後編
「捕虜どん、石楠花さんの所へ下地を持って行ってくれ」
「へぇい！」
「捕虜どん！ 枕が破れたんで直してくれ！」
「あいよ、ちょっと待ってな！」
朱に交われば赤くなる、という言葉がジパングにはあるらしい。この色茶屋に逗留して一ヶ月、ジパング人の若い衆と一緒に仕事をするようになり、すっかり馴染んでしまった。口調まで周りの連中のが写ってしまう。
店には他にも魔物の娼婦……正しくは『遊女』というのが大勢いる。中には下半身がムカデの女もいて、これを抱く気になるのかと驚いたものだ。そのとき露骨に気味悪そうな目で見てしまったため、相手には泣かれ、つつじには叱られ、平謝りするしかなかった。今では仲直りして上手くやっている。番頭の獣人（最初はアナグマかと思ったが、タヌキというらしい）も、他の従業員や遊女も親切な奴らだ。みんな俺を捕虜どんと呼ぶのは何とかならないものかと思うが。
魔物も、それと一緒に暮らす人間も、悪い奴らではなかった。魔物は人間を食料とは見なしていない。彼女たちにとって、人間は生殖の相手として、愛し合う伴侶として必要な存在なのだ。だからこの店の遊女も婚活のため働いている者が多く、遊びに来る男も金を払って身請けしていく奴もいれば、いつまでも馴染みの遊女の部屋に入り浸って居残りをする奴もいる。
変な娼館だ、と思うが、俺もそんな連中を笑えないだろう。
仕事が終わった後は相変わらず、つつじの部屋で寝泊まりしていた。彼女にひざまくらされ、耳を舐めてもらい、体の垢を落としてもらう。体の中に溜まった物も舐めとってくれる。毎晩毎晩、至高の快楽と優しさを与えてくれるのだ。
彼女には感謝している。だが俺にはどうしても、やらねばならないことがあった。
脱走である。
「おい、捕虜どんはどうした？」
「さっきから見てないけど」
「おいおい。あの人一応捕虜なんだから、誰か見張ってなきゃいけねェよ」
「あ、そういえば捕虜どんは捕虜だったわね」
能天気なジパング人たちの目を盗み、俺は店から抜け出した。裏口から見張りがいないことを確認し、路地を歩く。初めて『琴月庵』の外へ出たが、周りの建物は古く、崩れている物もある。つつじから聞いた話ではここはルージュ・シティの北地区で、廃墟だった建物をそのまま利用している施設が多いそうだ。そしてジパングの色茶屋のみならず、あらゆる『色』の店が軒を連ねている、とも。
『琴月庵』の中からだと、外はほとんど見えないようになっている。夢の一時を過ごすための空間なので、俗世間が見えないようになっているらしい。確かに馴染みのないジパング様式の店の中で、夢の中にいるような気分にもなった。加えて普通の娼館とは違い、金はあっても粋でない客は叩き出すのが流儀らしい。
その夢から抜け出したところで、恐らく現実へ還ることはできないだろう。還ったところで、それは夢から悪夢へと乗り換えるだけだ。
それでも、脱走した。番頭から雑用の小遣いにもらった銅貨、銀貨をポケットに入れ、アテもなく街へ出る。逃げ切れるとは思っていないし、教団に戻ろうとも思わない。教団では魔物との戦争で行方不明になった者は全員戦死扱いになることを、俺は知っている。そして殉教せず捕虜になった者が帰還したとして、どう扱われるかも。しかし、やらねばならないことだった。
表通りは比較的静かなようだが、時々艶っぽい声が聞こえる。路地からもだ。魔物が人を食うのはどうやら嘘らしいが、色欲に関する話はある程度事実のようだ。ただし、彼女たちは人間と同じか、ときにはそれ以上の『真心』を持っているという点で、教団の教えは間違っている。つつじが教えてくれた。
目立たないように、しばらく路地を歩いた。ときどき人間と魔物が交わっている現場に遭遇したが、俺は見て見ぬ振りをして通り過ぎたし、向こうもお互いのことしか眼に入らないようだった。この街では自然なことなのだろう。
やがて薄暗い小道の先に、光が見えた。日は傾き、魔力の街灯に火が灯っている。店の売り声や子供の笑い声、さらには音楽も聞こえてくる。繁華街へ辿り着いたようだ。人混みに紛れ込んでしまえば当分は見つからないだろう。俺は大通りへ足を踏み出した。
「号外、号外！ 地底遺跡について新たな発見！」
「おやつにジェラートは如何ですか〜」
耳に入る、住民たちの声。北地区とは打って変わり、美しく整った建物が並んでいた。道脇には食べ物の屋台が出て、エスクーレ系らしき女性が氷菓などを売っている。行き交う人々は顔ぶれも種族も様々だ。ジャイアントアントが石材を荷車で運び、エルフらしき少女が動物の毛皮を担いで歩いている。道端で靴磨きをやる子供たちも人魔混在だ。
空を見上げれば、夕日に染まる雲の下をハーピーが飛んでいく。背に兵士を乗せた、恐ろしいワイバーンも見えた。屋根の上では煙突の掃除夫が、煤けた顔で町を見下ろしている。
俺は息を飲んだ。ここには文明がある。文化がある。人類の敵であるはずの魔物が、人間と共にそれを築き上げている。満身創痍の中で聞いた、あの歌もそうだ。
これが、教団が必死に滅ぼそうとする『邪悪の巣窟』の正体なのだ。人間は良くて奴隷、悪ければ家畜となって使役され、嬲られ、魔物の食肉に変えられると聖職者たちは言う。
だが路傍に座る靴磨きのガキどもを見れば、どうだろう。この町の少年少女たちは皆肌の艶が良く、肉付きも良い。煙突掃除屋の子供も、皆真っ黒な顔で笑っている。故郷の町で同じ仕事をしているガキどもは、骨と皮の上にボロを纏って寒さに震えていた。そしてたまに、栄養失調で死んだ奴が共同墓地へ送られ、大雑把に埋められる。
教団の、延いては主神の正義はもはや辻褄が合わない、ただの虚妄だ。お偉方はそれを肉切り包丁のように振り回し、集めた人間を戦場という屠場へ送り込んでいる。俺たちの戦いは、あの同士討ちからの地獄の夜は何だったのか。
駒の一つに過ぎぬ俺に、答えは出せなかった。ただしばらくの間呆然と立ち尽くし、街を眺めるしかなかった。
「……綺麗な街やろ」
不意に耳元で囁かれた。もう聞きなれた、優しい声だ。
淡い水色のキモノ姿で、つつじは俺のすぐ後ろに立っていた。童顔に柔和な笑みを浮かべながらも、少し息を弾ませている。走って追いかけてきたのだろうか。
「……つけてきたのか？」
「んー、ニオイっで分かるっちゅーか……お兄さんの精、吸うたから」
小さな手が、細い指が、そっと俺の手を握る。そして丸い目で、じっと見つめてくる。
「逃げへんの？」
「逃げられるとは思ってなかったさ。こんなにあっさり見つかるとも思わなかったが」
手を握り返すと、つつじは嬉しそうに身を寄せてきた。彼女のこうした仕草は娼婦が客に媚びて行うものとは違う。付き合っているうちに気づいた。体を触れ合わせるのが純粋に好きなのだ。そして本能による、好意の表現であるとも。
つつじは何をするでもなく、寄り添ってくれる。息遣い、体温が感じられる距離で。
「うちのこと、嫌いになったのと違うんやね」
よかった、と彼女は笑った。心配させてしまうことは承知の上でやったが、罪悪感が湧く。
「お前には感謝しているさ。茶屋のみんなにも。けど、良い思いばかりしてもいられないからな」
「せやからお兄さん、お仕事も手伝って……」
「いや、そうじゃない」
彼女の言葉を制し、ふと東を見た。太陽の方向と時間を考えれば、おおよその方角は分かる。その向こうにはこの町の砦があり、そのずっと向こうには教団の拠点がある。そこでは俺と同じような軍人が、あのガキと同じような何も知らない少年兵たちが集められているだろう。そして、次の攻勢に駆り出される。
俺の仲間たちは少なくとも、命は助かった。小隊長はすでに魔物へ恭順の意を示したそうだ。だが志願兵には魔物による治療を頑なに拒否している奴もいると聞いた。
「俺の独断で、戦友たちを背信者にした。あいつらはもう故郷へ帰れない」
戻ったところで幽閉されるか、懲罰部隊へ送られるか。殉教せず魔物の捕虜になった者は、脱走に成功しても悲惨な結末が待っている。俺とて今から教団に帰ろうとは思わない。だが故郷の神父に世話になったことは忘れていない。
「無理でも脱走くらい試みるのが、仲間と教団への、せめてもの義理立てだと思った」
「……お兄さんは優しいんやね」
つつじは微笑んで、俺の頬をそっと舐めた。いつものように舌を伸ばして、ねっとりと唾液を絡ませながら。単に食料となる老廃物を舐めとるだけではなく、愛情表現の一種でもあるらしい。タヌキの番頭はそう言っていた。
そんな彼女の言葉に、ふと負い目を感じた。
「優しけりゃ、戦争で人を殺したりしないさ」
以前従軍したいくつかの戦線を思い出す。魔物相手ではなく、匪賊征伐だった。相手は人殺しも強姦も放火も、何でもやる連中で、軍人崩れが指揮を執っているケースも多かった。俺も食い詰めて兵士になった身分なので、一歩間違えればそうした匪賊に身を落としていたかもしれない。だが奴らに陵辱された挙句腕を切り落とされた娘を見て、俺は全力で任務に当たることを決心した。
奴らは地の利を生かして隠れつつ、神出鬼没に悪事を働くため、大部隊での討伐は不可能だ。大人数の兵士を見ればすぐに行方をくらますのである。奴らに対処するにはまず、地元民を味方につけ、拠点を暴き出すこと。そして相手の数が百人なら、こちらは二、三十人程度で夜襲を仕掛け、皆殺しにすること。一人でも生かせばまた食い詰め者を集めて再起したり、他の賊に合流するからだ。
俺が殺したのはド汚い犯罪者どもだ。やったことは後悔していない。俺が殺さなくてはより多くの人間が奴らに殺されたはずだ。
だがそれでも、人の命を奪った事に変わりはない。つつじのような優しい魔物を殺さずに済んだのが、今となってはせめてもの救いか。
「お兄さん、それは違うよ」
柔らかな口調で、しかしきっぱりと彼女は言い切った。真っ直ぐに見つめてくる子犬のような丸い目。捕虜になってからいつもこの無邪気な目で見守られ、身体中を舐め回される。今はその眼差しから不思議な強さを感じた。
「うちは戦はよう行かんけど、兵隊さんたちのお話いろいろ聞いたよ。お兄さんみたいに、教団の兵隊やった人からも。皆どこか、傷ついてるんや」
つつじはふと溜息を吐いた。彼女は分かっていた。教団の兵士が魔物に降伏するのが、どれだけ異常なことなのか。俺は魔物の兵たちの歌を聞いて、彼女たちに人間的な良心があることに賭けた。それは実際に正しかったが、満身創痍でなければあんな判断はしなかったし、それでも何故降伏したのか不思議に思う。魔物の捕虜となれば必ず悲惨な末路を遂げると、教団の兵士は皆信じているのだ。それでもこの町には教団や、様々な反魔物国家から亡命してきた者が大勢いるという。
そのうち一人の話を、つつじは聞かせてくれた。
人間同士の戦争で、彼の部隊は敵国の町を攻撃した。占領に成功した後、彼とその仲間が最初にやったことは食料調達だった。遠征軍にとって兵站は最重要課題だ。敵地深くに攻め入れば、延びきった補給線を敵に襲撃され、簡単に補給が途絶える。だから占領地での収奪行為は日常茶飯事だ。
押し入った民家から食料を奪ったとき、彼らは押し入れに年頃の娘が隠れているのを見つけたという。そしてまるで、それが自然なことであるかのように、その娘を強姦した。相手が泣こうが喚こうが、笑いながら犯した。娘の両親の眼前でやったのだ。
茶屋に来たとき、そいつは気さくで優しい好青年だったとつつじは言う。やがて酒が入り、魔物たちの優しさに触れ、心中の傷を告白したそうだ。『何故あんな真似ができたのか、自分でも分からない。俺はまともな教育を受けて育ったのに』……そう言って涙を流していたという。今では遊女の一人と結婚して静かに暮らしているそうだが、恐らく罪の意識は永遠に消えないだろう。そいつは俺が殺した匪賊とは違い、心根まで外道になれなかったのだ。
「……ええ人も悪い人も、そうやって傷ついて、壊れてまうのが戦や」
悲しそうに言うつつじを見て、俺は急に自分が先日まで所属していた軍隊が、その上層部が情けなくなった。大義を振りかざす司祭や将軍よりも、この魔物の遊女の方が、ずっと戦争の恐ろしさを分かっているのだ。これでどうして教団が魔物に勝てようか。
だが彼女は俺の手をしっかりと握り、温かな微笑みを向けてくる。
「うちは戦から逃げるのも勇気やと思うで。友達を助けるために勇気出したお兄さんが、優しくないはずないやろ」
「……つつじ……」
何を言うべきか迷う俺の口に、つつじは舌を伸ばしてきた。唇とねっとりと舐め、味わい、吐息が顔にかかる。悪戯っぽく笑って、彼女は俺の手を引いた。
「これからお兄さんには、うちが優しくしたる。せやから今日は帰ろ？」
「……ありがとな」
結局口から出た言葉は、感謝の一言だけだった。だが自分が何故魔物に降伏しようと考えたのか、分かった気がした。
失いたくなかったのだ。戦友もだが、それ以上に……
己の、人間の心を。
…………
………
……
『琴月庵』では俺のことを探していたが、つつじが連れ出したというカバーストーリーで事なきを得た。番頭と店主は察していたようだが、「まあいいさ」で済ませてくれた。今ひとつ脱走した気になれないが、俺にとって意味はあった。この町と魔物たちの真実が、はっきりと分かったのだから。
この茶屋で客に出す料理は外注で、近所のジパング料理屋に頼んでいる。しかしまかない飯を作れるくらいの台所はあり、俺も他の若い衆と一緒に食事を済ませた。
「歯磨き、してあげる」
夕食後、つつじは俺を部屋へ呼んだ。向き合って座らされると、彼女は俺の頬に白い手を添える。掌の柔らかさと体温を感じた。目と鼻の先にはつつじの顔。心なしか彼女の頬もぼーっと赤く染まり、瞳は潤んでいた。童顔ながらどこか艶やかな顔立ちに、しっとりとした色気が加わる。
「お口、開けて」
言われるままに開口する。つつじの小さな口が開き、赤い舌がにゅっと姿を見せた。唾液で濡れた、艶めかしくうねる舌だ。それが長く伸びる姿も、今となってはひたすら官能的な美しさを感じる。下半身が蛇や虫の魔物が相手でも、やがてそれを美しく感じるようになるのだろうか。
「ぁー……」
俺が口を閉じないよう、指で顎を抑えながら、つつじは舌を挿入してくる。舌と舌が触れ合ったとき、背徳感を伴う快楽に背筋がぞくりとした。
彼女の舌がゆっくりと蠢き、俺の口の中を舐め回す。『歯磨き』の言葉通り歯を一本一本、舌先で丁寧に擦っていく。裏表両方を舐め、奥歯の方へ。『耳かき』と同じように優しく、真心のある奉仕だった。
だが次第に、つつじの表情が蕩けてきているのに気づいた。いつも男根を舐めるときもうっとりとしているが、今はそれに興奮の色が見える。
「んっ……ふっ……ぅ……♥」
息遣いが徐々に荒くなり、熱い吐息が顔にかかる。舌の動きも徐々に激しくなってきた。つつじの口の端からも唾液が垂れ、胸を濡らしていた。その胸元もはだけかかっており、膨らみと谷間が見えた。何とも滑らかな肌で、手触りの良さそうな乳房だ。
「はぁっ……♥ ぁ、ん……♥」
口の中では舌がうねり、俺の舌と握手するかのように絡み合う。唾液を飲まされ、段々思考が蕩けていく。
彼女の胸に手を触れた。このくらいで怒りはしないだろうと思ったからだ。実際に彼女は怒らないどころか、俺にぐっと近づいてきた。頭がぼんやりとしたまま、彼女の懐へ手を入れる。柔らかな膨らみを揉むと、つつじの体がぴくりと震えた。
「んぅぅ……♥」
可愛らしい喘ぎ声を漏らしながら、彼女はますます俺に身を寄せてくる。乳房は汗ばんでいて滑らかな肌触りで、乳首はぷっくりと膨らんでいた。軽く指に力を込めると、むにゅっと膨らみに食い込み、弾力が押し返してくる。いつまでも味わっていたいと思うような感触だった。
やがて鼻先が触れ合うほど、つつじとの距離が縮まった。彼女が何をする気なのか分かった頃には、唇同士が重なっていた。
「ちゅぅぅ……♥」
胸とはまた違う柔らかさだった。唾液で湿った唇はぴったりと密着し、愛おしく互いを貪る。情熱的な、魔性の味のするキスを受け入れながら、股間に何かが触れるのを感じた。
つつじが俺の下半身を弄り、怒張した男根を露出させた。指先の感触が竿を撫でていき、体が震える。
つつじは目を細めて、体を完全に密着させてきた。すると男根の先に、何か柔らかいものが触れる。まさか、と思い股間に手をやると、つつじの柔肌と、濡れぼそったそこが亀頭に密着していた。
俺は興奮を抑えきれなかった。口を塞がれていることもあり、彼女の了解を得ることなく……というより、今更そんなものは不要と断じ、腰を突き上げた。
「んんんぅぅぅ♥」
つつじの嬌声が、俺の口の中へ吸い込まれた。十分に濡れていた彼女のそれは、呆気なく俺のモノを受け入れてしまった。だが根元まで挿入した瞬間、急に締め付けが強まった。抜くことを許さないと言わんばかりに、みっちりと詰まった肉が男根を抱きしめてくる。愛液をふんだんに絡ませながら。
「んひっ……じゅるっ……おふぃんふぃんっ、いひぃ……♥」
重なり合った唇からダラダラと漏れる、よだれと喘ぎ声。伸びた舌が口の中で暴れ、俺の舌は弄ばれるばかりだ。その一方で、挿入した腰の方は動かない。つつじは俺の背に手を回してしっかりと抱きつき、口以外は微動だにしないのだ。
しかし不意に、先端を舐められた。一瞬戸惑った。男根は完全に彼女の女性器に包み込まれている。だが確かに、男根は挿入したままフェラチオを受けていた。鈴口を小刻みに舐められ、カリ首と裏筋にもねっとりとした舌が這い回る。間違いなく舌だ。つつじはヴァギナの中にも舌を持っているのだ。しかも三つも。
下の口、という例えそのままに、蜜壺は男根を咀嚼し、中の舌でねぶり立てる。中で男根が溶け出しそうな気持ち良さだ。キスで散々高められたところへ、このヴァギナはたまらない快楽だった。
「おいひっ……きもひっ……んんふぁ……♥」
ヴァギナの舌で味わう男根の感触は彼女にも快感を与えているらしい。キスが終わらないため結合部は見えないが、そこからは熱い愛液がとめどなく溢れていた。まるでつつじが失禁したかのように、俺の下腹部を濡らしているのが分かる。腰を動かさなくても、ヴァギナはじゅるじゅると下品な音を立てて男根をしゃぶる。
口腔を上の口、男根を下の口でしゃぶられ、いよいよ我慢ができなくなった。
一心不乱に乳房を揉んでいた手をつつじの背へ回し、強く抱きしめる。彼女にも伝わったのか、涙目で俺を見ると、しっかりと唇を密着させてきた。
そして下の口は、男根を強く吸ってきた。それに引っ張られるように、こみ上げてきたものが迸る。
「ふああぁ、ん、ちゅ、ふぁっ……！」
舌の這い回るペニスから、膣内へ精液が迸る。それを受け止めながら、つつじの体も激しく痙攣した。ぷしゅっと音を立てて、さらに熱い愛液が吹き出し、下半身にかかる。
俺たちは互いにしがみつき、絶頂の快感に震えた。どくどくと精液を放出し、ヴァギナの舌はそれを舐めては膣奥へ、子宮へと運んでいく。子供のできる場所に、俺の精液が……
「ふぅ……じゅるっ」
震えが治まってくると、つつじはようやく唇を離した。伸びた舌が俺の口からずるずると抜け、だらりと垂れる。よだれをだらしなく垂らしつつ、彼女は荒く息をしていた。
次いで脚に力を入れ、股間から男根を引き抜く。温かな膣から出た肉棒に、ひんやりとした空気が当たった。
そしてつつじの女性器を、初めて直に見た。毛が生えておらず、つるりとした割れ目から白濁がたらりと溢れている。俺の出したものと彼女の汁が混ざり合った、淫らな液体だ。割れ目からは細い舌が顔を出し、溢れた淫液をもったいないと言わんばかりに舐めとっている。卑猥な光景を見つめながら、呼吸を整える。
「……うちね」
つつじは舌を垂らしたまま喋った。発声器官が人間のそれとは違うのか、言葉は多少くぐもっているがちゃんと聞こえる。
「男の人を舐めるのは前にもやったことあるんやけど、こっちは……」
白い指を自分の股間にやり、その割れ目を広げて見せるつつじ。柔らかなピンク色の肉に白濁が絡み、何とも淫らな穴が出来上がっていた。ゆっくりと収縮し、俺を誘うかのように蠢く。
「こっちを使ったのは、お兄さんが最初で……最後やで♥」
舌をうねらせ、つつじはにっこりと笑う。そして帯を解き、胸元をはだけ、着物を脱ぎ捨てていく。一糸まとわぬ姿のつつじを見て、性欲がじわじわと沸き起こってくる。
俺も服を脱いで、つつじに覆いかぶさった。彼女は俺の頬に一つキスをすると、首筋から肩、背中へと舌を這わせてくる。その気持ち良さを感じながら、ほんの少し腰を進めると、男根は再び彼女の中へ。
彼女が与えてくれる愛情と快楽に身を委ねつつ、ふと戦友たちのことを思い出した。後から戦に駆り出されるであろう、新兵たちのことも。
俺は心から願った。あいつらの心が人間であるうちに、つつじのような魔物と出会えることを。
ーーfin
「へぇい！」
「捕虜どん！ 枕が破れたんで直してくれ！」
「あいよ、ちょっと待ってな！」
朱に交われば赤くなる、という言葉がジパングにはあるらしい。この色茶屋に逗留して一ヶ月、ジパング人の若い衆と一緒に仕事をするようになり、すっかり馴染んでしまった。口調まで周りの連中のが写ってしまう。
店には他にも魔物の娼婦……正しくは『遊女』というのが大勢いる。中には下半身がムカデの女もいて、これを抱く気になるのかと驚いたものだ。そのとき露骨に気味悪そうな目で見てしまったため、相手には泣かれ、つつじには叱られ、平謝りするしかなかった。今では仲直りして上手くやっている。番頭の獣人（最初はアナグマかと思ったが、タヌキというらしい）も、他の従業員や遊女も親切な奴らだ。みんな俺を捕虜どんと呼ぶのは何とかならないものかと思うが。
魔物も、それと一緒に暮らす人間も、悪い奴らではなかった。魔物は人間を食料とは見なしていない。彼女たちにとって、人間は生殖の相手として、愛し合う伴侶として必要な存在なのだ。だからこの店の遊女も婚活のため働いている者が多く、遊びに来る男も金を払って身請けしていく奴もいれば、いつまでも馴染みの遊女の部屋に入り浸って居残りをする奴もいる。
変な娼館だ、と思うが、俺もそんな連中を笑えないだろう。
仕事が終わった後は相変わらず、つつじの部屋で寝泊まりしていた。彼女にひざまくらされ、耳を舐めてもらい、体の垢を落としてもらう。体の中に溜まった物も舐めとってくれる。毎晩毎晩、至高の快楽と優しさを与えてくれるのだ。
彼女には感謝している。だが俺にはどうしても、やらねばならないことがあった。
脱走である。
「おい、捕虜どんはどうした？」
「さっきから見てないけど」
「おいおい。あの人一応捕虜なんだから、誰か見張ってなきゃいけねェよ」
「あ、そういえば捕虜どんは捕虜だったわね」
能天気なジパング人たちの目を盗み、俺は店から抜け出した。裏口から見張りがいないことを確認し、路地を歩く。初めて『琴月庵』の外へ出たが、周りの建物は古く、崩れている物もある。つつじから聞いた話ではここはルージュ・シティの北地区で、廃墟だった建物をそのまま利用している施設が多いそうだ。そしてジパングの色茶屋のみならず、あらゆる『色』の店が軒を連ねている、とも。
『琴月庵』の中からだと、外はほとんど見えないようになっている。夢の一時を過ごすための空間なので、俗世間が見えないようになっているらしい。確かに馴染みのないジパング様式の店の中で、夢の中にいるような気分にもなった。加えて普通の娼館とは違い、金はあっても粋でない客は叩き出すのが流儀らしい。
その夢から抜け出したところで、恐らく現実へ還ることはできないだろう。還ったところで、それは夢から悪夢へと乗り換えるだけだ。
それでも、脱走した。番頭から雑用の小遣いにもらった銅貨、銀貨をポケットに入れ、アテもなく街へ出る。逃げ切れるとは思っていないし、教団に戻ろうとも思わない。教団では魔物との戦争で行方不明になった者は全員戦死扱いになることを、俺は知っている。そして殉教せず捕虜になった者が帰還したとして、どう扱われるかも。しかし、やらねばならないことだった。
表通りは比較的静かなようだが、時々艶っぽい声が聞こえる。路地からもだ。魔物が人を食うのはどうやら嘘らしいが、色欲に関する話はある程度事実のようだ。ただし、彼女たちは人間と同じか、ときにはそれ以上の『真心』を持っているという点で、教団の教えは間違っている。つつじが教えてくれた。
目立たないように、しばらく路地を歩いた。ときどき人間と魔物が交わっている現場に遭遇したが、俺は見て見ぬ振りをして通り過ぎたし、向こうもお互いのことしか眼に入らないようだった。この街では自然なことなのだろう。
やがて薄暗い小道の先に、光が見えた。日は傾き、魔力の街灯に火が灯っている。店の売り声や子供の笑い声、さらには音楽も聞こえてくる。繁華街へ辿り着いたようだ。人混みに紛れ込んでしまえば当分は見つからないだろう。俺は大通りへ足を踏み出した。
「号外、号外！ 地底遺跡について新たな発見！」
「おやつにジェラートは如何ですか〜」
耳に入る、住民たちの声。北地区とは打って変わり、美しく整った建物が並んでいた。道脇には食べ物の屋台が出て、エスクーレ系らしき女性が氷菓などを売っている。行き交う人々は顔ぶれも種族も様々だ。ジャイアントアントが石材を荷車で運び、エルフらしき少女が動物の毛皮を担いで歩いている。道端で靴磨きをやる子供たちも人魔混在だ。
空を見上げれば、夕日に染まる雲の下をハーピーが飛んでいく。背に兵士を乗せた、恐ろしいワイバーンも見えた。屋根の上では煙突の掃除夫が、煤けた顔で町を見下ろしている。
俺は息を飲んだ。ここには文明がある。文化がある。人類の敵であるはずの魔物が、人間と共にそれを築き上げている。満身創痍の中で聞いた、あの歌もそうだ。
これが、教団が必死に滅ぼそうとする『邪悪の巣窟』の正体なのだ。人間は良くて奴隷、悪ければ家畜となって使役され、嬲られ、魔物の食肉に変えられると聖職者たちは言う。
だが路傍に座る靴磨きのガキどもを見れば、どうだろう。この町の少年少女たちは皆肌の艶が良く、肉付きも良い。煙突掃除屋の子供も、皆真っ黒な顔で笑っている。故郷の町で同じ仕事をしているガキどもは、骨と皮の上にボロを纏って寒さに震えていた。そしてたまに、栄養失調で死んだ奴が共同墓地へ送られ、大雑把に埋められる。
教団の、延いては主神の正義はもはや辻褄が合わない、ただの虚妄だ。お偉方はそれを肉切り包丁のように振り回し、集めた人間を戦場という屠場へ送り込んでいる。俺たちの戦いは、あの同士討ちからの地獄の夜は何だったのか。
駒の一つに過ぎぬ俺に、答えは出せなかった。ただしばらくの間呆然と立ち尽くし、街を眺めるしかなかった。
「……綺麗な街やろ」
不意に耳元で囁かれた。もう聞きなれた、優しい声だ。
淡い水色のキモノ姿で、つつじは俺のすぐ後ろに立っていた。童顔に柔和な笑みを浮かべながらも、少し息を弾ませている。走って追いかけてきたのだろうか。
「……つけてきたのか？」
「んー、ニオイっで分かるっちゅーか……お兄さんの精、吸うたから」
小さな手が、細い指が、そっと俺の手を握る。そして丸い目で、じっと見つめてくる。
「逃げへんの？」
「逃げられるとは思ってなかったさ。こんなにあっさり見つかるとも思わなかったが」
手を握り返すと、つつじは嬉しそうに身を寄せてきた。彼女のこうした仕草は娼婦が客に媚びて行うものとは違う。付き合っているうちに気づいた。体を触れ合わせるのが純粋に好きなのだ。そして本能による、好意の表現であるとも。
つつじは何をするでもなく、寄り添ってくれる。息遣い、体温が感じられる距離で。
「うちのこと、嫌いになったのと違うんやね」
よかった、と彼女は笑った。心配させてしまうことは承知の上でやったが、罪悪感が湧く。
「お前には感謝しているさ。茶屋のみんなにも。けど、良い思いばかりしてもいられないからな」
「せやからお兄さん、お仕事も手伝って……」
「いや、そうじゃない」
彼女の言葉を制し、ふと東を見た。太陽の方向と時間を考えれば、おおよその方角は分かる。その向こうにはこの町の砦があり、そのずっと向こうには教団の拠点がある。そこでは俺と同じような軍人が、あのガキと同じような何も知らない少年兵たちが集められているだろう。そして、次の攻勢に駆り出される。
俺の仲間たちは少なくとも、命は助かった。小隊長はすでに魔物へ恭順の意を示したそうだ。だが志願兵には魔物による治療を頑なに拒否している奴もいると聞いた。
「俺の独断で、戦友たちを背信者にした。あいつらはもう故郷へ帰れない」
戻ったところで幽閉されるか、懲罰部隊へ送られるか。殉教せず魔物の捕虜になった者は、脱走に成功しても悲惨な結末が待っている。俺とて今から教団に帰ろうとは思わない。だが故郷の神父に世話になったことは忘れていない。
「無理でも脱走くらい試みるのが、仲間と教団への、せめてもの義理立てだと思った」
「……お兄さんは優しいんやね」
つつじは微笑んで、俺の頬をそっと舐めた。いつものように舌を伸ばして、ねっとりと唾液を絡ませながら。単に食料となる老廃物を舐めとるだけではなく、愛情表現の一種でもあるらしい。タヌキの番頭はそう言っていた。
そんな彼女の言葉に、ふと負い目を感じた。
「優しけりゃ、戦争で人を殺したりしないさ」
以前従軍したいくつかの戦線を思い出す。魔物相手ではなく、匪賊征伐だった。相手は人殺しも強姦も放火も、何でもやる連中で、軍人崩れが指揮を執っているケースも多かった。俺も食い詰めて兵士になった身分なので、一歩間違えればそうした匪賊に身を落としていたかもしれない。だが奴らに陵辱された挙句腕を切り落とされた娘を見て、俺は全力で任務に当たることを決心した。
奴らは地の利を生かして隠れつつ、神出鬼没に悪事を働くため、大部隊での討伐は不可能だ。大人数の兵士を見ればすぐに行方をくらますのである。奴らに対処するにはまず、地元民を味方につけ、拠点を暴き出すこと。そして相手の数が百人なら、こちらは二、三十人程度で夜襲を仕掛け、皆殺しにすること。一人でも生かせばまた食い詰め者を集めて再起したり、他の賊に合流するからだ。
俺が殺したのはド汚い犯罪者どもだ。やったことは後悔していない。俺が殺さなくてはより多くの人間が奴らに殺されたはずだ。
だがそれでも、人の命を奪った事に変わりはない。つつじのような優しい魔物を殺さずに済んだのが、今となってはせめてもの救いか。
「お兄さん、それは違うよ」
柔らかな口調で、しかしきっぱりと彼女は言い切った。真っ直ぐに見つめてくる子犬のような丸い目。捕虜になってからいつもこの無邪気な目で見守られ、身体中を舐め回される。今はその眼差しから不思議な強さを感じた。
「うちは戦はよう行かんけど、兵隊さんたちのお話いろいろ聞いたよ。お兄さんみたいに、教団の兵隊やった人からも。皆どこか、傷ついてるんや」
つつじはふと溜息を吐いた。彼女は分かっていた。教団の兵士が魔物に降伏するのが、どれだけ異常なことなのか。俺は魔物の兵たちの歌を聞いて、彼女たちに人間的な良心があることに賭けた。それは実際に正しかったが、満身創痍でなければあんな判断はしなかったし、それでも何故降伏したのか不思議に思う。魔物の捕虜となれば必ず悲惨な末路を遂げると、教団の兵士は皆信じているのだ。それでもこの町には教団や、様々な反魔物国家から亡命してきた者が大勢いるという。
そのうち一人の話を、つつじは聞かせてくれた。
人間同士の戦争で、彼の部隊は敵国の町を攻撃した。占領に成功した後、彼とその仲間が最初にやったことは食料調達だった。遠征軍にとって兵站は最重要課題だ。敵地深くに攻め入れば、延びきった補給線を敵に襲撃され、簡単に補給が途絶える。だから占領地での収奪行為は日常茶飯事だ。
押し入った民家から食料を奪ったとき、彼らは押し入れに年頃の娘が隠れているのを見つけたという。そしてまるで、それが自然なことであるかのように、その娘を強姦した。相手が泣こうが喚こうが、笑いながら犯した。娘の両親の眼前でやったのだ。
茶屋に来たとき、そいつは気さくで優しい好青年だったとつつじは言う。やがて酒が入り、魔物たちの優しさに触れ、心中の傷を告白したそうだ。『何故あんな真似ができたのか、自分でも分からない。俺はまともな教育を受けて育ったのに』……そう言って涙を流していたという。今では遊女の一人と結婚して静かに暮らしているそうだが、恐らく罪の意識は永遠に消えないだろう。そいつは俺が殺した匪賊とは違い、心根まで外道になれなかったのだ。
「……ええ人も悪い人も、そうやって傷ついて、壊れてまうのが戦や」
悲しそうに言うつつじを見て、俺は急に自分が先日まで所属していた軍隊が、その上層部が情けなくなった。大義を振りかざす司祭や将軍よりも、この魔物の遊女の方が、ずっと戦争の恐ろしさを分かっているのだ。これでどうして教団が魔物に勝てようか。
だが彼女は俺の手をしっかりと握り、温かな微笑みを向けてくる。
「うちは戦から逃げるのも勇気やと思うで。友達を助けるために勇気出したお兄さんが、優しくないはずないやろ」
「……つつじ……」
何を言うべきか迷う俺の口に、つつじは舌を伸ばしてきた。唇とねっとりと舐め、味わい、吐息が顔にかかる。悪戯っぽく笑って、彼女は俺の手を引いた。
「これからお兄さんには、うちが優しくしたる。せやから今日は帰ろ？」
「……ありがとな」
結局口から出た言葉は、感謝の一言だけだった。だが自分が何故魔物に降伏しようと考えたのか、分かった気がした。
失いたくなかったのだ。戦友もだが、それ以上に……
己の、人間の心を。
…………
………
……
『琴月庵』では俺のことを探していたが、つつじが連れ出したというカバーストーリーで事なきを得た。番頭と店主は察していたようだが、「まあいいさ」で済ませてくれた。今ひとつ脱走した気になれないが、俺にとって意味はあった。この町と魔物たちの真実が、はっきりと分かったのだから。
この茶屋で客に出す料理は外注で、近所のジパング料理屋に頼んでいる。しかしまかない飯を作れるくらいの台所はあり、俺も他の若い衆と一緒に食事を済ませた。
「歯磨き、してあげる」
夕食後、つつじは俺を部屋へ呼んだ。向き合って座らされると、彼女は俺の頬に白い手を添える。掌の柔らかさと体温を感じた。目と鼻の先にはつつじの顔。心なしか彼女の頬もぼーっと赤く染まり、瞳は潤んでいた。童顔ながらどこか艶やかな顔立ちに、しっとりとした色気が加わる。
「お口、開けて」
言われるままに開口する。つつじの小さな口が開き、赤い舌がにゅっと姿を見せた。唾液で濡れた、艶めかしくうねる舌だ。それが長く伸びる姿も、今となってはひたすら官能的な美しさを感じる。下半身が蛇や虫の魔物が相手でも、やがてそれを美しく感じるようになるのだろうか。
「ぁー……」
俺が口を閉じないよう、指で顎を抑えながら、つつじは舌を挿入してくる。舌と舌が触れ合ったとき、背徳感を伴う快楽に背筋がぞくりとした。
彼女の舌がゆっくりと蠢き、俺の口の中を舐め回す。『歯磨き』の言葉通り歯を一本一本、舌先で丁寧に擦っていく。裏表両方を舐め、奥歯の方へ。『耳かき』と同じように優しく、真心のある奉仕だった。
だが次第に、つつじの表情が蕩けてきているのに気づいた。いつも男根を舐めるときもうっとりとしているが、今はそれに興奮の色が見える。
「んっ……ふっ……ぅ……♥」
息遣いが徐々に荒くなり、熱い吐息が顔にかかる。舌の動きも徐々に激しくなってきた。つつじの口の端からも唾液が垂れ、胸を濡らしていた。その胸元もはだけかかっており、膨らみと谷間が見えた。何とも滑らかな肌で、手触りの良さそうな乳房だ。
「はぁっ……♥ ぁ、ん……♥」
口の中では舌がうねり、俺の舌と握手するかのように絡み合う。唾液を飲まされ、段々思考が蕩けていく。
彼女の胸に手を触れた。このくらいで怒りはしないだろうと思ったからだ。実際に彼女は怒らないどころか、俺にぐっと近づいてきた。頭がぼんやりとしたまま、彼女の懐へ手を入れる。柔らかな膨らみを揉むと、つつじの体がぴくりと震えた。
「んぅぅ……♥」
可愛らしい喘ぎ声を漏らしながら、彼女はますます俺に身を寄せてくる。乳房は汗ばんでいて滑らかな肌触りで、乳首はぷっくりと膨らんでいた。軽く指に力を込めると、むにゅっと膨らみに食い込み、弾力が押し返してくる。いつまでも味わっていたいと思うような感触だった。
やがて鼻先が触れ合うほど、つつじとの距離が縮まった。彼女が何をする気なのか分かった頃には、唇同士が重なっていた。
「ちゅぅぅ……♥」
胸とはまた違う柔らかさだった。唾液で湿った唇はぴったりと密着し、愛おしく互いを貪る。情熱的な、魔性の味のするキスを受け入れながら、股間に何かが触れるのを感じた。
つつじが俺の下半身を弄り、怒張した男根を露出させた。指先の感触が竿を撫でていき、体が震える。
つつじは目を細めて、体を完全に密着させてきた。すると男根の先に、何か柔らかいものが触れる。まさか、と思い股間に手をやると、つつじの柔肌と、濡れぼそったそこが亀頭に密着していた。
俺は興奮を抑えきれなかった。口を塞がれていることもあり、彼女の了解を得ることなく……というより、今更そんなものは不要と断じ、腰を突き上げた。
「んんんぅぅぅ♥」
つつじの嬌声が、俺の口の中へ吸い込まれた。十分に濡れていた彼女のそれは、呆気なく俺のモノを受け入れてしまった。だが根元まで挿入した瞬間、急に締め付けが強まった。抜くことを許さないと言わんばかりに、みっちりと詰まった肉が男根を抱きしめてくる。愛液をふんだんに絡ませながら。
「んひっ……じゅるっ……おふぃんふぃんっ、いひぃ……♥」
重なり合った唇からダラダラと漏れる、よだれと喘ぎ声。伸びた舌が口の中で暴れ、俺の舌は弄ばれるばかりだ。その一方で、挿入した腰の方は動かない。つつじは俺の背に手を回してしっかりと抱きつき、口以外は微動だにしないのだ。
しかし不意に、先端を舐められた。一瞬戸惑った。男根は完全に彼女の女性器に包み込まれている。だが確かに、男根は挿入したままフェラチオを受けていた。鈴口を小刻みに舐められ、カリ首と裏筋にもねっとりとした舌が這い回る。間違いなく舌だ。つつじはヴァギナの中にも舌を持っているのだ。しかも三つも。
下の口、という例えそのままに、蜜壺は男根を咀嚼し、中の舌でねぶり立てる。中で男根が溶け出しそうな気持ち良さだ。キスで散々高められたところへ、このヴァギナはたまらない快楽だった。
「おいひっ……きもひっ……んんふぁ……♥」
ヴァギナの舌で味わう男根の感触は彼女にも快感を与えているらしい。キスが終わらないため結合部は見えないが、そこからは熱い愛液がとめどなく溢れていた。まるでつつじが失禁したかのように、俺の下腹部を濡らしているのが分かる。腰を動かさなくても、ヴァギナはじゅるじゅると下品な音を立てて男根をしゃぶる。
口腔を上の口、男根を下の口でしゃぶられ、いよいよ我慢ができなくなった。
一心不乱に乳房を揉んでいた手をつつじの背へ回し、強く抱きしめる。彼女にも伝わったのか、涙目で俺を見ると、しっかりと唇を密着させてきた。
そして下の口は、男根を強く吸ってきた。それに引っ張られるように、こみ上げてきたものが迸る。
「ふああぁ、ん、ちゅ、ふぁっ……！」
舌の這い回るペニスから、膣内へ精液が迸る。それを受け止めながら、つつじの体も激しく痙攣した。ぷしゅっと音を立てて、さらに熱い愛液が吹き出し、下半身にかかる。
俺たちは互いにしがみつき、絶頂の快感に震えた。どくどくと精液を放出し、ヴァギナの舌はそれを舐めては膣奥へ、子宮へと運んでいく。子供のできる場所に、俺の精液が……
「ふぅ……じゅるっ」
震えが治まってくると、つつじはようやく唇を離した。伸びた舌が俺の口からずるずると抜け、だらりと垂れる。よだれをだらしなく垂らしつつ、彼女は荒く息をしていた。
次いで脚に力を入れ、股間から男根を引き抜く。温かな膣から出た肉棒に、ひんやりとした空気が当たった。
そしてつつじの女性器を、初めて直に見た。毛が生えておらず、つるりとした割れ目から白濁がたらりと溢れている。俺の出したものと彼女の汁が混ざり合った、淫らな液体だ。割れ目からは細い舌が顔を出し、溢れた淫液をもったいないと言わんばかりに舐めとっている。卑猥な光景を見つめながら、呼吸を整える。
「……うちね」
つつじは舌を垂らしたまま喋った。発声器官が人間のそれとは違うのか、言葉は多少くぐもっているがちゃんと聞こえる。
「男の人を舐めるのは前にもやったことあるんやけど、こっちは……」
白い指を自分の股間にやり、その割れ目を広げて見せるつつじ。柔らかなピンク色の肉に白濁が絡み、何とも淫らな穴が出来上がっていた。ゆっくりと収縮し、俺を誘うかのように蠢く。
「こっちを使ったのは、お兄さんが最初で……最後やで♥」
舌をうねらせ、つつじはにっこりと笑う。そして帯を解き、胸元をはだけ、着物を脱ぎ捨てていく。一糸まとわぬ姿のつつじを見て、性欲がじわじわと沸き起こってくる。
俺も服を脱いで、つつじに覆いかぶさった。彼女は俺の頬に一つキスをすると、首筋から肩、背中へと舌を這わせてくる。その気持ち良さを感じながら、ほんの少し腰を進めると、男根は再び彼女の中へ。
彼女が与えてくれる愛情と快楽に身を委ねつつ、ふと戦友たちのことを思い出した。後から戦に駆り出されるであろう、新兵たちのことも。
俺は心から願った。あいつらの心が人間であるうちに、つつじのような魔物と出会えることを。
ーーfin
16/11/11 21:19更新 / 空き缶号
戻る
次へ