連載小説
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1. 僕と妻の診療所
 
 
 
 
 
魔物娘が社会に浸透した現代ジパング。その片隅に人間・魔物兼用の診療所がある。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「エブリデイ・クリニック」―――――それが診療所の名前である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私の名前はエン。「エブリデイ・クリニック」に勤める医者である。
「……そろそろ閉院の時間か」
先程帰っていったゴースト種の妊婦さんが最後の患者だったようだ。
「……ゴースト種の妊婦とは」
亡者が新たな命を宿すとは。これって間接的な生き返りかしら?
いや、お目出度い話なんだけどね?
「さて。後はカルテを纏めて整理すれば業務終了、だね」
これが終われば帰れる。私は気合を入れて、残務へと取り組み始めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
何故か寝落ちしちゃったんだけど!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(……ん?)
耳元で、ぴちゃぴちゃ、という音が鳴っている。眠たい目をこすりつつ、私は意識を覚醒させていく。
 
ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ
 
尚も耳元の水音は鳴りやまない。
(……耳を、誰かに舐められているのか?)
そう思いながら顔を上げた時、ひょい、と何者かに顔を覗きこまれた。
「うわぁ!?」
「あら、目が覚めたのかしら?」
突然飛び込んできた女性の顔に私は思わず驚きの声を上げてしまった。
「って、院長じゃないですか」
「気づくのおそーい!」
そう言って頬を膨らませて怒るのはセレスタイン・リンドストローム院長。種族は「リリム」で私の妻だ。
「全く愛する妻の顔を見て驚くなんて……」
ブチブチと文句を言いつつも、セレスタインは私の膝の上に座り、正面から抱きついてきた。
ふんにょりと当る豊かなおっぱいが心地よいなぁ。
「えーくん、会いたかったよ〜!」
「……そんな何ヶ月も離れていたみたいに」
胸に顔をうずめながらの妻の言葉に私は呆れたような表情で呟いてしまう。
やはりその物言いが気に入らなかったのか。セレスタインは不機嫌そうな表情でこちらへと詰め寄ってきた。
「えーくんは私に会いたくなかったの!?」
「一週間ぐらいなら余裕ですよ」
「一週間も会えないなんて私なら死んじゃうわ!」
そんな大げさな……とも思うが、彼女の表情は真剣である。俺も二週間目に入れば少し不安症状に陥るやもしれんなぁ。
「それで、ねぇ?ねぇねぇ?えーくんのちゅー、お帰りのちゅーは?」
もう我慢できない、とばかりにセレスタインが桜色の唇をチョンと突き出して顔を差し出してくる。
妻の子供っぽい仕草に思わず笑みを浮かべた私はセレスタインの唇に、ちょん、とついばむ様なキスを送った。
「……これだけ?」
「後の事は仕事が終わってからですよ」
「えー!?」
「ちょっと退いていてくださいねー?」
不満そうな声を上げるセレスタインを膝の上から退かし、私は再び仕事に取り組み始める。
暫く後ろでごねていたセレスタインも、やがて諦めたように溜め息を吐くと私の背中にぴっとりと抱きついて、私の仕事が終わるのを待ち始めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから三十分もした頃。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「よし、お仕事終了!」
俺はカルテが入ったファイルを棚に戻すと、彼女が居るであろう背後へと視線を向ける。
「そんなに俺の首筋は美味しいですか?」
後ろを振り向くと目を潤ませて完全に発情しきったセレスタインの姿が。背中に張り付いていた彼女は、何時の間にか私の首筋を涎まみれにするほど舐めまわし始めていたのだった。
私はセレスタインを引き剥がして正面から彼女の顔を見詰める。
「そんなに俺の首筋は美味しいですか?」
ああ、今の俺って意地悪で楽しそうな表情をしているだろうなぁ。現に彼女の恥じらいの表情だけで下が大きくなり始めてる。
「美味しいよぉ……汗の味とか匂いとか……嗅いでいるだけで発情しちゃうのぉ……」
セレスタインが頬を赤らめたうっとりとした顔で答える。
袖から見える白い肌は全体的にピンクに色付き、捲れたスカートから僅かに覗く下着からは愛液がにじみ出ていた。
こうなると私の方もいよいよ我慢が効かなくなってくる。。
「一人でシてたんだ?」
「っ……シて、たの……我慢できなくてぇ……!」
とうとうセレスタインは涙を流しながら、びくびく、と体を震わせた。どうやら私の羞恥責めだけでイってしまったようだ。
それを見た私は心中で苦笑を浮かべる。
(リリムなのにM気質というか……)
この際、ついつい乗ってしまう自分のS気質からは目を逸らしておく。
とにかくこれ以上我慢させるのはかわいそうか、と考え、手早く机の上を片付け、セレスタインの腕を引っ張り起こして、机の上に手を突かせる。
「おしり、突き出して?」
耳元で囁くように指示すれば、言われるがままにセレスタインは形の良いお尻を、ぐいっ、と突き出した。
後背位はセレスタインが一番好む体位である。
「は、早くぅ……早く挿れてぇ……?」
「ちょっと待ってくださいね」
セレスタインが腰を揺らせておねだりをしてくる。こんなのを見せられれば私も我慢の限界が来てしまうと言うもの。
ズボンの中からモノを取り出すと、ぬちゃぬちゃ、とそれを彼女の陰部に擦りつけ、
「あああぁぁぁっ!!」
ずぷぷぷっ、と一気に埋めた。突然に強い刺激にセレスタインが背中を反らせて悲鳴を上げる。
一方の私は歓喜に震える膣内のうねりに耐えながら腰を動かす。
「あぁっ!ああぁぁっ!」
強く打ちこむたびにセレスタインは白い喉を反らせて喘ぐ。
そうした彼女の痴態に私の性感はいよいよ高まっていくのだ。
「こっちを向いて、セレスタイン」
強引に向かせたセレスタインの顔は涙と涎でべとべとだ。私はそれを舐めてから、彼女の唇を強く啜る。
「んんっ!? ふぅんんっ!?」
一連の流れで完全に出来上がったセレスタインはキスだけでも絶頂しているようだ。そしてその度にうねる膣内に我慢も遂に限界を迎えてしまう。
「出すよっ……膣内に出しますよ……っ!?」
「んんっ! んんんっ!!」
キスに耽りながらも必死に頷くセレスタイン。私は止めとばかりにモノで子宮口を抉り、中心へと精を放った。
「っっっっ……! んあああぁぁぁっ!」
私の射精と共にひと際大きな絶頂を迎えたセレスタインが、がくり、と机の上へと崩れ落ちる。
私は、ふぅ、と息を整えてから、
「……やっぱり焦らしプレイはやり過ぎると問題だよなぁ」
周囲に散らばった体液を見て、大きく溜め息を吐いてしまった。掃除が大変そうだなぁ……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ぱぱっ、と情事の跡を片づけて、私とセレスタインは自宅への帰路に着いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
帰り路では腕を組んで歩くのが定番である。
「ふん、ふふん……♪」
「随分と上機嫌だねぇ……何かあったの?」
鼻歌交じりに歩くセレスタインに、私は思わず理由を訊ねてしまう。
すると彼女は頭半分ほど上の私の顔を見上げて、とても嬉しそうに笑った。
「んふふ……♪」
「な、何だよ……?」
「さっきのプレイ凄かったなぁ、って♪」
「うぐ」
セレスタインの言葉に私は少し苦い顔で呻いてしまう。
「俺にしてみれば黒歴史みたいなものだけど……」
「何で?気持ち良くなかった?」
「いや、凄く気持ちよかったんだけどね……だからこそ、何と言うかね……どんどんアブノーマルになっていきそうで……」
私の身体は完全にインキュバスへと変化している。だがその価値観は人間時代の物が色濃く、魔物の激し過ぎる交わりには少し戸惑いを感じるのだ。
「魔物娘にとっては大歓迎なのにねぇ」
自分の体に夢中になってもらえるのってとっても幸せなのよ、とセレスタインが更に強く私の腕を抱く。
むにょりと形の変わる巨乳に私は気恥かしくなってしまい、思わず顔を背けてしまった。
「あ、恥ずかしがってる?」
「あー!聞こえない、聞こえないよー!?」
「そう言う可愛い所も大好き!」
「うぐぅ」
どうあっても妻には敵いそうもない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
出会った頃からそうだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今となっては笑い話みたいなものだが。私にはセレスタインと出会う前の記憶が完全に抜け落ちている。
風貌こそジパング人ではあるが、文化も言葉すらも解っていなかった。
そんな私を拾ってくれたのがセレスタインである。右も左も解らず彷徨う私の前に現れた彼女は、
 
 
 
「貴方って、何だかとっても面白そう!」
 
 
 
そう言って私にあらゆる知識を教えてくれた。その知識の中で私は医療に興味を覚え、専門の教育も受けさせてもらった。
そして総ての教育課程を修了した私は、セレスタインと共に「エブリデイ・クリニック」を開業したのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「昔からの夢だったの。人間も魔物も一緒に来れる病院を作るって」
 
 
 
「そうですか。じゃあいよいよ夢本番といった所ですね?」
 
 
 
「そうね。 でもきっと完全な物になるまでには長い道のりがあるでしょうね」
 
 
 
「そうかもしれませんね」
 
 
 
「無理に付き合う必要はないのよ?今の貴方なら何処の病院でも雇ってくれる筈……」
 
 
 
「え!? ここまで一緒にやってきたのにクビとか勘弁してくださいよ!?」
 
 
 
「…………」
 
 
 
「……いや、あの、その…………うーんと……何かマズイ事とか言いましたか?」
 
 
 
「……これからも」
 
 
 
「?」
 
 
 
「これからも一緒にいてくれる、の?」
 
 
 
「いるものだと思っていたんですけど……もしかして良い男でも見つけましたか?それだったら、仕方が無いですけど」
 
 
 
「…………」
 
 
 
「…………」
 
 
 
「……も、もう我慢の限界だよぅーっ!」
 
 
 
「え、ちょ、まって、服脱ぎ始めるとか、ちょ、ムードとかは(ry」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「んっふっふー♪」
「あ、ますます上機嫌。何を思い出しているんです?」
「私達の初夜の事よ?」
「あー……」
俺にとってはちょっとしたトラウマである。
「……多分、あれって俺の初めてだと思うんです」
「私だって初めてだったわよ?」
「だったら、もうちょっとムードみたいなのが欲しかったと言うか……?」
「成程」
だったら、とセレスタインが私の腕を引っ張って走り出した。
「え、え、え?」
「だったら今夜は初夜のやり直し!もうとってもとってもイチャイチャなセックスをするわよ!」
「あ、明日も仕事ですよ!?」
「淫魔なら余裕ですしおすしー!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今日も明日も。私はエネルギッシュな妻を始めとした魔物娘達に、更には様々な事情を抱えた人間の患者達にも振り回されるのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これはそういう物語。様々な人魔を診察する、町医者の物語なのである―――――。
 
 
 
 
 
 
続く
 
 
 
13/04/30 09:20更新 / うりぼー
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■作者メッセージ
はじめまして。うりぼーと申します。

今作が初投稿にして初連載作品です。
重めのテーマはあまり入れずに、ああこういう雰囲気って良いよね、と思われる作品を目指したいと思っています。

ご指摘等ありましたら、ビシバシお願いします。

それでは。これからこの作品を御贔屓にしていただければ幸いです。

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