の布団に入った。もちろん1人用である俺の布団は2人で入るには2人で抱き合うような形で入るしかなかった。しかも、随分昔から使ってたのをそのまま実家から持ってきたため2人とも足先が出てしまう。

「…ちっちゃいね、この布団。」

「う…す、すまん。」

「ううん、いいよ。…この方がなんか貴方と一体になれてる気がして嬉しい。」

「う、うむ、そうか…。」

そうは言うもののかなり寒い。季節は既に秋から冬へと移り変わろうとしていた。そのため夜は結構冷え込むのだ。

俺はそっと、彼女に足を絡めてみる。

「!こ、こうへい?」

「…足丸めて、こうやって絡めておけば丸めても全部入れるだろ?」

顔を赤らめ、ちょっと戸惑っていたアマイモンだがやがて俺の言った通りに足を絡めてきた。…なんだかこいつさっきからやけにしおらしいが。

「…攻められるのには慣れてないのか?」

「へっ!?…う、うん。ていうか、男の人と一緒に寝るのって…は、初めてだし。」

…案外に初心だな。まあ、可愛いけど。…というかこれなら処女だっていうのもあながち嘘でもないのかも。

「え!?まだそれ疑ってたの!?」

「あ!しまった…!心を読まれてるんだった。」

「ひ、ひっどーい!!」

「ごめんごめん…!」

ぷっくりと膨らんだ頬、ぽかすかと優しく叩いてくるアマイモンに癒されながら俺は謝り続ける。

「…だからごめんって〜。」

「許さん!もうエッチしてやんないもんね!!」

「…それはアマイモンさんが困るのでは??」

ハッ!とした顔になってバツが悪そうに俯くアマイモン。…か、可愛い!!

「…なんかさっきから君、調子乗ってる。」

「えっ!?…そ、そうか?」

改めて彼女に指摘され自重する。

「…さっきまで私のことビッチだと思ってたし。」

「そ、それは誤解だ!」

「じゃあ…なによ?」

むくれた顔で上目遣い。…上目遣い好きだなぁ、アマイモンって。まあ、可愛いから許すけど。
笑って誤魔化そうとするも、アマイモンはジト目でずっと睨んでくる。
耐えかねた俺は仕方なく理由を説明する。

「…俺はさ、別にアマイモンが処女じゃくても好きになってたと思うよ?…そりゃあ、初めての方が男は嬉しいもんだけどさ。…俺が好きになったのはそこだけじゃないと思うんだ。」

「…なに?」

「上手く言えないけど…多分、俺は君の全部が好きになってしまったんだと思う。…だから処女とかそういうのはあんまり気にしない、かな?」

「…会って初日にエッチしちゃう娘だけど?」

「…好きだよ、そういうとこも。…俺も会って初日にこんなこと言って変かも知れないけど……君を…愛してる。」

…数時間前の俺が見たら、「何を言ってるんだこいつは…。」って言うだろうけど。

「…!!……全然、変じゃない…と思う。私も…一目惚れ、しちゃったし。」

「!!…俺も一目惚れだな、うん。あれは完全に一目惚れだ。」

「ふふ…私たち…同じ、ね?」

「ああ、同じだ。」

ちゅっ、と触れ合うほどのキス。いやらしくない恋人同士のキス。…うん、エッチな彼女も好きだけど、たまにはこういう恋人、っぽいことも…してみたい、かな。










その後のことは驚くほどスムーズに事が運んだ。

アマイモンが身の回りの世話を全て引き受けてくれたおかげで俺は大学の勉強に専念することが出来た。…魔術の鍛錬とかはあの日以来していない。…ん?何故かって?…あの日、彼女に打ち砕かれたものが未だ癒えきっていないからさ!

しばらくは彼女に甘えて食事は生活費を考えて俺だけとなっていたが、大学2年の夏、俺は彼女と一緒に食事をしたくてバイトを始めた。この歳になって初めてのバイトなもので初めは少し苦労したが、彼女のためと思えば苦労も快楽に感じることができた。…決してMになったわけではない。

そして、無事卒業した俺は就職先も決まりあとは…実家への報告のみとなっていた。


3年ぶりの実家。忙しくて帰れていなかった俺が突然、女を連れての帰郷したことで家中が軽くパニックになったが、アマイモンの見事な対応と情報操作でなんと親の許しをもらえた。ちなみに変装魔法も全く見破られなかった。…さすが悪魔。


そして更に6年の月日が流れた。






「ただいま〜。」

俺は今都内のそこそこ有名な企業でサラリーマンをしている。
帰宅はいつも7時頃。慣れこそはしたが、仕事終わりは決まって気怠い気分になる。そんな俺の心情を知ってか知らずか、居間のほうからパタパタという可愛い足音が聞こえてくる。

「おかえり!パパ!!」

俺の帰宅と同時に居間からかけ出てきたのは俺の長女。実家に挨拶にいってすぐに出来た俺とアマイモンの最初の子供である。最初というからにはー

「パパー!おかえりー!」

「パパー!お土産は?」

続々と現れる俺の娘たち。
あの日、どうしようもない根暗魔術師だった俺は、今や三児の父となっていた。
疲れ切った心身を癒してくれるのは家族との団欒だ。俺はにこやかな笑顔で最初に出迎えてくれた長女を抱き上げた。

「…いい子にしてたか?ほのか。」

「うん!今日はね、ママのお料理をお手伝いしたの!」

「ほう…今日はママとほのかが作った料理かぁ。楽しみだな。」

よしよし、と長女ほのかの頭を撫でる俺の足元にいつの間にか次女と三女がしがみついており、いずれも物欲しそうな顔で上目遣いしてくる。…こういうとこはママに似たのか?

「パパぁ、わたしも…。」

「あたしも!あたしもだっこして!!」

「ほらほら、順番順番。おりこうさんに待ってた子から抱っこしてやるぞ〜。」

「うん…まってる。」

「う〜…おねえちゃんがまつなら、あたしもまつ!」

「よしよし…そんじゃあー」

ひょいと長女を降ろした俺は、次女と三女、2人いっぺんに抱き上げた。

「わぁ…たかい…。」

「わーい!!たっかーい!!」

素直にキャッキャする三女に対して、次女は少し遠慮気味、というか怖そうにしていた。
…ううむ、真ん中ってどうしても内向的になってしまうのだろうか?


「あら、あなた。おかえりなさい。」

そう言ってキッチンから顔を出したのは俺の最愛の妻、アマイモンだ。手を布巾で拭きながらパタパタと娘たちみたいにこちらに駆け寄ってくる。
そしてー

「…ちゅっ!」

おかえりなさいのキスをされた。この事態に娘たちは三者三様の反応を示す。

「あわわ…!?」

ひたすらあたふたする次女。

「きゃー!!パパとママあつあつ〜♥」

末っ子のくせに妙にませた反応を取る三女。

「もう!恥ずかしいからやめてよ!」

お年頃なのか顔を赤らめながら抗議する長女。

そんな中、俺たちはぎゅっと抱きしめ合いお互いを再確認する。

「…ぐす。」

すると、急にアマイモンが涙を流し始めた。突然の出来事に俺は動揺を隠せない。

「お!?ど、どうしたアマイモン!何か…やなことでも?」

「ううん…違うの。…わたし……あなたに会えなくって寂しかったのーーー!!」

叫ぶが早いかアマイモンはより一層強く俺に抱きつく。

「おいおい、まさかそんなことで泣き出したのか?会えなかったのは午前だけだろ?…それにもう6年なんだし、慣れてくれよ。」

いやいやと首を横に振るアマイモン。…困った。これは早めになんとかしないと、朝、引き止められかねん。そうなれば仕事どころじゃ…

「うーん…そうは言っても仕事だしな〜。」

「ずずっ…ひくっ…うん、わかってる。…だから、今日はいつも以上に、は・げ・し・く、ね♥?」

おおう…やはり本家の上目遣いは破壊力が桁違いだな。仕事の疲れが一気に吹き飛んだわ!!

か弱い乙女の如く瞳をうるうるさせながらこちらを見つめてくるアマイモン、その肩を俺はがっしりと掴む。

「俺もだ、俺もお前に会えなくてすっっっっっっごい寂しかった!!…だから今日は…寝かせないぜ?」

「きゃっ!」

いつになくハンサムな笑顔で決めた台詞に、アマイモンもポッと顔を赤くして両手を顔にあてる。
…本来ならこの台詞は魔物娘の方が似合いそうなのだが、斯く言う俺も数年前にインキュバスへと変貌しており、精力なら彼女と互角かそれ以上にまで成長した。だからこんなこと言ってもぜんぜん問題ないのだ。

帰宅早々いちゃいちゃしていた俺たちだったが、くいくいと袖を引っ張る次女の言葉で俺らは我に返った。

「…おなか…空いた。」

「おおっと、すまんすまん!…アマイモン?」

「ええ、もうとっくに準備は出来てるわよ。…さ、みんなもお部屋に戻ろうね〜。」

「わあーい!ごはんごはん!!」

アマイモンの言葉に一目散に部屋に駆けていく三女。

「わー…い。」

その後をゆったりと追いかける次女。…いやほんと次女大丈夫か?

「ちょ、ちょっと2人とも走っちゃだめでしょー!」

2人を注意しながらその後を追う長女。…お前も結局走るんかい!

「やれやれ…いつもご苦労様、アマイモン。」

「苦労だなんて…あの子達といると毎日がお祭りみたいで賑やかだわ♥」

3人の娘たち、その背を穏やかな目で見守りながら俺はアマイモンに手を引かれて夕飯の待つ部屋へと走って行った。






15/11/02 22:52更新 / King Arthur

■作者メッセージ
*追記

本作は決して、某魔術師と紅衣の弓兵のパロディではありません!!
ええ、断じて違いますとも!!

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