連載小説
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◆1章
「本当に人形みたいなやつだな」
「本当だな、ミスもないし完全に機械仕掛けだよ」
「行き過ぎてて気持ち悪いけどな」

そんな同僚の陰口がふと、聞こえてきた。
毎度のことだ、今更彼は反応しない。慣れてしまったのだろう。
どうせ今更収まるものでもないし、咎めるつもりもないようだ。

彼の名は名はアレン、齢は20歳程。
ある城下街の縫製工場で働いている。

アレンがこういった陰口を叩かれるのには理由がある。

アレンは人との関わりをほとんど持とうとしないのだ。
しかも休憩時間など空いた時間があればただ何をするでもなく、呆けていることが多い。
そして休憩時間が終わるとまるで機械のように黙々と働き出す。 
そこまでならば通常ただの影の薄い人で終わるのだが、アレンの腕は無駄に優れていた。
常人よりもはるかに短時間で完璧な仕事をしてしまうのだ。
その上アレンは一から設計もできるし、実際に現工場製品の主設計を担っている。
十分独立して自分の店を構えられるレベルであったが、なぜか彼は縫製工場の一工員としてずっと働いているのである。
ただ才能を食いつぶしているだけの行為に、周囲は不思議がっていた。

しかもたとえ腕を称賛されようともアレンは笑顔一つ漏らさない、むしろ無感情に口だけのお礼を返す。
それがいけなかった。
最初うちは苦笑いで済んでいたのだが段々とアレンに近づく者さえ皆無になった。
しかも一部の嫉妬感を煽ってしまい、ついには陰口を叩かれるまでになってしまったのだ。



……アレンは幼少時より孤児院にいた、両親は事故で死んでしまったと聞かされていたが正確なところはわからない。
孤児院での生活は酷かった、虐待は当たり前でろくな寝床も食事も与えられぬままさも家畜同然といった様相で過ごした。
感情は持ってはいけない、機械のように言われたことを素直にやっていれば不必要に怒鳴られることもないことを学んだ。
夢や希望などは家畜には不要だ、ただ素直な人形のように振舞う。
いつしかアレンは心を閉ざすことに慣れすぎてしまっていた。
そんなある日、アレンは孤児院を逃亡する。
別に計画して逃亡したわけではなく、ついにアレンが壊れ、爆発しただけのことだった。

孤児院と同じ町にはいられない、だがあてがあるわけではない。
ただ走る。逃亡したことが発覚して捕まってしまえばどうなるかはわからない。
町を抜け、必死で道なりに走っていたのだが子供の足で次の他の街まで簡単に到着するわけもない。
そもそも道なりに進めば大きな街があると小耳に挟んだ程度で、距離も何も知らなかった。
10にも届かないアレンはついに動けなくなる。
周囲は暗くなってしまった。後は野犬の餌になるしか無いだろう。
アレンは道ばたでへたり込み泣き喚くしかできなくなった。

そこでたまたま納品へ向かっている途中の馬車に乗っていた工場長に拾われたのだ。
以降工場長に縫製のイロハを教わり工員として働いてかせてもらって、現在に至っている。

…しかし孤児院時代の虐待で受けた精神的傷は大きく、アレンは他人や物事に興味が持てなくなってしまっていた。

それでも1つだけ興味を持てるものがあった。工場長に教わった縫製だ。
いや、恩返しのつもりで必死に覚えていた縫製技術のみを覚えているうちに、
興味を持っていると勘違いしてしまっただけかもしれないが。
しかし他にできることもなかったアレンは、自分の時間をほとんどそれに費やした。
それに加え、アレンには仕立ての天性的な才能があったらしい。
今となっては一級の職人と比較しても遜色ないだろう。

独立して自分の工房を持つ話も工場長から提案されたが、
アレンには興味がなく、しかも恩返しとしてここで働いているという理由で辞退してしまっていた。



さて、そんな彼に転機は訪れるのだろうか……



※彼の働いている縫製工場は衣服の量産が可能な設備・人材が揃っている。
その為王家、民間を問わず大量の注文が入る程だ。




◆1章

今日も僕は"人形"のような一日を送っている。

縫製工場に出勤し、設計書通りに型紙を切り生地を裁縫し加工する。
時間が空けば設計書も作る。

そういう仕事をやっている、それだけの事だ。

「ふう…」
今日のノルマをほぼ達成し、休憩を取る為に備え付けられてある休憩用の長イスに座る。

「おっ、人形様が座ってるぜ」
「心のなかで仕事の遅い奴らだって見下してるんだろうな〜あの方は」
「おい聞こえるぞ」
「いいんだよ、聞こえても無反応だろどうせ」

…作業で集中している時には聞こえないが、こう休んでいるとたまに陰口が聞こえてくる。

僕だって人間だ、こういう陰口を聞いて気分が良くなるわけがない。
確かに他人との関わりを断ってきたのは僕だ、だからと言って陰口を叩かれる筋合いはない。
ズグズグと黒い感情が湧き上がる、もう一度言ってみろと怒鳴りたくなる。
だが心の奥底で滲み出たその感情はすぐに消える。
僕は無意識に感情を押し殺している、それに慣れてしまっていた。


たまに耳に入ってくる陰口をボーっと右から左へと聞き流しながら
まあいつものことだと、心の中でため息を一つ。
特に考えることもないのでいつものように頭のなかを空っぽにしている、と突然

「おうアレン!頑張っとるか!ってもう終わってるか!ガッハッハ!」
とドスの効いた元気の良い声が響いてきた。工場長だ。

「工場長、お疲れ様です」
ほとんど条件反射でいつもの感情の篭ってない声で返事をしてしまう。
「相変わらず他人行儀だな!俺はお前の親父みたいなもんなんだから気楽にしろや!
それにちゃんとしてりゃあいい男なんだからもっと笑え笑え!」
と言って工場長はニッと歯を剥きだして笑い、無茶振りしてくる。
「そ、そういわれても……」
「お、いうこと聞けねえのか?そういうのを親不孝者って言うんだぞ?」
「う…」
この人は僕の弱い所をよくご存知で…


僕はこの人に救われた。いつも変わらない明るい口調で話しかけてくる、この明るさに救われたのだ。
それは今となっても変わらない。
……表現さえしないが僕は今でもこの明るさに救われているのだ。


アレンは仕方なくニッと笑ってみる。
形だけの笑顔だ、自分でも釣り上げた口の端がヒクついてるのがわかる。
ぎこちない笑顔だったが工場長は満足したらしく、
「そう、それでいいんだ。笑って生きてりゃいつか良い人もできて幸せになれるさ!」
バン、と背中を叩かれる。痛かったが、叩かれた部分が少しだけ人形から人間へ戻ったような気がする。

「じゃ、じゃあ今日も就業後機材を使わせてもらいますよ」
「おう!エッチい服を頑張って作れよ〜!」
「そんなもの作りませんよ…」

ハッハッハ、と笑いながら大股で工場長は去っていった。心なしか急いでる気がするのは仕事がまだまだ残っているからだろう。
去っていく工場長の背中を見送り、ふと考える。
「良い人ね…」
正直考えられない、この引っ込み思案を通り越して鉄壁を誇っている自身の性格では無理がある。
この歳になるまで想い人の一人すら居なかった、おそらくここで延々服を作って孤独死が関の山だろう。
しかも最近魔物の侵攻の勢いが増してきてると噂で聞いたことがある。
徴兵されて魔物に食われるってほうがまだ健康的かもしれない。
考えることが億劫になってきた、仕事をして紛らわそう。

「さて、もうちょっと頑張りますか」

とつぶやき僕は作業台へと戻るのであった。



―――――――――――――――――

就業時間を過ぎ、工場には数人の工員が談笑している。

「最近近辺で魔物がうろついてるって噂知ってるか?マークスが見たって言ってるんだ」
「え?どんな姿だったって?」
「でっかい翼があって空飛んでたって、…しかも美人だってよ!」
「…それ酔っ払ってコウモリか何かと見間違えただけだろ、それに本当に魔物なら数人食われて大騒ぎになってるはずだろ。
しかも美人ってなんだよ、絵本の読み過ぎじゃないのか?」
「そ、そうだよな…。ま、教団の駐屯地が近くにあるんだし、万が一でも大丈夫だろ」
「だよな。ま、さっさと帰りましょうや」
最後の作業員が帰宅する。

工場内にはアレンを除き誰も居なくなった。

私的な機材使用は規則で禁止となっているが、
僕は特別に裏口の鍵を貸してもらい作業場に残っている。

これから自分自身で一から好きなように服を作る、唯一の趣味とも言える時間だ。

自宅に帰っても文字通り何もしないのはわかっている。
それでは本当に人形になってしまいそうで、工場長に無理を言って生地などの材料は自費という条件で
機材を使わせてもらっている。

そして、現実逃避のように空いた時間を服の制作に費やす。

だが、完成しない。
設計し服を作り上げ、眺め、これではないと新しい服を作り始める。
いつまでもこのループだ。
理想が高すぎる、というのも違う気がする。
だが完成させたい、その思いで必死にミシンを回す。
まるで納得できるものが作れれば何かを掴めるような、現状から開放されるような気がして、服を作り続けているのだ。
だが思いとは裏腹に数年かけても納得できるものは出来上がらない。

…何かが足りないのだ。

服の出来自体は工場長から素晴らしい!とお墨付きが出るほどの出来らしい。
(工場長から独立の話も出たが丁重にお断りしてしまった)

なにかが、足りない。
もやもやしたものを抱えながら出来上がった服を試作品として工場長室へ置き、アレンは帰宅するのであった。


―――――――――――――――――

「……」

出会いは突然とはよく言ったものだ。
ある日の休日、アレンは材料と食料品の買い溜めのために市場へ買い物に来ていた。


その市場から少し外れたところにあるアンティークショップのショーウィンドウ前で僕はあるものを凝視していた。
いや、魅入られてしまったのかもしれない。
視線の先にはガラス越しに人形が椅子に座った状態で飾られていた。
とても大きな、120センチほどの超大型のドールだ。
着せられているドレス自体はいつのものなのかわからないが、経年劣化でボロボロになっている。
そこから察するに相当古いものだろう。
だが露出しているボディ部分を見る限り損傷は見られず、むしろ新品同様に綺麗だった。
目は閉じられており、まるで眠っているように見える。

相手は人形なのに、美少女と対面しているような錯覚を覚える。
見ているだけで焦り、ドキドキと心臓が高鳴ってしまう。
目が離せない。
アレンにとっては初めての感覚だった。

数分だろうか、もしかしたら数時間かもしれない。
あまりの美しさに見とれてしまっていた。
そしてついつい本音が漏れてしまうのは仕方ないことだろう。
「すごく…綺麗だ…」
「おや、お兄さんその人形に興味がお有りで?もしかして恋しちゃいました?」
「!?」
突然の声に驚き、隣を見ると店員と思しき女性が立っていた。

ああ、やってしまったとアレンは思う。
長い間少女人形を凝視しながら「綺麗だ…」とかつぶやいているところを見ず知らずの女性に抑えられてしまった。
完全に変質者である。
だがまだリカバリーは効く、乏しいコミュ力を総動員してアレンは挑む。

「あっ、いや、え〜っと…」
「彼女かわいいですからね〜、しかも彼女に大してついつい本音が口から出ちゃうってことはすごい惹かれてるってことですよ!」
「え?…いや、ちy」
「でもそれだけ惹かれるってことは彼女の方からもアプローチがあったってことですから、お二人も幸せに……ってちょっと待って下さッ…!?」

挑むまえに負けていた、まるでポル○レフ状態だ。
話すことに慣れていないせいでアレンはパニックに陥ってしまった。
それに対する自分なりの防衛反応だったのだろう、アレンは走って逃げたのだ、自宅まで。


そしてショーウィンドウ前に残されたのは店員とガラス越しの人形のみ。
店員はしばらく呆然とした後ニヤッと笑みを浮かべ、
「まあいいか。彼はもう彼女に一目惚れみたいでしたしあの様子だと我慢なんて出来ないでしょう……」
そう言いつつショーウィンドウに振り返り、
「あなたも相当気に入ったみたいだしね♥」

と眠ったままのドールに向かって店員、もといサキュバスが呟いた。


―――――――――――――――――


「おいアレンどうした?体調悪いんなら休めよ!」
「え!?いえ、大丈夫です。ちょっと考え事してただけなんで」
「そうか、それならいいが…」

工場長はこちらに心配そうな目を向ける。
だが心配をかける訳にはいかないので"どう丈夫ですよ〜"的な雰囲気を流すとやれやれといった様子で去っていった。

じつは大丈夫じゃない、ほぼ放心状態だった。
実際今日はもう正午を過ぎているのに仕事にほとんど手がついてない。
昨日の人形に魂を抜かれてしまったんじゃないかと疑いたくなる。

あれから一晩経ったのにあの人形の事が頭から離れない。
というか出会ったあの瞬間からあの人形の事が忘れられない。
あの眠ったような横顔、いつか読んだ童話の中のお姫様のようだった。
眠ったままのお姫様はどうやって目覚めるんだっけか……

そんなことをボーっと考えながら作業をしていると案の定指に針を思いっきり刺してしまった。

「っふっぐぅぅ……!!!」

不意打ちで思いっきり深く刺してしまったので悲痛な声が歯の隙間から漏れる。そのくらい痛い。
顔を真赤にして痛みに耐え、やっと痛みに慣れた頃に顔を上げ周りを見ると、
周囲がビックリしたような目を向けてきていた。

それもそうだ、こんなふうにミスをしたりすることも珍しいが、考え事をしていてミスをするようなことはまずなかった。
そういえばミスもほとんどした記憶がなかったか。
…結果が機械だの人形だのと言われる羽目になったのかもしれないが。

だが今回のように考え事をしていてミスをする。そして痛みを堪えるために声を出し耐えるなど
……すごく人間らしい、か

痛みを知らない人形ではないと少しは解って貰えただろうか。
だが
まあ人形としてしか見てもらえなかったということの再確認・・とも取れるかな

そんなことを自嘲的に考え、作業に戻る。
今度はミスをしないように、ミスをしないように。
だが頭の中では常にあのドールのことを考えてしまっているのだった。


そして就業時間が過ぎ、僕は同僚の視線を浴びながら工場を飛び出していた。
もちろんあの店へと急ぐ。
急いでいるのは重大なことに気がついたからだ。
つい先程までは呆けていて考えていなかったのだが、
店で商品として並べられている以上売れてしまうことだってあり得るのだ。
しかもあれだけ美しい人形であれば引く手あまただろう。
「何故もっと早く気が付かなかったんだ…!」
声に出しても遅いものは遅い。
もし買われてしまっていた場合、諦めることはできるだろうか?いや、絶対にできない。
それを就業時間直前に気がついてしまい、僕は焦ってしまっていた。

あの店へと、いやドールの元へと急いだ。


―――――――――――――――――


ショーウィンドウの中にはドールはなかった。

息を切らしてようやっとアンティークショップにたどり着いた。
しかし売れてしまったのだろうか、影も形も見当たらない。
それに気づいた瞬間僕の足はガクガクと震え、周囲の視線など気にせずにその場でへたり込んでしまう。
後悔していた、何故あの時逃げ出してしまったのかと。
後悔はどんどん膨れ上がっていき、自分の魂をを奪われてしまったような絶望感へと変わっていく。

ああ、これは絶望か、あの時、そうだあの時と同じだ。
僕は以前も同じような絶望を味わっている。

……孤児院から逃げ出し、飲まず食わずで走り続けたあの日。
日が落ちかけ暗くなってきても街らしきものも見えない。
そもそも街に着いたとしても当てがあるわけでもない。文字通り八方ふさがりだ。
子供の考えでそこまでやっと考えついた時には、引き返せない、進めないところまで来てしまっていた。
泣いた、泣き喚いた。子供だった僕にある最大の防御だった。
あの時は幸運だったのだ、日の落ちた暗闇の中僕の鳴き声を工場長が聞きつけ、馬車を止めた。
そして僕を見つけて馬車に乗せてくれたのだから。
あの時僕は救われたのだ。


気がつけば涙を流していた。
久しく流していなかった、久しぶりの涙。
ああ、こんなにも感情をむき出しにしたのは、あの時以来か。

「あの〜、お客さん、お客さ〜ん」

うるさいな、もうほっといてくれ。

「昨日のドール、お客さんが来ると思って店内に引き上げてますよ?」

「……え?」

響いた声に顔を上げると、あの時の店員だった。

空気が固まった、いや時間さえ止まった気がした。



―――――――――――――――――

僕は店内の来客用ソファーに座っている。
顔は伏せている、上げられない。

それはそうだ、町通りを全力疾走し挙句にはショーウィンドウ前で急停止して即へたり込んで男泣きのコンボである。
あの後落ち着いて周囲を見渡すと好奇の目線が凄かった。本当に凄かった死にたかった。

落ち着いて考えれば店内にあるかも知れないと探せばよかった。
あの時は気が動転していてそこまで思考が回らなかったのだろうが、今回の羞恥プレイは酷い。
あの人形に関わると羞恥プレイされるのか、それともあの人形が羞恥プレイなのか、あははは

僕が意味不明な思考のループに陥っていると店員さんがお茶を出してくれた。

「まあお茶でも飲んで落ち着いて下さい♥」
「はい……」

顔を伏せたままでは何も始まらない。
顔を上げやたらと魅惑的な声を出す店員さんに出されたお茶を頂く。
よくわからないが、ハーブティーだ。スッキリとする清涼感のある香りに少し思考がクリアになった気がする。
飲み終わり、一息。
そうだ、まず聞くべきはあのドールについてだ。
僕はおずおずと言った感じで口を開く。
「それであのドールは…」
「フフッ、せっかちさんですね。じゃあこちらへ」

そう言って店員さんは立ち上がり、隣の部屋へと案内される。
そこには大型のトランクケースが置かれてあった。

「かなり大型のドールだったので、持ち帰れるようにケースも用意しました。素で抱えて帰るなんて…できないですよね?」
「はい、できないです……」
さっきのあの騒動の後に店から少女もとい人形を抱えて帰るなんて伝説級だ。
多分この街から逃げ出すことになるだろう。
「ちょっと確認させてもらっていですか?」
「はいっ、どうぞ♥」
許可をもらい、震える指でトランクケースを開ける。

中で彼女が眠っていた、昨日と寸分違わない美しさで。
おずおずと肌を触ってみる。
…柔らかい?
材質は不明だが、なぜか人肌のように滑らかで柔らかだ。
たしか現在の主流は陶器製ボディだったとか聞いたことがある。
だがこのドールの肌はまるで少女の肌のように滑らかなのだ。

だが手などの関節部分を見ると球体関節が人形であるということを主張している。
ほかの部位は服で隠れていて見ることはできないが、球体関節だろう。

そして目を開けようとしてみるが、びくともしない。

「あれ、目が開かないです」
「あれあれ?あ〜、まだ魔物になりきれてないせいですかね?でもそのうち開くと思いますよ♥」
「えっ?…あ、本当ですか…?」
「ええ♥」

店員はえらく自信満々だ、途中魔物がなんとかとか聞こえた気がするが聞き間違いだろう。
どうやらまだ僕は気が動転しているらしい。
だがどう考えても後から目が開くなんて思えない。
しかし今にも目覚めそうなドールの寝顔を見ていると不思議とそんな気がしてくるのだった。

しばらくドールを眺めているとふと店員さんが奥から服らしきものを抱えてきた。
「そういえばお客さん、この服を御存知ですか?」
そう言いつつ店員さんは手に持っている服をテーブルに広げる。
とても見覚えのある女性用のドレスだ。
「…はい、それは僕が作ったものです」
それを聞いて店員さんは納得したといった様子で
「なるほどなるほど。それなら納得です♥その娘はこの服をとても気に入ってた様子だったので」
「え?」
この店員は何を言っているのだろうか、もしかして人形とお話できるあっちの世界の人だろうか
ちょっと心配になる。
「あまり深く考えなくていいです、あとできっと分かりますよ♥」
「そ、そうですか……」
超心配だ。
「それよりも、この娘の名前決めてあげないんですか?」
「名前…」
「そう、名前です。ドールっていうのはご主人に名前を付けられたがるものなんですよ」
店員さんはニコニコしながら答える。
「なら、リメアかな」
僕は答えた。なぜか初めて見た時からうっすら浮かんでいた名前、これしかないと思えた。
「ほほぉ〜!お名前まで付けちゃって、もう完全にこの娘のご主人様ですね♥」
「そ、そんなからかわないでくださいよ…」
と言いつつ僕は照れくさくなってしまう。

と、唐突に店員さんはどこからかそろばんを取り出しはじき出す。
「そんなこんなでお客さん、ケース込みでお値段はこんなものです♥」

値段は自信満々だった。


―――――――――――――――――

軽くなった財布と大きなトランクケースを自宅へ持って帰る。

帰宅後早速トランクを開け、ドールをまじまじと観察する。
白くて長いなめらかな髪の毛、とても人形とは思えない寝顔、そして肌の柔らかさ。
球体関節さえなければ普通の少女とほとんど変わりはないだろう。

「顔を見る限り本当にすごく作りこまれてるな…」
その表情はとても穏やかで、少女の寝顔そのものだ。
唇に触れてみてもプニプニで、ずっと触れていたいと思ってしまうほどに心地いい。

しかしドレスは完全に経年劣化していて少し引っ張っただけでボロボロと崩れてしまう。
ここまでひどいと見えないところで劣化が進んでいるかもしれない、なので一度服を脱がしてしまうことにした。

だがどうしたものか、脱がしている最中に人形へ抱いてはいけない類の劣情が鎌首をもたげてくる。
はっはっは、どうしたんだアレンよ、相手はたかが人形じゃないか。落ち着け落ち着け、深呼吸だ。ヒッヒッフー

なんとか服を脱がし終え、劣化損傷が有無を調べるために観察する。

見た感じはとても綺麗なもので、特に劣化などは皆無だった。
だがそこで重大な事実に気づいてしまう。
「変なところまで作りこまれている、いや、これは…」

アレンの目に飛び込んできたのはとても精巧に作りこまれた少女の体だったのである。
正確には人形にあるまじき器官までもが精巧に作られている人形の体か。

「信じられない…これ本当に人形なのか…?」

胴体には僅かな膨らみの双丘があり、頂点には桜色の可愛い乳首。
股間部分には割れ目まで完備されておりどう考えても普通の人形ではない。

リメアが人形であることが信じられず思わず膨らみかけの胸に触れてしまう。

「うわ…すごい…吸い付いてくる」

本物の女性の肌になどほとんど触れることが無かったアレンだが、
この肌触りは少女のもの、いや魔的なまでにそれ以上とだ本能的に分かってしまった。
少しだけその肌触りを堪能し、次に桜色のかわいい頂点をつまみ上げてみる。
リメアは反応しない。だがそんな当たり前のことを理解していても恐ろしいまでの感情が襲い来る。

そして視線を下に持って行くとリメアの秘部が目に入る。
股関節に位置する球体関節の間にはピッチリと閉じた未成熟の証である一筋が描かれていた。

「ゴクッ」

思わず生唾を飲み込んでしまう。
眠っている少女に性的なイタズラをしているしているような錯覚。
人形とわかっていても自分の中の猛りは収まりそうにないのは明白だった。

我慢出来ずに股を開き、まじまじと観察してしまう。
そこにはぴっちりと閉じられた美しい性器が存在していた。
きちんとその上部には可愛いクリトリスまで見えている。

「……完全に変質者だな、これじゃあ」

そんなことを呟きながらも耐えきれずに震える指で性器に触れた。

そこは当たり前だが濡れてこそいない。だがとても柔らかく、心地よかった。
ためしに開いてみる。小さな貝のようだ。

「だめだ、我慢できない」

そうつぶやくとアレンはすでにギンギンにいきり立っていた男根を引っ張りだす。

「リメア、ゴメン。会って直ぐなのに、ゴメン」

そう謝りながらアレンはリメアの性器に股間を擦り付けた。
挿れることは叶わない、だがこの猛りをぶつける為に腰を振る。
リメアの顔を見てみるが、目覚めることはなく天使のような寝顔で眠り続けている。

そのことに背徳感は一気に増し、腰を振る速度も上がってしまう。
あまりの気持ちよさに一気に発射寸前まで上ってしまう。

だがリメアは綺麗な顔で眠り続ける。
ふと、その綺麗な顔を、唇を汚してしまいたくなる劣情を抱いてしまった。

「ふっ…ふっ…はぁ……リメア……!」

限界を察したアレンは男根をドールの顔にまで持って行き、その可愛い唇に押し付ける。
その瞬間アレンは溜まった劣情を解き放った。

「あ、っぐうううあああああッ……!」

リメアの口に放った熱いザーメンが流れ込む。
眠ったままの少女の口に射精しているという強烈な状況に快感が増強され勢い良く白濁液が飛び出してしまう。
小さな口に流し込まれ、入りきらなかった精子は顔にかかってしまった。

「はぁ…はぁ…ふぅ…」

あまりの気持ちよさに余韻に浸ってしまう、そのくらいの気持ちよさだった。
リメアを見ると、顔にかかった精子が寝顔と相まってすごくエロい。
またもや劣情が鎌首をもたげ掛けたことに気づきアレンは急いでリメアを綺麗にしてあげる事にした。


…現実はそんなに甘くはない、あとに残るのは人形を使ってオナニーをしてしまった、それに留まらずぶっかけてしまったという現実がある。
リメアを綺麗に吹いている最中に考えてしまう、考えてしまうのだ。
まさにオナホを洗っている時の感覚に近い、あの「俺何やってるんだろう、母ちゃんゴメン」という考えが頭の片隅に居座る。

しかし不思議と嫌な気分にはならなかった。
リメアが何故か喜んでいるような気がしたからだ。

濡れタオルを用意して拭く作業に入る。
そして口の中に出してしまったということを思い出し、口内を確認した。
「あれ…?綺麗になってる。」
人形の口内に結構な量を射精してしまったのだからもう悲惨なことになっているであろうと覚悟して確認したが、
綺麗サッパリ精液がなくなっている。想定外だった。

「リメアが飲み込んだ……、まさかな」

だが綺麗になっているのは間違いない。
だがどうにも理解し難い現状に首をひねりながら、一応服を着せなおしてその日は眠りにつくことにした。
服をきせている時に、肌にぬくもりを感じたことにも奇妙な違和感を覚えながら。
13/06/20 21:00更新 / 夜伽
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■作者メッセージ
1万文字超えたんだけど大丈夫かな…

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