連載小説
[TOP][目次]
(109)狐憑き(キツネツキ)
街の一角に、稲荷神社があった。
やや広い境内を、一人の巫女が掃除していた。背の高い、やや面長の若い巫女だ。
いわゆる無人のお社とは異なり、この神社には巫女がいた。
だが、彼女の本来の仕事は神社の管理をするばかりではなかった。
「巫女様ー!」
不意に、鳥居の方から声が響き、一人の男が境内に駆け込んできた。
「どうしました?」
法規を操る手を止め、巫女がそう問いかける。
「す、すみません・・・!失せ物探しを・・・!」
「急ぎですか?」
「はい!今も家人に探させている最中で」
「かしこまりました。中でどうぞ」
巫女は男を導き、神殿に入っていった。
そして、祭壇を前に男と向かい合うように、彼女は腰を下ろした。
「捜し物を、頭に浮かべてください」
「はい・・・」
男が、目をぎゅっとつぶって、何かを念じる。
巫女は男の真剣な表情を、やや吊り気味の目で確認すると、遅れて目蓋を下ろした。
「・・・・・・・・・・・・」
巫女の形のよい唇が静かに開閉を繰り返し、何事かを紡ぐ。
経文のようにも聞こえるが、声音が小さいせいで巫女以外には聞き取れそうになかった。
だが、彼女と向かい合う男は巫女の紡ぐ言葉よりも、失せ物のことを念じるので一杯のようだった。
「・・・・・・・・・」
しばし巫女が何事かを紡ぎ、唐突に言葉を切った。
そして、ゆっくりとした深呼吸を重ねて、彼女は目を開いた。
「わかりました。神棚と仏壇の引き出しを改めなさい」
「あ・・・」
何か心当たりがあったのだろうか、男が目を見開いた。
「ただし、改める前に必ず礼と柏手を忘れないように」
「わ、わかりました・・・!」
男は頷きながら立ち上がろうとしたが、中途半端に腰のあがったところで動きを止めた。
「お礼は・・・?」
「今も人に家を探させているのでしょう。お礼など後でよいので、急いで戻りなさい」
「・・・はい!」
巫女の言葉に男は頷き、祭壇の前を離れて神社を飛び出していった。
「・・・ふぅ・・・」
男の背中を見送ってから、巫女は小さく声を漏らした。
この稲荷神社の巫女に祭り上げられて、もう一年近くだろうか。
だが、彼女は稲荷どころか狐憑きですらない。いくらか狐を想起させる面立ちと、多少勘が鋭いだけの人間だ。
だというのにこのあたりの住民は、多少無くし物を探してやったりした彼女を、狐憑きの巫女だと祭り上げ、長らく人のいなかったこの稲荷神社の巫女に仕立てあげたのだった。
もっとも、宿なし職なしで当てもなくさまよっていた彼女にしてみれば、体を売るよりかは遙かに恵まれた待遇だった。
だが、問題が一つあった。
「巫女様!」
神殿に軒を連ねる社務所から、少年がひょっこり顔を出した。
「お洗濯と物干し、終わりました」
「ああ、ありがとうね、ハル」
少年の報告に、巫女は労いの言葉をかけた。
「じゃあ、八つの鐘が鳴るまで、遊びに行っていいわよ」
「はい!」
少年は嬉しそうに頷くと、身を翻して駆けていった。
そして、少年の背中を見送ると、彼女はふっと笑みをいくらか穏やかな物にした。
あの少年、ハルこそ彼女が巫女としてこの神社に祭られる際に、世話係として与えられた少年だった。
聞くところによると、身よりのない子供をどこかの家で預かっていたのを、体のいい口減らしとして世話係にしたらしい。
だが、ハルは子供だ。本人にいくらやる気があっても、世話係として家事の一切を任せることはできず、実質的には巫女が彼の面倒を見てやっているような状況だった。
それでも、ここ最近は掃除洗濯を覚えて、彼女に貢献してくれている。
「大きくなったもんねえ・・・」
世話係としてつれてこられた当初は、妙に巫女のことを怖がっていた彼だったが、今では火事のいくらかを分担してくれている。
その成長ぶりに、巫女はいつしか息子の成長に気がついた母親のような気分になっていた。
「おおっと、いけないいけない・・・」
未婚だというのに、一足先に母親になりきっていた自分に、巫女は頭を振った。
まだ所帯染みるには早すぎる。
「私はハルのおねえーさーん・・・」
彼女はそう拍子を付けてつぶやきながら、中断していた掃除を続けるため、境内に降りていった。




それから八つの鐘が鳴り、帰ってきた少年を夕食の買い物に行かせたり、風呂の準備をしているうちに、夕刻になっていた。
窓の外の景色が赤く染まり、徐々に暗くなっていく。
「うーん、こんな物かしら・・・?」
夕飯の味噌汁の味付けを確かめながら、巫女は首を傾げた。
今日はハルが少々汗をかいていたようなので、味付けを濃いめにしたのだが、喜ぶだろうか?
そんなことを考えていると、母屋の玄関から声が響いた。
「ただいま戻りました!」
「はーい、お帰りー」
ぱたぱたと軽い足音が響き、ハルが台所に飛び込む。
「野菜と干物、買ってきました!」
「はい、お疲れさま・・・あら、こんなに?」
「はい!安かったので!」
一日分の食費で、明日の分の材料まで買えたことに、少年が嬉しそうに頷く。
「うーん、明日も開きの焼いたのでいいのなら、かまわないけど・・・」
「大丈夫です!僕の好物ですから!」
「そう・・・じゃあ、夕飯の準備してるから、あなたお風呂に入っちゃいなさい」
「はーい!」
ハルはそう応じると、台所を飛び出していった。
「あ、肩まで浸かって、百数えるのよー!」
巫女の言葉に、はーいと少年が声だけで返事する。
ハルは常日頃、巫女の言いつけを守っているため、烏の行水のような入浴はしないが、それでも湯冷めせぬよう十分に暖まってもらわなければ。
「ま、元気一杯みたいだから、そうそう風邪なんかひかないと思うけど」
台所に残る、ハルの汗の香りをかぎながら、巫女はそう呟いた。
それより、夕飯の主菜が届いたのだ。調理しないと。
巫女は少年の買ってきた包みを開くと、魚の開きを取り出した。
程良い大きさの一枚をとり、赤々と燃える炭を仕込んだ七輪に、巫女は開きを置いた。
「〜〜♪」
どこかで聞いた歌の一節を鼻歌で奏でながら、彼女は味噌汁を一混ぜした。
味付けはこのぐらいでいいだろう。
そしてキュウリの漬け物を刻んで小皿に並べ、お櫃に炊いたご飯をよそう。
合間合間に七輪と干物の様子を確かめながら、巫女は夕餉の支度を進めていた。
そして、七輪から干物をおろし、半身に割って二つの皿に分けたところで、風呂場の戸が開く音が響いた。
「上がりましたー!」
「こっちももうすぐよ」
台所から居間へ移り、ちゃぶ台に食器を並べていると、衣服をまとった少年が入ってきた。
頭髪は少しだけ濡れており、日没とともに訪れた夜の冷気によってか、わずかに湯気をたなびかせていた。
「わあ・・・おいしそう!」
ご飯に味噌汁、干物が半分に漬け物、そして煮物が少々。
子供が喜ぶ献立ではなかったが、少年は目を輝かせてそういった。
「はい、召し上がれ」
「いただきます!」
少年は箸を握って手を合わせると、味噌汁に口を付けた。
「あわてなくても、お代わりはあるから大丈夫よ」
「はひ!」
ご飯をほおばりながら、少年が頷く。
まるで、腹を空かせた子犬が一心に餌を食べているような、ほほえましいものを巫女は胸の内に感じた。
こうして、ハルが食事をしている様子を見ているだけでも、彼女も腹が膨れていくようだった。
「おおっと、いけないいけない・・・」
もちろん見ているだけで満腹になるわけではないので、巫女も箸を取って手を合わせた。
「ん・・・ハルの選んでくれた干物、身が詰まっていておいしいわね」
「はい!よく考えて選びましたから!」
少年が、干物を口に運んだ巫女の言葉に、うれしそうに頷く。
「干物や野菜もいいものを選んでくるようになって・・・この調子なら、ハルに料理を教えたらするする覚えてくれそうね」
「巫女様が教えてくださるんですから、もちろんです!」
「ふふ、どんどん何でもできるようになって・・・このままじゃ、私はお祈りぐらいしかやることがなくなりそうね」
「そんな・・・僕にもまだできないことはありますし」
巫女の冗談に、少年は謙遜のような言葉で返した。
だが、巫女は彼の口調に、どこかいつもの謙遜とは違うものを感じ取った。
「・・・?ハル?何かあったの?」
言葉の陰に、何か暗いものを感じた彼女は、そう尋ねていた。
「実は・・・買い物の途中に、八百屋のおじさんから色々言われて・・・」
「八百屋の・・・ああ、あの人ね」
巫女の脳裏に顔が浮かぶ。確か、以前に嫁さんの誕生日を忘れて神社に駆け込んだことがあった。
「それで、なんて言われたの?」
場合によっては、直接八百屋まで怒鳴り込むことを考えながら、巫女はハルに問いかけた。
「その・・・『おまえ、巫女様にヨトギしてるのか』って・・・」
「夜伽・・・」
「巫女様、ヨトギって何ですか!?」
「え、ええとね・・・」
思いも寄らなかった少年の言葉に、彼女の返答が遅れる。
「僕はヨトギを知らなかったから、八百屋さんにしてませんっていったら・・・『そりゃ巫女様、きっと辛いだろうなあ』って・・・」
「ああーうん、ああー」
確かに、多少体を持て余すことはあったが、それでも辛いと言うほどではない。
少年とは寝室が別だし、多少息を潜めれば自分でどうにかできるからだ。
「巫女様、僕がヨトギをしないせいで辛い思いをしてたんなら、謝ります!」
だが、少年は自分の無知のせいで巫女に我慢を強いていたと信じ込んでいるらしく、ちゃぶ台に強打せんばかりに頭を下げた。
「お願いです!僕にヨトギを教えて、ヨトギさせてください!」
「ええとね、その私そんなに困っていないというか、特に辛い思いもしてないからいいかなあって・・・」
「でも、夜中に時々苦しそうな声が、巫女様の部屋から聞こえますけど・・・」
ぜんぜん息を潜め切れてなかった。
少年の言葉に、巫女は身を完全にこわばらせた。
「八百屋さんにそのこと言ったら、『それはお前がヨトギしてないせいだ』って」
ぎゃあ。
巫女は表情を変えることなく、心の中だけでそう声を上げた。
そして、目の前の茶碗や椀に残るご飯や味噌汁を、彼女は黙々と口へ運んだ。
「僕は・・・売られるところを巫女様のおかげで世話係にしてもらえました。だから、巫女様の力になりたいんです!巫女様が苦しい思いをしているなら、僕がそれを・・・」
「ごちそうさま。少し涼んでくるわね。ああ、お皿は片づけておいて」
自分の分の夕飯を胃袋に詰め終えると、巫女はすっくと立ち上がった。
「巫女様!」
「続きは戻ってからね」
少年のそういい残し、巫女は部屋を出た。
いつの間にか日は完全に沈んでおり、月と星だけが外を照らしている。
彼女は、静かに真っ暗な老化を進むと、そっと神社の境内に出た。
「・・・・・・」
昼の間に箒で丹念に掃いた参道を進み、境内の真ん中に立つ。
そして肺一杯に息を吸い込んでから、巫女は口を開いた。
「なにが夜伽よぉー・・・」
息を吐く方に力を込め、なるべく喉を震わせず、声を上げぬよう気をつけながら叫ぶ。
「そりゃ時折欲しくなるけど、あんたは圏外なのよぉー・・・」
そうだ。巫女の好みとしては、せめて同年代でないと困る。
確かに、ハルのふとした仕草や力仕事の際に、男らしさの片鱗が伺え、すこしドキッとしてしまうこともあった。
だが、そのままハルに対する情欲に繋がるわけでなく、子供が大きくなったという驚きと喜びを彼女は感じていた。
つまり、巫女にとってハルは弟であり息子のような感覚なのだ。
少なくとも、夜伽をしてもらう相手ではない。
「でもそんなこと言われたら、説明しないといけないでしょうー・・・」
そう、夜伽の意味を、ハルに説明しなければならない。
説明する巫女は恥ずかしいが、それ以上に己の無知が招いた一連の事態にハル自身も相当恥ずかしいだろう。
そうなってしまえば明日、いや説明直後から巫女とハルの関係がギクシャクしてしまうのは必須だ。
だが、適当にごまかしてこの場を逃れることもできない。
どうしたらいいのだろうか。
「どうしたらいいの・・・」
巫女は、夜空に向けてそう呟くことしかできなかった。
だが、無慈悲に星を瞬かせるばかりに思えていた夜空に、不意に青い星が一つ現れた。
巫女は、彼女が巫女になる前、あちこちさまよっていた際に星空を頼りに夜道を進んだことがあるが、あのような星は見たことがなかった。
「流れ星・・・?」
青い光にそう呟くが、光は尾を引くどころかその場から動く気配も見せなかった。
いや、こうしてみている間に、徐々に光が大きくなっている。
「あれ・・・」
自分に向かって、光が迫っている。
その事実に気がついた瞬間、彼女の耳を女の声が打った。
「モラモラモラモラモラモラモラモラモラ!」
高い、女の声が、ただ二つの音を繰り返している。
直後、青い光が巫女の視界一杯に広がり、彼女の全身を打ち据えた。
「っ・・・!?」
衝撃に息が絞り出され、彼女の体が宙に浮く。そして一度尻餅をついてから、彼女は境内に仰向けに倒れ伏していた。
「っ・・・はぁはぁはぁ・・・」
青い光がぶつかる瞬間、無意識のうちに止めていた呼吸を、彼女は再開した。
彼女が仰ぐ夜空には、先ほどと変わらぬ星と月が浮かんでおり、青い光は名残すら残さず消えていた。
本当に青い光が降ってきたのか。単に巫女が目眩を起こして倒れ、瞬間的な夢の中で、青い光を見たのではないか。
そんな考えがよぎるが、巫女の体は違うと主張していた。
巫女の全身が妙な火照りを帯び、呼吸と体温が上がっている。
そして、下腹の内側がむずむずとする。
一人寂しい夜に、胸を貫く切なさとともに感じる、あの疼きだ。
体が異性を欲している。
「なん・・・で・・・?」
突然の自信の興奮に、巫女は荒い吐息とともにそう呟いた。
だが、そう問いかけたところで答える者はおらず、彼女自身も自答できなかった。
「ん・・・!」
彼女は、下腹の疼きを押さえるため、両足の付け根に手を伸ばそうとした。だが、袴に指が届く寸前で、彼女は指を止めた。
巫女の声は、少年に届いていたのだ。
こんなところでしてしまっては、声がいろんなところに聞こえてしまう。
「そ、そうよ・・・お風呂場なら・・・」
巫女は、そう思いつきを口にした。
風呂場なら、多少の声も水音でごまかせるし、口まで湯船に浸せば声も出ない。
彼女は、火照りを冷ます境内の地面から起きあがると、どこかおぼつかない足取りで母屋を目指した。
先ほど境内に出たときの倍以上の時間をかけ、よろよろと母屋の廊下を進む。
そして居間の前を通ろうとした瞬間、襖が音を立てて開いた。
「あ、巫女様!お加減どうですか?」
聞き慣れたはずのハルの声。その一言に、巫女は下腹の奥の疼きが強まるのを感じた。
痺れのような感覚がへその裏に生じ、両足の付け根が湿り気を帯びていくのがわかる。
ゾクゾクと彼女の背筋を痺れが這い登り、両足から力が抜けていく。
「あ、あ、あぁ・・・」
巫女は、口から声を漏らしながら、ヘナヘナとその場に崩れ落ちてしまった。
「巫女様!?」
突然へたりこんだ彼女の姿に、ハルは声を上げた。
「大丈夫ですか?しっかりしてください」
「や・・・だめ・・・」
巫女を気遣う少年に、彼女は自分の胸が高鳴るのを感じた。
だが、彼女は自分の胸の高鳴りが、普段のそれとは明らかに異なることを悟っていた。
このままハルに触られたら、取り返しのつかないことになる。
そんな予感が、彼女に自制心を呼び起こさせた。
「でも・・・巫女様、こんなに顔が赤くて・・・」
とりあえず巫女の体を支えようと言うのか、ハルの手が巫女の二の腕をつかんだ。
巫女装束の袖越しに感じられる少年の手と、意外と強い力に巫女は彼の中の男を感じ取った。
「あぁぁ、うぅぅ・・・」
少年に掴まれている二の腕が、そこに心臓があるかのようにドキドキと脈打ち、腕から全身に温もりが広がっていく。
少年の手から感じられるたくましさ。彼の手に全身をゆだねたいという、男を求める欲求が彼女の中で強まった。
「もっと赤くなった・・・」
紅潮する巫女の顔に、少年は表情をこわばらせた。
体調が優れなかったのが、先ほど外に出たせいで一気に悪化したのかもしれない。
「巫女様、ごめんなさい!」
少年はそう判断すると、断りの言葉と共に彼女の額に手を触れさせた。
「あ・・・」
体を支えるために二の腕をつかむ手と、体温を計るために額に当てた手。
その二つに、巫女はハルの優しさを感じ取った。
巫女の前につれられてきた小さな子供。その彼が今、彼女の身を気遣い、男らしい力と優しさを発揮している。
その瞬間、弟や子供の成長を見守るようであった巫女の感情が、一気に膨れ上がった。
ハルが欲しい。
巫女に宿り、先ほどから全身を支配する欲求と感情が結びつき、彼女のうちにそんな衝動が芽生える。
(だめだめだめ、相手は子供・・・手を出しちゃだめ・・・)
(でも、ムラムラしてるんでしょ?)
己の衝動を押しとどめようとすると、彼女の脳裏に声が響いた。
(自慰も聞かれてたし、もう恥ずかしがる必要ないんじゃないの?それに、ハルも夜伽したい、って言ってたし・・・)
(でも、相手は子供・・・子供相手にそんなこと・・・)
(じゃあ、ハルが立派な大人になるまで、このムラムラを抱えたまま我慢できるの?)
巫女の本心が、彼女の自制心に囁きかける。
(もう、ムラムラがメラメラになって、体が焼けそうなんでしょ?メラメラがモラモラになる前に、発散しないと)
(そ、そうよね・・・今なら理性的に振る舞えそうだし)
(そう、モラモラの余りハルを襲ったりしたら、かわいそうだしね)
もはや、どちらが自制心でどちらが衝動かわからぬ会話を締めくくると、巫女は深呼吸を一つした。
ほんの少しの決心と、ほんの少しの勇気。
ただそれだけで、少しだけ落ち着いたような気がする。
「ハル、大丈夫よ」
巫女は、いくらか落ち着いた口調で、少年に向けて口を開いた。
「でも・・・巫女様熱があるみたいだし・・・」
「大丈夫。病気でも何でもないわ」
彼女は不安そうな少年に、にっこりとほほえみながら続けた。
優しく、丁寧に、彼を求めるのだ。
「ハルのおちんちん思い切りねぶらせてくれれば、すぐによくなるわ」
「・・・へ・・・?」
なにを言われたのかわからない、といった様子で少年は動きを止めた。
「ほら、あなたのやりたがっていた夜伽の時間よぉ!!!」
巫女はそう声を上げると、少年の肩をつかみ力を込めて押し倒した。
「ひゃっ・・・!」
「はーい、両足がっちり掴まえましたー!すべすべの太腿ー!」
着物の裾が広がり、露わになる少年の両足を掴まえながら、巫女はそう声を上げて太腿に唇を押し当てた。
「み、巫女様・・・!?ひゃうっ・・・!」
少年が巫女を呼ぶが、その声は彼女が一心不乱に太腿を唇で吸う音に紛れ、掻き消えた。
ちゅっちゅちゅっちゅ、と少年の膝小僧や太腿、内腿を左右交互に巫女は吸い、舌で舐めていく。
「み、巫女・・・さ、まぁ・・・!」
太腿に降り注ぐ唇と舌、そして巫女の唾液の感触に、少年は声を震わせながら声を漏らした。
少年の胸の中に生じた、もやもやとした感覚に対する不安感のためだ。
だが、巫女は彼の呼びかけに対して言葉ではなく、着物の裾に頭をつっこんで太腿の付け根を吸って応えた。
「んふふー、こぉんなにがっちがち・・・」
少年の着物の中から声が響き、不意に少年の股間を生温かいものが包み込んだ。
「ひゃあうっ!?」
物心ついてからは初めての、他者による陰茎への接触に、少年は声を上げた。
巫女は、少年の着物の内の暗闇の中で、小さく未熟ながらも賢明に屹立する肉棒を口に含み、思い切り吸い立てた。
包皮をかぶった肉棒にたっぷりと唾液をまぶし、根本を唇で締めあげる。
すると少年の屹立は、ピクピクと震えた。
「んふ・・・んぉ・・・ん・・・!」
熱く、荒い鼻息で少年の下腹部をなでながら、巫女は屹立をねぶる。
一方少年は、下腹をなでる息と、陰茎への刺激、そして排尿にしか使っていなかった器官に巫女が吸いつくという事実に、興奮を高めていた。
優しく、美しい巫女が、自分の体の中で不潔な部類に入る陰茎を、興奮した様子で咥えている。
いつも優しい言葉を紡いでくれるはずの唇が肉棒を締め上げ、少年と共に食事を味わう舌が屹立を舐め回す。
「み、こぉ・・・さまぁ・・・!」
少年は背徳感に興奮を煽られながら、体を震わせて拳を握りしめた。
そして少年は、股間から何かが出ようとしているような感覚を覚えた。
「あ、あぁぁぁ・・・!」
巫女の口の中に排尿してしまう。そんな予感に、少年は体を震わせながら、意識が白くなるのを感じた。
少年の背筋が反り返り、巫女の口内で肉棒がぴくぴくと痙攣する。
そして、数度の痙攣を経てから、少年の全身が脱力した。
「んん・・・」
巫女は唇をすぼめ、肉棒を扱くようにしながら顔を話した。
屹立の表面をなでる唇の感触に、少年が短い声を漏らす。
「・・・ぷは・・・ふふ、まだ出ないのね・・・」
絶頂したにも関わらず、ほとばしることのなかった白濁に、巫女は着物の裾から顔を出しながら言った。
「でも、ここに入っているようだから・・・出るまで頑張ろうね?」
「あ、あぁ・・・」
屹立の根本、きゅっと縮こまった小さな玉袋をいじられながら、ハルは声を漏らした。
「じゃあ、ちょっと休憩もかねて、ハルに夜伽について教えてあげるわね・・・」
巫女は倒れ伏す少年をそのままに、その場にすっくと立ち上がった。
帯をゆるめて袴を下ろし、巫女装束から袖を抜く。そして少年の目の前で、巫女は一糸まとわぬ姿になった。
「あぁぁ・・・」
「ふふ、私の体・・・きれい?」
初めて見る巫女の裸体に、少年は感動を覚えながら頷いていた。
「ここが女の人のあそこ・・・ほら、見なさい」
少年の体をまたぎ、中腰になりながら巫女は自身の両足の付け根に指を伸ばした。
「ここがお尻の穴で、ここがおしっこの穴で・・・ここ、何の穴か分かる?」
自身の女陰を広げながらの巫女の問いかけに、少年は首を左右に振った。
「ここが、赤ちゃんの生まれてくるところ・・・この奥で女の人は赤ちゃんを育てるのよ。でも、その前に男の人のおちんちんをここに入れないと、赤ちゃんはできないの」
巫女の一言に、少年の肉棒が小さく跳ねた。
「ほら・・・この中・・・ぷにぷにのお肉がみっしり詰まっていて、柔らかそうでしょ・・・?」
女陰を広げ、膣道を少年に晒しながら、巫女は上気した顔でそう季節する。
「入ってきたおちんちんを、ぎゅうって締め付けて、こしこしって擦って、一杯赤ちゃんの元を絞り出すのよ。それはね、男の人も女の人もとっても気持ちいいの」
「あ、あぁ・・・」
巫女の大事なところが目の前にさらけ出され、その機能を解説されることに、少年は興奮のあまり声を漏らしていた。
「でも、赤ちゃん作れるようになっても作らないでいると、ここが『赤ちゃん作りたいよ〜』って言って苦しくなってくるの。それで、その苦しさを紛らわせるのが、夜伽なのよ」
「・・・っ!」
巫女の言葉に、少年は目を見開いた。
夕食の際に、巫女に夜伽をしたいと言った自分の言葉の意味が、ようやく理解できたからだ。
「私もハルに夜伽してもらいたいの・・・してくれるかしら・・・?」
巫女は、興奮に瞳を潤ませ、頬を紅潮させながら、そう少年に問いかけた。
夜伽をしたい。子供を作りたいという欲求を紛らわせる。
その役割への理解と、巫女からの求め、そして自身の胸の高鳴りに、少年は頷いていた。
「ふふ・・・じゃあ脱がせるわね・・・」
巫女は少年をまたいだまま、彼の着物の帯をゆるめ、そっと着物をはだけさせた。
そして彼の屹立を一撫ですると、指を添えて角度を調整しながら、ゆっくりと腰を下ろしていった。
「あ、あぁ・・・」
巫女の女陰と、少年の屹立がゆっくりと接近していく。その様子に、少年はもどかしげに声を漏らした。
直後、彼の屹立が、巫女の亀裂に飲み込まれていく。
「・・・っ!」
肉棒を包み込む肉の感触に、少年は息を詰まらせた。
「ん・・・入った・・・」
女陰の入り口ほどを満たす肉棒の感触に、巫女は声を漏らす。
膣口を限界まで押し広げたり、子宮を突き上げるほどの太さや大きさは備えていないが、それでも体温を備えた肉の棒が胎内に収まっているのは心地よかった。
一方少年も、屹立を包む粘膜が舌のように柔軟に蠢くわけでも、唇のように締め付けが強い訳でもないが、柔らかく折り重なった襞の感触に身を震わせていた。
びくん、びくんと少年の腰が勝手に跳ね上がり、巫女の女陰を突いた。
「あぁ・・・もう、一丁前に突っついて・・・」
「ごめっ、なさい・・・腰が、勝手に・・・!」
少年は腰の動きと、肉棒を擦る膣肉のもたらす快感に言葉を途切れさせながらも、どうにかそう言った。
「ふふ、最初は動きたいように動きなさい」
巫女を気持ちよくさせようと言う気持ちの宿っていない、独りよがりな律動であるが、精通も迎えていないハルに腰使いを求める方が間違っている。
巫女は、女陰を擦る少年の肉棒を感じながら、慈しむような目で彼を見下ろしていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・!」
少年は徐々に己の内側で膨らんでいく興奮に、目を閉ざし、眉間にしわを寄せながら、荒く呼吸を重ねた。
一見すると苦悶の表情のようであったが、膣内で脈打つ肉棒と、時折彼の四肢にこもる力に、彼女は少年の快感を察する。
そして、しばし少年が思うままに腰を動かしていると、不意に彼の全身に力がこもった。
「ん・・・!」
少年が小さく声を漏らし、巫女の胎内で肉棒を震わせる。
大きく脈打つが、なにも迸らなかったことに、巫女は胸の奥底で落胆と喜びを覚えていた。
「ふふ・・・気持ちよかった・・・?」
全身を脱力させた少年に、巫女は問いかける。
少年は人生二度目の絶頂に朦朧としながらも、小さく頷いた。
「じゃあ、今度は私を気持ちよくしてね・・・」
彼女はそう少年に告げながら、小さく腰を動かし始めた。
愛液にぬめる膣が、少年の肉棒を擦る。
折り重なる柔らかな襞が、肉棒の凹凸に絡み付いていった。
包皮に覆われた亀頭の膨らみや、肉棒全体の微かな反り。
屹立の形を探るように、巫女の膣道が蠢き、少年の分身の表面を這い回った。
「う、あ・・・!」
自身の衝動のままに、ただでたらめに腰を突き動かした時とは異なる、膣壁の絡み付きに少年は呻いた。
肉棒は破裂せんばかりにびくびくと震え、巫女の胎内を擦った。
彼女は痙攣する屹立を、自身の敏感な場所に擦りつけるように、腰を前後左右に揺すった。
「あぁ・・・そこ・・・いぃ・・・!」
巫女が下腹からじわじわと上ってくる快感に声を漏らし、むき出しの乳房をつかんだ。
彼女のほっそりとした指が、柔らかな肉の鞠に沈み込む。
乳房に指が食い込む、微かな痛みさえもが巫女には心地よかった。
「んっ・・・うぅぅ・・・!」
少年が声を漏らしながら、小さく体を痙攣させる。
膣内で大きく脈打つ感覚に、巫女は少年の三度目の絶頂を悟るが、やはり屹立の先端からは何も出なかった。
「やっぱり、早すぎたのかしら・・・?」
「ああぅぅ・・・!」
肉棒を女陰に咥えたままでの巫女の言葉に応えるように、ハルは絶頂を迎えて敏感な屹立への刺激に応えた。
「だったら・・・私の気持ちいい場所を全部教えて、立派に夜伽をつとめられるようにしてあげるわね」
「あぁ・・・え、ぁ・・・!?」
不意に巫女の両手が少年の背中に差し込まれ、彼の体が持ち上げられた。
肉棒と女陰で繋がったまま、抱き抱えられたことにより、肉棒を締め付ける膣の感触が変わる。
「あぁ、あ・・・!」
「さ、お布団でいっぱい教えてあげるから・・・」
一歩一歩足を進める度、声を漏らす少年に、巫女はそう優しく囁いた。
彼女の頭から、青く燃える三角の耳のようなものが、二つ覗いていた。
13/02/01 18:04更新 / 十二屋月蝕
戻る 次へ

■作者メッセージ
この後布団で上になり下になりながらのいちゃこら夜伽講座を繰り広げ、翌朝の目覚めと同時に疲労感と後悔に襲われる巫女さん。
しかし少年の方は、自分の行いに責任をとると宣言し、巫女さんはまた彼の中に男を感じてドキっとしちゃうわけですよ。
そして始まる狐憑き生活。
ふとしたことでムラリときて、燃え上がる三角の耳をはやしながら少年に襲いかかったり、来客を察知してムラリとこないように思い切りオナったりする巫女さん。
そして訪れる少年の精通の瞬間と、妊娠出産の時。
娘誕生の報告に、八百屋のおじさんも大満足です。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33