連載小説
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下らぬ街のXYZ
「水は低きに流れ、人は易きに流れる。」
そんなことを偉そうに話した奇妙な姿の老人は次の日に放蕩に溺れてた。
おそらく今では出会った女と行商の旅だろう、あれも人生の一つだ、放っておいてもああなる運命だったんだろう、奴にとって、それが「易き」だったんだからな・・・・・


「おい、さっきから何を独り言をほざいてる?客が来ないからって職務放棄はどうなんだ?」
「スミマセン」


「暇なら外で掃除でもしてろ、もし腹の減ってる金もってそうな奴がいたらよびとめとけよ」

外は日が高く上り、そろそろ昼時だ、そんな中で掃除をするの俺の名前はブルック、この酒場「眠る女神の吐息」のバーテンダー件コックだ、といってもバーテンダーのほうは見習いで、バーテンのほとんどが俺を怒鳴った店主であるダニエルさんの仕事だ。
俺は仕事が忙しくなる夕方までは、ほとんどこうして外を掃除して来ることのない「昼の客」を探したりしている、もっとも夜になれば俺の本領発揮、自慢の酒で魔物であろうが人間だろうが魅了してみせるさ。

「しっかしまぁ、本当に人通りの少ないこと」
この町は「とある事情」により昼夜が逆転している、店のほとんどが夜間営業で、昼にやる店のほうがはるかに少ない、町全体の人間がそうなのだから、昼に酒を飲む人間なんているとしたら二日酔いでぶっ倒れたアカオニが懲りずに向かい酒をするぐらいだ。
もっともアカオニがぶっ倒れるほど飲んでいたのを見たのは俺が赤子のころからカウンターに立っていたダニエルさんも見たことがない。

「そいや昼はなんだろうな?サンドイッチならいいんだけどな」
まかないのサンドイッチは下ごしらえで切られた肉の欠片が焼かれて乗っている、俺の好物だが、その日の肉の量で上下する、酷い時は肉の変わりにクラッカーが挟まってたりするが、余りものなので文句は言えない。

「おい、ブル、こっちきな」
ダニエルさんは一言で言えば野蛮な人で、俺の年ぐらいには海で商船を襲ってくらしてたとか、傾国相手に自由を求めて戦っていたとかそんな武勇伝があってもおかしくないような人だ、目は隻眼、背中にはいくつもの傷があり、筋肉はやけに隆々としている、なによりその低い声は腹に響いてくる、
「お呼びで?」
ダニエルさんは俺のことを「半人前のブル」と呼ぶ、名前をまともに呼ばないのは俺が未熟だってことだからだそうだ。
「おう、ちょっとこれ食ってみろ」
カウンターの上には木の皿に載せられたクラッカーがいくつかの野菜とともに混ぜられたチーズとともに乗せられていた、
「新しいメニューにしようと思うんだが何かが足りない気がするんだ、お前分かるか?」

俺はそのクラッカーを上に乗せた具ごと口に入れる、なるほど、小さめに切ってあるから口に入れるときにこぼれにくく、これなら女性でも食べやすい。
だが・・・
「これ・・・・少し塩が濃いっすね」
「そうだろ?他に野菜を足したほうがいいだろうか?」
塩気が強い・・・食感は良かったが塩気が濃く、パンを海水につけて食べているような気になった、つまみには塩気が強いものが好まれるが限度がある、これはその領域を超えている。
「いえ・・・・これ・・・なんすか?この魚の卵・・・」
「ああ、魚の卵の塩漬けだ、最近近くで作られるようになってな」
「コイツが原因ですわ、チーズの塩気と重なってるからですわ」
卵はそれ単体でもかなり塩気が強いもので、プチプチとした食感からそれこそ塩の粒を噛み砕いたような味をしていた、
「この卵、使うんだったら水にさらして塩気を抜いたらどうっすか?食感は悪くはないし、」
「そうか、ためしてみるとするか、おい。皿の上の残りのもの、お前が食っていいぞ、そろそろ昼だろ」

俺の昼食がクラッカー塩サンドに変わった、






日が落ち、夜になると、この町は目覚める。
町はうるさくなり、店の前の通りには人が溢れ、店には客が溢れかえる、この店はそんな客に酒を飲ませ、ツマミを出す、それが酒場だ。

「よーブル、今日もいいツラしてんなぁ」
「相変わらずですね、リックさん、今日は景気よさそうじゃないですか」
リックはこの町の船頭だ、夜にこの町で酒を飲む船頭はあるいみこの町では一般的な光景だ。
「おう、司祭だかなんだかはしらねぇが、破格で荷物を運べって仕事が来てな、この通り稼がせてもらったぜぇ」
リックの手には金貨袋が握られている、なかなかに重そうでたっぷり詰まって相だ、
「どうだ坊主、俺とこのあと花地区にいかねぇか?俺が奢るぜ」
花地区はこの町にとって一番有名な歓楽街だ、いろんなニーズの「商品」が買える。
「オイ、リック、今は営業中だ、店員を連れて行くんなら店が終わってからにしろ」
厨房から現れたダニエルさんがそういうとリックはばつの悪そうに席に戻る
「冗談だよ、まぁ、坊主には早いってこったなぁ。アヒャヒャヒャヒャヒャ」
そうやって茶化すとリックは仲間の下にもどっていった、
「ブル、奥の客にコレを、あと窓際の客の相手を頼む」
そういうとブルさんは厨房に戻った、新商品のクラッカーの卵チーズのせは手間がかかり表に出れないので明日からはメニューから外すと言っていた、あのあと味は良くなったのだがそのぶん労力がかかるのだ。
俺は皿を置くの客へと渡す、ダークプリーストの二人組みだ、彼女たちは店では高い部類のワインを飲みながらなにやら話し込んでいる、途中紙を取り出しては魔方陣のようなものを書いては丸めてしまっているが、何をしているのかは詮索しないようにしている、客に深入りしないのがトラブルを防ぐコツだ。
「ご注文の品です、どうぞ」
俺はそういってテーブルの邪魔にならないところに皿を置く、そこで二人は俺をみてなにやら艶っぽい目で見てきた
「ありがとうございます、あなた、とてもやさしいのね?」
「そうね、お姉さま、それでいてとても素敵」
「恐れ入ります、あ、でもそういうのはナシで」
この二人は完全に獲物を見つけた獣だ、スリットから生足をこちらにみせ、わざとらしく胸を強調するポーズをしている、
「あら?臆病なのですね、恥ずかしがることではありませんよ」
「ええ、もしも恐れているのであればそれを解決することも私たちの役目、もしよろしければ貴方の・・・」
「すみません、仕事中なんで、とても魅力的ではありますが、どうやら貴女たちは僕には強い酒のようだ、二杯も同時には無理ですよ」
「あら?そうかしら?殿方はいつでも荒々しい一面を持っていますわ、たとえばあちらのように・・・・」
ダークプリーストの目の先にはラージマウスと男の姿があった、男はラージマウスを抱えあげ、膝に据わらせるようにしている、時折その身体が動いていると思うと、互いに軽いキスを交わしていた、そのたびにラージマウスの顔が赤くなる、そして男がエールをのみ、ラージマウスへつまみのチーズを口移しすると、先ほどと同じ動きと同時に小さな振動が始まる。

「あー・・・すみません、失礼します、ごゆっくりどうぞ」
俺はダークプリーストにそう告げるとその席へと向かった、二人は俺が近づいてくることに気づかずに二人の世界に溺れていた、
「すみません、店内でそういう行為はお断りしてます」
そう告げる二人、ラージマウスと男の局部はお互いに深く繋がっていた、かなりの間盛り上がっていたのか床には誰の物ともわからない体液が滴っており、酒の匂いで分かり難いが発情した雌雄の匂いも微かに漂っていた。
「す・・・・すみませんっス、つい」
ラージマウスの彼女が答え、男は恥ずかしそうに目を背けていた、ついもなにもない、店内でハメられていたら床を掃除するこっちの身にもなってほしい。
「店を出て左にいった突き当たりに同伴の宿屋がありますんで、そっちいってください、でないと・・・」
俺は二人の目の先にいたダークプリーストの二人に目を向けさせる、ラージマウスと男の痴態を知ってか知らずか、彼女たちはにこやかに軽く手を振りこちらを見ていた。
「あの二人もあなたたちについていきますよ・・・」
男が己の身体に危険を感じたのか、それてもラージマウスが愛する人の貞操の危機を感じたのか、ラージマウスと男はそそくさと店を後にした、会計にすこしチップを増やしてくれたのは口止めのつもりだろう、一体誰にだ?あの二人か?なら彼女たちはリックの連れの若い船頭たちと共にあれよあれよとと夜の街へ消えていった、たぶん近いうちにリックはあたらしい船頭を雇わなければいけないだろう。

そうして夜は深まっていった、
次の日から、クラッカーには魚の卵が乗らなくなって少しだけ値段を下げた、同時に注文から配膳まで俺の仕事となったのであった。
13/05/17 23:06更新 / 左近右大臣
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■作者メッセージ
最後まで読んでくれてありがとうございます、もう少しお付き合いください、ちなみに主人公のと店主の名前はウィスキーの名前から借りてきてます、

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