読切小説
[TOP]
落武者が嫁になる時
 「主殿」

 耳に響く凛とした声に武者小路 宗龍(むしゃのこうじ そうりゅう)は深い眠りから目を覚ました。

 「む…ぐぐ」

 未だに眠る頭と重たい体を何とか動かし、宗龍は声の方へと顔を向けた。
 そこにいるのはいつも通りの彼女だ。
 生気の感じられない青白い肌、衣服と呼べる物は血のように紅い袴と胸を隠すサラシのみであり彼女の引き締まった身体を惜しげもなく晒す。右腕は人間の腕ではなく、骨の腕と化している上に鬼のような頭蓋骨をアクセサリーのように身にまとっている。しかし、それが恐ろしいというわけではなく彼女の魅力を引き立てる。
 彼女、静流(しずる)は人間ではなく、落武者と呼ばれる魔物娘であった。無念の内に命を落とした武士の屍に魔力が宿り生まれ変わった、海の向こうの言葉を使えば“あんでっど”と呼ばれる存在、それが落武者である。
 彼女達は死してなお武士道を貫き、主と認めた男性に忠を尽くす。一度死した落武者は決して死ぬ事の無い不死の戦士だが、近年のジパングでは戦らしい戦は無く、彼女達が戦場へ赴く事は少なくなった。代わりに治安を守る役人のような職に付く者が多く、成果は上々らしい。
 中には静流のように主の家で献身的に仕える落武者も少なくはない。
 静流は正座しながら、無表情で宗龍の顔を見下ろしてくる。もともと表情の少ない娘だ。何を考えているのか分からないが、少なくとも何か大事があったわけではないと分かる。
 いつも通りの平穏な朝だ。

 「あぁ…すまんな、毎朝起こしてもらって…」

 眠った喉から出る声は何とも耳障りだった。こんな声は他人には聞かせられない。
 静流はそんな事は気にしていないという風にスッと身を引いた。
 宗龍は体を起こし、ググッと体を伸ばした。眠っていた体が目覚めていくのが分かる。欠伸をすれば脳へ酸素が送り込まれ、霞んでいた意識が鮮明になっていく。
 宗龍は寺子屋で子ども達に学問を教えている。幼き頃に父に言われた「いずれ刀よりも筆が必要とされる時代が訪れる」という言葉を胸に今日まで学問に身を費やしてきた。
 彼が教えるのは魔物娘と人間の関係性だった。魔王の代替わり。それにより、魔物は人類の天敵から人類の友人、大切な家族ともいえる存在になっている。だからと言ってすぐに双方の溝が埋まるわけではない。お互いにまだ理解していない部分だって少なからずある。海の向こうの大陸ではそれが顕著だそうだ。その点、ジパングでは昔から妖怪と呼ばれる魔物娘とある程度の付き合いはしていた。
 これからは人間と魔物娘が手を取り合い、時代を築いていくだろう。そのためにもお互いがお互いを理解しなくてはならない。そのための力になれれば良いと宗龍は考えていた。
 そんな事を考えながら木枠の窓を見れば、朝日が優しく宗龍の顔を撫でた。
 気持ちの良い朝。そんな言葉が似合う朝だった。

 「おはようございます。主殿」

 「あぁ、おはよう」

 宗龍が完全に目を覚ましたのを確認すると、静流は深々と頭を下げた。
 そこまで硬くならなくても良いんだが…
 宗龍はそう思ったが、静流にとってはこれが自然体なのだろう。ならば、無理に止めさせる必要もない。

 「主殿、こちらを」

 静流は頭を上げると、傍らに置いてある小さな風呂敷を宗龍の前に差し出した。

 「?…これは?」

 風呂敷を受け取った宗龍は首を傾げた。その瞬間、静流の表情が曇ったように見えた。しかし、すぐにいつもの感情の無い表情へ戻ると口を開く。

 「主殿の御朝食となります」

 「……あ?」

 「…主殿の朝ごはんです」

 言い方を変えなくても意味は分かる。
 なんだか不穏な空気が漂うが、宗龍は風呂敷を開けた。
 中には二つの握り飯と沢庵が三切れ入っていた。

 「……」

 「お言葉ですが、主殿。至急お出かけの準備をした方がよろしいかと」

 「…今、何時だ?」

 「予定の時刻を大幅に過ぎております」

 静流の言葉に宗龍は飛び上がった。
 無表情というのも考えものだ。何か起こっても表情に出ないのでは分かりようがない。
 慌てて着替え、荷物と朝食を持つ。途中顔を洗うのも忘れなかった。無表情で黙々と準備を手伝う静流が恨めしかったが、元はと言えば起きる事が出来なかった自分が悪い。
 それに、静流がいなければさらに寝ていただろう。

 「行ってくるッ!」

 「いってらっしゃいませ」

 握り飯をほおばりながら、慌てて家を飛び出す宗龍を静流は深々と頭を下げて送った。
 ふと宗龍は空を見ると、向こうに黒い雲が広がっていくのが目に映った。嫌な予感が胸をよぎった。





 嫌な予感は的中した。
 あんなに爽やかだった空はすぐに鉛色の重たい空へと変わり、黒い雨が降り始めた。何処か遠くで雷鳴が轟いている。

 「また、このような雷鳴と共に現れるのが雷獣と呼ばれる魔物娘だ。彼女達は雷を身に纏い、男性を見つけると襲いかかってくるが…」

 すっかり変わってしまった空にため息を吐き、宗龍は子ども達を見回した。子どもと言っても全てが人間ではない。中には魔物娘もいる。人間と魔物娘が分かり合うためには学問のような知識だけでなく、共に過ごす経験も必要となる。そのために子どもの頃から魔物娘と過ごせばそれは一生の財産となるだろう。
 しかし、子どもと言うのはなかなか言う事は聞いてくれないものだ。宗龍の話を聞いている子どももいれば、居眠りしている子ども、窓の向こうで振り続ける雨に傘を忘れただのひそひそ話をする子どももいる。

 (まぁ、しょうがねぇよな)

 宗龍は頭をかき、軽いため息をついた。
 外を見れば確かに授業どころではない大雨だ。子ども達からすればそっちが気になって仕方ないだろう。だから、宗龍も責める気にはなれなかった。
 それよりもこの雨は静流と出会った日を思い出す。

 (あの時も…こんな雨だったな)

静流と出会ったのは約半年前。その日も今日みたいな海を引っくり返したような大雨だった。
 町外れの街道、旧戦場跡で雨宿り出来そうな場所を探していた宗龍はまるで巨人の足のように大きな木の下で膝を抱えて丸くなっている静流を見つけた。旧戦場跡という事で落武者がいるのは珍しくも何ともない。それを知っていた宗龍は特に驚く事も無かった。
 そう。それは自然な事だった。
 しかし、宗龍は何故か静流を放っておく事が出来なかった。
 膝を抱え、まるで捨てられた子犬のような姿の静流を見過ごす事が出来なかった。
 だから、

 「お前…俺の家に来るか?」

 そんな言葉が自然と口から出た。
 静流は何も言わなかった。ただ、無言で宗龍の顔を見上げると、ゆっくりと頷いた。
 今思えば何故あんな事を言ったのか、不思議で仕方がない。
 それから、静流は宗龍の家に住んでいる。
 何故、静流は宗龍の家に住んでいるのか?
 静流は決して本心を語らない。だから、静流が何を考えているのか、宗龍には分からなかった。
 ただ、宗龍の事を悪くは思っていないだろう。でなければ、毎朝食事を作ったり家事をしたりはしないだろう。
 そんな事を思ったのと同時だった。

 「ねぇ、あれ誰…?」

 窓を見ていた子どもの言葉に他の子どもが反応した。そして、窓の向こうを指さしひそひそ話がざわざわとした声に変わる。
 さすがに宗龍も気になり、子ども達が指さす方へ顔を向けた。

 「なッ…!」

 窓の向こう、黒い雨の中で傘を差しジッとこちらを見つめる見知った顔、静流がそこにいた。
 宗龍は慌てて教室を飛び出し、雨に濡れるのも構わず静流へ駆け寄った。

 「静流!どうした!?」

 彼女は基本的に宗龍の家から出る事はない。それは宗龍がそう命じたからではなく、彼女が基本的に家を守る事を考えているからだ。もちろん、宗龍と町へ出る事はあるが“一人”で外へ出る事は今まで無かった。
 雨に濡れる宗龍を見つめ、静流はそっと宗龍に傘を差して呟いた。

 「申し訳ありません、主殿…御昼食を…」

 そう言って宗龍に紺色の風呂敷を差し出した。

 「……あ、あぁ」

 そう言えば、朝貰ったのは朝食だ。昼飯の事はすっかり忘れていた。静流はわざわざ届けてくれたのだ。
 宗龍は何とも言えないむず痒い気持ちになった。
 この酷い雨の中、静流は届けてくれたのだ。

 「では……失礼、します」

 静流は頭を下げるとそのまま宗龍に背を向けて、歩こうとした。

 「ちょ、ちょっと待て!」

 宗龍は慌てて止めた。
 宗龍の言葉に静流は足を止めて振り返る。さすがにこの雨の中を一人で帰らせるのは気が引けた。

 「この雨だぞ。雨宿りぐらいしていけ」





 「であるからして、魔物娘と人間は……」

 「……」

 授業を続けても子ども達はそれどころではなさそうだ。
 それもそうだろう。自分達の後ろ、そこには静流が無言で座っているのだから。背筋を伸ばし、ビシッと正座して宗龍を見つめる静流に子ども達は居心地の悪さを感じているのかもしれない。
 無理もないか…
 宗龍はそう考えつつも授業を止めなかった。

 「この間も話したが、魔物が人間に友好的になったのは新しい魔王と代替わりしたからであって、もしも代替わりしていなかったら皆がこうして一つの教室で授業を受ける事はなかったかもしれないな」

 「せんせー!」

 ふと、一人の生徒が手を上げた。

 「何だ?」

 「せんせーは人間と魔物が仲良しって言うけど、海の向こうでは違うんですよね?」

 「あぁー…そうだなぁ」

 宗龍はそう呟くと天井を見つめた。

 「確かに未だに人間と魔物娘が仲良しって言えない国もある。でもな、最近では人間と魔物娘が仲良しの国も増えてきているんだぞ」

 「……」

 「人間と魔物娘の争いの時代はやがて終わるだろうな。これからはお互いが手を取り合って、助け合う時代が来るだろう。今のお前達のようにな」

 「……ッ」

 宗龍はそう言って教室をぐるりと見回した。子ども達は宗龍の言葉にお互いの顔を見つめ合う。
 静流は微動だにせずにただ、宗龍を見つめている。
 そして、終わりを知らせる鐘が鳴る。
 外を見れば、雨も弱まり霧雨へと変わっていた。

 「さぁ、今日はここまで!また、来週だ!」

 宗龍は手を叩くと授業を終わらせた。





 「今日は助かったよ、静流」

 家へと続く道、雨がパラパラと降る中で宗龍は静流に礼を言った。
 静流は宗龍の顔を見つめ、軽くお辞儀をすると顔を前へと戻した。
 宗龍は苦笑したがそれ以上は何も言わなかった。

 「……」

 「……」

 それからしばらくはお互いに無言だった。
 雨に濡れた地面がパシャリと跳ねる。周囲を小さい雨の音が覆い、沈黙を奏でる。空はまだ暗い雲が居座っていた。

 「…主殿」

 「ん?」

 静流が口を開いた。

 「…私と主殿が出会ったのも……雨の日でしたね」

 「あぁ…そうだな」

 ぽつりと呟くその言葉。それが重く感じた。
 宗龍は何も言わず、静流の言葉を待った。静流がこんな事を話すのは初めてだったからだ。
 静流はそのまま言葉を続けた。

 「あの日…主殿に出会えて……それから、私は平穏な日々を過ごしています」

 「……」

 「私は、生きていた頃の記憶はありません…ですが、このような平穏を味わった事は無いと思います……それは何よりも、誰よりも…私の身体が、魂が覚えています」

 「…そうか」

 宗龍は静流の顔を見た。静流は俯き、宗龍の顔を見ようとはしていなかった。前髪が顔にかかり、その表情を見る事は出来ない。

 「……主殿。一つ、私に教えていただけますか?」

 「何だ?」

 静流はそう言うと足を止めた。
 宗龍も足を止め、静流を見つめた。静流は俯いたまま何も言わなかった。かおは見えないが、何か考えている様子だった。それは今の自分の気持ちをどう言葉にすべきか、考えあぐねいているようだ。
 どれぐらいそうしていただろう。
 不意に静流が顔を上げた。
 その顔を見て、宗龍は驚いた。
 彼女は泣いていた。
 雨粒かと思ったが、それは紛れもない涙だった。

 「何故、主殿は……あの日、私に声をかけてくれたのですか?」

 「……!」

 初めて、宗龍は静流の心を聞いたような気がした。
 そして、それは宗龍にも分からない事だった。
 何故、あの日俺は静流に声をかけたのだろう?

 「あの日…主殿に、主殿に……ああ言ってもらえて私は…嬉しかったのです」

 静流の言葉に宗龍は胸を殴られたような衝撃を受けた。
 嬉しかった?
 それは想像していなかった。
 何故?

 「私は…一度死んだ身です。それが何の因果か、こうして生を受けています……しかし、私は独りでした……仲間も、何も無い…完全な無でした…」

 「……」

 「私は主殿に…救われました……貴方に…でも、でも…わ、私は…」

 そこまで言うと静流は唇をギュッと噛んだ。

 「私は…この恩を返しきれない…返す事が出来ないのです…!」

 「そんな事は…」

 「いえ…!自覚しています、私が…私が、役立たずである事は…!貴方に私は何もできない、迷惑を…かける事しかできない!」

 それは静流が初めて見せる感情の爆発だった。宗龍は今まで静流が感情の乏しい魔物娘であると思っていた。落武者はそういう種族であると思い込んでいた。
 だが、違った。
 静流はただ見せなかっただけで、宗龍が考えている以上に感情が豊かだったのだ。
 彼女は不安だったのだろう。その不安を言える相手はいなく、どうすれば良いか分からない。不安を抱えたままで今日まで過ごしていたのだろう。

 「わ、私は刀を握る事しか知らない!戦以外の事は何も分からない!我が身は!魂は!血に塗れている!そ、そんな私にッ!貴方は…温もりをくれた……なのに、私は貴方に恩を返す事が出来ないッ!」

 「静流…」

 「教えて下さい…主殿!貴方は…貴方は何故、私を…こんな私を…」

 それ以上言わせたくなかった。
 だから、宗龍は静流の手をとり、そのまま抱き寄せた。

 「あ…」

 「すまん…すまんな、静流」

 宗龍は静流を抱き寄せて初めて分かった。
 震える小さな肩、見せなかった本心は強くはない。彼女も“女の子”なのだ、と。
 そんな当たり前の事にすら気が付けなかった宗龍はふがいなく感じた。

 「俺は…お前の事、何も分かってやれなかった。お前の不安を理解してやれなかった」

 「…い、いえ、そのようなつもりは」

 「あの日…お前に声をかけた理由、だったか。今まで分からなかった…だけど、今なら分かる。言えるよ」

 「え…」

 あの日、雨の中。何故、静流に声をかけたのか?
 こんな簡単な事に気が付けなかったとは…

 「好きだ、静流。あぁ、一目ぼれだった」

 宗龍の言葉に静流の体がビクンと震えた。何も言わなかったが、静流は宗龍の背に手を回しギュウッと抱きついてきた。
 言葉はいらなかった。ただ、それだけで静流が分かったような気がした。
世界から一瞬、音が消えたような気がした。その中で妙に大きく、速く聞こえる心臓の音が全身に響く。恐らく、静流にも聞こえているだろう。
そうして二人はしばらく抱き合っていた。宗龍は静流の言葉を待った。焦る気持ちはあったが、何とか堪えて静流が自分の意思で、自分の言葉で返してほしかったからだ。
 やがて、

 「主殿…」

 静流の唇が動いた。

 「静流…」

 「…何と言えば良いのか、私には分かりません。ですが…きっと、こういうのは飾らない言葉が良いのでしょう」

 そう言うと、静流は顔を上げた。

 「私も…好きです」

静流の顔には笑みが浮かんでいた。それは雲の隙間から覗く太陽のように眩しく、暖かかった。






 「ふぅ…」

 湯船に浸かりながら、宗龍は息を吐いた。風呂場は質素な造りだが、充分な広さがあり開放感もある。こうして湯船に浸かり、何も考えない時間はまさに至福だった。

 「主殿…」

 「んー?」

 「湯加減はどうでしょうか…?」

 外から静流の声が聞こえる。
 あの後、お互いの気持ちを確認し帰路に着いた。言葉は無かったが、自然に手を繋ぎ時々優しく握ると握り返してきた。それだけで充分だった。
 家に着くと、とりあえず風呂という事になった。確かに雨で濡れ、冷えた体を暖めたい気持ちはあり、風呂は有難かった。

 「あぁ、良い湯加減だ」

 「ありがとうございます」

 静流の言葉は以前とあまり変わらない。しかし、声色は違う。どこか嬉しい、心が弾んでいるのが分かる。それにさっきお互いの気持ちを確かめ合った。

 (嬉しいもんだな、こういうのも)

 淡い緑色の湯をすくい、顔を洗うと宗龍の口から笑みが零れた。優しい香りが鼻腔を満たし、思考をほぐしてくれる。

 「あ、主殿…失礼、いたします……」

 そんなまどろみの中にいた宗龍は静流の言葉で現実に戻された。

 「なッ、しずッ!ちょ…」

 「…あぅ」

 風呂場の入り口、そこにいたのは薄い木綿布一枚で前を隠した静流がいた。引き締まった肢体はほんのり朱が差し、掌に収まりそうに無い胸はツンと上を向いている。キュッと締まった腰、それらを覆う青い肌は滑らかでうっすらと汗が浮かんでいた。恥ずかしいのか宗龍から顔を逸らしつつも、視線はチラチラと宗龍を捉える。

 「そ、その…お、お背中をお流ししようかと…よろしいでしょうか?」

 おずおずと上目遣いに聞いてくる静流に宗龍の理性は蒸発寸前だった。今にも襲い掛かりそうな衝動を何とか堪え、宗龍は無言で湯船から出るとゆっくりと座り、背中を向けた。

 「じゃあ…頼む、かな」

 「!…はい♪」

 静流は嬉しそうに返事をすると、宗龍の背中を前にして座り石鹸を泡立て始めた。背中を向けている宗龍は静流が見えない。しかし、心臓が妙にうるさく鼓動しているのが分かる。

 「では…失礼します」

 「…!?」

 静流の言葉と背中に当たる柔らかい感触に宗龍は口から心臓が飛び出るほどに驚いた。見なくても分かる。静流が手ではないもので宗龍の背中を洗っている事が。

 「し、しず、静流…?」

 「ん…ふぅ、は、はい…どうしました?」

 艶のかかった曇り声が妙に色っぽい。ぬるぬるとした石鹸とともに伝わる背中の感触。ゾクゾクとした感覚が背中から伝わってくる。
 宗龍の予想通り、静流は手ではなく胸で宗龍の背中を洗っていた。お椀型の胸が胸は宗龍の背中に押し付けられ形を変える。その二つの隆起が背中で自由自在に形を変えて宗龍を愛撫する。

 「その…殿方はこういうのが好きと……お気に召しませんか?」

 「いや…そんな事は」

 お気に召さないなんてとんでもない。
 宗龍の言葉に静流は顔を輝かせ、より強く胸を押し付けてくる。

 「んく、はぁ…あ、あッ」

 静流自身も昂ぶっているのだろう。声に色が混じり、強くなる。

 「はぅ、ぁ…どうですか?私の胸は…気持ちいいですか?」

 「あ、あぁ…」

 言葉が出なかった。
 宗龍の脳は胸を使った背中流しですっかり蕩けていた。

 「では…主殿、前を」

 静流はそう言うと、宗竜の前へ回った。宗龍はごくりと唾を飲み込んだ。
 青い肌に白い泡が映える。いつもは生気の無い瞳だが、今はすっかり色に染まり潤んだ瞳で宗龍を見上げてくる。何かをねだるような唇は笑みが浮かんでいた。

 「んぐッ…!」

 宗龍は突然、股間に走り抜けるような快感に呻いた。股間を見ると、静流の細い指がそそり勃った肉棒に絡みついていた。

 「あぁ…ご立派です、主殿」

 静流はそう言って熱っぽい視線を送った。静流はそのまま握り締めた肉棒の先端を人差し指でくすぐってくる。

 「ううッ…」

 宗龍は静流の手の中で勃起を痙攣させ、早くも粘液を滲ませる。細い指は的確に刺激を与えてくる。ただ握り、指でくすぐってくる。それだけでたまらない刺激だった。

 「あぁ、本当にたくましい…」

 静流はうっとりとして舌で唇をなめる。そうしている間にも宗龍は股間を握り締められたまま頷くだけで精一杯だった。

 「ん、主殿…」

 「ど、どうした…?」

 「…き、来て下さい」

 そう言うと静流は宗龍の肉棒から手を離し、宗龍を迎え入れるように両手を広げた。宗龍は腕の中に吸い込まれるように体を屈め、静流の体を抱きしめるとその唇と自らの唇を重ねた。

 「んん…♪」

 柔らかな感触に頭が真っ白になった。溶けてしまいそうなほどに柔らかく、温かい。静流の唇が微かに動くのを感じるだけで、体の力が抜けてしまいそうになる。

 「ん、主殿ぉ…もっと、もっとくださいぃ♪」

 静流は甘い声で呟くと、濡れた舌を宗龍の口腔に侵入させた。熱くぬめった舌が唇の裏側をなぞり、宗龍の舌を誘うようにツンツンと突いてくる。
 ねっとりとした静流の舌に宗龍は夢中になった。本能が理性を凌駕し、猛然と静流の動きに応える。

 「んぷ、ぢゅる…んんん♪」

 お互いに激しく貪りあい、舌が構内で縦横無尽に暴れ回る。時折漏れる静流の吐息に興奮は高まっていく。
 宗龍は静流の唇を吸いながら、豊かな胸の膨らみに手を伸ばす。そっと力をこめるとどこまでも沈んでいきそうだった。そのまま揉んでいると、コリコリとした乳首がまるでこっちも可愛がってほしいと訴えるかのように掌の中心に当たってくる。

 「あ、あぁ…主殿…」

 静流の声がかすれている。すっかり興奮しているのだろう。そのまま、宗龍の頭を抱き寄せて乳房を顔に押し付けた。
 宗龍はそのまま胸にむしゃぶりついた。両手で乳房をこねまわし、指で乳首をキュッと摘む。谷間に顔をうずめて、唾液に濡れた舌で舐めあげる。

 「あ、くぅん…い、良いですぅ…ひゃあん♪」

 疾走する本能に任せただけの荒々しい愛撫に静流は夢中になっていた。しかし、このまま宗龍にだけ奉仕をさせるのは気が引けた。

 「あ、主殿…その、よろしいでしょうか?」

 「んむ、あ?あぁ…」

 宗龍はいったん静流の胸から顔を外すと、静流は宗龍の足と足の間にひざまずくと鼻が肉棒に触れるほど顔を近づけてきた。

 「し…静流?」

 宗龍は亀頭に吹きかかる静流の生暖かい吐息に腰が引いた。先端からは涎のように透明な粘液が溢れ出してくる。

 「あぁ…主殿、静流でこんなに大きく…♪」

 にんまりと淫らに笑うと、両手で乳房を持ち上げるようにしながら肉棒に近づけていく。そして、そのまますっかりヌルヌルになった乳肉で肉棒を挟むと上下にこすり始めた。

 「うッ!…あぁ」

 背すしが震えるほどの快感が電流のように肉棒から脳天へと走りぬける。乳房が肉竿を挟みこみ、青い肌が亀頭と竿をこすり上げる。

 「ん、どうですか?気持ちいいですか?」

 「あぁ…さいこうだ、な…!」

 宗龍の返事に悪戯っぽく笑うと、静流はいきなり乳肉から顔を覗かせる亀頭を咥えこんだ。すっかり濡れた亀頭は柔らかい唇に包まれ、舌がちろちろと動き回り舐めまわしてくる。

 「く、あッ!」

 まるで稲妻に打たれたかのような快感だった。
 胸による愛撫に悶えていたところに熱くぬめった口で咥えられ、舌先で尿道をほじくるような動きに射精感が高まる。
 宗竜の腰が引きそうになるが、静流は決して肉棒を離さず逆にますます激しく吸いたてる。

 「んぶ…ん、んッ♪」

 音を立てて先端から出てくる前触れ汁をを舐め取り同時に胸を使って肉棒を擦りあげる。

 「しず、るッ…!で、出る…!」

 「んぢゅ、らひてくらはいぃ…しょのままぁ♪」

 咥えながら喋る、その動きについに宗龍は限界を迎えた。

 「んぶッ!?ん、んんんんんん♪」

 肉棒が大きく膨れ上がると、精液がまるで噴水のようにほとばしった。静流は目を大きく広げたがすぐに目を蕩けさせ、決して口を離さずに全て口内で受け止めた。
 
 「はあぁぁ…♪」

 射精が終わると静流はゆっくりと口を離し、口の中に溜まった精液をうっとりとした表情で喉を鳴らしながら飲み込んだ。

 「す、すまん…」

 「あぁ…主殿♪謝らないで下さい…主殿の精を受けて、静流は幸せでございます♪」

 唇の端から漏れる精液を指で掬い取り、指先を丁寧に舐めしゃぶる。
 普段の無口で無表情な静流からはとても想像できない淫らな姿に宗龍の肉棒は萎えるどころかより強く、硬くそそり勃つ。

 「主殿ぉ…そろそろ、こちらにもくださいませ…♪」

 静流は風呂場の床に仰向けに横たわると、膝を立てた状態で両足を左右に大きく広げた。陰毛の生えていない静流の秘部はパックリと口を広げ、奥からねっとりとした愛液を垂れ流し濡れて光っていた。肉唇の間からは肉豆が恥ずかしげに勃起している。

 「どうぞ…静流を、静流を主殿の雌にしてください♪」

 静流の口からたまらずおねだりが漏れていた。
 もう我慢の限界であった。宗龍の肉竿で貫いてほしかった。
 宗龍は無言で頷くと、先端を静流の秘穴に押し付けてきた。

 「はう、ん…あ、あぁ…」
 先端がぬるぬるの粘膜に触れるとまだ入っていないのに子宮が疼いた。
 ふと、宗龍は一気に腰を突き出した。

 「ひあッ!んくぅぅぅぅんッ」

 静流は待ち待った挿入に胸を反らして喘いだ。宗龍が覆いかぶさってくると無意識に両腕で抱きしめて、宗龍の首筋に口づけをする。

 「あ、あぁぁ!すご、いぃぃ♪」

 「あぁ、静流ッ、静流ッ!」

 「あん!いい、ですぅ!あ、主殿のがぁ…大きいので静流、いっぱいですぅぅぅ!」

 静流は深く力強く突いてくる肉棒を離すまいと、両足を宗龍の腰に巻きつける。硬い肉塊で擦られると静流は快楽でどうにかなってしまいそうだった。まるで失禁したかのように愛液があふれ出し、お互いの体を濡らしていく。

 「主殿ッ、もっと!もっとぉぉぉぉ♪」

 快感に我を忘れ、静流は大声で叫んだ。
 それは宗龍も同じであった。肉棒を包んでいる熱く、ぬるぬるとした秘肉の感触。自分の舌でくねりよがる静流、すぐ耳元で奏でられる甘い喘ぎ声、まるで夢の世界にいるような感覚だった。

 「あ、ぐぅぅ…静流ッ…!」

 「はぃ!主殿ぉ、好き!好きぃぃぃッ!」

 ほんの少し腰を動かすだけで痺れるような強い快楽。一度出していなければ、入れた直後に射精していたかもしれない。

 「主殿ぉ♪もっと、静流の中をかき回してくださいぃ♪」

 静流の絡みつくような甘いおねだりに、宗龍は腰の動きを速めた。亀頭が、肉竿が、蠢く膣壁に吸い付かれ射精を促す。先端が子宮を突くたびに、ギュウッと締め上げ絞りたてる。
 仰向けになった静流の胸が大きくゆさゆさと揺れる。静流は我を忘れて快感に悶え、喘ぐ。

 「ひぁぁ!主殿!中にッ、中にくださいぃぃ!」

 「し、静流…!」

 ギュッと抱きつきながら静流は宗龍に懇願した。肉棒が射精したそうにぶるぶる震えているのを敏感に感じ取ったのだろう。宗龍は腰の動きを止めず、狂ったように腰をたたきつける。

 「くぅ、で、出るぞ!」

 宗龍は肉と肉がぶつかり合う音を風呂場に響かせながら叫んだ。先端からは先走り駅がほとばしっている。
 静流は宗龍を見上げながら、何度も頷き喘ぎ続ける。

 「あんッ、も、ぅ…ダメェェェェェッ!」

 静流がそう叫ぶのと同時だった。
 勃起が大きく膨らむと、

 「んあああぁぁぁぁぁーッ!!」

 肉棒から大量の精液が噴水のようにほとばしり、二人は同時に絶頂へと到達した。
 静流は宗龍の精を受け止めながら、全身が幸せで満ちていくのを感じていた。
 それと同時に、自分がもう一人ではない事、孤独ではない事を感じ胸が温かくなっていった。
 
17/10/09 11:43更新 / ろーすとびーふ泥棒

■作者メッセージ
どうも皆さん、お久しぶりです。
ろーすとびーふ泥棒です。

落武者きゃわわと思って書いていたんですが、何だか日常が雑でエッチなシーンに力が入っていたように思います。
本当はもっとイチャイチャしたいんだよぉ!!

最近はいろいろと落ち着いてきたので、またちょくちょく更新できればいいなー、と

でわでわ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33