読切小説
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人虎さんの一番弟子
「よし、今日はここまでだ」

ぼくは返事をして、上げていた足を下ろして構えを解いた。バランスを崩してふらついたぼくを、人虎さんが優しく支えてくれた。

「あ、ありがとうございます!」
「今日の特訓はこれで終わりだ、夕食と風呂の用意をしよう」
「ぼ、ぼくがやります!」
「そうか?ふふ、じゃあお願いしよう」

人虎さんはぼくに微笑みかけると、竹林の中にある家へと戻っていった。堂々としたその後ろ姿に、ぼくはこっそりと羨望と恋慕の視線を向けた。

ぼくは強くなりたくてここに来た。人虎さんはぼくたちの村を山賊たちから守ってくれるすごく強い人。それなのに村の人たちに見返りも求めない高潔な人。

ぼくとは正反対だ。ぼくは弱くていつもおどおどしている。だから強くなりたくて、人虎さんに鍛えてほしいとここに来た。ぼくの両親は迷惑をかけるなと起こったけど、人虎さんは快く受け入れてくれた。

それから人虎さんの家に泊まり込みで鍛えてもらっている。でもぼくは才能がない。いつまでたっても筋肉がつかないし、技も覚えられない。人虎さんはそんなぼくに呆れることもなく、修行に付き合ってくれている。なんて優しいんだろう。

「お風呂沸きました!」
「ありがとう、先に入らせてもらうよ」
「お食事の準備しておきます!」
「お前は本当に働き者だな」

にこりと微笑む人虎さんに、ぼくは頬が熱くなるのを感じて顔を伏せた。湯浴みをして、食事をとったら寝室へと向かう。うつ伏せになった人虎さんに1日の疲れがとれるようマッサージをするのが日課だった。

「はぁ……気持ちがいいよ、お前は指圧が本当に上手だな……」
「そう言って、もらえ、て嬉しい、です」

ぼくは指を人虎さんに押し当てながら、彼女の体を見る。がっしりとした体格に余分な肉はなく、皮膚の向こうに堅い筋繊維を感じる。背中も腰も、脚も、お尻も。全部が鍛え上げられていて、触れるだけでどきどきしてしまうほどカッコいい。そして、すごく魅力的だーー。

「お前も疲れているだろう、毎日すまないな……」
「いえっ!そんな……」

心の中を見透かされたかと思い、ぼくは慌てて指圧に集中した。広くがっしりとした背中、くびれているが筋肉の詰まった腰、虎の毛皮に覆われた脚、弛みの一切ないお尻、そして尻尾に触れた時だ。

「ッ!今日は尾はいいっ!」
「あっ!はい、ごめんなさい!」

尻尾からぱっと手を離すと、人虎さんは黙って枕に顔を押し付け、深い呼吸を繰り返す。その呼吸は徐々に震え、自身を落ち着かせるように更に深くゆっくりになっていく。

「す……すまない。あ……ぅ……あっ、明日の夜。いや……ああ駄目だ、本当にすまない。明日の夜、こっ……交合してくれないか……?」

ああ、ぼくは嘘をついた。強くなりたくてここに来たんじゃない。人虎さんが好きだからここに来たんだ。そして、また『この時』が早く来てほしいと思いながら修行をしている。ぼくは高潔な人虎はんとは本当に正反対のだめな人間だ。

「も、もちろんです……!」
「すまない、本当にすまない……自分を律することができないなど、なんと情けない……!」
「し、仕方ないですよ発情期はどうしても……」

いいながらぼくは自分を嫌悪した。なにが仕方ないですよなんだ、また誘われるのを待っていたくせに。

「前回の発情期は一週間前だ、周期が早まっている。ああ、なんと情けない。お前に不要な負担を……」

自己嫌悪している人虎さんに「ぼくは大丈夫です」と白々しい言葉をかける自分に嫌気がさす。でも、人虎さんとまたえっちなことができるという邪な喜びに抗えない。

「お前もこんな色気のない女に勃たせるのは大変だろう……本当にすまな……」
「そ、そんなことありません!!」

大きな声を出すと、人虎さんは驚いたようにぼくの方を振り向いた。

「人虎さんはすごく魅力的です!筋肉がすごくてカッコいいし、強くて優しくて……修行中もずっとぼくは我慢してるくらいで!」「が、我慢……?お前、私をそんな風に……?」
「あ……っ」

血の気が引いた。ぼくが人虎さんをいやらしい目でみているとばれてしまった。心臓がばくばくと音を立て、冷たくて嫌な汗が全身に吹き上がる。

「あの、ぼく……」
「……………」
「そんなつもりじゃ……ごめっ、ごめん、なさ……」
「……明日の夜は取り止めだ」
「ごめんなさい!ごめんな、さい……!!」

「ーーすぐに始める、準備しろ……♡」



「んぅ、ちゅ……ふー……ふー……♡」

ぼくは抱え込まれるような格好で、人虎さんと交わっていた。

尻餅をついたような姿勢なぼくを、人虎さんが腕と脚でがっしりと掴んでいる。その姿勢のまま、上を向かされ口を塞がれ口内をなめ回される。人虎さんはぼくをがっちりとホールドしたまま、ばちゅばちゅと激しく腰を打ち付けてくる。

「んれ、れるれるれる……んうっ♡ふぅー……♡ふー……♡」

身動きもできず、喋ることもできず、ぼくは何度目かも忘れた射精を向かえ、精液を人虎さんの中へと放出した。

射精の快感にがくがくと体を震わせるぼくを、人虎さんは更にきつく強く抱きしめ、容赦なく腰を打ち付けてくる。

筋骨隆々の手足でがっちりと掴まれ、ぼくがどれだけ抵抗しようがその拘束から逃れられることはないだろう。そうやって圧倒的な力で押さえ込まれ、ざらざらとした舌でねっとりと口内を舐られ、喘ぐことすら許されない。かろうじて呼吸の許された鼻で息を吸い込めば、発情した人虎さんの雌の香りが鼻腔を抜けて脳にまで充満するようだ。繰り返される射精の快感でぼやける視界には獲物を捕食する肉食獣の瞳がぼくを見据えている。

「んぶ、じゅる……フゥー……♡ふぅうー……♡」

大型の肉食獣に押さえ込まれて好き勝手に貪られる被食者の恐怖、それを上書きする性交の快感を与えられ、ぼくの脳はぐちゃぐちゃに壊されてしまっている。

「じゅる、じゅるるる♡んふぅー……♡ふぅー……♡んむっ、んうぅっ♡んっんっんっ!♡」

ぼくは押し倒され、手足をがっしりと押さえ込まれた。筋肉、力、圧倒的な力量差で押さえ込まれたまま、ぼくの上でばちゅんばちゅんと腰が跳ね、打ち付けられる度にぼくは射精した。とめどなく続く射精の快感にぼくはぐるりと視線が上向くのを感じたけれど、痛いほどに押さえつけられた手足の感覚や、舐めしゃぶられる舌の感触がぼくの気絶を許してくれない。

「んじゅ♡ぶちゅ♡んれ♡れろれろれろぉ♡んっんっんぅうっ♡」

もう何もわからない。

ああ気持ちいい。
人虎さんカッコいい。
ちょっと怖い。
でも好き。
気持ちいい。
気持ちいい。
すきすきすき。
だいすきだいすき。
気持ちいい。
すきすきすき。
だいすきーーーー。

「んぅ♡んっんんっ♡じゅうるるるっ♡んぶ♡んぅっ!んんんんっ♡♡♡」

ひときわ長い射精を終えると、ぼくの中の精が空っぽになるのを感じた。人虎さんもそれがわかったのか、何時間かぶりに唇が離され、ぼくは呼吸が許された。

「はぁー……♡はぁー……♡ふふふ♡最後の一滴まで出したな♡」
「はぁあ……ふぁい……♡」
「後始末は私がやる、安心して休め♡」
「はぁ♡はふ……はぁあ……♡」
「気にするな、ちゃんとやすめ……明日もあるんだからな……♡」
「っ!はぃ……ふぁあい……♡」
「ふふふ♡可愛い返事だ♡ほら、お休み……♡」

人虎さんの手のひらで目の前が真っ暗になり、ぼくはそのまま眠りに落ちた。

大好きです、人虎さんーーーー♡
22/01/01 10:28更新 / TakoTako

■作者メッセージ
寅年と言うことで人虎さんです!!
今年もよろしくお願いいたします!!

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