連載小説
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彼女の気持ち
大学の講義が終わって、彼氏と待ち合わせ。

約束の時間まで、もう少しあるけど、彼氏の・・・信五の最後の講義の先生はあれだから、時間はかかるでしょう。

ベンチに座って、好きな作家さんの本を読みながら待つ。
通りすがりに、色々な視線を感じるけど、まったくもって興味がない。

信五以外の視線なんて、ただただ疎ましいだけ。

「すまん!リナ、待ったか?」

と、少し考え事をしながら待っていると、私の恋人が走って近づいてきた。

待ち合わせの時間ピッタシなのに、と思いながら、腰を上げて彼の前に立つ。

「んーん、待ってない時間通りだから気にしないで。」

「でも、待っただろう?」

私の彼氏は、とても心配性だったりする。
私が、気にしないで、といっても何度も謝ってくる。
私はヴァンパイアで、太陽の光が苦手といっても、それほどでもない。

「だから、時間通り。早くいこう。」

このままだと、ずっと謝ってそうだったから、無理やり話を切って目的地に歩き出す。

こういう時に、もっと愛想よく出来ないのかと、自分に自己嫌悪してしまう。

私は、信五のことが大好き。

だから、無愛想にしていたら嫌われるんじゃないかって不安になってくる。

彼との出会いは、大学で本を読んでいるところにたまたま信五が来て、本の話題になったのがきっかけだったりする。

結構マイナーな作者さんだったのだけれど、彼が、俺も好きなんだ!って言ってくれたのが本当に嬉しくて。

というのも、私は資産家の一人娘ということもあって、変に絡んでくる男が多かった。
それに、自分で言うのもどうなのかと思うけれど、容姿も整っている方だと思う。

だから、趣味の話になっても、結局は、私に近づきたいだけなんだ、と、少し辟易していた。

そんな中で、純粋に好きな事の話ができる人ができたのが、嬉しくて。
そこから空いてる時間に話をしたり、好きな映画を見に行ったりと一緒にいることが多くなって、結果、信五に惹かれていった。

そんな、映画のワンシーンみたいな劇的な出会いを期待した人は残念。

そんなこんなで、お目当ての場所へ。
今日は私が楽しみにしていた映画の日。

昨日から楽しみにしていた分、落ち着きがなかったのか、信五に見破られてしまう。
さすが、私の彼氏はよく見ている。

「ねぇ、前の子、すっごくかわいいね。」

「ホントだ!魔物娘にしても本当に可愛いよね。」

と、後ろから話し声が聞こえてきた。
ある意味、いつもどおり。
無視を決め込んでいると、後ろから聞こえたのは、私が無視できない内容だった。

「でも、隣の男の人、彼氏かな?釣り合ってなくない?」

「確かにそうよね。冴えないというか、なんというか。」

もう、この会話で私の怒りが爆発しそうだった。
あなた達に彼の何がわかる!
彼の魅力を知らないで、好き放題言わないで!

・・・と、叫びそうになるが、せっかくのデートなので、それはできない。
せめてもの抵抗で、彼の手を見せつけるように繋ぐ。
もちろん、恋人つなぎ。

先程の会話を聞こえていたのか、少し沈んだ顔になっていた信五が幾分か明るくなっていくのに安心して、そのまま映画を見ることにする。

・・・・どんどん上昇する体温の対処に困りながら。

映画が終わって、外へ。
やっぱり、好きな映画は映画館で見るべきね。
やっぱり臨場感を味わうには、それなりの機材のあるところに行かないと。

さて、存分に映画を堪能したあとの予定は特にない。
明日も休みなので、信五との時間も、存分に楽しむ(意味深)ためのプランをねっていると、また話し声が聞こえる。

今度は若い男性の話し声。

「おぉ、あの子めっちゃ美人じゃん。声かけてみようか?」

「それもいいが、隣にいるのは彼氏か?全く釣り合ってねぇじゃん。
貢がされてるんじゃね?」

・・・・ぶち
私の中で何かがキレた。
自分のことを悪く言われたのであれば、いくらでも我慢しよう。

でも、自分の、それも大好きな人を馬鹿にされて黙っているなんてできない。
私は、ゲスな話をしている男達に、出来うる限りの敵意をぶつける。

私は魔物娘だ。
自分の愛する人を貶されて黙っているわけがない。

そんな、空気を感じてか男たちはそそくさと逃げていった。
手を出さずにいただけでも褒めて欲しい。
あれ以上言われたら、自分を抑える自信がない。

私は、彼の左腕に抱きついて、引っ張っていく。
この人は、私の彼氏だ。
誰にも悪口は言わせない。
そう知らしめるように。

引っ張って着いた場所がホテル、それも、目的がはっきりしている、魔物娘割引の効くホテル。

そこの一室を借りて、すぐに部屋に入った。

「リナ、ここはどk、んぅ!」

信五が何かを言おうとしたが、その前にキスをして唇を塞ぐ。
いつもは信五からして欲しいとねだるのだけど、今回は私から強引にキスをした。

徐々に深くなっていくキスに、腰砕けになりながらも、キスを続ける。

そこから、彼にベッドまでエスコートされて、少しずつ私の体が彼の前にさらけ出された。

信五は、そんな私の体を、食い入るように見つめてくる。

恥ずかしい。

でも、喜んでいる自分もいることに、やっぱり魔物娘なんだと自覚しつつ。
彼の愛撫を受け入れた。

「あまり見ないで、恥ずかしい。」

あまりにも見つめてくるものだから、少し釘を指すと、彼は照れながらも返事を返す。

「大丈夫だって。お前は誰が見ても、可愛・・・。」

そこで、信五の言葉が途切れた。
どうしたのだろう?
信五の表情が、見たことがないくらい暗い。
私は少し不安になりながらも、彼の言葉を待った。

少しして彼の口から出てきたのは、これも到底許せることではなかった。

「あぁ、リナは可愛いよ・・・俺なんかとは全然釣り合わないくらい・・・。」

もう、この人は、まだまだ私の愛が足りないようだ。
これは、信五にもっと私の愛を分からせる必要がある。

私は、グッと信五の胸を押して馬乗りになった。
そのあとは、感情に任せて心の中をさらけ出した。

「ほんと、信五のバカ!
私は信五の彼女なんだから、信五が可愛いって思ってくれればそれでいい。
他人の目なんか関係ない。
もし、それでも何か言ってくるんだったら、私が叩きのめしてやるんだから!」

信五は驚きの表情で見つめてくるが、これだけでは終わらない。
魔物娘のヴァンパイアが、愛する人にしかしない行為。

首筋に歯を立てて血を少しだけ啜った。

相変わらず、彼の味は本当に美味しい。

「こういうことするの、信五だけなんだから。
今日だって、もっと自分から手とか繋いで欲しかったんだからね。」

目を見つめながら、今度は優しく諭すようにいう。
信五は、まるで、目が覚めたかのように表情を明るくなって、ようやく口を開いた。

「その・・・ごめん。それと、ありがとう。」

言い終えた彼の顔は私の大好きな笑顔の彼だった。
私は無愛想だから、ちゃんと笑えていたか分からない。

でも、おそらく、今までで一番笑えていたんだろうなと思う。


まぁ、そこからどうなったかというと、
違う意味で目が覚めた彼に、獣のように求められ、朝を迎えたのは、これまた今までで一番の思い出のように思う/////

















15/10/24 22:29更新 / 心結
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■作者メッセージ
さてさて、思いつきで投稿して大火傷いたしました心結(こころむすび)です。
やっぱり、どんな状況であれ、どんな境遇であれ、好きになった男を愛し続けるのが魔物娘でありまして、そんな感じで書けているか本当に不安ではありますが、一度、目を通して頂ければ幸いです。

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