連載小説
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2日目 主
今日は、主から頂いたこの書類を書く事を最優先にして起きた。私はこの日記を書くのが段々と楽しくなってきたのかも知れない。

主は私が日記を書いている途中に私の部屋に入って来た。そして私から日記を取り上げて中身を見た。すると、私の頭を叱るときとは違うような、そんな優しい力で弄り出した。私には、これが何なのか分からなかったが、主は褒めていると言って再び私の頭を弄った。褒めている。これは私がされるとどういった感情になるのか。私は知りたいと思った。

昼、主の部屋で掃除をしていた私は積まれていた書籍の山を崩してしまった。その時に丁度入って来た主に叱られたが、直ぐにまた頭を弄るあの行動に主は出ていた。私は主が少しばかり理解出来なかった。私はゴーレム。その筈なのに。

昼過ぎ、主が私に見せたい物があると言って私を外の庭の一角に連れて行ってくれた。主の手が暖かい。主が見せたかったもの。それは、人の約4.35倍ある巨大なゴーレムだった。どうやら主はこう言った物を作るのが好きらしい。

私はゴーレムの肩に乗せられた。私を軽々と持ち上げてくれた主は、そのままゴーレムの肩にいる。高い場所から見下ろす地面は、なんとも小さなものだった。これが、主の言っていた「凄い」という感情なのだろう。私はこの感情をインプットしようと頑張ったが、途中でオーバーフローしてしまって中断に終わった。少し残念だ。

次に私は、主に導かれるままに館を進んで一つの部屋の前に辿りついた。なんの変わり映えもない普通の扉だ。主に開ける様に言われた私は、うなずいてノブに手を伸ばした。だが、私の手はノブを掴めなかった。魔力の逆流を感知した。この部屋には何かがいる。そう思った私だったが、主は「ここには入らない様にしてね?罠とかあるから。ね?」と言ってくれて私には理解出来た。そして主の事がますます分からなくなっていった。知りたい。主の事をもっと知りたい。

夕方、主は私が掃除をしている中でいきなり私を抱きしめた。これでは動きにくい。主は私の腕を掴んで箒を奪い取った。どうやら私のかわりに掃除をしたいらしい。ますます分からない。主の事も、その主に抱きつかれた時に感じた胸の辺りのざわめきを。

夜、主の報告で頭にノイズが発生していると知らされた。私は自分で調べて見たが、それは何処にも検出されなかった。何故だろう。主はなぜあんな事を言ったのだろう。それは私には興味の無いことだと判断して私はここで眠る。
10/10/19 11:58更新 / 兎と兎
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■作者メッセージ
カザリは心を手に入れる事があるのでしょうか。それは見てみないと分かりませんよ!では、また次回!

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