連載小説
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十六夜村へ
私の名前は柏崎結衣。バイトをしながら大学に通っていたけれど、住んでいる町に嫌気がさして、大学を中退。私一人で遠い村に一人暮らしをする事に決めた。私は作業員と引越しトラックに荷物を運ぶ作業をしながら、思わず溜息をつく。

新魔王になったとかなんとかで、おぞましかった魔物達がみんな人間みたいな姿になって、魔物娘と呼ばれるようになった。私のいた街は、親魔物領と呼ばれる、魔物娘に友好的な町だった。
別に魔物が人間のような姿になるのは別に問題はないと思う。私だって、あまり怖い思いもしなくなった。だけど問題はそこじゃない。魔物達は全て雌であるがゆえに、人間男性とすぐに夫婦関係になろうとする。そして人間男性もまた、そんな魔物娘の魅力に負ける。さらにとんでもない事に、私達人間女性を魔物娘に変えようとまでする騒ぎ。冗談じゃない。私はあんな好色の塊なんかになりたくないし、第一別の意味で人類が滅亡しかねない。私のお母さんも何やら魔力を受けたとか言って魔物娘になって、毎晩何やら声が聞こえてくる。私は幸いにも魔力を受けたりしていないのか、魔物娘の姿になっていない。

そういうわけで、私は逃げるように田舎町まで引越しをする事に決めた。そこも親魔物領らしいけれど、何やら普通の親魔物領とは違うらしい。
半分の期待を抱えて、私は荷造りを進めていく。
家を出る前、親に別れを言いに行ったけれど、2人とも私には目もくれずに交わり続けている。私は少し虚しさを感じながらも、後で電話でもすればいっかと思い、寝室を後にした。もし妹ができるなら、まだ人間であってほしいなと思いつつ…。

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長い高速道路を越えて、ようやく目的地である十六夜村が見えてきた。田園風景がとても印象的な、いかにも田舎って感じの場所。ここなら確かに、魔物娘も平和そうな気がする。窓から外を見ると、何人かで畑仕事をしている魔物娘と人間の男女が見えた。その姿はどうしてかとても自然で、魔物娘も人間も昔から共存しているように互いに慣れているように見える。
次に商店が見えてきた。店の前を掃除している人と、店内を見て品ぞろえを確認している魔物娘。おそらく果物屋なのだろう。とてもよく実った果実が並んでいる。かつてあったような魔力を含んでいない果実で、とても自然な輝きが車越しだとしてもよく分かる。後で買いに行ってみよう。

こうして、私の十六夜村での生活がスタートを切る。
14/10/26 01:46更新 / speis
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