連載小説
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とある従者の不思議な探検。そのよん。
「イヴァン・エル・ブストゥム・アクイラ」

 かなり言いづらそうに、ヤンがウィルの言葉を復唱する。
 ウィルは、アレクとヤンに対面する形で、所在無げに席についている。
 差し出された果実酒にも手をつけず、そわそわと未だ落ち着かない様子だった。

「長ったらしい名前だな。お前がそいつの部下なのはわかったが…なんでそんなに長いんだ」
「この国では、名前の後に治める領地の名前が連なりますから…
 私の主はアクイラ伯領の領主なのですが、ブストゥム辺境伯も兼務しておりますので」
「おいおい、二つも領地持ってるってことか。最強かそいつは」
「…私の記憶では、以前ブストゥムを治めていたのは違う方だったと思うのですが」

 顎に手をやりながら、アレクはウィルへ質問を投げかける。
 ブストゥムというのは、マルクの村から此処近辺の森を含む一帯を示す地名。
 森と山を挟んで隣国に接するこの地は、それなりの軍事力を持つ事を許された辺境伯によって統治されている。
 しかし、その辺境伯が交代したという話は、聞いたことがない。

「少し前のことなのですが…前辺境伯は、急遽病で亡くなりました。
 前辺境伯の一人息子も、数年前の国境戦で戦死しています。
 それで、私の主が、代わりに…」
「跡継ぎもいなかったってわけか。何とも、儚いことで」
「…そう、だね」 

 病。…本当に、そうだろうか。
 前辺境伯は確かに歳をとってはいたが、身体が弱っているようには思えなかった。
 彼は数年前の国境線でいたずらに兵を浪費し、国力を低下させた咎がある。
 実際に、伝染病で急死した可能性もある。しかし、どうにも腑に落ちない。
 
「ところで、お前って騎士なのか?
 そのイヴァンなんたらに仕えてるって話だが、そう腕っ節が強いようには見えねぇんだが」
「あ、いえ。私は、アクイラ伯が住まう屋敷の使用人です。
 書物や書類の整理、その他雑用などを任されております」

 確かに、ウィルの服装は騎士というよりも文官の出で立ちだった。
 年齢から察するに、書記官の見習いか何かとして、アクイラ伯の屋敷で働いているのだろう。
 
「なんで、本を整理する人の、ウィルが、ここまで、来たの?」

 そう聞いたのは、机に身体を乗り出すようにして話を聞いていたメディだった。
 まだ魔物に慣れていないのか、ウィルは少しだけ驚いた様子を見せた。
 しかし、すぐに気を取り直してメディの方へと向き、ボソボソと答える。

「その…実は、これは内密にして頂きたいのですけど…
 私の主であるアクイラ伯は、現在病に倒れているのです。
 治療薬の材料がこの辺りにあると聞き…居ても立っても、いられなくなりまして」
「その病というのは…もしかして、『黒い死神』?」
「…はい。アクイラ伯はお年を召した方ですので…そう長くは、持たないかもしれません」

 沈痛な表情で、ウィルは言葉を紡ぐ。
 騎士であるレオン達と違い、彼は長旅を得意としていないのは明白だった。
 だというのに、彼はわざわざこんな辺境までやってきた。
 彼をそうまでさせるほど、アクイラ伯は人望の厚い人物であるということ。
 アレクは改めて、彼の手腕に感心させられた。

「レオンさんとは、どういった関係なのですか? 彼が君を探していた理由を知りたいのですが」
「レオンさん…いえ、レオンハルト隊長は、私と同じくアクイラ伯に仕える騎士なのです。
 現在、アクイラ伯はブストゥム伯領の屋敷にいらっしゃいます。
 彼はそこで護衛隊長を勤めており、先日まで私も同じ屋敷で使用人として働いていました」
「コルレオニス騎士団の団員は、レオニス公に仕えてるんじゃねーの?
 さっき聴いてた話だと、あいつらはレオニス公の命令で動いてるって言ってたが」
「あ、ええと、その辺りはちょっと複雑で…」

 言い淀むウィル。
 助け舟を出すように、アレクが身を乗り出す。

「レオンさんやテオさんは、基本的にはアクイラ伯に仕えているけど、同時にレオニス公にも仕えてるんだよ。今回みたいな非常時にだけ、レオニス公はコルレオニス騎士団に所属するレオンさん達に直接指示を出せる。そうだよね?」
「は、はい。今回のマンドラゴラ捜索は、レオニス公の緊急命令によるものです。
 しかしレオンハルト隊長は、レオニス公の命令というよりも『黒い死神』に取り憑かれてしまったアクイラ伯のために動いているはずです。
 レオニス公の命令と称して調査を行っているのは、その方が都合がいいからだと思います」
「…つまり、レオンとやらはレオニス公の指示で動いてることになってるが、
 本当はアクイラ伯のためにマンドラゴラを探してるってことか?」
「はい。そうだと、思います。
 アクイラ伯が病に臥せっていることが知れたら…あまり、良くないことになりますから」

 ウィルの表情が、暗く沈む。
 レオニス公国は、貴族間の仲違いが多いことで有名な国でもある。
 ふとした拍子に奸計によって没落してしまう貴族なんてものも、珍しくない。
 アレクは、嘆息する。相変わらず、あの老人は未だ謀略の渦中に身を置いているらしい。

「成程、話は大体わかりました。
 貴方は同僚のレオンさん達には内緒で、アクイラ伯の病に効くマンドラゴラの根を探しにここまで来たと、そういうわけですね。だから、レオンさんは突然居なくなった貴方も探していた」
「ついでに聞くけどよ、どうして川になんて落ちたんだ?
 正直、お前の怪我は川に落ちただけじゃ納得できない量なんだが」

 確かに、ヤンの言うことは正しい。
 身体中に無数に存在するウィルの怪我は、どちらかというと森の枝で傷つけたようなモノばかりだった。
 ウィルは、恐怖を抑えこむように怯えた顔で、小さい声でいう。

「魔物に…襲われたんです」
「え?」
「森の中で、マンドラゴラを探していたら、帰り道が分からなくなってしまって。
 道を探して、夜の森を歩いていたら…魔物に、会ってしまったんです」

 ウィルの反応を見る限り、その魔物はメディやルイではないのだろう。
 森の中の、魔物。おそらくは、アレクが見たことがない類の。

「その魔物は、僕を見るなり追いかけてきました。
 捕まったら、食べられる――そう思い、僕は死に物狂いで逃げ出して。
 僕は何とか逃れようと、川に飛び込みました」
「で、何とか逃げ切ったところを、そこの嬢ちゃんに見つけられたってわけか。成程ねぇ」

 組んだ足の上に肘を突きながら、ヤンが呆れたような声を上げる。
 まるで馬鹿馬鹿しい物でも見るように、心底怯えた様子のウィルを見つめる。

「おいガキ。その魔物って奴は、どんな外見だった?」
「え? ええと…たぶん、ラミアだと思います。
 暗くて良く見えませんでしたけど…下半身が、蛇でしたから」

 ラミア。蛇の下半身を持つ、女性の魔物。
 そんなモノがこの森にいるなんて、全く知らなかった。
 しかし、ヤンは対して驚いた様子もなく、むしろ納得したような様子だった。

「嗚呼、やっぱりか。…ったく、あの馬鹿。阿保な真似しやがって…」

 面倒げに、ヤンが小声で悪態をつく。
 まるでその魔物を知っているかのようなその口ぶりに、アレクは瞠目する。

「ヤン…もしかして、その魔物のこと知ってるの?」
「…まあな。ガキの見間違えじゃなきゃ、な」

 そう言うなり、ヤンは椅子から立ち上がった。
 コキコキと首を鳴らしながら、小屋の出口へと向かっていく。
 メディが首をかしげながら、ヤンを視線で追う。

「ヤン、もう、帰るの?」
「ああ、ちょいと野暮用ができた。――おいガキ」
「は、はいっ?」

 煩わしげで不機嫌そうなヤンの言葉に、ウィルは背筋を伸ばしながら返答する。
 びし、と指をウィルへと突きつけながら、ヤンは言葉を続ける。
  
「お前、この森の中でマンドラゴラを探したいんだよな?」
「は、はい。…できる、ことなら」
「半端な覚悟ならやめとけ。どうしてもって言うなら行って来い。
 だがこの森の奥へいくってんなら、幾つか気をつけることがある。
 耳の穴かっぽじってよぉく聞きやがれ」
「え、あ…は、はい!」
 
 ウィルはきょとんとした顔で一瞬硬直していたが、すぐさまハッとして真剣な顔になる。
 椅子の上で姿勢を正し、ウィルはヤンへと向き直った。
 ヤンはウィルへと向けていた指を、天井へ向ける。一つ目の注意、という意味だろう。

「一つ目、やたら樹木を傷つけるのはやめとけ。森の精霊とやらの反感を買う」
「も、森の精霊…ですか?」
「二つ目、妙に動物が居る場所に着いたら、直ぐ引き返せ。『化物』が出る」
「ば、ばけっ…!」

 さっ、とウィルの顔が青褪める。
 ヤンはそんなウィルの様子に目もくれず、三本目の指を立てる。

「三つ目、一人で森を出歩くのは、やめとけ。
 少なくとも、そこの猫か嬢ちゃんに同行してもらうんだな」
「え?」
「暇だったら、俺に行ってやっても良い。タダとはいかねぇがな。
 以上だ。――せいぜい、森に嫌われねぇよう気をつけろ」

 そう言い捨てて、ヤンはガチャリと扉を開ける。
 そしていつものように、前触れ無く颯爽と立ち去ってしまう。
 唖然とした様子で、ウィルはヤンがいた辺りを見つめていた。

「えーっと…アレク、さん?」
「ん…何かな、ウィルさん」
「あ――その、どうかウィルとお呼び下さい。
 あのですね、ヤンさんは、どういう方なんですか?」
「どういう…ねぇ」

 そういえば、詳しい話を聞いたことはない。
 お互いのことを追求しないのは、暗黙の了解だった。
 森に住んでいるらしいということは知っているが、普段何をやっているのかは全く知らない。
 アレクに分かっているのは、そのひととなりだけ。

「ヤンは、変だけど、良い人」

 そう言ったのは、ヤンのジョッキを静々と片付けていたメディだった。
 どうやら、先を越されてしまったらしい。

「…そう、だね、そんな感じだよ。
 まあ、悪い人じゃないから、心配しないで」

 自然に沸き上がっていた笑みを隠すことなく、アレクは肯定する。
 ウィルはわかったようなわからなかったような曖昧な表情を浮かべながら、わかりましたと小さく頷いた。

「それで、今日はどうする?」
「え?」
「君がどうするにせよ、もう村に戻る時間もないし…此処に泊まってはどうかな。
 大分古いけど、ベッドがないわけでもないしね」
「え。そ、そんな――悪いですよ。
 一応外套もありますし…少し場所を頂ければ、外で――」
「ウィル、お泊り、するの? わーい」
「うわ!?」

 ぴょん、とメディがウィルに飛びつく。
 反射的に椅子から飛び退いてしまったウィルは、そのままメディに押し倒される。

「初めての、お泊りする、お客さんー」
「わわわっ…! ア、アレクさんん…!」 

 メディの軟体に飲み込まれながら、ウィルはじたばたと手をばたつかせる。
 …何やらメディは、ウィルに対しては妙に積極的のような気がする。
 ヤンと初めて会ったときは、あれほど警戒していたというのに。
 少しだけ、面白くない。

「…んー?」

 メディは少しの間楽しそうにウィルの頭を撫で回していたが、突然こちらを向く。
 そしてウィルを解放したかと思うと、こちらへと近づいて耳元に口を寄せる。

「もしかして…嫉妬、した?」
「っ…!」

 口に含んでいた果実酒を、吹き出しそうになった。
 体を揺らしてしまったからか、ふにゃあ、とルイが膝の上で苦情の鳴き声を上げる。
 クスクスと、メディは笑う。

「あは。アレク、可愛い」
「……はぁ」

 幸いにも、ウィルには聞こえていなかったらしい。
 訝しげな表情でこちらを見ながら、小さく小首を傾げている。
 アレクは目元を手で抑えながら、大きく息を吐き出す。

「…メディ。そろそろ夕食を作るから、水を汲んで来てくれない?」
「はーい♪」
「あ…そ、それなら、私がやりましょうか?」
「え、でも…ウィル、お客さん、なのに」
「だからこそ、です。助けて頂いたのですから、これくらいは」

 そう言って、ウィルはメディから桶を引っ手繰る。
 そして、引き止める間もなく小屋の外へと出ていってしまった。
 …水場がどこか、わかっているのだろうか。

「…メディ。一つ、良いかな?」
「ん?」
「これから、ウィルが此処に泊まることになるわけだけど…ウィルが小屋にいる間は、『ごはん』は禁止だから」
「え」

 がーん、と大袈裟な挙措でメディはその衝撃を表現した。
 口を小さく開いたまま凍りつき、そして涙目でこちらを見つめてくる。
 …少し、可愛いと思ってしまった。しかし、こればかりは仕方ない。

 次の瞬間、ぎぃ、と音を立てて扉が開いた。
 扉の向こうには、恥ずかしげな顔でこちらを見るウィルの姿。

「す、すみません…水場って、どこでしょうか…?」
「裏手を少し進んだところにあるけど…
 メディ、案内してあげて。ちょっとわかりにくいところだし」

 メディは未だ物言いたげな表情をしていたが、アレクの指示にはあっさり従った。
 ウィルの手を引いて、小屋の外へと駆けていく。
 小屋の中には、アレクとルイだけが残される。 

「マンドラゴラ…か」

 アレクはルイの頭を撫でながら、ウィルの言葉を思い出す。
 『黒い死神』のせいで、マンドラゴラの根に対する需要は今までにないほど高まっている。
 おそらく、本当にマンドラゴラの根を必要とする人間だけでなく、謀略や金儲けのために数多くの人間がそれを探していることだろう。
 嫌な、予感がした。
 
「にゃおう」

 膝の上で、ルイが鳴く。
 心配するな、と言ってくれたかのようだった。
 アレクは苦笑しながら、ルイの喉を撫でてやった。

「何も、起こらなければいいけど」

 夜の帳が、下りていく。
 ごろごろ、と気持よさそうな鳴き声を挙げながら、ルイはまたアレクの膝の上で丸くなった。
 



 ノックの音が、聞こえた。…気がした。
 いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。
 今度こそ、しっかりとノックの音が聞こえてくる。
 
「…誰?」
「イレーネでございます。お嬢様」
「入りなさい」
 
 殆ど音もたてず、扉が開く。
 扉の向こうに、長身痩躯のメイドが無表情で佇んでいた。
 頭にはやや大きめのカチューシャ。首には黒のチョーカー。
 イレーネは三白眼の気があるため、彼女の顔は常に不機嫌そうに見える。

「何か用?」
「確認したいこと、それと報告が一つずつあります。
 まず一つ目ですが、今夜のお食事は如何なさいますか?」
「…普通で良いわ。今日は、少し調子がいいから」

 実を言うと、今日も体の調子は良いわけではない。
 しかし、そろそろ身体に合わせた味気ない料理は食べ飽きた。
 たまには普通の食事も摂らないと、まともなものが食べられなくなってしまう。

「了解しました。
 次に二つ目ですが、先程商会の構成員からの報告書が届きました。
 差出人は――ニコ・チャップマン、となっております」
「ニコ…あの、青目の行商人?」

 脳裏に、一つの顔が浮かび上がる。
 確か、辺境で行商を担当していた新人の構成員。
 目端が利き、地道で着実な収益を上げている人材だが、少々勝気で野心的な男だったと記憶している。

「どんな報告?」
「中身はまだ見ておりません。私が見ても?」
「ええ。要約して聞かせて頂戴」
「かしこまりました」

 イレーネは手に持っていた手紙を開き、その中身へと視線を向ける。
 少しの間文字に視線を這わせた後、イレーネは眼を瞑りながら手紙を元の形の戻す。

「行商の一時中断と、人員の増強を求めています。
 マンドラゴラの手掛かりを見つけたため、急ぎ捜索に着手したいと」
「マンドラゴラ? …成程。『黒い死神』の、特効薬」

 私は、深々と溜息をついてしまった。
 一度は破産まで陥ったというのに、どうやらあの男はまだ懲りていないらしい。
 確かに、現在マンドラゴラの根は高く売れるだろう。
 しかし同時に、手を出せば余計な渦中に巻き込まれる可能性も高い。

「…お金にはなりそうだけれど。正直、労力に担う見返りがあるかは別の話ね」 
「マンドラゴラの手掛かりとして、マンドラゴラの葉が手紙と共に送られてきました。確認しますか?」
「いえ、止めておきましょう。
 私には本物か判断できないし、そんなあやふやな物を判断するためにお金を使いたくないわ」
「それでは、許可しないということですか?」
「…そうでもないわ。暇な人材がいれば、何人か見繕って送ってあげなさい。
 行商を中断することは許さないけど、商売に支障が出ない限りは捜索を許す、と伝えなさい」
「かしこまりました」

 深々と、イレーネを頭を垂れる。
 正直、あまり期待はしていない。
 もし本当に入手できたのであれば、儲け物という程度。

「――嗚呼、そうだ。レニィ、待ちなさい」

 レニィとは、もちろんイレーネの愛称。
 一礼し、立ち去ろうとするイレーネを呼び止める。
 重要な要件を、忘れるところだった。

「此処に書かれた『商品』だけど…もうそろそろ、届く頃よね?」
 
 机に積まれた羊皮紙のうち、一枚を取り出す。
 延々と人の名前が綴られた、『商品』の契約書。
 イレーネは微かに目を細め、そしてスラスラと答える。

「先程、馬車で到着致しました。今は全員…いえ、全てこの街の倉庫に搬入してあります」
「そう。なら、好都合だわ。食事の前に、見に行きましょう。
 直ぐに準備をして。もちろん、貴方も同行しなさい」

 イレーネの表情が、微かに変化する。
 一見すると分かりづらいが、あれはおそらく呆れているのだろう。
 イレーネは基本的には礼儀正しいが、時折表情と態度にわざと本音を見せる傾向がある。
 まあ、そこが素直で良いと思っているのだが。

「…また、観賞ですか。相変わらず、良い趣味をお持ちですね」
「選別、と言って欲しいわね。商品は、実物を目で見てみないとわからないわ。
 貴方みたいな、掘り出し物が見つかるかもしれないしね?」
「……」

 痛烈な皮肉に、痛烈な返答。
 いつもの無表情になったイレーネは、静かに一礼する。

「下でお待ちしています。
 馬車を用意しておきますので、準備ができたらお越しください」
「ふふ…わかったわ」

 足音一つなくイレーネは退出し、音もなく扉が閉まる。
 ――商会の主人というのは、楽ではない。
 今日ももうすぐ終わるが、まだまだやるべき仕事はたくさんある。
 まずは、哀れにも集められた『商品』の選別をしなければならない。
 
 私は、改めて羊皮紙――『商品』の目録へと眼を向けた。
 目録には、全く代わり映えのない商売の常套句と、数々の人名や年齢、その他情報――そして、商会の紋章が記されている。
 棘のついた蔓に絡み付かれた、黒薔薇の紋章。
 自らが創ったその禍々しい紋章を眺めながら、私は彼らの未来に思いを馳せ、暗い笑みを零した。
11/07/17 23:24更新 / SMan
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■作者メッセージ
SManです。
やっとこさ、三つ巴の三つの陣営が揃いました。
このペースで続けると、かなり長くなってしまう予感が…頑張らなければ。
しかし、あまり長いと読者の皆様が見辛い予感も。
私はあまり文章が多いと読みづらいのではという私見から、文章少なめ、改行多数な文章になってしまっているのですが…
もしかして、改行は余り無いほうがいいですかね? 
もしよろしければ、意見をお聞きしたいです。

そういえば今気づきましたが、私の作品の表示が少々アレなことになっているようですね…
なんかその…申し訳ありません。

さて、今日紹介するのはメディです。
私がこの作品を執筆するキッカケとなったキャラクター。
これまでのまとめ+αな感じで読んで頂ければ。

・メディ
設定:
『姫君』。
レオニス公国辺境の地にある森の中で生まれたスライム。
森の中でのんびり暮らしていたところに、昏倒しているアレクを発見。
本能的にアレクを『食べよう』としたところ、
恐怖に見境がなくなったアレクに反撃され、核を切り裂かれる。
しかし、正気に戻ったアレクの治療により一命を取り留め、その時不思議な感情に目覚める。
その後、感情の赴くままアレクに付き纏うようになり、『アレクのお嫁さん』を自称し始める。
当初は殆ど言葉をしゃべれなかったが、現在は多少つっかえる程度で会話に支障はない。
一般的なスライムと違い知能が高く、現在は醸造や基本的な読み書きができるようになっている。
好きなモノはアレク。好きな食べ物はアレク。好きな人はアレク。
メディから見たヤンに対する印象は『変だけど良い人』。嫌ってはいないが、ヤンに接触を許した事は一度もない。
メディから見たルイスに対する印象は『無礼な奴』。一言で言えばライヴァル関係。しかし、ふとした拍子にかちりと気が合う。
なお、以前は普通のスライムだったが、ある日を期にレッドスライムに進化。
今後どうなるかは、見てのお楽しみ。

余談:
この小説を書きたいと思った全ての原因。スライムいいよスライム。
メディという名前は、実は『メディカル(薬)』からきてます。
主人公とヒロインの名前は、普段御用達の命名辞典からとるのもアレかと思い、ヒラメキに任せた結果アレクとメディになりました。
結構あっさりと決めたのですが、意外と気に入っています。
兎にも角にも、和む成長モノが書きたかった。
成長する魔物って言ったらスライムでしょ常識的に(?)。
そんな短絡的思考が産み出した結果がこれだよ!
私は結構和んでいますが、皆様は和んでもらえてますか?
最近は色々なシーンを書きたいという欲が滲み出て和みシーンが減っておりますが…
少しでも和んで頂ければ本望です。

長文を失礼しました。
此処まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは。

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