読切小説
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優しいNTR
僕はクロウ
淫魔専門の仕事を生業にする傭兵みたいなもん。
そこらの淫魔の誘惑なんて効かない体質だからいろんな所からひっぱりだこだ。
今回の仕事はサキュバス共に襲われてるとある街の護衛をしている。
さっさと撃退して恋人の下に帰りたいものさ。



「ほら〜こっちにきたら良いキモチになれるよ〜」
「ああ、ああ…」

バカがまた一人、結界の外に出ようとしている。
無駄だとわかっていても叫ばずにはいられない。

「馬鹿野郎!!喰われちまうぞ!!」
「か弱い女の子がそんなことできるわけないじゃない。大丈夫よ。」

か弱くもないし女の子じゃなくてサキュバスだろと思っているうちに
バカが外に出てしまった。
サキュバスの胸にうずもれる

「ああ…良い気持ちだ…」

結界内の他の男どもがゴクッと咽を鳴らす。

「いいな〜わたしもほし〜」
「他の皆さんもこっちに来てくれたらいいことするわよ」

このままだと戦力的にも骨抜きにされちまう。
結界を強化して音を遮断する。他のやつらのケツを蹴って正気に戻して撃退に専念させる。
これでなんとかなるだろ、と一瞬気を緩めた。

その気の緩みが命取りだった。
一瞬にして結界が壊されて、余裕綽々といった風に笑っているサキュバスども。
対して、こちら側はほとんどの奴が堕ちていた。
サキュバスの中から一人が前に出て叫ぶ。

「私たちは人を殺したくない!どうか武器を捨てて話し合おう!」
一番まともに意識を保ってるであろう僕が前に出て叫ぶ。
「それならば、君たちはここから立ち去るべきだ!誰も傷つかない!」
「そうはいかない!」
「なら戦うしかない!」
正直勝ち目なんて一切ないが戦闘になれば逃げる隙が生まれるはずだ

「ならばお互いの代表による試合で決着をつけよう!」





なんてことだ。逃げられると思ったのに。
まあ、サキュバスは誘惑の魔法が効かないとなるとなんもないただの人と一緒だ。
さっさと勝って帰ろう。

「お前が出るのか、準備はいいか?」
「ああいいぞ。そっちはお前か?」
「いや、私は審判だ。出るのはリア様だ。」
「まあ誰でもいいや」
どうせ勝つし。
つっても、さっきからザワザワしてたりたまに「何秒かしら」とか「やっとなのね」「14年間耐えたのだからもうね…」とか妙にサキュバスからの生暖かい視線が不安を煽らないでもない。

「さあ始めるぞ!」
審判が真ん中に立ち、選手が前に出る。
相手をみてサキュバスと少し、ほんの少し何かが違うと思った。
「いざ尋常に、勝負!!!」
戦いの火蓋は切って落とされた。

なにかけしかけてくると思ったら無用心にも歩いて近寄ってきた。
おそらく誘惑の魔法に自信があるのだろう。かかったふりをして一気に片付けよう。
勝負は一瞬。手を伸ばせば届く位置で。
僕があっけなく射精したことで終わった。

「あへ?」
おかしい。僕にサキュバスどもの魔法は効かない。なのに…
「初めまして。魔王の娘"リリム"のリアよ。これからよろしく。だんな様」
体の火照りと反対に青ざめた。格が違いすぎる。しかもだんな様とは。
なんとか逃れようと反論する。

「僕には…彼女が」
「寝取るってのも興奮するわね」

だめだ。根本的に話が通じない人だ。

「彼女の姿を見せながら犯すのもいいわね。」
「な!?やめてくれ!」
「どっちにしろ犯すんだからいいじゃない。」

リアは僕の額に手を置く。逝きそうになるが我慢する。
記憶から彼女を辿っているみたいだ

「ふんふんなるほど。ではイきましょうか。」

やめてくれと声にならない声で言う。
リアは僕の後ろにまわって服を脱がせていく。
僕の目の前には鏡のようなものが現れる。

「まずは手でイきましょうね。」
「やめてくれぇ」
優しい声で耳元で囁かないでくれ
「ここはこんなになってるのに?興奮してるんでしょ」
鏡がだんだん色を灯していく。
「さてさて何してるのかなぁ?祈ってたらいいシチュエーションだと思わない?」
やめてくれ。
僕の願いは無視され、映し出される彼女。聞こえる声
僕と彼女の幼馴染である親友と情事に勤しんでいる彼女の姿が。明らかに喜んでいる嬌声が。


何が起きているかわからなかった。僕も、リアも、その周りを囲んでいたサキュバスと人も。
一番速く動いたのはリアだった。
気配が消えたと思った時には、鏡を破壊していた。
だが、あっけにとられている時間が長すぎた。
僕は聞こえてしまったのだ。

やっぱりあんな男よりもあなたの方がうまい
とか
大好き
とか
早くあなたと結婚したい
とか

僕はよくわからないけど吐いてしまった。
すこしリアにかかった。申し訳ない。
周りがざわつく。リアが泣きそうな顔をしている。嫌だと思った。

「あ、危うく騙されるところだったぜ!!」
むなしく響く
「こんなウソっぱちを見せて堕落させようとしてもそうはいかない!」
でもいいんだ。リアの泣き顔を見るくらいなら独り芝居くらい
「こんな!こんな嘘で!だ、だまされ、」
だから僕が泣いてる場合じゃない
「だまされないぞ!!!」
君が責任を感じることはないんだ。
涙をぬぐってリアの顔を見る。

これ以上とないくらい怒っていた。

「クロウ」
一歩も動けない。
そのままでいたら胸に掻き抱かれた。
「あのクソ女のことなんて記憶に留めていられないくらい気持ちいいことしてあげます。」
暖かい。心も体も暖かい。
「でもその前に、」
リアは微笑んだ
凄惨に嵐のように悪魔にふさわしく魔王の娘にふさわしく
「あの女を殺さず生かさず半殺しに殺しましょう」
にこやかにいいきった。




あの後、恥も外聞もかなぐり捨てて周りのサキュバスと人たちにたのんでなんとか、全滅に近い状態になりながらも、リアを止めた。
しかしサキュバスも彼女の浮気には大層ご立腹でなぜか僕が止めるはめになった。
街は淫魔の巣窟になった。
だが僕はそれでいいと思った。淫魔たちは欲望に忠実で、人に一途だ。
浮気不倫はもってのほかで、夫のためなら何でもするような人よりはるかに優しい。
リアは止めるために眠らせたのからまだ覚めていない。
起きたらどうなるかわからないから僕がそばにいる。
今回の寝取られで僕は女性不振にはならなかった。
それはたぶんリアのおかげだ。
リアが僕の心を奪ってくれた。僕の代わりに怒ってくれた。
僕を想ってくれた。
浮気したのは僕の方だということも出来るのに。(実際は付き合ってるときから浮気してたのだろうけれど)

起きてまだ怒ってるようなら寝取ってもらえるようにお願いしよう。
きっと彼女は全てを用いて僕を堕落させてくれるだろう。
世界一優しいNTRだと少し笑えた。






おまけ
「全くひどいとおもわない!?」
「本当だ!!アイツが彼女のために頑張ってる影で不倫なんて!!」
「ほんとよね!!なんだかお酒が飲みたくなってきたわ」
「良い店知ってるぜ。生まれ変わった街でパーっといこうぜ」
「そうしましょ。」
「でも一緒に飲むの俺なんかでいいのかい?」
「ええもちろん!」
「そりゃよかった!こんな別嬪さんと酒が飲めるなんていい日だ」
「ねえ」
「うん?」
「あなたって彼女とか意中の人はいるの?」
「え…いや…」
「そう…よかった…」

いくつもの恋が始まる。
14/04/01 13:41更新 / 北山藤 烏

■作者メッセージ
適当でごめんなさい。
裏設定でクロウが頑張ってるのは彼女の指輪のためっていうよけい胸糞になる設定。
そしてエロは書けない。

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