読切小説
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ダンジョン!
 腕に覚えのある職人たち。
 その手が作り出す、究極の一杯。
 それを求めて集う、冒険者たち。

 信念と食欲がぶつかり合うこの通りを、人はいつしか『ダンジョン』と呼ぶようになった。

 貴方がエンカウントするのは、どんな一杯か……?







 シーフードラーメン専門店『新鮮組』


 濃紺のダンダラ模様が描かれた暖簾が目印のこの店は、ダンジョンことラーメン横丁の入り口付近にある。店に入ってまず目を惹くのは、壁一面に飾られた大漁旗だ。海の男が漁から帰還する際に掲げるこの旗は、街中であっても海の香りを纏っている。
 もちろんここで出されるラーメンは海の幸をふんだんに使った一品。マーメイドやメロウといった海の魔物も、その味の虜となる。

「うちの娘はアニメに影響されすぎて困るよ。この前なんか楽器屋行ってフィンランドの民族楽器買ってきたり……そうやってすぐ飽きるからなぁ」
「あるある。うちのは自衛隊の機甲科に入るって言い出したよ。外国の軍隊じゃどうだか知らないけど、自衛隊じゃ女は戦闘部隊には入れないって言ってるのに……」

 カウンター席では二人組のサラリーマンが雑談している。こうしてラーメン屋で愚痴をこぼすのも、有効かどうかは分からないがストレス解消法の一つなのだろう。無関係な者に迷惑をかけない限りは。
 しかしこの二人の愚痴も、店主が注文の品を差し出すまでのことだった。

「『斬り込み海鮮ラーメン』、お待ち!」

 目の前に置かれた一杯を見て、二人は即座に意識を切り替えた。器の中という小さな空間に、店主の創意工夫と誇りが凝縮されている。まず目を引くのは麺の上に盛られた、エビ、ホタテ、魚、イカ、タコなどの魚介類。そして緑色のワカメが漂うスープ。仕事帰りの中間管理職二人は、まずはレンゲを手にそのスープから取り掛かった。一見澄んだスープとて薄味とは限らない。魚介の味が染み出したその一口には複雑な味わいが渦巻き、飲み込めば風味が五臓六腑に染み渡る。

「やっぱりたまらないよなぁ」
「うん、俺は魚臭いのはダメなんだけど、ここのは臭いんじゃなくて『魚の香りがする』よな」
「出汁が違うな」

 客に背を向けて調理中の店主は、その言葉を聞いて満足げな笑みを浮かべた。魚臭さではなく『香り』、そしてそれを引き立てる『出汁』。彼が常にこだわり続けているものだった。
 やがてサラリーマン二名は勢い良く麺を啜り始める。細麺にはよくスープが絡み、ますます魚の香りが堪能できる。店にはどんどん客が入り、『新鮮組』は今日も繁盛していた。



「あー、働いた働いた」

 閉店後、店主・海東武雄は肩を叩きながら、戸締りを確認する。窓もカーテンを閉めた上で、彼はいそいそと服を脱いだ。着替えるでもなしに、素っ裸の状態で厨房の裏にある秘密の部屋へ向かう。そこは彼の秘蔵の出汁が作られる場所であり、彼の最も愛する女性がいる場所でもあった。

 小さな部屋の中央に置かれているのは五右衛門風呂のような、ぬるま湯の入った大きな桶。中には緑色の海藻がゆらゆらと漂い、水面を埋め尽くしている。これがスープの材料であることは分かっても、武雄の妻だと分かる者はいないだろう。
 だが彼が桶を覗き込むと、海藻の一部が盛り上がる。下から浮かんできたのは女性の顔だった。緑がかった白い肌は彼女が人外であることを示し、妖しげな美貌を引き立てている。

「……おつかれさま、たけお」

 フロウケルプはにっこりと微笑んだ。武雄はその頭を撫でつつ、もう片方の手で桶の湯を少し舐めた。上品ながらもコクのある出汁が取れている。これこそ彼のラーメンの決め手だった。フロウケルプから取れる出汁は海鮮の味を引き立て、臭みさえも旨味の一部に取り込んでしまう。もちろんただ出汁を使えばいいわけではなく、これを活かすのが職人たる武雄の腕だ。

「お前のおかげで今日も好評だったよ、フウ」
「んー」

 笑顔を向けあいながら、武雄は妻に手を伸ばした。滑らかな肌に触れた途端、彼女の海藻が絡みついてくる。フロウケルプの海藻はねっとりと吸い付き、容易にははがれない。妻の体をしっかりと抱いて、武雄はフウを桶から引っ張り出す。体から生えた海藻がずるずると引きずられ、垂れた出汁が床を濡らした。
 フウは夫の背中に腕を回し、愛おしそうに抱きついて頬ずりする。滑りを帯びた柔らかな肢体を抱え、武雄は彼女を部屋の隅へと連れていく。プールで使われるウレタンマットが敷かれていた。その上に二人揃って横になると、フウは体をずらし、武雄の下半身へと移動する。

 水分を十分に含んだフロウケルプは豊満な体つきで、動くだけでたわわに実った胸がぷるんと揺れる。武雄は生唾を飲み込んだ。見慣れた妻の体だが、このいやらしい肢体には毎度感銘を受ける。体が乾いたら乾いたで、小さくしぼんだ胸と無邪気な顔つきで甘えてくる。それもまた格別だが、このボリューミーな乳房には彼女の故郷たる、海の恵みがたっぷりと詰まっているのだ。武雄の作る海鮮ラーメンと同じように。
 この柔らかな感触をダイレクトで味わうため、武雄は毎晩全裸になってから彼女の元へ向かう。フウとの交わりはいつも、海を泳ぐような感覚だった。

「たけお、きょうもがんばった」

 フウはその大きな膨らみを持ち上げる。彼女の目の前にはいきり立った、愛する夫のペニス。気性の穏やかなフロウケルプも、これを前にしては情熱的になる。

「ごほうび、ぱいずり」

 にっこり微笑むと、フウはその谷間で武雄のペニスを挟み込んだ。

「おふ……!」

 武雄は思わず声を漏らしてしまう。何度味わってもこの胸の感触は飽きない。彼女から採れる出汁と同じように、底のない味わいなのだ。
 夫の反応に気を良くしたのか、フウは乳を上下に揺り動かした。滑らかで滑りを帯びた肌の感触に加え、谷間に挟まれた海藻がまた気持ち良い。粘液による潤滑だけでなく適度な摩擦感を持ち、ペニスの性感を絶妙に刺激するのだ。
 股間にパイズリの刺激を受けながら、武雄はあるものを渇望した。極上の柔乳に溺れそうになりながらも、快楽の海から辛うじて顔を出して言葉を紡ぐ。

「なあ、フウ……まんこを……」
「……おー」

 思い出したように目を見開き、フウはゆっくりと体を反転させはじめた。ぬめりを帯びた彼女の体は滑りがよく、滑らかに向きを変える。その間も胸の谷間は肉棒を捕らえて離さない。
 フウが百八十度回転すると、彼女の股間が武雄の目の前に来た。そこを隠していた海藻もひらりと退き、つるりとした割れ目が露わになる。女性の最も淫らな、そして最も尊い部位だ。緑がかった肌でも、僅かに見える女性器の中はピンク色で、艶めかしく収縮している。そこから垂れるスープに、武雄はむしゃぶりついた。

「ん……♥」

 ねじ込まれた舌を感じ、フウが声を漏らす。

「たけお、フウのおまんこ、好き……だよね……♥」

 少し照れくさそうに、フロウケルプの妻は微笑んだ。何度も舐め上げると、そこからはとろみのある濃厚なスープがどんどん垂れてくる。かぐわしい香りに出汁の旨味が濃縮され、しかも濃厚なのに下品な味ではない。武雄だけが味わうことのできる、最高のスープだった。

「あっ……きもち、いい……♥」

 陰核を舌先でつついて妻を悦ばせながら、溢れ出るスープを飲み干していく。ラーメンの器を持つように、彼女の白いお尻に手を添えていた。胸のサイズに比して引き締まった臀部だが、触るとしっかりとしたボリュームと弾力を味わえる。
 夫への感謝を表すかのように、フウも胸を激しく動かした。絡みついた海藻がズルズルと音を立てる。ペニスは完全に乳肉に溺れ、時々酸素を求めるかのように亀頭が顔を出すだけだ。そのもちもちとした圧迫感に耐えかね、武雄のペニスは脈打ちを始める。

「……あ、出る……?」

 武雄はクンニに忙しく喋れない。しかしフウは乳房に伝わる感触からそれを察し、ペニスをその柔乳に沈め、優しく押しつぶしてあげた。

「〜〜ッ!」

 胸の中でペニスが嬉しい悲鳴を上げ、ドクドクと精を吐き出す。沈没船の油が水面に浮かぶかのように、胸の谷間に白濁が染み出してくる。

「ん……あたたかいよ……♥」

 うっとりとした表情で、夫の精を受け止めるフウ。海の魔物は男の温かみを有り難がる。胸の谷間へ「中出し」された白濁の熱に、フウはしばらく恍惚に浸っていた。

 妻の天然スープを飲み干し、そのお尻に手を添えたまま、武雄はふと息を吐いた。全てを出し尽くすような、気持ちの良い射精だったが、彼はもうインキュバス。すぐにペニスが元気を取り戻し、フウの乳肉を押し広げるように勃起する。

「……フウ、セックスするか?」
「……んーん。もっかい、ぱいずり」

 悪戯っぽく笑い、フウは胸による摩擦を再開した。先ほど出した白濁が糸を引き、にちゃにちゃと卑猥な音を立てる。そして女性器から垂れるスープも量を増した。
 股間に天国を感じながら、武雄は愛妻のそこを舐め続けた。

 こうしてお互いを味わい、交わることで、取れる出汁の味も良くなることを二人は知っていた。この店のラーメンは、日々の愛の営みから生まれる一杯なのだ。










油そば『電撃作戦』


 油そば。それはつけ麺と並ぶ“新たなラーメン”である。店によっては「汁なし」「もんじゃそば」などとも呼ばれる、言わばスープ無しのラーメンだ。名前に反してあっさりと食べられ、なおかつボリュームのあるこの麺は学生に好まれ、今や様々な発展を遂げた。通常のラーメンと同じトッピングのみならず、肉や生野菜など様々な具を乗せたものも存在する。
 ダンジョンの中には、そんな油そばを専門に扱う店『電撃作戦』がある。暖簾にはその名の通り稲妻が描かれ、毛筆で書かれた逞しい文字がなかなかのインパクトを出していた。

 その前に、セーラー服の少女が佇んでいた。髪を三つ編みに結い、メガネをかけ、物憂いげに俯いている。良く言えば上品だが、悪く言えば地味な女の子だ。彼女は暖簾と自分の体を交互に見つめ、思い詰めた顔で考え込む。入るのを躊躇っているようだ。
 しばらくして、意を決して店の戸を開ける。車輪のついた引き戸は滑らかに開いた。まだ開店直後なためか、店内に他の客はいない。狭いながらもよく掃除された店だった。店主の趣味だろうか、棚に戦闘機や戦車の模型が飾られている。

 カウンターの向こう、調理室に見える背中に、少女はごくりと唾を飲んだ。青と紫が入り混じった髪と、その頂点から生える尖った獣の耳は人外の証だ。ゆっくりと店内に踏み入ると、彼女が何やら呟いている言葉が聞こえた。

「……ッたく。4DXでもなんでもいいけど、女房置いて映画館行くなんて酷い話があるかよ。そりゃアタイだって、映画観ながら自家発電しちゃうのは悪いと思ってるけど……それにしたって酷いじゃないか……」
「あ、あの」

 少女が声をかけるも、その女性は気づいておらず、髪と同じ色の尻尾を左右に振るのみだ。苛立ちが体に表れているのだろう。その周囲、空気中にパチパチと青白い火花が見え、少女は再び生唾を飲んだ。

「ああ、クソッ。大体、頭おかしいだろ、DVDとブルーレイ発売記念に上映延長って。何回延長するんだよ。そりゃ家で見たんじゃ物足りないのは分かるけどさ。特に立川で見ちゃうと普通の映画館の爆音でも物足りな……」
「あのッ!」
「うっわわわ、っと」

 思い切った出した大声で、魔物の女性はようやく気づいた。慌てた様子で振り向き、咳払いを一つする。

「いらっしゃい。一人かい?」

 ぶっきらぼうな挨拶に、少女はこくりと頷いた。顔が赤くなっている。彼女……雷獣の美しさに息を飲んだのだ。目つきはきついものの、野性的な美しさを持つ美女だった。背も高く、エプロンの下にはふくよかな膨らみがある。モデルのような体型に加え、その電気を纏った髪の輝きはネオンのようだった。
 身振りで座るように促され、カウンター席に着席する。雷獣のおかみ……ヒカリはグラスに水を注ぎ、少女の前に置いた。続いてメニューを突き出す。乗っているのは全て油そばだ。

「決まったら言いな」

 いつもならもう少しは愛想が良いことだろう。しかし夫と離れている魔物娘は不機嫌になりやすい。
 そんな彼女にいささか怯えながらも、少女は顔を上げる。メニューを見ることなく、すでに決まっていた注文を口にする。

「真雷電麺をください!」

 その言葉に、ヒカリの耳がぴくりと動いだ。続いて少女の顔をまじまじと見つめる。雷獣の瞳は中で稲妻が弾けているかのようで、見つめられた者は大抵その美しさに見入っってしまう。この少女もそうだった。

「……お嬢ちゃん、前に一回来たっけ。名前は?」
「村田祥子です」
「祥子ちゃん、あんた人間だよね? 男や魔物ならいいけど、人間の女の子がアレを食ったら……」
「いいんです!」

 祥子は思わず立ち上がった。そして憧れの人……恋愛とは違う、女性としての憧れを抱く相手へ、自分の心中を打ち明けた。

「私……おかみさんみたいな、綺麗な魔物になりたいんです!」

 気恥ずかしさからか、少女の瞳は潤んでいた。ヒカリは少しの間、それをじっと見つめていたが、やがて口元に笑みが浮かんだ。同時にその目つきは何か可愛らしいものを愛でるような、あるいは我が子を見る母親のような、優しげなものとなる。
 雷獣は身を屈めると、カウンターの下から木の板を取り出した。ベニヤ板を切り抜いた五十センチほどの札で、何かに引っ掛けられるよう紐を通してある。マジックで大きく書かれているのは『本日貸切』の四文字だ。

「こいつを表にかけてきな」



 ……ネーミングが若干厨二臭いメニュー・真雷電麺。この店の看板とも言える油そばで、リピーターが続出する人気の品である。しかし村田祥子がこれを食べたいのは、その味目当てではなかった。
 そしてヒカリは夫不在の苛立ちを捨て、悩める少女のためにその一杯を拵えた。

「お待ち」

 少女の目の前に置かれたのは、味玉、海苔、チャーシューなどの具が乗った、所謂《正統派》油そばだ。汁なしと言っても底にはごま油をベースとしたタレが仕込まれており、よく混ぜて食す。しかし祥子が箸を手にしたとき、ヒカリは敢えて一つことわった。

「絶対に振り向かない、後悔しない。その覚悟ができてるなら、食べな」

 その言葉に祥子は一瞬だけ考えた。だがヒカリの顔をちらりと見ると、すぐに「いただきます」と言って麺を混ぜ始めた。その手つきをじっと見つめ、雷獣は微笑を浮かべる。この少女と同じことを願い、真雷電麺を注文する女は以前にもいたが、誰一人後悔はしなかった。それでも必ず相手の決心を確かめるのが、彼女の信条である。

 麺を混ぜ、タレと和え、湯気に香ばしい香りが混ざる。食欲ももちろんあった祥子は曇ってきたメガネを外し、麺を箸でつまみ上げる。タレが絡み、艶やかな色合いとなった麺を少しの間見つめ、改めて思った。この一杯が、自分の人生を変えるのだ、と。
 少女は振り向かなかった。最初の一口を口に入れ、つるりと啜る。そのとき小さな唇の周りに、何かがパチパチと弾けた。

「……っ!」

 祥子の体はピクリと震える。そして二口、三口と油そばを啜り、その度に口元で電気の火花が爆ぜた。次第に息が荒くなり、頬も紅潮していく。痛みなどではない、心地よい電気の刺激だった。ヒカリの帯びる電流が込められたこの麺を食べれば、一口ごとに刺激的な快感を得られるのだ。油そば自体の味と相まって、それは癖になる感覚だった。
 だが雷獣の魔力である電流を体に取り込めばどうなるか、それはすぐに分かることだ。

「はっ……はっ……!」

 無我夢中で麺を啜り、チャーシューを噛み締め、溢れ出る肉汁に恍惚となる。コシのある麺を噛みしめたときも、口の中で電流が弾けた。
 食べながらヒカリの姿をちらりと眺める。白い肌に、光る髪。目の奥で輝く雷光。ふくよかな胸に、滑らかな肢体。やっぱり美しい人だ。彼女の力が今、自分の体に流れ込んでいるのだ……そう考えると、祥子の体はますます熱くなった。

 最後の一口が食道を通って行った後、彼女は空っぽの器に虚しさを感じた。胃に流し込んだ麺は消化されながらも、まだ電気を帯びて刺激を与えてくる。だがそれは微弱なもので、到底満足はできない。
 焦らされるような気分にたまりかね、祥子はヒカリに頼んだ。

「あの……お代わりを……」
「必要ねーよ」

 言葉を遮り、ヒカリは身を翻した。ふさふさとした尻尾を揺らしながら、カウンターの出入り口を通り、客席へと回る。彼女が目の前に来たとき、祥子は静電気のようなぞわぞわとした力を感じた。雷獣が体に帯びる電気、つまり祥子が欲している刺激だ。
 すでに祥子はその電気の虜となっていた。思わずヒカリに抱きつきたい衝動に駆られ、しかし次の瞬間にはそれどころではなくなり、目を見開いた。

 ヒカリが、服を脱ぎ始めたのだ。

「充電の仕方、教えてやるよ」

 エプロンも割烹着も脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿となった雷獣の女将。大きな胸が自らを主張するように、ぷるんと揺れる。同性相手とはいえ、恥ずかしげもなく裸体を見せつける姿に、人間の少女は得体の知れない美しさを感じてしまった。
 全裸で椅子に腰掛け、ヒカリはゆっくりと股を開く。つるりとした女の割れ目が、脚に引っ張られて僅かに広がった。その間に見えたピンク色の部分に、自ら指を這わせる。

「ん……」

 くちゅり、と小さな音がした。夫に置いて行かれた反動からか、指で一回なぞっただけで愛液が滴る。パチッと青白い火花が散り、ヒカリは快感に顔を綻ばせた。
 そのまま性器を広げ、小陰唇や陰核など、自分の感じるところを愛撫していく。雷獣は自慰が好きで、夫を得た個体でもよく自分の手で行為を行う。調理師としてプロ意識の高いヒカリは仕事中に股間を弄ったりはしないが、客に見えないように乳首をまさぐることはよくある。その快感によって雷の魔力が活性化し、生まれた電流がさらなる快楽を生むのだ。

 女性器を中心に電気の火花が弾け、彼女の体を覆っていく。その眼前にいる祥子はいつの間にか息が荒くなっていた。ヒカリが帯びた電流が、間接的に彼女の体を刺激しているのだ。肌にビリビリとした刺激を受け、頬が紅潮し、眼鏡が曇る。
 悩める人間の少女を眺めながら、ヒカリは自慰を続けた。

「あはぁ……これが……キモチイイ……♥」

 パチパチと弾ける電流、垂れ流される艶やかな声。愛液が椅子と床を濡らす。その汁が付着した手で乳房も揉みしだき、たわわに実った巨乳が粘液にまみれていく。自分に憧れる少女に痴態を見せつけ、そしてクスリと笑う。

「ほら、一緒にシてみなよ。恥ずかしがらないでさ……♥」
「……はい」

 催眠術にかかったかのような、夢見るような表情で、祥子は言われるがまま自分の股間へ手をやった。スカートをめくり上げると、白い清楚なショーツが露わになる。それを脱ごうと指をかけたところで手を止めた。
 陰毛を見られるのが恥ずかしかったのだ。魔物は毛皮を有する種族を除き、髪以外の体毛は生えない。子供のようにつるりとした女将の女性器を見ると、自分の平均より少し毛深い(と、本人は思っている)股間が恥ずかしく感じてしまった。
 少し迷った後、彼女は下着の上から割れ目を愛撫した。

「ひゃっ♥」

 ぐっと指を押し付けた瞬間、思わず椅子から小さく飛び上がった。触れた刺激だけではなく、先ほどから求めていた電流が感じられたのだ。さらに息を荒げながら、自覚する。その電気が自分の体から発せられたことに。
 祥子は右手でひたすら、ショーツの上から性器を弄った。白い生地に汁が染み出し、体にぴったりと張り付いて割れ目のラインが浮かび上がる。空いた左手はセーラー服の下へ入れられ、控えめなバストを愛撫する。無我夢中だった。自らを慰めれば慰めるほどに、電気が沸き起こってくる。自分が人間ではなくなっていくのを自覚しながら、彼女は充電を続けた。

 ショーツの下で電気が光るのが透けて見える。雷獣の魔力による魔物化は本来、比較的ゆっくりと進行するものだ。しかし油そばに宿った魔力を体内に取り込んだため、祥子の魔物化は急速に進んでいた。性感帯への刺激だけでなく、臀部にムズムズした感触を覚える。人間にとってほとんど意味がないとされる器官、尾てい骨が伸び、皮膚を突き破ろうとしているのだ。それさえ脳が快感として処理し、痛みを感じることはない。

 曇った眼鏡がぽろりと落ちる。とろけた笑みを浮かべた祥子と目が合い、ヒカリはふいに立ち上がった。

「じっとしてな……♥」

 ぺろりと舌なめずりすると祥子の肩に手をかける。人間の華奢な感触を楽しみながら、彼女を無理やり椅子から引き摺り下ろし、床に押し倒す。突然のことに驚く祥子だが、その表情にはむしろ期待の色があった。

 ヒカリの秘部からは電流と愛液が垂れ流され、それが祥子の股間にぽたぽたと垂れていく。彼女の手を押さえつけて自慰を中断させると、腰を落として互いの股間を接触させた。

「はぅぅっ!? んっひゃぁぁぁん♥」

 大きな声を上げ、人間の少女は痙攣を起こした。全身を電流が覆い、身体中が性感帯となったような感覚を受ける。一気に絶頂へ追いやられ、あまりの気持ちよさに視界が明滅する。
 ヒカリは彼女の羞恥を察していたようで、下着を脱がせたりはしなかった。しかし半ば意識を失いかけている彼女に、容赦なく電流を浴びせる。

「ふあぁぁぁっ♥ ら、らめぇ♥ ひ、ひグゥーッ」

 人間の許容量を超えた快感にガクガクと震え、少女は哀れにも潮を吹いて失神してしまう。するとヒカリはカウンターから冷水の入ったコップを取り、口に含んで彼女の顔へ吹きかけた。祥子が冷たい感触に目を開けると、そこへ更に電流。発電する女性器が下着越しに接触し、その作用でどんどん快感が増幅されていく。
 祥子は失神と失禁を繰り返し、店の床を汚しながら、拷問的な快楽に身を委ねるしかなかった。



 そしてしばらくした後。ヒカリは祥子をうつ伏せに寝かせた。当人はなんとか意識が回復したらしく、小刻みに呼吸を整えている。黒々としていたお下げ髪は青い光を放つようになり、その瞳も幻想的な、しかしどこか凶暴さを秘めた青色に変わっていた。
 汁でぐちょぐちょになったスカートを剥ぎ取り、その下のショーツも脱がせる。白いお尻が露わになった。その谷間の上にちょこんと、青い毛で覆われた小さな突起が顔を出していた。それを指先でつまみ、ヒカリは無造作に引っ張る。

「あっ……♥」

 祥子が小さく声を漏らした。生えかかっていた物がずるりと引っ張り出され、ふさふさとした長い尻尾ができあがる。脱がせた下着には抜け落ちた陰毛が溜まっていた。愛液で股間に張り付いた毛を濡れ布巾で拭き取ってやると、つるりとした女性器が露わになった。
 続いて彼女の頭に手をやり、髪の合間から出ている二つの突起を引っ張る。尖った耳がにゅっと姿を現した。ヒカリとお揃いの、獣人の耳だ。

「ほら、起きられるかい?」
「……はい」

 手を借りながら、祥子はゆっくりと立ち上がった。耳や尻尾を手でまさぐり、新しくなった体の感触を確かめる。しかしやがて、その手は股間へと向かってしまった。
 そんな彼女を微笑ましげに見つめ、頭を撫でてやるヒカリ。

「今日のお代はツケでいいよ。早く目当ての男の子に会いに行きな」

 その言葉に、祥子のできたての耳がピクッと動く。

「ど、どうして……」
「分かるさ、そりゃ」

 ヒカリはニヤリと笑った。

「あんたみたいな子が、昔いたんだよ。どうしようもないニブチンを好きになっちゃって、振り向かせたくて魔物になった子が」
「そ、その人は今……?」
「幸せに暮らしてるよ。だから祥子ちゃんも、とっとと行ってきな!」

 祥子の肩を支えながら、店の戸をガラリと開け放つ。そしてポンと背中を押し、外へと突き出した。
 前につんのめり、地面に手をついてしまった祥子に、先ほど脱がされたショーツとスカートが放られる。その背後で戸がピシャリと閉められた。

 下半身を丸出しにしたまま、祥子はしばらく往来で股間を弄っていた。ピリピリと発電されるに従い、ぼんやりとした表情が次第に変わってきた。口元に笑みが浮かび、気弱そうだった眼差しも、獲物を見つけた肉食獣さながらの凶暴なものへと変化する。
 衣類を小脇に抱え、新たな雷獣は駆け出した。下半身のみ裸の女子高生に、行き交う人々は一瞬目を止めるも「ああ、魔物か」の一言で済ませる。そういうご時世なのだ。


「……いい子だなぁ」

 祥子の後ろ姿を窓から見送り、ヒカリは呟いた。素っ裸のまま雑巾を手に取り、床を拭き始める。ただ空いた手でついつい自分の股間を弄ってしまうため、拭いたそばから愛液で汚してしまう。
 こうなれば開き直って、亭主が帰ってくるまで自慰にふけるしかないだろう。そして女房を置いて映画を観に行った不届きな夫に、充電した電気を全部お見舞いしてやろう。魔物になったとき、最初のセックスでそうしてやったように。そう考えるとヒカリの股間はますます濡れてきて、もう掃除どころではなくなってしまった。

 表にかけた臨時休業の札は、今日は外せそうにない。











 ……いかがだっただろうか?
 一先ずオススメの二軒を紹介してみたが、あくまでも試食程度のボリュームだったかもしれない。

 食べ足りなければまた、このラーメンダンジョンを訪れてみるといい。そのときはまた別の、至高の一杯をお届けしよう……
16/09/10 21:21更新 / 空き缶号

■作者メッセージ
お読みいただきありがとうございます。
魔物娘withラーメンというネタでした。
もしかしたらいずれ、もっといろいろな店を書くかもしれません。
しかし今はもう一回別の短編を投稿したら、いい加減に野鍛治を再始動させます。

ちなみに私は蕎麦好きですが、端境期の夏場はラーメンもよく食べます。
さらにどうでもいいことですが、早出の朝はフィンランド製自走砲に乗った女子高生がサッキヤルヴィのポルカを奏でながら重戦車を蹴散らすシーンを見ると良い眠気覚ましになりますね。

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