連載小説
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外道な巫と新しい居候
 この坂を上った先にある、雑貨屋でろうそくを買えば俺の『おつかい』は終わり、帰るだけになるのだが先ほどカナメを見かけた際に尋常じゃないほどの量の買い物をしていた。俺が今もっているのは小さい袋3つほどだが、奴は一体何を考えているのだろうか・・・。
「すみませーん」
「はいはーい」
ここの雑貨屋は人間の夫婦が経営しているから、まだ魔物に耐性のない俺にとっては結構居心地がいい(目のやり場に困らない)場所だ。
「ろうそく3本ください!」
「はいよー」
30代くらいのおじさんがささっと袋につめ、すばやく会計を済ませる。
「今日はもう帰るのかい?」
「すみません、いろいろ大変なんで」
いつもは少し駄弁ってから帰るのだが、今日に限ってそうはいかない。なんとしても『裸営業』だけは阻止せねばならない・・・!
「気をつけて帰れよー」
「ハイッス!」
そのままダッシュで酒場に戻る俺。しかし酒場の前には見慣れた姿が―
「遅かったな恭一」
「カナメ・・・!」
くっ!最初にあんな妨害されなければ・・・!
「さあ、その荷物を私によこしたまえ・・・!」
「お前、強奪する気か?」
「強奪だなんて人聞きの悪い。協力プレイをしようというだけだ!」
クッ・・・これでは酒場に入ってリーナさんに報告できない!
「どけ!カナメ!これは戦いだ!正々堂々と戦え!」
「断る!何故ならもう飽きたから!」
「それが理由か!!」
なんて奴だ。勝負は飽きたが自分が勝利したときの報酬がほしいなんて、とんだ輩だ。ほんとにコイツは巫なのか!?
「あら?二人とも早かったわね」
「しまった!」
「ナイスです!リーナさん!」
これで勝負あった!
「じゃ、確認させてね・・・」
そういって近くにいたカナメの荷物をチェックするリーナさん。
「・・・五個ほど足りないケド?」
「いや、なんか売り切れで―」
「次は恭一ね」
「うおぉい!華麗にスルーするな!・・・ん?『スルーするな』?・・・ぷっクククククなんて傑作なギャグだ・・・ククク・・・」
・・・あの程度が傑作なのか・・・?
「うん!全部そろってる!合格!」
「よっしゃああぁぁ!」
か、勝った!
「・・・ちょっと待て」
急にジト目になるカナメ。負け惜しみか?
「何でこんなに大量に買ってきた私が負けで、その程度の量しかない恭一が勝ちなのだ?」
「ああ、別々の物を頼んだからよ」
サラッといいますね・・・。
「おかしい!ぜっっったいにおかしい!!どう考えても私の勝ちだ!卑怯者め!」
「卑怯なんて負け犬の遠吠えよ」
「ま、負け犬・・・!」
・・・相変わらずリーナさんの口撃には弱いなカナメは・・・。
「・・・それじゃあ、私の『ドキッ☆酒場は裸営業中♪』作戦はどうなるのだ・・・?」
「・・・失敗」
リーナさんの後ろからひょっこり顔を出すリュー。
「・・・悪は滅びる」
「誰が悪だー!!」
「あなたしかいないでしょう」
はぁ、とため息をつくリーナさん。ほんとにカナメはどうしようもない奴だな・・・。っていうか
「どこいくんだ?カナメ」
「ああ、ちょっと腹いせにそこらへんの通行人に八つ当たりしてくる」
「サラッと何言ってんだあんたは!!」
ほんっっっとにどうしようもないやつだ!
「あ、あの子でいいや」
「おいちょっと―」
「カナメビイイィィム!!」
凄まじい勢いで発射されるなぞの光線・・・もといカナメビーム。そのまま通行人にぶつかる・・・と思った刹那、カナメビームは跡形もなく消え去った。
「・・・あれ?バグ?」
「バグじゃねーよ!」
しかしいったいあの通行人は・・・いや、どこかで見たことあるぞ。そうだ、あいつは・・・!
「よくもやってくれたなニンゲン・・・!」
カナメがぶっ飛ばしたドラゴンだー!!ヤバイ!ここに来て遂に死亡フラグか!!こんなバカと知り合ったせいで!
「甘いな」
「へ!?」
いつになく凛とした声のカナメ。甘いって・・・何が?
「フン、貴様のその意味不明な光線は攻略済みだ」
「意味不明じゃない!『カナメビイイィィム!!』だ!!」
いや、名前を含めてまったく意味不明だから。
「聞いて驚け見て泣き叫べ!カナメビイイィィムの両手撃ち!」
「そんなことできんのかよ!」
「駄目でもともとだ!!」
「もうやだ・・・」
本当にヤダ・・・。リーナさんとリューは店の中から楽しそうに観戦してるし・・・。
「フハハハハハハハハ!くらええぇぇい!!カナメ・・・あ・・・。」
刹那、凄まじい爆発が要を襲った。まさかドラゴンが―
「お、おい、お前大丈夫か!?」
・・・カナメの心配をしていた。
「や・・・」
「『や』?なんだ!?」
「やっちゃったゼ☆・・・」
・・・・・・。
「店の手伝いでもするか」
「じゃあこの男は私が貰っていく」
「遠慮せずどうぞ」
「うおおい!相棒を見捨てるのか!?」
「こんなバカな相棒なんて要らんわ!!」
何でできそうにもない両手撃ちなんてやろうとしたんだよコイツは!・・・いや若干できるかなーとも思ったけどさ!
「あんまり騒ぐと傷に触るぞ?私が貴様を看病してやろう」
「いやだ!ドラゴンの看病なんて!死期が近づく!」
「大丈夫だ、いざとなったらその・・・」
ポッと顔を赤くし―
「私の温もりを―」
「へ、ヘルプ!ヘルプミー!!」
「自分で逃げろよ」
「気が暴発したせいで口しか動かない!!」
「ウソ付け!!」
まったくコイツは・・・
「あの、一応こんなバカでアホで間抜けでどうしようもなく、とりえが顔と呪術だけの奴ですけど、俺の仲間なんで返してもらえませんか?」
「いろいろ気になるけどありがとう!友情とは美しきかな!」
「断る」
「なんでだー!!」
しょうがない、こうなったら・・・
「じゃあ、カナメのことをお願いします」
「うむ、任せろ!」
「諦めないで!もう少しがんばろう!?」
っていわれても、別にカナメが居なくなったからって困ることなんてないしなあ・・・
「っていうかお前!何で私に懐いてるんだ!!」
「解からん、だがお前に倒されてからというもの、どう否定してもお前のことが頭から離れないのだ。きっと傍においておけばその意味が解かると思って」
「俺、お邪魔みたいなんで帰りますね?」
「だから見捨てるなよ!!この外道!鬼畜!!」
「―ここに住めばいいじゃない」
この声は・・・
「リーナさん!?」
「久しぶりね、ヘル」
「ああ、だが・・・いいのか?」
「大丈夫よ頑張り屋さんの居候と、混沌を世に招くことしか頭にない超絶バカの破壊神に知り合いが一人加わったって」
「・・・・・・」
「もちろんリュー、あなたもよ」
いつの間にかきていたリューはわずかに微笑んだ。一週間前ならきっとその顔の違いに気づかなかっただろう。
「じゃあ、今日はヘルの歓迎会をしましょうか」
「いいですね」
「悪いな、リーナ」
「・・・料理手伝う・・・。」
ドラゴンかあ・・・間近で見るとなんかこう、女性の姿になってもかっこいいよな。うんうん、いつの時代もドラゴンは男の憧れだ―









-kaname's side-

―「おーい、もしもーし私をおいていかないでくれー」
呼びかけるもみんなは既に歓迎会のことで頭がいっぱいのようだ。っていうか何でさっきまで人のことをがっちりホールドしていたあのドラゴンはあっさりと私を捨てたんだ?まったく、この・・・この・・・
「ド畜生がー!!・・・いてて」
やはり両手撃ちなんて無茶するんじゃなかった。っていうかあいつら扉閉めやがって完全に人のこと忘れてるぞ!?この超絶美少年の一条カナメを放置して行くなんて・・・ッハ!!
「いいおとこはけーん」
「こ、こんにちはスライム嬢」
う、ウソでしょ・・・?いくらインキュバスでもスライムとは・・・
「じゃ、いただきまーす♪」
「や、ちょ、え・・・」


「ギャアアアアアァァァァァ!!」

 カナメの絶叫は町中に響き渡りましたとさ byリーナ
11/12/13 00:03更新 / 突撃ラッパ
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